お子さんが生まれてから、いつから習い事を始めればよいのか、どんな風に育てたらよいのか、さまざまな悩みを抱えている方は少なくないでしょう。
今回は、埼玉県草加市を拠点に活動する「石川教育研究所」を取材!
代表を務める石川 幸夫さんは、幼児教育の第一人者としても知られ、メディアでも活躍されている方。
教育、子育てに関して少しでも悩みがあるという方は、ぜひご一読ください!
「幼児教育」をスタンダードなものにしたい
―本日はよろしくお願いいたします。まず、「石川教育研究所」がどのような団体なのか、お聞かせください。
石川 幸夫さん(石川):私はもともと中学生を指導していたことがあります。
いろいろな問題を抱える中学生が、躓いてしまったのはいつからだろうかと追求していったときに、小学生からでは遅すぎると実感したんです。
そこで、幼児、小学生低学年を中心とした「幼児教育」に特化した教育を広めていきたいと、1997年に石川教育研究所を設立しました。
私たち大人も含めて、はじめから落ちこぼれはいないということを考えられれば、大人的な発想で、義務教育は6歳からというふうに考える必要はないでしょう。
子どもの成長、発達を考えれば、親子でしっかりとしたコミュニケーションを取ることが重要ですし、そこからどんどん子どもに備わってくるさまざまな知的好奇心に対して、保護者だけではなかなか対応できないこともあるかと思います。
そう考えると、だいたい2、3歳から私たちのようなプロの教育者が携わるべきだと考えていますね。
そしてこのような「幼児教育」がスタンダードにならなければいけない。そういう理念を持ってこの教育に取り組んでいます。
当研究上の活動の主な柱は3つです。
1つ目は、幼稚園、保育園、幼児教室、小学校、中学校、高校、塾の先生など、実際に教育へ携わっている方に向けての「研修」。これまでに延べ6万人の方に研修をおこないました。
2つ目が「教材の研究・開発」です。一般的に幼児向けの教材というのは、実際には多くありません。石川教育研究所では、実際に子どもたちが使う幼児教材というものも手掛けています。
3つ目が「教室運営」です。研究所併設のラボスクールの運営です。
幼児から中学生まで使える教材の開発
―開発されている教材についても、教えてください。
石川:小学生向けの教材ですと、たとえば漢字学習練習とか計算練習といったものがすぐに思い浮かぶと思います。
ところが、幼児向けには何があるか尋ねると、大半の方が即答できません。
私はもともと、幼児教育の先駆者である水野茂一先生、教室名でご存じの方が多いかと思いますが七田眞先生とともに、幼児教育を広めてきました。
そのなかで、「文字・数・知恵」という領域に特化した教材の必要性を感じたのです。
たとえば、文字で言えば、文字の練習ではなく、線の練習という本当に基本のところから入ります。
そして、私の専門が数学ということもあって、一番得意とするものに数の教材「数タイル」があります。
数タイルは、もともと遠山啓先生が考案された水道方式に基づいてつくりました。
今、小学校でも簡単な足し算の計算に指を使う子が大変多くいます。でも、指を使ってしまうと、引き算、掛け算になったときに、指の数が足りなくなってしまいます。
この数タイルは幼児から使用できて。これを使って比較すれば簡単に差が求められるので、引き算もできるし、加えれば足し算もできます。
そういったことを何回かやると、頭のなかで計算ができるようになり、指を使わなくなりますよ。
それから先日、ある塾の先生方にやってもらったのですが、たとえば「2+4x3」の答えを聞きました。
答えは「14」ですね。でも、「なぜ、掛け算が先なんですか?」と尋ねたときに、答えられた先生はほとんどいません。
そう習ったから…としか答えられません。
この数タイルを見てもらえれば、なぜ掛け算が先なのかわかっていただけるのではないでしょうか?
面積の指導もまったく同じです。たとえば、12×12は、12のタイルを12個並べた図でつくれば、すぐ144という数がタイル上で見えてきます。
突き詰めていくと、因数分解にも繋がっていきます。だから、このタイルのように、子どもたちが目で見て、確認できるものが必要ではないかと感じます。
幼児に教えながら、なぜ小学生や中学生ではそういった指導をやらないのだろうか。
そういったことが、子どもたちの算数嫌い、数学嫌いに繋がっている気がして、数タイルの普及に努めています。
ーフラッシュカードについては如何でしょうか?
石川:子どもたちに必要な5つの技能は、「見る」「聞く」「読む」「書く」「話す」です。
これらは皆さんが、当たり前だと捉えるものばかりです。
ところが、「見る」に関していえば、今授業中に先生をしっかり見て、しっかりと先生の話を聞く生徒がどれだけいるでしょうか?
近年「小1プロブレム」が話題になっています。では、小学校や中学校を通じて「見る」ということ、「聞く」ということがどのように指導されているのかわかりますか?
「見なさい」「聞きなさい」といった指示命令ばかりだったのではないでしょうか?
そうではなく、どうしたら見ることを意識して、子どもたちに学習させることができるのか工夫する必要があるではないでしょうか。
たとえば、幼児に四字熟語を見せても読めませんよね。だからどうするか。先生が、“温故知新”と発音するのを、しっかり見ながら聞かせます。
それを繰り返すことで、見て答えられるようになります。「フラッシュカード」は、見ることと聞くことを意識させることができる教材と言えるでしょう。
これを記憶させるということを念頭には置きません。言い方を換えれば勝手に覚えてくれる、だから指導に威圧感がなく、とても子どもが受け入れやすい教材だと思いますね。
人間が集中できる時間は大変少ないんです。どれくらいだと思いますか?
わずか15秒です。
ですので、フラッシュカード学習も1つのバリエーションが15秒前後で終わるような枚数でやりますね。
こういった人の生体リズムや人が集中できる時間を意識した学習指導が、今求められているのかなと感じています。
保護者が子どものためにするべきこととは?
ー今後開催予定のイベントなどがあれば教えてください。
石川:どうしても先生向けの研修が多く、あまり一般の方向けのものはないのですが、7月31日にNPO法人フィールホーム主催の「子育てHOT LIVE」に出演します。
詳細はホームページをご覧ください。
―最後に読者の方へ向けてのメッセージをお願いいたします。
石川:長年多くの子どもたちと接して感じることですが、子どもというのは、いろいろなことを親に話したがっています。
ところが、意外に親はそれを聞いてくれていないんですね…。どうぞ、子どもの話を聞いてあげてください。
幼いうちからお子さんの話を聞いてあげる、それで子どもが何を考えているのかを親が受け止めてあげるだけで、子どもの気持ちがすごく安らぐんですね。安定してきます。
それはその先の思春期、それから反抗期といったところでも顕著になるでしょう。
また、お子さんの話を聞いてあげる、たったこれだけで、子どもが人の話を聞ける人に育ってくれます。
一方的に親の意見だけ、色々指示だ命令だっていうことだけを聞いている子は人の話を聞きたがりません。
ところが親がしっかり聞いてくれる、そういう環境で育った子どもはしっかり人の話を聞いてくれます。子どもたちは模倣のプロです。
やはり、これからコミュニケーションが重要になる時代ですから、そういう意味でもお子さんの話を聞いてあげて欲しいなと思いますね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:石川教育研究所