歌手としての活躍のみならず、バラエティなどお茶の間でも大活躍の青山テルマさん、現在放送中のTBS系ドラマ『ユニコーンに乗って』では、演技に初挑戦されています。
青山さんは上智大学を卒業していますが、進学後の1年目に「ここにいるよ」の大ヒットによって一躍時の人となったため、学生生活は「大変だった思い出しかない」と語るほど。歌手としての地位を築いたことでさまざまな選択肢があったにも関わらず、大学に通い続けたその理由、そしてそれによって得たものとはなんだったのでしょうか。
青山さんがなぜポジティブな一面をテレビの前の私たちに届けてくれているのか。その理由が親しみやすい口調のなかにある誠実かつ愛情あふれる言葉の端々に秘められていました。
「あれを乗り越えたんだから何も怖くない」超多忙な大学生活を回顧
―青山テルマさんは、上智大学出身ですよね。ご自身の著書『人生ブルドーザー』で猛勉強をしたと語っていらっしゃいます。
青山テルマ:高校生のときですね、でも、勉強大嫌いです(笑)ただ、大人になって「もうちょっとちゃんと勉強しておけばよかったな」って思う瞬間がありますね。
勉強って興味あるものだったら楽しいけれど、決められているじゃないですか、これを習うって。人から決められたことを勉強する、それは嫌いで当たり前だと私は思っていて。「これって人生に必要あるの?」って私もずっと思っていましたね。
だけど、学校へ行くのって勉強だけじゃないですよね。先生の話を聞いて集中するとか、人との関わりとか、何かを我慢する、それらは人生においてすごく大切なこと。勉強がすべてだとは、まったく思いませんけれど、勉強する過程っていうのがすごく大事だと思っています。
―「勉強が嫌い」というなか大学に進学された理由はなんでしょうか。
青山:高校を卒業して本当は「大学に行かずに歌1本で」と思っていたのですが、高校がすごく厳しくて「大学に行かないんだったら高校もやめちゃえば」って先生に言われ、それに奮起したんです。それが猛勉強のモチベーションではありました。
でもそれにプラス、おじいちゃんおばあちゃんの「大学に行ってほしいな」っていう一言も大きかったですね。
―その一言はプレッシャーになりませんでしたか?
青山:ならないですね。ここまで育ててきてもらえたし「そうだよね」って。そのころはまだデビューできていないときだったので、ずっとこれまで支えてきてくれたことに本当に感謝していて、私もおじいちゃんおばあちゃん孝行したかったんです。それに上智大学はいい大学なので、田舎で「うちの孫、上智大学なんだよね」って喜んで話のネタにしてくれたら嬉しいなって。
そういう意味では別にプレッシャーというよりも喜ばせたいなという気持ちのほうが大きかったですね、純粋に。
大学に行こうと決める前は「勉強なんか…」って気持ちもあったし、勉強でわからないところがあっても先生に聞くのはちょっと恥ずかしかったり面倒だなって思ったりしていたけれど、目標が決まってからは、私は学校が終わってから疑問に思うことを先生に「ここどういうこと?」とか「これってどういうふうに勉強したら頭に入るかな」とか、わかりやすく説明してもらったりしていました。
―一方で、大学在学中は「ここにいるよ」の大ヒットで両立どころではなかったのでは?
青山:正直、“大学生”としては楽しめなかったですね。1年目でデビューしてヒットに恵まれたので。大学に入学したらサークルに入って飲み会行って合コン行く、みたいなそういう自分を描いていたんですけど、それがまったくできなかったので。じゃあ純粋に「楽しかったか」と言われたら「大変だった」のほうが私は大きいです。
しかも早く卒業したくて、フル単位で授業を取っていたんです。だから、一番忙しかったときは、朝に仕事を入れて大学へ行き、昼間に音楽番組のリハーサルへ行ってまた大学に戻り、夜は音楽番組の本番。そこからヘリコプターに乗って大阪に行ってライブをして、始発の新幹線で戻ってテスト、みたいな…。
―そんなに大変な思いをして、それでも大学に通い続けた理由はなんですか?
