子育ての不安、ワンオペ育児、家庭や家族の悩みなど、ひとりで抱えていませんか。
広島県福山市で子育て支援をしているNPO法人「こどもステーション」は、そんな子育てや子どもに関する問題を解決しようと活動しています。
今回は、理事長の奥野 しのぶさんに、親子が安心して過ごせる“子育てひろば・もこルーム”や、“DV被害者支援”について、お話を伺いました。
子育て経験の有無に関わらず、現代における子育ての課題について考えてみてください。
子どもの育ちや子育てを支援する「こどもステーション」
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、NPO法人「こどもステーション」の活動概要を教えてください。
奥野 しのぶさん(以下、奥野):「こどもステーション」は、“子育て・子育ちを地域で応援”をモットーに、広島県福山市で子育て支援をしている団体です。
具体的には、子育て広場の運営、託児などの保育サポートやひとり親家庭の支援、子どもと若年層の支援、面会交流支援といったことをおこなっています。
それから、アドボケイト事業として、各種相談の対応もしています。アドボケイトとは、さまざまな理由で自分から声を上げられない方の意見を代弁する支援者(擁護者)のことです。
当団体では、一般相談、DV相談、カウンセリング、TF-CBT、同行支援、見守り支援、生活改善相談などのサポートをおこなっています。
もともとは、2003年に絵本の読み聴かせなどの会をしていて、そこに集まったママたちが、いつでも行ける子育てサロンのような場所がほしいと、2005年に民間団体「こどもステーション」を発足しました。
そして、今後拠点をつくっていくためには、法人格があったほうが行政や企業と対等な関係がつくれると思い、2010年にNPO法人化。2012年5月には「子育てひろば・もこルーム」をオープンし、現在に至ります。
“安心して子育てできる環境”と“親子を守る活動”を広げる
ー「子育てひろば・もこルーム」では、どのようなことをおこなっているのでしょうか?
奥野:日本全国にある「子育てひろば」は、“地域子育て支援拠点”とも呼ばれており、0~3歳を中心とした乳幼児と、その保護者の方が一緒に過ごす場所になっています。
当団体は、地域子育て支援拠点の委託を受けていませんが、子育てひろば・もこルームというスペースで、遊具やおもちゃ、絵本などをたくさん用意しているほか、貸し出しもおこなっています。
また、お茶が飲めたり、足マッサージ器があったり、さまざまなコーナーとうれしい設備を設置し、ママたちがリラックスして自由に過ごせる場所を提供しているんです。
公式ホームページでは利用料100円と記載がありますが、メルマガ登録してくださった方は無料で施設をご利用いただくことが可能です。ここ数年、利用料をいただいたことはありませんね。
最近は、コロナ禍で来場者数がとても減ってしまっていますが、子育てや家庭のなかの悩みごと、子どもの発達のことなど、なにかあればいつでもご相談いただければと思います。
ーそのほか、もこルームを拠点におこなっている活動を教えてください。
奥野:もこルームでは、保育サポート・面会交流支援・ひとり親家庭支援・子ども若者支援・相談 / カウンセリング・DV被害者支援などの活動もおこなっています。
ひとり親家庭支援としては、ひとり親家庭のママたちが話をして学びあう場「しんぐるまざぁずカフェ」や「こども食堂・もこちゃん」をそれぞれ毎月1回開催しています。
カフェに参加中は、もこルーム内で託児をしているので、子ども同士も仲よくなるんですよ。
あとは、家庭で余っている食品を集めて必要な方に届けるフードドライブ「もこちゃんパック」を実施していて、段ボール箱に食品を詰めて、郵送、もしくは直接お渡ししています。
イベントとしては、シングルのママと子どもたちのお祭り「しんぐるまざぁずフェスタ」を年に1回福山で開催しています。
今年は、癒し系の催し物4つのなかから2つを選んでもらうのと、集めた食品を相談員と一緒に回りながら貰って帰るイベントを2月25日におこないました。
来年も開催予定です!
ーもこルーム以外の活動も教えてください。
奥野:デートDV防止授業の出向や啓発講座の活動をおこなっています。
DV(ドメスティック・バイオレンス)という言葉はよく聞かれると思うのですが、デートDVは、カップル間で起こる暴力のことです。
DVをしていた加害者は、交際中もDVをしていた場合がほとんどで、そのまま結婚し、望まない妊娠など、深刻な問題へと発展するケースが増えています。
交際中にDVの兆候があっても気づかないことが多いため、デートDVの実態や予防策、なぜ起こるのかの要因を、学校に出向いて生徒たちに話したりオンラインで議論したり、教育として伝えているんです。
このように、学校長や養護の先生にお声がけして、学校教育にも取り組んでいただくよう、協力をお願いしています。
さらに当団体では、DV家庭で育った子どもにも目を向けています。DVを目撃して育った子どもは心身に大きな影響を受けていて、本人も気づかないトラウマを抱えている。そのトラウマが成長とともにいたずらをし、生きにくさになっていくんですね。
したがって、トラウマ・フォーカスト認知行動療法(TF-CBT)(※)を相談室などでおこなっています。
(※)事件や事故、虐待、災害などによって“こころの傷(トラウマ)”を受けた子どものための心理療法。
「あなたはひとりじゃない」幸せな子育てを願って
ー今後の展開やイベントの告知、支援の呼びかけがあれば教えてください。
奥野:「離婚を考えている親・離婚前後の親のためのワークショップ」を3月11日10時から開催します。
ワークショップでは、離婚を人生の選択肢にすることや、お金の話と社会的支援、家族と心のケアなど、多方面からアプローチして、新しい生活をサポートするんです。
また、同時開催で「離婚に関する子ども向け法教育プログラム」を小学4~6年生を対象におこないます。
親の離婚を経験する子どもたちに向けたプログラムで、いろいろな家族があること、子どもの権利などについて学びます。
公式ホームページに申し込みフォームがあるので、ぜひご参加ください。
当団体の活動は、ご寄付、助成金、事業収入、会費、及び会員のボランティアで成り立っています。ご寄付や、食品など物資のご支援、活動を支えてくださるボランティアも募集しているので、ご興味のある方は、ぜひご連絡ください。
来年度は、社会福祉法人テレビ朝日福祉文化事業団の助成金を申請して、DV被害者の面会交流支援を実施できる団体を増やすべく、年に4〜5回講座を開催できるよう計画中です。
さらに、現在DVの影響を受けて苦しんでいるたくさんの子どもたちが、暴力を使わずに自分自身を肯定できるプログラムの開発を、来年度の目標に置いています。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
奥野:子育ては楽しいことばかりではありません。ひとりでの子育ては本当に難しく、つらいときもあると思います。
そんなときは、子育てひろばに出向いて、いろいろなママたちやスタッフとつながり、少しでも安心できる居場所をつくってほしいです。
子育てしている親が安心していると、子どもの安心にもつながるので、ジェンダー平等で安心できる家庭環境になることを私たちは願っています。
私たちは、そういった家庭で暮らすことが子どもたちの幸せにもなり、世界も平和になっていくと確信してまちづくりを進めていますので、一緒に頑張っていきましょう。
ひとり親をサポートしている民間団体は、全国に約30か所あります。
ひとり親家庭をサポートする全国ネットワーク「シングルマザーサポート団体全国協議会」を検索すれば、お住まいの地域のサポート団体とつながることができます。
あなたはひとりぼっちじゃありません。あなたの近くの子育てひろば、シングルマザーサポート団体を訪ねてみてください。あなたとの出会いを待っています。そして、あなたとあなたのお子さま、ご家族が幸せであることを願っています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人 こどもステーション