赤いベレー帽をかぶり、白いTシャツ姿で活動する人たちを見かけたことがある方もいるのではないでしょうか。
全国に20支部をもち、地域の防犯パトロール活動を展開する「日本ガーディアン・エンジェルス」のメンバーの方々です。今回は理事長の小田 啓二さんにお話を伺いました。
パトロール活動を通して培われた「子どもたちが自らの身を守るための安全対策」も必読です!
「割れ窓理論」に基づいて地域の防犯をサポート
ー本日はよろしくお願いいたします。 はじめに、「日本ガーディアン・エンジェルス」がどのような団体なのかお聞かせください。
小田 啓二さん(以下、小田):私たちは、地域の安全活動やまちづくりの推進を図る活動、子どもの健全育成を図る活動をおこなう団体です。
たとえば防犯協会や商店会、町内会の皆さんなどと合同での活動、街の催し物のサポートといった活動にも取り組んでおり、PTAや教育機関と連携した安全教室も開催しています。
「ガーディアン・エンジェルス」は、日本語に直訳すると「守護天使」。地域の皆さんや、子どもたちが安全に暮らすサポートをするという趣旨で名付けられました。
犯罪を予防する理論にもなっている「割れ窓理論」をご存知でしょうか。
1枚の割れた窓ガラスを放置すると、割られる窓ガラスが増え、その建物全体が荒廃し、いずれ街全体が荒れてしまうという理論です。
ひとつの無秩序を放置することで、地域社会の秩序維持機能が弱まり、犯罪は増加するというもので、小さな芽のうちに摘むことが大切だということを説いています。
つまり、きれいな街には非行や犯罪が寄り付きにくく、逆に汚い街には非行や犯罪が寄ってきやすいということになります。
汚ない街では、地域の皆さん、ご家庭、そしていろいろなコミュニティ間でのコミュニケーションが少なく、地域への関心が低いことが多く、そういった環境では治安が悪化しやすいのです。
私たちの活動は、もともとアメリカで始まったもので、現在もニューヨークに本部がありますが、1970年代当時のニューヨークも例外ではありませんでした。
それを何とか変えようと、ゴミ拾いから始まったのがガーディアン・エンジェルスです。
そうした清掃活動をおこなっていくなかで、乗ったら襲われるとまでいわれた、悪名高きニューヨークの地下鉄もきれいにして欲しいといった声が市民からあがりました。
それを受けて、13人のニューヨークに住む若者が地下鉄のパトロールを始めました。そして、清掃活動から地下鉄のパトロール、それから公園や学校、街頭のパトロールへと発展。
日本では、1995年にアジアとしては初めてとなる東京支部が設立され、今にいたります。
声掛けとあいさつで安全な地域づくりに貢献
ー防犯パトロールと声掛けの重要性について教えてください。
小田:きれいな街には非行や犯罪が寄り付きにくいように、あいさつが元気よく交わされている地域でも犯罪が少ないというのは、日本国内でも立証されています。
なぜならば、あいさつがしっかりと交わされている地域では、住民の皆さん同士のコミュニケーションが活発に取られていることが多いからです。
都内のあるエリアにおいても、あいさつ運動をやることによって非行が激減しました。
地域のPTAの方々が、子どもの登下校時間にあいさつをしたり、通学路で地域の大人たちが声を掛けたりすると、子どもたちが安心して登下校できるだけではなく、子どもの連れ去り事件なども少なくなります。
声掛けは、窃盗犯罪から自分の家や財産を守ることにもつながりますし、子どもたちの健全な育成にもつながるでしょう。
そのため、街ですれ違う人、タバコのマナーを守らずに吸っている人、信号無視している人、自転車の2人乗りをしている人など、私たちはどんな方々に対しても声掛けをしています。
声掛けをするうえで注意していることは2点。1点目は「上から目線で高圧的に注意をしないこと」。
トラブルの元になることは私たちも経験済みですので、できるだけ低姿勢で相手を尊重してコミュニケーションを取るようにしています。
