毎日通うことを考えると、一年を通して発生する交通費はかなりの高額となり、浪人生本人はもちろんご家族にとっても大きな懸念点となります。
交通費を節約したい場合、定期券を購入するのがおすすめですが、割引率の高い通学定期券は購入できるのでしょうか?
結論から述べると、通学定期券を購入できる予備校は存在します。とはいえ、購入にはいくつか条件がありますので、注意が必要です。
本記事では、通学定期券の割引率の高さや、購入方法、購入の際の注意点などを解説していきます。
学校法人が運営する予備校は「通学定期券」を購入できる
予備校への定期券を購入する場合、「通学定期券」と「通勤定期券」のどちらを選べばよいのかわからない方もいるのではないでしょうか。
通学定期券とは、学校や各種学校、専修学校に通学する際に発行されるもので、通勤定期券よりも割引率が高いのが特徴です。通学定期券は、鉄道事業者が認定した指定学校の生徒のみが購入できます。
指定学校に関しては鉄道事業者ごとに多少の違いはあるものの、基本的には「学校法人」であれば指定学校に認定されるようです。つまり、通学定期券を購入する際には通学先が「学校法人」であることが前提となります。
通学定期券の方がお得な料金になっていて、料金詳細は乗り換え案内サイトやアプリから確認が可能です。では、例を挙げて定期券の料金を確認してみましょう。
【定期券代の例(JR中央線の吉祥寺駅 - 新宿駅間)】
期間 | 切符代(※) | 通勤定期 | 通学定期 |
---|---|---|---|
1ヶ月 | ¥9,200 | ¥6,950 | ¥5,490 |
3ヶ月 | ¥27,600 | ¥19,810 | ¥15,660 |
6ヶ月 | ¥55,200 | ¥33,480 | ¥29,640 |
※1ヶ月に20日間往復した場合で計算
※2023年4月時点での運賃
月に20日間通うと仮定すると、定期券を購入する場合・しない場合で3ヶ月で1万円以上、6ヶ月で2万円以上交通費に差がつきます。
JRのみでこれだけ費用が変わりますので、私鉄や地下鉄など、ほかの鉄道事業者との乗り換えが発生した場合、費用の差はより大きくなります。通学定期券を購入できるのであれば、積極的に利用しましょう。
学校法人の予備校とは?
学校法人かどうかを確認するには、運営会社が所属する団体を調べる必要があります。公式サイトやパンフレットに運営会社が書いてある場合が多いので確認しておきましょう。
有名な予備校の運営会社がどのような形態であるかをまとめたのが下表になります。「三大予備校」とも称される河合塾・駿台・代々木ゼミナールは学校法人が運営をおこなっています。
大手予備校の運営団体
パンフレットや公式サイトでははっきりわからない場合は、文部科学省のWebサイトでも確認が可能です。サイト内で「専修学校」「各種学校」に分類されている団体が学校法人として扱われます。
予備校通いのために通学定期券を購入する際の注意点
通学定期券を購入できるかどうか事前に確認したい方は、利用する鉄道会社に直接問い合わせ、通う校舎と利用する路線を告げて確認するのが一番確実な方法です。
それ以外にも、定期券を購入する際は以下のような点に注意しましょう。
購入できる区間は決まっている
通学定期券を購入できる区間は、自宅の最寄り駅から通学する校舎の最寄り駅までの区間のみです。
それ以上の区間や関係ない区間に関しては、購入できません。もしも区間に変更がある場合は、変更後の区間が記載された通学証明書等の提出が必要になります。
窓口などで必要書類を提出する必要がある
通学定期券を購入するためには、各鉄道会社の窓口へ行く必要があります。
そして、学校や予備校で発行される「通学証明書」もしくは「通学定期券購入兼用証明書」の提出が求められるため、忘れずに持参しましょう。
【提出が必要な書類】
※ 鉄道会社によっては申込書の記載が必要な場合があります
通う予備校ごとに対応が異なる
