子どもの成長を可視化して、家庭とスクールで共有できる。そんなコミュニケーションツールがあったら便利だと思いませんか。
今回は、子どもの成長をサポートするオンラインコミュニティ「ストーリーパーク」を取材。普及を進める株式会社グローバルパートナーズのコンサルタント 永易 江麻さんにお話を伺いました。
ストーリーパークは、子どもの興味関心や発達の過程を知ることにつながり、結果としてさらなる学びを促すことにもなるそう。
子どもの成長を継続的に記録したい、子どもの可能性を広げたいと考える保護者の方は、ぜひご一読ください。
ニュージーランドに学ぶ “現代日本に求めたい評価方針”
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、株式会社グローバルパートナーズの活動や概要について教えてください。
永易 江麻さん(以下、永易):株式会社グローバルパートナーズは、外国人教師の紹介や派遣、学校教育のグローバル化支援をおこなっている会社です。
まずは私たちのサービス「ストーリーパーク」に大きくかかわるラーニングストーリーについて、解説させてください。
ラーニングストーリーとは、ニュージーランドで開発された子どもの評価方法です。
具体的には、子どもが遊びや活動からどのような学びを得たのかを、言葉、写真、動画などを用いて物語形式で記録するといったものです。
その名前も方法も、日本ではあまり馴染みがないかもしれません。
しかしニュージーランドでは、日本でいうところの学習指導要領や保育所保育指針などにあたる国が定めたカリキュラムのなかにラーニングストーリーがあり、現地ではとてもポピュラーなものなのです。
ニュージーランドのカリキュラム名は「テ・ファーリキ(Te Whariki)」といいます。これはマオリ語で、“編みもの”を表す言葉です。
このカリキュラム名は、カリキュラムを構成する4つの原理と5つの要素を糸として編み込んだイメージからきています。
「エンパワーメント」「ホリスティックな発達」「家族とコミュニティ」「関係性」といった4つの原理。さらに「ウェルビーイング(心身の健康)」「帰属感」「貢献」「コミュニケーション」「探究」といった5つの要素が編み込まれています。
ニュージーランドではこれら4つの原理で子どもの学びを考え、5つの要素で発達を捉えようというのが、保育方針の主軸にあるのです。
しかしながら、ウェルビーイングやコミュニケーションする力がどれほど成長しているのかを評価するのに、どの要素も目に見えるものではないので、数字に置き換えたりチェックリストをつくったりするのは難しいでしょう。
そこで活用できるのが、ラーニングストーリーなのです。
ラーニングストーリーには、今に至るまで子どもがどのように成長してきたのかを書き記すことができます。
そして“みんなで育てていく”という考えが強いニュージーランド発ということもあり、ラーニングストーリーは、親御さんはもちろん、子どもの進学先の先生やときには親戚にも共有されているそうです。
たとえば先生が、ある子の過去のラーニングストーリーを見ることで、「この子は電車が好きなのね。それじゃあ電車に関係する話や活動を用意しておこうかな」と、学びを発展させることにも役立っています。
このように、先生同士の話し合いや、先生と子ども、または先生と親御さんの関係性強化にもつながるんです。
また、ニュージーランドの保育方針の根本には、“子どもたちは有能な学び手である”という考えがあります。
だからこそ、できないことを探すマイナスな評価よりも、ラーニングストーリーで学びの発展というプラスの評価に力を入れているのです。
私たちは、こうしたニュージーランドの保育方針がこれからの日本の幼児教育や保育を支えると考え、ラーニングストーリーをデジタル化した「ストーリーパーク」の普及に努めています。
ちなみに、ストーリーパークがリリースされたのは10年ほど前ですが、ニュージーランドでは、乳幼児教育施設(自宅型サービス除く)の半分以上ですでに導入されているようです。
※テ・ファーリキのカリキュラムフレームワークの図。引用:https://tewhariki.tki.org.nz/
子どもの成長を共有するデジタル・ポートフォリオ
ー「ストーリーパーク」でできることを詳しく教えてください。
永易:オンラインコミュニティでもあるストーリーパークは、誰でも気軽にライフログとして活用していただけます。
使い方としては、写真や動画と一緒にコメントを載せるやり方で、子どもの学びの姿を家族や先生とリアルタイムで共有することが可能です。
教育者側が子どものために活動記録をつくるのは、すでに幼稚園や保育者などで、よくおこなわれています。
でもストーリーパークの場合は、教育者だけでなく親御さんも、簡単にログをまとめられるようになっているんです。