2点目は「耳を傾けるということ」。
声掛けというと、野球のピッチャーがボールを投げるイメージが湧くと思うのですが、自分たちがどんなボールを投げるかよりも、相手の表情を伺い、相手からのどんなボールでも受け取ることも大事だと考えています。
この2点は常に心掛けていますし、メンバーにも必ず伝えていることです。
ー他の団体にはない「日本ガーディアン・エンジェルス」ならではの強みはどういった点でしょうか。
小田:私たちと同様の活動をおこなう団体は、国内に約4万5千団体あると言われています。そのなかでも、日本ガーディアン・エンジェルスはNPO法人として第1号の認証を受けた団体です。
NPO法人としてしっかりとした模範を示していかなくてはいけないと考え、活動しています。
私たちは世界13か国で、同じ衣装、同じコンセプトで活動をおこなっています。国境をまたいで、その国やその都市に合わせた防犯活動をしている団体はありません。
日本よりも危機感をもって活動している支部からの情報や、諸外国・他都市においての成功例をいち早く共有しています。
こうした情報に基づいて、半歩早い対応策を実行できていることも強みだと思いますね。
常に周囲をよく見ることで犯罪を抑止
ー今後開催予定のイベントや、寄付などの告知があればお願いいたします。
小田:もし、「日本ガーディアン・エンジェルス」の活動に興味を持ってくださった方は、16歳以上の方ならどなたでも会員になれますよ。
性別も国籍も問いません。ぜひ地元での活動に参加してください。
また、8歳から15歳の小中学生を対象とした「ジュニア・エンジェルス」では、地域のお祭りのサポートや、子ども向けの安全教室、インターネット安全教室“サイバー・エンジェルス”など幅広く参加していただけます。
私たちはNPO法人ですので、活動資金の約3割は寄付金で賄っています。
個人、団体を問わず、活動に賛同いただける方は、ホームページにも詳細を掲載していますので、ご寄付をいただけると大変ありがたいです。
ー最後に読者の方へ向けてのメッセージをいただけますでしょうか。
小田:犯罪者は人と時間と場所を選んで犯行に及びます。
とにかく、常に周囲に目を配り、後ろを振り返ることを心掛けてください。この子、この女性は気をつけているなという印象を相手にアピールできれば、そういう人は狙われにくいといわれています。
子どもの場合は、普段はランドセルや首からぶら下げている防犯ブザーを手にもつだけでも違いますよ。
それから、子どもや女性が連れ去られたり、性被害に遭ったりするケースで車が関連する場合は、ほとんどが停まっている車によるものです。
不自然に停まっている車があれば、その車種、色、ナンバーに関心を寄せることが大事です。
また、ちょっとおかしいな、変だな、怖いなと感じたときには、その人、あるいは物、事柄からできるだけ離れること。
「知らない人についていかない」というのは、保護者は誰でも教えているのですが「こういうときはどうする?」という質問の仕方では教えていないんですね。
たとえば、人や停まった車のなかから、「駅はどこですか」と尋ねられると、子どもは「人には親切にしよう」とも教わっているので、「この人は困っているのかな」と近寄ってしまいます。
そのような場合でも、原則知らない人とは、自分の身を守るためにも、必ず「距離」を保つことを教えてください。
また、日本には交番の数よりも多い4万店舗以上、コンビニエンスストアがあるといわれていますが、「困っています。付きまとわれています」と逃げ込めば、その人を守るように従業員の皆さんは教育されているそうです。
実際に女性や子どもが逃げ込んだという報告が毎年のようにあります。
自宅から学校や職場の導線上に、何かあった時に駆け込めるよう、コンビニエンスストアがどこにあるのか確認しておくことも役立つでしょう。
ー本日は貴重なお話をいただきありがとうございました。
■取材協力:特定非営利活動法人日本ガーディアン・エンジェルス