青山:私は高校から自分で自分の学費を払っていたので、「ここで学校を辞めたら勿体ない」っていうのが一番にありました。それに曲や歌詞に「がんばろう」とか、メディアで「こうやって勉強したほうがいいよ」とか、「学校行ったほうがいいよ」とかって語った言葉の重みがなくなってしまう。「自分はもう歌あるからいいや」ってなって、自分の言葉に重みがなくなり、説得力がなくなるのが嫌だったんです。
卒業に5年くらいかかりましたけど、時間がかかっても卒業したことで自分が決めたことをあきらめず達成できたっていう、自分の成長と、誇りが生まれました。
もちろん大学がすべてじゃないと思うし、学業がすべてでは絶対にないです。でも、自分のなかでは「あれを乗り越えたんだから何も怖くない」っていうのが正直あるんですよ。だから、あのときの大変さは人生で、いまだに1位ですね。あの経験があったから、いろんなバランスを自分でとれるようになったので。そういう意味では私は大学に行ってよかったですね、私の経験上。
でも、好きなことを極めることが一番。好きなことが大学にあるんだったらぜったいに行ったほうがいいし、もし好きなことが大学をスキップしたらもっと極められる、4年間をそれに費やせるっていうんだったら絶対そっち!
ただ続けたらそこにご褒美があることもあると思う。続けることがすべてではないし、諦めることもときにはそっちのほうがもっと勇気が必要なことだったりもする。でも、どんな選択肢でも自分が決めたことはやり遂げるとそこには成長が生まれると思います。
「自分の身に起こること、自分の周りにいる人たちは全部自分の鏡」
―メディアなどで拝見していると、とても交友関係が広いイメージがあります。人と関わるとき何か意識していることなどありますか。
青山:私は昔からみんなと会うのが大好きで、学校も1日も休まないし、休みたくないし、そんな感じでした。インターナショナルスクールに通っていたのですが、いろいろな人種の人がいるので、いじめもないし、自分が自然体でいられることが楽しかったですね。
中学校はアメリカに行っていたので、差別とか乗り越えなきゃいけないこともたくさんあったんですけど。それはそれで強くなれたし。学校も楽しかったですね。
いろいろな経験から言えることは、相手のことを「決めつけないこと」が大切だなと思います。きっと「あの子こうだよね」とかって簡単に決めつけてしまうときってありますよね。私も「あの子ぜったい意地悪だ」と思っていた子とも、クラス替えで同じクラスになって話したら「めっちゃいいやつじゃん」みたいな。そういうことって多々あるんですよ。
自分の価値観だけで相手を決めつけるって、みんな1回はあると思う。でもそれってすごく損している部分があって。「もしかして同じような家庭環境かもしれない」とか。「同じような悩みを持っているかもしれない」とか。「同じもので笑い合えるかもしれない」っていう、“もしかして"を持っておくのってとっても大事。
―人への想像力が大切ってことですね。
青山:もちろん嫌なことをされたら嫌だけど。あまり人のことを簡単に嫌わないこと。合わなかったら合わなかったで「なんかウケるな~」ってちょっと軽い感じでとらえることも大事だし。
でも、友だちをつくんなきゃいけないわけじゃないからね。だからこそ、「気が合うな」とか「喋ってみたいな」と思う人が現われたら、相手を待つんじゃなくて自分から喋ること。それはすごく大事だと思います。
―友だちがいてよかったなと実感するときってどんなときですか。
青山:日々です。どんなにCDが売れて、ドラマに出て、はたから見たらすごくきらびやかに見えたとしても、仕事とかお金とかそういうのよりも絶対的に仲間が財産なので。それを日々思いますし、それで心が豊かになります。もちろんそれ以外でも、いろんなことで豊かになる場面もたくさんあるんですけど。
自分が落ち込んでいるときとかに横を見て、「大丈夫だよ」って言ってくれる人がいるだけで強くなれるし。だから、どんな現場でも「テルマといるときの自分が好き」って思ってもらえるように、友だちを大事にしているんです。お互いにそう思えたら、どんなときでも損得じゃない関係でいられるから。
