中学受験の志望校選びは、偏差値や有名校かどうかだけでなく、学校の雰囲気や方針、お子さんの希望との相性などを幅広く取り入れて検討することが大切です。
受験勉強の方向性を定めるだけでなく、今後6年間の学びや生活環境を左右する選択になるので、幅広い視点で見極めていきましょう。
そこで本記事では、中学受験で志望校を決める際に押さえておきたいポイントと実際に志望校を決めるステップ、志望校選びでやりがちな失敗例を解説します。
【中学受験】志望校の決め方|7つのポイント
中学受験で志望校を決めるときに確認しておきたい7つのポイントについて、次より見ていきましょう。
学校のタイプ
学校のタイプごとに校風や環境が異なるため、子どもの将来像や希望進路にあったところを選ぶことが大切です。
学校のタイプは、進学校/大学附属校、共学/別学、伝統校/新鋭校に大別でき、各タイプについて次より説明していきます。
進学校/大学附属校
進学校は、難関大学への合格を目指してレベルの高い教育をおこなう学校です。受験に精通した先生が多く、補習や講習も充実している傾向のため、志望校合格に向けて手厚い指導が受けられます。
また、進学校のなかにはカリキュラムを前倒しして、高校3年生になると受験対策を集中的におこなう学校もあります。
一方、大学附属校は系列の大学へ内部推薦で進学できるのが特徴。成績を一定以上維持すれば基本的に大学受験をせずに進学が可能です。中学受験のあとは、中高の6年間ゆとりを持って学業や部活・趣味に取り組めるのが特徴です。
共学/別学
共学校では、男女が共に学ぶことで多様な考え方に触れられ、他者への理解やコミュニケーション能力が育みやすいとされています。異性の友だちもできやすく、中学校から異なる価値観に触れる機会が多くあります。
一方で、別学(男子校・女子校)は、異性の目を気にせずに勉強や部活に没頭しやすい環境であることがメリットです。異性との関わり方に不慣れになると懸念されることがありますが、同性の仲間と深い信頼関係を築くことができます。
伝統校/新鋭校
伝統校は創立から長い歴史を持ち、建学の精神や伝統行事を大切に受け継いでいる特徴があります。卒業生に著名人が多かったり、保護者が代々OB・OGであったりするケースも珍しくなく、同窓のネットワークの強さも魅力のひとつです。
一方、新鋭校は、時代にあわせた柔軟な改革や新しい教育手法を積極的に取り入れている傾向があります。カリキュラムにも現代的な工夫が見られ、少人数での授業や習熟度別のクラス分けなど独自の教育で実績を伸ばしている学校もあります。
偏差値
志望校を選ぶために学校の情報を調べる際は、偏差値も確認しておきましょう。お子さんの偏差値を基準にすると、受験校はチャレンジ校、志望校(本命校)、安全校の大きく3つに分類できます。
併願校も含めて受験の計画を立てる際には、この3つの分類を意識して複数校を組み合わせるのが一般的です。
お子さんの偏差値より高い学校で努力するか、現状の学力にマッチした学校に進むかなどの方針も含めて、志望校を選んでいきましょう。
進学実績
大学などの進学実績も確認しておきましょう。偏差値の高い中学校ほど偏差値が高い大学への合格実績が多くなる傾向ですが、学校ごとに「地元の大学への進学が多い」「医学部など特定の学部への進学が多い」など特徴に違いがあります。
偏差値だけで判断せずに、進学実績も併せて見ておくと進路のイメージがしやすくなります。現役合格率がどれくらいで、浪人が多いのかなども重要な情報となるので忘れずにチェックしておきましょう。
自宅からの通学時間
志望校選びにおいて、日々無理なく通える通学時間であるかどうかも重要な視点です。中学入学後は最低でも3年間(中高一貫校の場合は6年間)は通うことになるため、勉強や部活と両立しやすい通学環境かどうかを事前に確認しておきましょう。
通学については、乗り換え案内や地図アプリで調べるとともに、オープンスクールや説明会の機会に実際に足を運んで下見しておくとより具体的にイメージが掴めます。また、通学の負担を調べる点では、通学時間帯での電車の混雑具合もリサーチしておくと、より現実的に判断できます。
校風や理念・教育方針
志望校を選ぶ際には、学校の校風や教育方針も確認しておきましょう。自主性を重んじて生徒の個性を伸ばす校風の学校もあれば、規律を重視して礼儀や生活指導に力を入れる学校もあります。
たとえば、オープンスクール、学校説明会などに参加すると、教育方針について説明されることがあります。また、学校のウェブサイトを見ると自主性・国際性・協調性・伝統尊重などその学校が何を大切にしているかが感じ取れることがあります。
また、学校の空気感を肌で感じるという点では、文化祭に足を運んでみるのもおすすめです。中学入学後、お子さんがどういった学校生活を送りたいかもイメージしながら、どのような校風の学校があっているのかぜひ検討してみましょう。
学校生活(施設・部活・行事)
施設・部活・行事など学校生活に関わる部分も、志望校を選ぶ際には重要なポイントです。
部活は、全国大会常連の運動部があったり、ユニークな文化部が盛んだったりと学校ごとに特色があります。部活に熱中したい子にとっては、希望する部活が活発かどうかは重要な要素になるでしょう。
また、図書館、プール、グラウンド、体育館、教室などの設備が充実した学校では、学力や興味関心を伸ばすためのよりよい学習環境が期待できます。施設はパンフレットやウェブサイトの写真などのほか、学校説明会で実際に足を運んだ際に意識して見ておくと参考になります。
そのほか、文化祭、体育祭、修学旅行など行事は、学校ごとに特色が出る部分です。海外研修や留学制度を取り入れているところもあるので、国際教育を望む場合はぜひ注目しておきましょう。
学費
