学校で一般的な固定担任制は、クラスごとに担任教員がいる制度のこと。近年、この固定担任制を廃止し、全教員が学年の全生徒を見る“学年担任制”を導入する学校が増えてきているそう。
そこで今回は、“学年担任制+メンター制”を取り入れている「品川翔英中学校・高等学校」を取材。生徒が担任を選ぶユニークな制度について、教頭の村上 亜矢子さんにお話を伺いました。
生徒に寄り添い、生徒たちの将来を考え、新しいことに挑戦し続ける学校の想いを、ぜひご一読ください。
「学び続ける LEARNER」を育成する学校
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、「品川翔英中学校・高等学校」がどのような学校なのか、学校概要を教えてください。
村上 亜矢子さん(以下、村上):東京都品川区に校舎を構える「品川翔英中学校・高等学校」は、自主・創造・貢献という3つの校訓のもと、“学び続けるLEARNER”を育成することを教育目標として掲げています。
学び続けるLEARNERとは、あらゆることを自分ごととして捉え、自分を律しながら、そして愉しみながら行動できる人のことです。
同時に、他人の意見に耳を傾け、他人と協働しながら、批判的な思考力を持って新たな価値を創り出し、社会に貢献するよう尽力できる人のことをいいます。
また、LEARNERとして身につけてほしい7つの素養(愉しむ力、主体性、自律性、協働性、批判的思考力、創造力、貢献する力)を「品川翔英 GP*7」と呼び、卒業までに習得できるよう支援しているのが特徴です。
本校では、GP7の獲得(学び続けるLEARNERの育成)のために「自己調整学習」を実践し、基礎・基本となるコアカリキュラムと、学習者の関心・意欲に応じた多様なカリキュラムが選択できるような教育課程を編成しています。
(*GP=Graduation Policy)
生徒が担任を選ぶユニークな「メンター制」
ー品川翔英中学校・高等学校が採用している、ユニークな制度「メンター制」について教えてください。
村上:多くの学校の場合、クラスごとに決まった担任の先生がいる固定担任制がほとんどかと思いますが、担任の先生と上手くいくこともあれば、なかなか担任の先生と上手くいかず、1年間苦しい思いをしてしまうこともあるかと思います。
本校では、こうしたデメリットを解消するとともに、多くの先生と広く関わりを持ってもらいたいと学年担任制を導入しました。
この学年担任制は、多くの先生と広く関わりを持てる一方で、深い関係をつくりづらいといった面もあります。
そこで、生徒一人ひとりにもっと焦点を当てて、深く関われるメンターという存在が必要となり、多くの先生と関わることのできる学年担任制を残しつつ、生徒が担任の先生を選べる「メンター制」を創設することにしました。
メンターは、生徒が選ぶ伴走者です。教員は指導するのではなく、生徒の成長をサポートする位置づけですね。
固定担任制だとどうしても相性の問題が発生しますが、メンター制はオープンマインドに対話できたり相談ができたり、教員と話しやすいというメリットがあります。
メンターの選び方としては、4月と10月のタイミングで年に2度、第1希望から第3希望まで出すことが可能です。
先生1名あたり生徒40名以内に設定していて、規定人数を超過しないよう調整します。
また、メンターを選ぶ際に必要な、教員紹介シートは先生自身で作成し、生徒にアピールしてもらいます。
人柄や話しやすさ、相性、頑張りたい教科の先生など、生徒もきちんと考えてメンターを選んでいるようです。
こういった取り組みは珍しいかもしれませんが、当然のように生徒がいる環境は決して当たり前ではないことを先生にも伝えたいんですよ。
教員たち自身も“学び続けるLEARNER”なので、生徒の成長をしっかりとサポートできるよう、私たちも学び続けて生徒の前に立っていきたいと思っています。
ーメンターと生徒の関わりについて教えてください。
村上:メンターと生徒はさまざまな場面で関わりを持ちます。
本校の方針としては、とにかく生徒との対話の時間を持つことを大切にしたいと考えているので、あえて面談期間は設けていません。
生徒とは常に対話ができるようにしているため、校内では年中いろいろなところで面談している様子が見受けられます。
ただ、模試の前後は、しっかりした振り返りが必要だったり、理解できていない範囲の把握だったり、また今後取り組むべき課題なども重要なため、学習計画を立てるサポートの声かけはきちんとおこなっています。
ーほかに関わる場面があれば教えてください。
村上:本校では、一夜漬けからの脱却や、日々の学習の習慣づけを狙い、中学校や高校で一般的な年数回の定期考査を見直して、確認テストを実施しています。
2〜3週間おきにある確認テストは、スモールステップを踏んでもらうために学びを短期間で区切り、知識の定着を確認して次のステップへ進むので、生徒にとっても勉強しやすいと思います。
これにより、PDSサイクルを習慣化し、自己調整学習を習得することも狙いです。
自己調整学習は、予見(PLAN)・遂行(DO)・省察(SEE)という学習サイクルであり、計画や実行など、各段階で自ら振り返りながら軌道修正していくことで、生徒が自律的に学ぶ能力を身につけます。
また、勉強だけでなく、クラブ活動や行事など、すべてにおいて自己調整学習の考え方を教育活動に取り入れていくよう、サポートしています。こういったあらゆる取り組みにメンターの存在が重要になってくるのです。
ほかにも、それぞれの興味関心を広げるために、長期休暇中の講習「メンターウィーク」を実施しています。
生徒は夏休み前に担当のメンターと面談し、自分にあう最適な受講計画を立て、どれを選ぶかなどといった相談もメンターがおこなうことで、個別に最適な学習をすることができます。
メンターウィークの特徴はふたつあり、ひとつは無学年制ということ。さまざまな講座のなかから自分にあった講座を選ぶことが可能です。
たとえば、中学1年生から高校3年生までいるなか、中学生でも受験対策講座を選べたり、高校生が中学生の復習講座を取れたりすることがポイントになっています。
もうひとつの特徴は、スタディツアー(校外学習)を展開していることです。
学びというのは、教室だけでなく外にもたくさんあるので、校外に飛び出し、自分の目で見て、触れて、体験して、成長する機会を大切にしています。
品川という立地を活かして、博物館や科学館など、さまざまな施設に先生たちと一緒に出かけて学びの機会を得てもらいたく、自分の興味のある講座があったら申し込んでもらっています。
相談ごとは、必ずしもメンターだけではありません。学年担任制なので、進路についてはこの先生、普段の悩みごとはこの先生、というように、いろいろな先生に相談していいんですよ。
ともに挑戦しながら一緒につくる品川翔英を
ー最後に、読者の方へ一言メッセージをお願いします。
村上:本校には、中学校と高校あわせてネイティブの先生が9名在籍しています。
そのため、メンターをネイティブの先生から選ぶことも可能です。
たとえば、生徒がその日を前向きに取り組むことができるよう勇気づけをする時間「エンカレッジ タイム」も英語でおこなったり、Microsoft Teamsのチャットもすべて英語でやり取りしたり、英語を頑張りたい生徒にはとても勉強になると思います。
本校は、新しい教育活動に挑戦している学校です。
まだまだ新しい学校なので、自分でこんなことをやりたいとか、学校を一緒につくっていきたいという想いを持つ方をお待ちしています。
説明会や来年度募集の情報については、公式ホームページをご覧ください。
また、資料請求も承っておりますので、お気軽にお問い合せください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:品川翔英中学校・高等学校