一番大事にしないといけないんじゃないかな。家族とか友だちとか。仕事もお金もいろいろ大事だし、学校も大事だけど、大事にするべきものは友だちや仲間ですよね。
もちろん裏切られることもあるけど、それは勉強だから。それで人を嫌いになるよりは、「そういう時期だったんだね」って自分に言い聞かせる。自分もきっと気づかないうちに傷つけてしまう瞬間ってもしかしたらあるかもしれないから。一方的じゃなくて相手のことを思いやる気持ちも大事だなと思います。
―青山さんの経験に裏打ちされた言葉から、優しさが伝わってきます。
青山:いや、全然。でも、上も見ているしどん底も見ているから。そういう意味ではハートは強いかな。だけど、ただハートが強いだけじゃだめだから。人に対して優しくしていきたい。
自分が知っている知識だったりっていうのも全部シェアしたいって思います。それにどんな人たちからも教わることがたくさんある。1年前くらいだけれど「プデュ」(PRODUCE 101 JAPAN SEASON2)というオーディション番組で、トレーナーをさせていただいたときも、「デビューしたい」っていう気持ちでぶつかってきてくれている子たちが必死になれば必死になるほど、教わることがたくさんありました。私もデビュー前このぐらいすごかったなみたいな。あらためて、ああやっぱこの気持ち大事だなって。
彼らは一番センシティブな時期だったから。あのときは言葉にすごく気を付けましたね。そこで雑に話して違う方向に捉えてしまわないように。中途半端な気持ちでは絶対ぶつかれないと思って向き合っていました。
自分の身に起こること、自分の周りにいる人たち、全部自分の鏡だから、自分が100で行ったら100で来てくれるし、そこをすごく大事にしている。もちろん自分もやっぱ人間なんで、365日いい日ではないですけど…けど「いい日にしよう」っていう努力はしてるかな。
「ドラマを見て『失敗もいつかは正解になる』って思ってもらえたら嬉しい」
―今はドラマで演技にもチャレンジされていますね。スタートアップ企業のエンジニア・夏井恵実役を演じていますがご自身の新たな一面を見ましたか。
青山:いつもはソロでアーティスト活動をしているので、数か月の間こんなに大勢の人と毎日会うってないんです。ドラマは現場のチームとの密着度がはんぱないんで。グループに入ったような感覚は、初めて。
最初はどうなるんだろうって自分でも思っていたんですけど、楽しめているし、新しいことに対して楽しめている自分が好きだなと思いました。
―歌手としてはご自身の経験を語ることが多いと思いますが、お芝居は別の誰かになりますよね。そのあたりはいかがですか?
青山:役を頼まれてその役を演じるんじゃなくて、その人になるっていうプロセスってものすごく大変で、普通に自分の言葉で自分を表現するよりもはるかに技術が必要なものだと実感しました。
今回俳優さんと長く同じ現場になって、俳優という仕事をより一層尊敬するようになったし。とにかく俳優さんってすごいです。
バラエティやCM、プロデュース、ラジオ、アーティスト、今はこうやって演技とか…いろいろなことをやらせていただいて、その都度その都度尊敬しちゃう。
どのジャンルの人も全部見てきていますが、自分で言うのもなんですがあんまりそういう人っていないので、だからすごく恵まれているなと思います。そしてそれによって人に対して優しくもなれるし、感謝できるようになるから。いろいろな人と出会うことで感謝が積もりますね。
―ドラマは9月6日(火)にいよいよ最終回ですね!
青山:仕事でもいろいろあって、恋愛模様も描かれているなかで、このドラマが誰かの人生のヒントだったり、何かのきっかけになればいいなと思って私は演じてきました。すごく背中を押されるようなドラマですよね。
このドラマのキーワードが「チャレンジ」なんですが、仕事も恋愛もチャレンジ、何事もトライ&エラーだし。失敗もいつかは正解になる場合もあるから。ドラマを見てそう思ってもらえたら嬉しいです。
火曜ドラマ『ユニコーンに乗って』TBS系 火曜午後10時
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取材協力:青山テルマ
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