子どもが人とコミュニケーションを取るのが苦手、朝起きられない、今通っている学校があわない…など、さまざまな悩みを抱えている保護者の方は少なくないでしょう。
宮崎県えびの市にある「日章学園九州国際高等学校」は、全国的にも珍しい不登校・進路変更希望者のための“単位制×全日制”の学校です。
今回は、企画広報部の仲武 睦弘先生と屋田 伸仁校長に、不登校を改善するという同校の環境や取り組み内容についてお聞きしました。
不登校や進路変更をしようか迷っている方は、ぜひご一読ください!
東京ドームの1.5倍!自然豊かで広大な敷地で学ぶ
―本日はよろしくお願いいたします。はじめに、「日章学園九州国際高等学校」の概要を教えてください。
仲武 睦弘先生(以下、仲武):「日章学園九州国際高等学校」は、宮崎県えびの市にある、おもに不登校や進路変更希望者のための高等学校です。今年で創立28年目を迎えます。
本校は、宮崎県と鹿児島県を中心に国内外に展開する「学校法人日章学園」のなかの1校です。本学校法人は、創立73年を迎え、10以上の学校、複数の社会福祉法人の福祉施設を擁し、南九州では最大規模となっています。
そのため、同じ学校法人の他の高校と交流したり、職業選択・進学の参考になればと、専門学校を見学したりすることもあります。奄美大島にも専門学校がありますので、そちらのオープンキャンパスに生徒が参加することもあるんですよ。
また、このあたりは「霧島ジオパーク」といって、大小20の火山からなる霧島山が生み出した自然に恵まれた地域です。そのなかで、登山やキャンプといった郊外学習、郊外活動もおこなっています。
全国的にも珍しい「単位制×全日制」の高等学校
―続きまして、貴校の「4つの魅力」について、詳しくお聞かせください。
仲武:当校の4つの魅力について、順番にご説明します。1つ目の魅力は、「寮のある単位制×全日制」です。一般的に、不登校や進路変更希望者のための学校というのは、通信制が多いと思いますが、本校は「全日制」になります。
また、全日制では、一般的に学年制となり、一部の教科の単位が修得できなかった場合には留年をしますが、本校は「単位制」ですので、留年はありません。前在籍校で修得した単位をそのまま活かすことが可能です。
ご自宅から通学もできますが、基本的な生活習慣を身につけるという意味では、寮生活を送ることが大変有意義なものになると考えています。
本校の寮は、高校の寮としては珍しく、相部屋ではなく、冷暖房完備の完全個室です。近年では、インターネットを使った学習が増えていますので、校舎内だけではなく、寮でもWi-Fiが使える環境を整えています。
2つ目の魅力は、「少人数教育」です。本校の入学者の多くは、それまで不登校であまり学校に通うことができていなかった子どもたちです。学習の遅れを心配されている保護者の方も多くいらっしゃいます。
そこで、少人数教育を徹底し、中学校ではあまり学べていなかったことを、「学び直し」する機会を多く設けています。
3つ目の魅力は、「充実した環境」です。東京ドームの1.5倍もの広さがある広大な敷地には、グラウンドや体育館など、生徒が自由に使えるスペースが多くあります。
敷地内には校長・教頭・教員住宅・ドッグランがあり、学校のスタッフが敷地内に居住している形になりますので、何かサポートが必要な場合にいつでも対応することが可能です。この点も、保護者の方には安心していただけるのではないでしょうか。
4つ目の魅力は、「留学生と共に学べる国際交流」です。本校は国際交流にも力を入れており、海外に20校以上姉妹校があります。また、併設校から毎年留学生を受け入れています。
学校、また寮生活を通じて、留学生とコミュニケーションを取ったり、お互いの文化を教えあったりすることで、国際感覚が自然と身についていくでしょう。
保護犬ニッチーを通じて地域の人たちと交流
―普通科の学校としては珍しい「ドッグラン」を設置されたきっかけや、効果を教えてください。
仲武:本校でおこなっている「いのちの教育」の一環として、動物愛護センターを見学しました。その際に、ひとつでも命を救いたいという声が生徒から上がり、2年ほど前に保護犬(ニッチー)を引き取りました。
その際に、学園の理事長から、せっかく広い敷地があるので、ドッグランを開設したらどうかという提案がありまして、実際に設置した次第です。
本校を支えてくださっている地元の方々にも、無料でドッグランを利用してもらえたらとご案内したところ、200組近い方が登録してくださいました。
現在では、毎日多くのワンちゃんが遊びに来てくれており、これまであまり積極的ではなかった子どもたちが、地域の皆さんと関わる機会にもなっています。ニッチーがいなかったらできなかったような交流ですね。
ニッチーはオス犬ですので、毎日男子寮に帰り、朝は生徒と一緒に登校し、日中は学校で過ごしています。生徒たちが自分たちで順番を決めて散歩をしたり、排泄のお世話をしたり、自主的に関わってくれています。
ニッチーを通じ、生徒間で共通の話題ができたこともあり、それまで積極的に会話をしなかった子が会話をするようになったとも感じています。
―さまざまな取り組みをされていますが、実際に入学された生徒や保護者の方からは、どういった感想があるのでしょうか?
