シングルマザーや非正規で働いている女性、留学生のなかには、住宅が借りられずに困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「認定NPO法人 女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ」では、住宅の取得が困難な女性のための「六甲ウィメンズハウス」の完成を、2024年の春に予定しています。
今回は、「認定NPO法人 女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ」の代表理事である正井 禮子さんにお話を伺いました。
女性支援に関心がある方は、ぜひご覧ください。
「ここに住みたい」と思える住居づくり
ー本日はよろしくお願いいたします。まずは「六甲ウィメンズハウス」について、目的や具体的な活用方法などを教えてください。
正井 禮子さん(以下、正井):「六甲ウィメンズハウス」の目的は、シングルマザーや外国人、非正規で働いている女性など、住宅の取得が困難な女性たちに、「ここに住みたい」と思える住居を提供することです。
2012年にデンマークへ女性たちの住まいの視察に行ったことがあるのですが、部屋のなかに入ると、デザイナーズマンションかと思うくらいに綺麗だったんです。
食堂があって、子どもや母親のためのリビングもそれぞれあって、北欧の家具や部屋のレイアウトが素敵でした。
そのときに、「ここしか住めない」ではなくて「ここに住みたい」と思うような住居を、いつか作りたいと思いました。
その想いから、チラシを作り、企業に「遊休施設があれば私たちに貸していただけませんか」と、ずっと言い続けていたんです。
そうしたら、昨年、コープこうべさんから「30年くらい使っていない旧女子寮があり、近所には保育所も小学校もあって子育てにいい環境だから、一度見に来ませんか」と声をかけていただきました。
そこから、コープこうべの旧女子寮を改修して、六甲ウィメンズハウスができることになりました。
1階には、スーパーや医院があり、近くには保育所や小学校もあるので、子育てにはよい環境です。2階には、カフェや女性のための学習室、それから子どものためのプレイルームなども設置したいと思っています。
女性の支援に経験があるスタッフが常駐して、困難を抱えた女性に関しては自立に向けての支援をおこないます。
40戸と数には限りがありますが、できるだけさまざまな人に入居してもらいたいと思っています。
劣悪な環境で狭い部屋に子どもと暮らしていたりすると、お母さんもなかなか元気になれない、子どももなかなか安定しないところがあるんです。
安心して住める住居があって、初めて子どもも心身ともに健やかに成長することができますよね。
住居の提供だけでなく生活再建も支援したい
ー他社にはない貴団体ならではの強みについて教えてください。
正井:さまざまな困難を抱える女性や子どもの支援を30年近くおこなってきて、経験もあり行政や関係団体との連携があります。
また、国土交通省の「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」に応募して、採択されました。企業とNPOがタッグを組んでやることが、すごく画期的なことだと評価されたようです。
国土交通省の空き家対策の一つのなんですけれど、空き家だけではなく企業の休眠の施設はたくさんあると思うんです。それを社会貢献に提供する、いわゆる居住支援というのが、居住福祉の一つのあり方ではないでしょうか。
休眠の施設を社会貢献的な事業に使うことが、まだ日本ではあまり耳にしないので、六甲ウィメンズハウスがモデルとなり、今後各地に広がったらいいなと思います。
ー今まで活動してきたなかで、今後も活かしていきたい経験を教えてください。
正井:就労支援や子育て支援、学校への同行支援など、ずっと伴走型で生活再建を支援してきたので、住居の提供だけでなく、その後の就労などの生活再建も支援したいと思っています。
たとえば、シングルマザーだからこそ安定した仕事に就きたい、キャリアアップしたいという女性や、学校へ行きたい、資格を取りたい、高卒認定を受けて自分の職種を広げたいなど、さまざまな希望の女性がいます。
そのような女性たちに、無料で保育をつけて子どもと離れて勉強できる時間を作ったり、社会人のボランティアの人が無料で勉強を教えたりということをしています。
今までには、看護師や理学療法士などの資格を取った女性や、栄養士になった女性、高卒認定をとった女性もいます。
その方たちからは、「同じように学ぶ仲間がいて、応援してくれた人たちが周りにいて、自分は学びを続けることができた。」「コロナ禍でも仕事を辞めずにいられるのは、資格を取っていたから。」などの言葉をもらえて、すごく嬉しかったです。
また、ある小学生の女の子が、「母子家庭だから何でも諦めないといけないとずっと思っていたけど、お母さんが看護師の資格を取ったのを見て、諦めたら駄目だと思うようになった。」って言ってくれたんです。
それを聞いたときに、すごくよかったなと思いました。
お母さんが学んでいくことで、子どもたちも変わっていくんですよね。
そのために、学習室をつくること、シングルマザーのキャリアアップを支援するということはすごく大事なことで、そういう学びの場があちこちに出来たらよいなと思っています。
私たちが運営しているWACCA(わっか)では、シングルマザーの子どもを対象にした無料塾もあります。マンツーマンで教えてくれるので、子どもたちの成績がグングン伸びていて、高校に入って1番になった子も。
子どもやお母さんたちの学習支援は、とても大事ですね。
休眠施設の社会貢献事業が各地で広まるように
ー今後開催予定のイベントや告知などがあれば、教えてください。
正井:ウィメンズネットこうべは、今年で活動30周年を迎えます。
30周年の記念事業として、ジェンダー平等社会の実現を目指して、オンラインセミナーを無料で開催します。6月から毎月開催していて、10月も開催します!
無料でPeatixから申し込めるようになっています。オンラインなので、ぜひご参加ください!
また、六甲ウィメンズハウスとは別事業になりますが、コロナや物価高でお困りの女性を対象とした、女性による女性の為の相談会を神戸でおこなっています。
弁護士さんや司法書士さんなど10人の専門家がいて、無料ですべての相談がワンストップで受けられます。
それと同時に、ご寄付でいただいた食料品を無料でお渡しする相談会をおこなっていまして、大体160人〜170人くらいの方が一日で来場されるんです。そちらを10月、12月、2月もおこないますので、ぜひお越しください!
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いいたします。
正井:30周年記念事業として、長年の夢であった、困難を抱える女性と子どものための「六甲ウィメンズハウス」を作ります。
そのための「居住支援基金」も創設しました。
目標額5000万ですので、応援してくださる団体や企業なども探しております。つきましては、公式ホームページをご覧ください。
企業の休眠施設を社会貢献事業に使うのは、海外では広がりつつあるので、日本でも各地に広がっていけばよいと願っています。
皆さまのご支援と、SNSなどで広げていただけるとすごく嬉しいです!
ー本日は、貴重なお話をありがとうございました!
取材協力:認定NPO法人 女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