しかも無期限・無制限の記録としてずっと使い続けることができるので、それこそ生まれた瞬間からログを残して、入園先や入学先の先生に共有して…というようにずっと引き継いでいけます。
また投稿内容の公開設定は、投稿ごとに設定可能です。
自分だけ、家族内だけ、先生に共有など、設定範囲もさまざま用意されているので、ご安心ください。
次に、ラーニングストーリーの主軸でもあるアセスメント。こうした子どもの評価に「ストーリーパーク」は役立ちます。
ラーニングストーリーは形成的評価であるといわれます。つまり学びの結果ではなく、その過程の評価です。
たとえば小さなお子さんで、ある日「ままごとのおたまで鍋を叩いていた」ということがあり、また別の日に「ままごとのおたまでドアや壁を叩いていた」という場面を見たとします。
それは、もしかしたら「音への興味関心」ということで学びが発展しているとも捉えられます。
大人からしたら些細なことであり、少ししたら忘れてしまうようなものかもしれません。
けれどもそういったエピソードが重なって子どもは成長していくからこそ、ラーニングストーリーとして残すことはとても大切なのだと思います。
ラーニングストーリーから子どもの成長を振り返ることは、思い出を懐かしむだけでなく、子どもの個性や興味関心を見取ることにつながります。
それは先にもお話したとおり、その子にあった学習への発展にもつなげられるでしょう。
このようにストーリーパークは、ただのコミュニケーションツールに留まりません。
先生方との連携を取りやすくし、子どもへの肯定的な評価と最適な学びの環境を得ることまでサポートしてくれるのです。
さらに、親や先生がきちんと見て、評価をしてくれるということで子どもたちの安心感・自己肯定感を育むことに貢献します。
そのほか、園だよりなどの連絡・おしらせ機能もついています。
もともと母親かつ教育者でもある開発メンバーの家族の声から生まれたサービスなので、今も現場の声に応えて精力的にアップデートしているのもポイントですね。
ちなみにご家族だけでの利用であれば、無料でご利用いただけます。
園や学校と連携される場合には、児童ひとりあたり月額100円で、10名から利用可能です。
少人数グループでも使えるほか、WEB上で登録すればすぐに利用できるので、ぜひ周りの方とご利用いただければと思います。
有料版の導入にあたっての不安やわからない点があれば、サポート窓口までお気軽にご相談ください。
ラーニングストーリーで子どもへの理解を深めて…
ー今後のイベント開催予定や、活動の展開について教えてください。
永易:不定期開催のセミナーのほか、毎年1、2回の頻度でラーニングストーリーの体験ワークショップを実施していて、今年も秋ごろに開催予定です。
内容としては、実際に子どもの様子を動画と写真で見ながらラーニングストーリーを書いてもらい、それを参加者みんなで見て、話し合っていく会を企画しています。
詳細は公式ホームページやInstagram、FacebookなどのSNSにて公開しますので、ぜひフォローをお願いします。
また、私たちはラーニングストーリーをもっと多くの方に広めたいと考えているため、同じ気持ちを持った大学生や社会人のみなさんとコミュニティをつくりたいと考えています。
現在、そのためのインターンシップを募集しているので、ぜひ興味のある方はこちらにもご参加いただければ嬉しいです。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
永易:ラーニングストーリーという言葉を聞いて、聞き馴染みのなさから、面倒そうだと思われる方も多いかもしれません。
しかし「ストーリーパーク」であれば、おうちで簡単に無料で始められます。
なぜラーニングストーリーをするべきか。それは子どものことを知るためです。
もちろん親御さんはみなさん、我が子のことをとても知っている、よき理解者だと思います。
でもたとえば、「子どもがほかの子のおもちゃを奪った」といったことがあったとき、意地悪したのか、(取られて)取り返したのか、はたまた使い方を教えようとしたのか、その行動の意図を理解するのは簡単ではありません。
もしかしたら意地悪に見えた行動の裏に、実は子どもたちなりの複雑な気持ちがあるかもしれないのです。
そういったさまざまな可能性に気づくきっかけになるのが、ラーニングストーリーというツールだと私たちは考えています。
子どものことを多様な視点から見て、深く知りたいと考えているのであれば、ぜひ気軽にストーリーパークを始めてみてほしいですね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:株式会社グローバルパートナーズ