仲武:それまで、朝もなかなか起きられず、不登校を経験していた生徒たちですので、難しい勉強ができるようになったとかではなく、「朝起きて学校に通えるようになったことが嬉しい」という感想をもらうことが多いです。
親元を離れて寮に入り、自立した生活を送ることによって、自宅ではなかなかできなかったことが高校に入ってからできるようになる生徒が多くいます。
そして、学校に通えるようになれば、当然授業にも興味を持ったり、コミュニケーション能力を身につけたりといったことにつながります。
生徒からは、洗濯や部屋の掃除など、身の回りのことを自分でやるようになり、「今まで、どれだけ親に頼っていたかということに気づきました」という声を聞きますね。
これまで難しかったことが寮生活を通じて可能に
―学校説明会やオープンキャンパスなどがありましたら教えてください。
仲武:本校に興味を持ってくださる方は、家からなかなか出られない、集団が苦手だというお子さんが少なくないので、年間を通じて“個別対応の学校見学”を実施しています。
入学後のイメージを掴みやすいように、実際の少人数の授業や寮も見ていただいています。
とくに都会から来られる方は、ここでの生活を少し不便に感じるかもしれません。しかし、学ぶにはとてもよい環境ですので、気持ちを入れ替えて卒業を目指していただけたらと思います。高台にあるため、校舎から見える景色がとても綺麗ですよ。
本校は、全日制及び単位制で、かつ個室の寮を完備と、全国的にもなかなか珍しい特徴を持つこともあり、遠方から見学にいらっしゃる方も少なくありません。
来校される方への旅費の補助はおこなっていませんが、見学後入学される際の入学金や入寮費といったところの減額減免制度を設けています。
―最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いいたします。
仲武:不登校のお子さんのなかには、大人数が苦手、昼夜逆転で生活が乱れている、親子関係がぎくしゃくしているなど、さまざまな課題を抱えているかと思います。
本校はそういった方のための学校ですので、進学先・進路変更先としてぜひ一度見学をしていただければと思います。
屋田 伸仁校長:現在、不登校のお子さんを持つ保護者の方のなかには、入学したとしても続かないのではと考えている方もいらっしゃるかと思います。
本校は不登校のお子さんのための学校です。大人数が苦手な生徒と、学力に不安がある生徒が多いのですが、少人数制の丁寧な授業で、学び直しもできる指導内容ですので、安心して勉強してほしいと思います。
また、これまで、なかなか人間関係を築くことが難しいと感じていたお子さんたちです。さまざまな体験を活かしながら、グループで交わり、お互いを知っていくことが重要だと考えています。
そのため、本校では学校以外での活動にも力を入れています。たとえば、えびの市にある標高1,700メートルの韓国岳での登山。66歳の私も、生徒たちと一緒に登っていますよ。
市のマラソン大会に留学生と一緒に出場したり、給水ボランティアをしたり、ほかには、障害者施設へのボランティアや、震災復興の共同募金をニッチーと一緒におこなったこともあります。
私自身も、生徒にコミュニケーション能力をつけさせてあげたいという思いが強く、年間を通じて趣味の手品を取り入れた活動をおこなうなど、生徒の反応を見ながらさまざまな工夫をしています。
寮生活と聞くと、体育系や宗教系の学校で厳しいイメージをお持ちの方も多いでしょう。それが理由で寮ではなく、家から通える通信制の高校を選ぶ方もいらっしゃるかもしれません。
本校の寮は不登校生のための寮なので、非常に緩やかです。楽な気持ちで過ごしてもらうことで、少しずつ少しずつ規則正しい生活習慣が身につきます。あるいはゲーム・スマートフォン依存も改善していきます。
早寝早起きをして、しっかり朝ごはんを食べると、自然と体調もよくなり、元気になっていくんですね。
そして、自分にもこういうことができるんだという自信につながり、自立心が身についていきます。ここで培った社会性や自立心は、卒業後の進学や就職でも活かされるでしょう。
親元を離れ、寮生活を送ることで、これまで朝起きられなかった子どもたちが、朝起きて登校できるようになるだけでなく、コミュニケーション力も身につけることができます。
通信制の学校を検討されている方も、ぜひ本校を候補のひとつとして、検討されることをお勧めいたします。
ー本日は貴重なお話を、ありがとうございました。
■取材協力:日章学園九州国際高等学校