志望校選びでは、年間の授業料や3年間(中高一貫の場合は6年間)のトータルの費用を確認しておきましょう。文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、私立中学校の学費の年間平均は156万359円です(※)。
授業料のほか、入学金・教材費・制服費など諸費用がかかり、任意の寄付金制度があるところもあります。
学校によっては特待生制度や奨学金制度が用意されている場合もあるので、必要に応じてこうした制度の有無や内容も確認しておくとよいでしょう。
※文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」
中学受験の志望校を決めるまでのステップ
ここからは、中学受験の志望校を決めるための具体的なステップを紹介します。情報収集や親子での話し合いを経て、最終的に志望校を決めるまでの各ステップを次より見ていきましょう。
①学校についての情報収集をする
まずは学校についての情報収集から始めましょう。志望校選びの第一歩は、そもそもどんな学校があるのかを知ることです。通学できるエリア内で偏差値が概ねマッチする学校をリストアップして、各学校の基本的な情報を集めます。
情報源としては、学校案内のパンフレットや学校のウェブサイトはもちろん、各種の受験情報誌、受験情報サイトなども活用できます。
また、可能であれば学校説明会や見学会、文化祭・オープンキャンパスに参加することをおすすめします。説明会などで学校に足を運ぶと、パンフレットではわからない校舎や設備の印象、先生の雰囲気など生きた情報が得られます。
②親子で話し合って擦り合わせをする
情報が集まりおおよその志望校の候補が出揃ったら、親子でじっくり話し合う時間を設けましょう。
中学受験は高校・大学受験と比べると保護者主導にもなりがちですが、お子さん本人の気持ちや意見を無視して決めてしまうのは避けるべきです。
お子さんが「この学校に行きたい」「ここは嫌だ」と素直に言えるような雰囲気をつくりながら、しっかり話し合いをして親子で擦り合わせをすることが大切です。
たとえば、「英語に興味がある」「部活を頑張りたい」といった好きな分野や、やりたいことも志望校選びで重要な視点になります。お子さんの意思を尊重するためにもしっかりと話を聞いておきましょう。
③志望校や併願校を決める
話し合いで候補の学校が固まったら、本命の志望校と併願校を決めましょう。
併願校まで含めて決める際には、入試日程の重なりに注意が必要です。とくに東京都や神奈川など首都圏の入試日程は2月1日から3日までに集中しています。
本命の志望校に加えて、安全校やチャレンジ校も組み合わせて志望校・併願校を決定していきましょう。
中学受験の志望校を決めるときによくある失敗例
志望校選びでは、陥りがちな失敗パターンも存在します。
ここでは中学受験の志望校を決める際によくある失敗例について解説します。同じ失敗をしないようぜひチェックしてみてください。
偏差値だけで受験校を選ぶ
「偏差値が高いからよい学校だろう」と偏差値偏重で選んでしまうと、その学校の校風や教育方針がお子さんにあわない可能性があります。
偏差値は合格可能性や学力があう学校であるかを確認するうえで重要な指標となりますが、校風や教育方針がお子さんの性格や理想とする将来像にあっているかも同じくらい大切です。
入学後に充実した学校生活が過ごせる環境であるかをまずは考えて、総合的に学校の特徴をチェックしていきましょう。
本人に相談せずに決めてしまう
志望校選びは、小学生のお子さんに一任することが難しく、保護者の意見が欠かせませんが、お子さんの意向を無視して「ここに行きなさい」と決めてしまうのは避けましょう。
本人が乗り気でない学校を無理に受験させても、受験勉強への意欲が下がってしまったり、合格しても入学後に伸び悩んでしまったりする恐れがあります。
親としてはつい熱が入り「絶対この学校がいい」と思い込んでしまうこともありますが、中学・高校と通う学校になるので一度立ち止まってお子さんの声に耳を傾けましょう。
友だちの進学先にあわせる
「仲のよい友だちが行く学校だから自分も同じ学校にする」という理由だけで志望校を選ぶことも避けたいパターンです。
「塾でできた仲良しの友だちと離れたくない」といった気持ちは自然なことですが、お子さんにあわない環境を選択すると、せっかくの中学校生活が実り少ないものになってしまうこともあります。
校風や教育方針、偏差値や進学実績、自宅からの距離などを総合的に考えてお子さん自身にとってベストな学校を選べるように親子で話し合って志望校を決めるようにしましょう。
塾の講師のおすすめ校をそのまま志望校にする
塾の講師が薦めるままに志望校を決めてしまうのも避けましょう。経験豊富な受験指導のプロから学校を提案されると、つい「講師の方がいうなら間違いない」と思ってしまうことがあるかもしれません。
塾の講師は合格可能性など学力面から適切なアドバイスをくれますが、お子さんが納得していない学校では最適な選択にならないこともあります。
プロの意見を尊重しつつ、あくまでひとつの助言として捉えて、お子さんの気持ちとご家庭の方針を軸に志望校を決定することが大切です。
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チェックポイントを押さえて最適な中学受験の志望校を決めよう
中学受験の志望校選びでは、学校のタイプ、偏差値、進学実績、通学時間、校風・教育方針、学校生活、学費などをチェックしましょう。
お子さんの個性や将来像にあった学校なのか、毎日の通学に無理がないか、学費は許容範囲かなど、ひとつずつ確認していくことが大切です。
中学受験の志望校選びは、偏差値や知名度だけでは語れない多面的な判断が求められます。ぜひ本記事で紹介したチェックリストを参考に、候補の学校を比較検討してみてください。