とげぬき地蔵や商店街が有名な、どこか懐かしい雰囲気が漂う巣鴨。
そんな巣鴨の地に、明治38年から伝統を築く「東洋女子高等学校」があります。
今回は、広報担当の市村 和浩広報室長代理と、宮田 秀一朗先生に、同校でおこなっている“問題探究型学習”を中心にお話を伺いました。
探究型学習は、生徒も教員も一緒に“答えのない問題解決に挑むプログラム”として、社会で必要な多様なスキルを養うことができます。
さまざまな教育プログラムはもちろん、高校単独の女子校だからこそできる教育も、ぜひご一読ください。
東洋女子の授業料を完全無償化にする助成金制度everyoneも必見ですよ!
創立120周年を迎える女子校!授業料無償化のeveryoneも実施中
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、「東洋女子高等学校」がどのような学校なのか、概要や特色を教えてください。
市村 和浩広報室長代理(以下、市村):2025年4月16日に創立120周年を迎える「東洋女子高等学校」は、創立以来、積極的に社会で活躍できる女性の育成を手掛けてまいりました。
近年、東京都では中高一貫校が非常に増えていますが、本校は女子高等学校に一貫している点が特色だといえるでしょう。したがって、高校から新たなスタートを切りたい、あるいは新たな交流関係を築きたいという生徒にぴったりなんです。
みんなが主役になれる活気あるクラブ活動や、生徒が中心となってつくり上げる学校行事など、生徒自身で学校生活を彩ることができますよ。
そのほかの特色としては、世帯年収・住居地域・受験コースに関わらず、授業料を完全無償化にする助成金制度「everyone」を適用していることです。
一般的な学校の場合、成績優秀者のみ入学費や授業料などが免除されるケースが多いかと思います。しかし本校は、東京、近県関わりなく、助成金制度を統一しており、保護者の方々には非常にご好評いただいていますね。
こうした新たな取り組みが、子どもたちの未来につながっていけば嬉しいです。
「問題探究型学習」で答えのない問題への取り組み方を考える
ー教育においての特色はありますか?
宮田 秀一朗先生(以下、宮田):本校では、答えのない問題解決に挑む「問題探究型学習」を重視し、卒業までに“自進力”を身につけてもらいたいと考えています。
自進力は、“自ら進む力”を表わす言葉で、辞書には載っていない本校オリジナルの言葉です。
物事に問題意識を持ち、多様な知識や意見を吸収し、論理的に考察、より多くの人と議論したのち、多様な意見や考えを得て、さらに考察する。この無限に連なるサイクルが「自進力」なんですね。
この自進力を身につけるためにどうすればよいかを考えた際、自分で考えて進路選択をすることが必要であると考え、そのための取り組みとして本校は、「土曜講座」と「TJ(東洋女子)グローバル教育」をおこなっています。
土曜講座は、大学のゼミや研究室の形式で探究を進めていくプログラムです。
まず1年生は、興味・関心を広げながら探究の基礎を身につけ、自身の進路決定に活かすことができる講座を選択します。
たとえば、ジブリ学や語学、心理学講座、LGBTのワークショップ、日本の文化と礼儀作法など、さまざまありますね。
ジブリ学では、ジブリの作品のなかに隠されている背景を考察したり、社会学や民族学の観点から作品を読み解いたり…。自分の興味のある分野によっても、発見する社会課題や解決法など、見方が変わってくるんです。
その後、2年次になると3領域、3年次は8系統と、段階的に将来に向けた進路を細かく決めていくため、2・3年生は、選択した系統に沿った探究的な学びができる講座を設定していくんですよ。
たとえば、看護探求やマイノリティ探求、歴史学の探求などがあります。
看護探求は、看護師の仕事が具体的にどのようなものかを知ったり、将来看護師になるうえで今できることを探したり、探求することで卒業後の進路につなげていく取り組みをおこなっています。
続いてTJグローバル教育は、世界共通の解決目標である“SDGs”を世界の仲間と共に考え合い、探究していく、本校独自の教育プログラムです。
まず1年生は、ミュージアムと連携した探究型学習があり、上野近辺の美術館や博物館など、都内にある10館のミュージアムにご協力いただき、ミュージアムで出会った作品や展示物のなかから“100年後に遺したいモノ、伝えたいこと”を探します。
そして、そういった“モノ”を100年後に遺すためには、今なにをおこなう必要があるのかをSDGsの観点と絡め、グループごとに議論、ポスター発表をおこないます。
また、その発表後におこなう投票で、一位になったSDGsテーマが今度は2年生のグローバル活動のテーマにつながっていくわけです。
2年生では、世界の高校生と一緒にSDGsの問題を話し合いながら、半分は日本、残り半分は相手校で、Zoomやメールでやり取りしながら壁画を1枚描き上げる「アートマイル国際共働学習」を1年間かけてつくり上げます。
昨年はスペインの学校、今年度はサウジアラビアの学校とおこないました。
生徒が150名ほどいるなかで、SDGsについて話し合うグループ、海外の生徒と会議をするグループ、描きたい絵を考えるグループなど、細かく分けてリーダーをつくる。
これにより、それぞれの得意な分野でしっかりリーダーシップを発揮できるような活動ができています。
そして3年生になると、1、2年生でおこなってきた活動を英語で論文にして仕上げていきます。
ーそういったさまざまな取り組みが、職業選択の意識を高め、将来を考えるきっかけになっていくのですね。
宮田:そうですね。しかしそれ以外にも本校は、進路に応じた2コース編成と、2年次からさらに細かく分かれるコースになっていることで、より将来の職業を意識することができるんです。
まずは1年次で、特別進学コース、総合進学コースのいずれかを選択し、学びを進めていきます。
特別進学コースは、進路希望によって2年次以降「特進文系」と「特進理系」に分かれ、大学進学に応じた授業内容に移行します。
一方、総合進学コースは、2年次に「文系領域」「理系領域」「総合領域」の3領域から選択。総合領域というのは、文系と理系の両方の知識を必要とし、経営学や看護学を目指す生徒が当てはまります。
そして3年進級時には、さらに「国際関係(グローバル)」「人文社会」「福祉教育(保育・幼児教育・福祉)」「芸術」「経済経営」「健康科学(看護・メディカル・栄養)」「生命科学(バイオ)」「数物科学(理学・工学・建築)」といった8つの系統から選択。
希望する進路に必要な科目を受講し、きめ細かな指導をおこなうことで、一人ひとりの個性や適性を見いだしてレベルアップを図っていくことができるのが本校の特徴です。
現代社会で必要なスキルを育む!生徒も教員も同じ“自立的探究者”
ー問題型探求学習によって得られる成長や学びはありますか?