学校法人が運営する予備校では通学定期券の購入が可能と前述しましたが、予備校によって、定期券を購入できる条件が異なる点に注意してください。
ここでは、大手予備校である駿台予備学校、河合塾、代々木ゼミナールを例に挙げて詳細を解説します。
駿台予備学校:4月に入学しなければ購入できない
例年4月1日以降に、校舎の窓口で通学証明書を発行してもらえます。この通学証明書を持って利用路線の発売窓口へ行きましょう。
ただし、後期から通学をする生徒は通学定期券の対象ではありません。通常運賃で通うより、通勤定期券を購入したほうが交通費はお得になりますので、購入しておきましょう。
通学定期券を購入できるのは、基本的に浪人生のみですが、一部特例として横浜市営地下鉄のみ現役フロンティア生でも通学定期券の購入が可能となっています。
河合塾:校舎ごとに対応が異なる
秋葉原館、あざみ野館、藤沢館の3つの校舎に通う場合は、一部私鉄を除いて、4、5月入学でも通学定期券を購入することができません。
ただし、秋葉原館、あざみ野館、藤沢館の3校舎に通う方には別途割引制度があり、申請をおこなえば通学定期券と通勤定期券の差額分を補填してもらえます。詳しくは入塾が決まった後に送付される「入塾関係書類」で確認するようにしましょう。
代々木ゼミナール:サテライン校舎は通学定期を購入できないので注意
代々木ゼミナールで注意したい点は、「代ゼミサテライン予備校」に関してです。これは、日本全国に約580の校舎を持ち、どの校舎でも代々木ゼミナールの本部校舎などでおこなわれている講座を映像で受けることができる校舎です。
ただし、この代ゼミサテライン予備校は、代々木ゼミナールとフランチャイズ契約をしている塾などになります。学校法人ではない場合も含まれており、その場合通学定期券の購入ができない場合がほとんどです。
こういったフランチャイズ契約の校舎に通うことを検討している方は、まず通う校舎に問い合わせておきましょう。
学校法人でない場合に利用できる割引制度・補助金制度
運営が株式会社の「東進ハイスクール」では、さまざまな条件はあるものの通学費用の補助金制度があります。
対象は浪人生のみですが、2つの補助金制度をおこなっています。
ひとつは入学時の通学補助金制度。こちらは全入学者が対象で、通学費用として3万円が授業料から値引きされます。東進ハイスクールのパンフレットなどに記載されている授業料は、この3万円が値引きされた後の金額ということになります。
もうひとつは4~12月の9ヶ月間の、通勤、通学定期券の差額が3万円を超える場合、その差額を補填するというもの。
最初に紹介した吉祥寺駅~新宿駅間のJR利用でも、9ヶ月分となると差額は3万円を超えますので、この補填の対象ということになります。ただしこの補填制度には以下のような条件があります。
この3つの条件をクリアした浪人生が申請を行えば、2月末に差額分の補填を受けることができます。
差額の補填は後からということになりますので、通学している間はまず通勤定期券で通学をおこない、卒業前に申請するのを忘れないようにしましょう。
まとめ
一般的には学校法人であれば、ほぼ購入できると考えていいでしょう。ただし、地域や路線によっては対象外となっているケースもありますので、気になる方は利用する鉄道会社に問い合わせてみましょう。
学校法人の場合でも購入対象者となるのは、通年その校舎に通う生徒のみであるケースが多いので、入学の際の案内書などで確認するようにしましょう。
学校法人ではない場合でも、通学費用の補償制度のあるケースもあります。補償に関しては出席率などの条件が付く場合もありますので、こちらも確認が必要です。
予備校の授業料は決して安いものではありません。授業料以外でかかる経費を抑えられるのであればぜひ利用したいところです。
ただし、運営が学校法人かどうかを理由に予備校を決めるのは本末転倒です。予備校選びは開催しているコースや、合格者数、そしてご自身の勉強方法やスタイルにあった予備校を選ぶようにしてください。