宮田:土曜講座に関しては、語学や歴史、文学、看護、実験など、たくさんの講座があるなか、どの講座を選択するのかは生徒自身に任せています。
たとえば、栄養の観点から看護を考えたり、文学からマイノリティを考えたり、
自分の得意分野からアプローチしてさまざまな課題解決につなげていく。必ずしも職業のジャンルと興味が合致していなくてもいいんです。
そういった視野を広げて感性を育むことが、問題解決能力を高めていると感じますね。
また、本校は、大学受験進学率が80%ほどで、多くの生徒が指定校推薦や総合型選抜で合格しています。土曜講座での探究プログラムが評価されているようで、もちろん受験のためではありませんが、講座がよい影響を及ぼしているなと思っています。
そのほかにも、本校は早い段階で自分の進路を意識するので、看護学部を希望する生徒だったら、大学からではなく、高校生のうちから看護について学ぶことができる点がメリットではないでしょうか。
専門技術を学ぶわけではなくても、看護について考える授業や環境があることは、他校の方よりもスタートダッシュで差がついていると思いますよ。
生徒一人ひとりの得意分野を、どのように社会に貢献できるか考えていく。自分の能力やスキルを社会で発揮していくことは、大人になって仕事をするうえでもずっと続くことだと思うので、本校で積極的に学び取っていってほしいですね。
ちなみに、土曜講座を担当する教員がその分野の専門でないことも多々あります。そういった際は、土曜講座をつくる段階から、大学の教授や学生の方など、さまざまな方にご協力いただき、進めていきます。
生徒も教員も同じ“自立的探究者”として、ひとつのテーマに取り組み、考察する。生徒も教員も一緒に学び、成長していく、土曜講座はそんなプログラムなんです。
学校説明会も続々開催!高校単独の女子校で新たな出発を
ー学校説明会やイベントなどの告知があればご紹介ください。
市村:学校説明会は、10月14日(土)・11月3日(金・祝)・25日(土)におこないます。また、個別相談会は、10月以降ほぼ毎週開催していますね。
11月23日(木・祝)には入試問題解説会があり、国語や英語、数学といった過去の問題など、事例を踏まえて、教員が2時間半ほどかけて解説をおこないます。本校の入学を考えている方はぜひご参加ください。
学校説明会などはすべて予約制になっているため、日程の詳細含め、公式ホームページからご確認いただけたらと思います。
ありがたいことに、今年の8月におこなった学校説明会は満席となりました。今のところ予約枠はありますが、ご興味のある方はお早めに予約をしてくださいね。
ー最後に、入学を検討している読者にメッセージをお願いします。
市村:本校は、高校単独の女子校なので、新たなスタートを切りたいという方に最適な環境だといえるでしょう。
建物は歴史を感じますが、校舎は8年前にリニューアルし、とても綺麗です。ICT環境も整備され、心地よい学習環境で快適に過ごせます。
また、クラブ活動においても、運動部や学芸部、同好会とたくさんあり、初心者から入部する生徒もたくさんいるため、みんな楽しんで活動していますね。
ぜひ一度足を運んでいただき、本校の魅力を感じてもらいたいです。
宮田:実際に私が授業をおこなっていて思うこと、それは本当に礼儀正しく優しい生徒が集まっているということです。
女子校だからと心配される保護者の方もいるかもしれませんが、本校に派手な生徒はまったくいません。相手の個性や価値観を尊重する生徒が多いんです。
クラスに集団行動が苦手で単独行動を好む生徒がいたら、きちんと理解して接する。しかしグループ学習などの場合は、誘ってあげる。多様性を受け入れ、他者への理解ができていると感じます。
本校には、お互いを思いやる、優しい心を持った生徒たちが多いので、安心して入学してきてほしいなと思います。
そういった周囲に優しくできる生徒が集まる本校は、自慢でもあり、アピールポイントでもありますね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:東洋女子高等学校