2020年度に小学校で「新学習指導要領」(平成29・30・31年改訂学習指導要領)が全面的に実施され、2年が経ちました。(中学校は2021年度、高校では2022年度から開始)
新学習指導要領では、3つの柱「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力など」「学びに向かう力、人間性など」から「資質・能力」を総合的にバランスよく育んでいくことを目指し、プログラミング教育の導入や外国語教育の充実などが図られています。
「Ameba塾探し」では、小学生の保護者501人を対象に「新学習指導要領」についてアンケート調査を実施しました。
保護者が新しい教育をどのように感じているのか聞いたところ、いずれの項目でも6割以上の保護者が、その教育効果に期待していることが判明。その一方で格差や評価に対する不安の声も上がっています。
※本アンケートは2021年度時点での小学校1年生から小学校6年生の保護者を対象としています。
約8割が移行を知るも、内容の認知は1割に満たず…
まずは、「新学習指導要領」についての認知度を調査しました。
アンケートの結果から、「移行を知っていて、内容も理解している」(6.4%)、「移行を知っていて、内容もなんとなく理解している」(33.5%)、「移行されたことは知っている」(38.9%)を合わせて約8割の保護者が、 新学習指導要領への移行を知っていることがわかりました。
しかし、「移行を知っていて、内容も理解している」保護者は最も多い低学年(小学1、2年生)のでも9.7%と1割以下。「なんとなく内容を理解している」を合わせても5割に満たず、移行を知らない保護者や学習指導要領という名称自体を知らない保護者が2割前後いることも明らかになりました。
新学習指導要領については、文部科学省のホームページ を見るとその変更内容や目的などが詳しく明記されていますので、子どもがどのような教育を受けているのか、ぜひチェックしてみましょう!
続いて、新学習指導要領の主な変更点ごとに、保護者が感じた印象や期待点についてご紹介します。
【プログラミング教育】「子どもの将来が楽しみ」!一方で教員の質や不足を問う声も
まずは、「プログラミング教育」です。プログラミング教育は、「プログラミング」という教科を新たに作るということではなく、「プログラミング用語を学ぶ」ことでもありません。
今ある各教科の特質に応じて、目標に向けて解決する手順を考えるための力を養う「プログラミング的思考」を身につけようという教育になります。
「プログラミング教育」への今後の期待について尋ねたところ、全体、各世代すべてにおいて、「期待をしている」「やや期待をしている」を合わせて約7割の保護者が、プログラミング教育は子どもによい効果をもたらしてくれそうだと考えていました。
「私たちの時代にはなかった教育なので、今後これがどのように活かされていくのか楽しみ」(30代後半・小学2年生保護者)「プログラミングの授業が始まってから、ゲーム作りに興味が湧いたようで、子どもの将来の目標が増えたことがとても嬉しかった」(30代後半・小学5年生保護者)「物事を要素に分解して順序だてて整理することは役に立つと思う」(30代後半・小学4年生保護者)といった声が寄せられました。
その一方で、「あまり期待をしていない」「期待をしていない」と答えた保護者からは「子ども達はパソコンを触るだけでプログラミングと思い込んでる節がある。物事の考え方も教えてほしい」(30代後半・小学5年生の保護者)「期待したいが、教えてくれる先生の技量にもよるのでは…」(30代後半・小学1年生の保護者)といった、教員の質や不足を懸念する声が多数を占めています。
コミュニケーション重視の「新しい英語」約8割の保護者が期待!
続いて、新学習指導要領では「新しい英語教育」が始まりました。「外国語活動(英語)」として小学3、4年生から、「教科」として小学5、6年生からスタートしています。
小学校では実践的コミュニケーション能力の育成と、それを通じて600~700語程度(現行の中学校の目標語彙数1200語の約半分)の習得を目指します。
新しい英語教育に期待をしている保護者は全体で「期待をしている」(30.1%)、「やや期待をしている」(45.1%)を合わせて約8割となり、プログラミング教育よりもさらに多くの保護者の期待を集めていました。
しかし、学年別に見ていくと学年が上がるにつれて徐々にその期待度が低くなっています。高学年の保護者はどのように感じているのでしょうか。
アンケートに寄せられた高学年の保護者からの意見は「話すことをメインに学習しているようなので、文法を学ぶよりも実生活に役に立ちそう」(40代前半・小学5年生の保護者)「自分の時代と違い、文法や単語を暗記することより先に、会話やジェスチャーなどコミュニケーションを外国人の先生と取ることから始めるので、将来実践的に役立つ英語教育になってきていると思う」(40代前半・小学6年生の保護者)と、文科省の目指す「コミュニケーションスキルの基礎を養う」目的とした教育に賛同する声が目立ちました。
その一方で、「会話重視で文法が身についていない」(40代前半・小学6年生の保護者)、「読む聞くはやっているようだが書く力が入っていない」(40代前半・小学5年生の保護者)といった声からは、中学進学後に不安を抱いていることが伺えます。
また、「“英語”の習い事」が定番化しつつあるため、「英語を習っている子と習っていない子の差が激しい」(40代前半・小学5年生の保護者)といった格差を懸念する声もありました。
【道徳】授業内容には一定の評価!でも子どもの「内面」に評価は必要?
これまでの道徳が、新学習指導要領からは「特別の教科」として2018年度より小学校で全面実施となり、検定教科書が用意され、成績が付くようになりました。いじめ問題の解消や未然防止、自己肯定感をあげることや社会への関心を高めさせる狙いがあります。
学びの効果を期待する声は、全体としては「期待をしている」(22.6%)、「やや期待をしている」(44.9%)を合わせて7割近くに上ります。
寄せられた保護者の意見から、「自分自身で考えたり、回りの考えを知る機会になっている」(30代後半・小学2年生の保護者)「スマホの使い方など、学校でみんなで考えている」(40代後半・小学5年生の保護者)と時代に沿った内容の授業が行われていることもわかりました。
しかし、「以前との変化を感じない」としている保護者のほか、「成績」を付けることへの懐疑的な意見が多く「採点して成績をつけるということは、何らかの型にはめて評価することになると思う」(40代後半・小学4年生の保護者)、「大人に喜ばれる回答を覚えるだけになってしまいそう」(40代後半・小学5年生の保護者)と考える保護者も。
評価は数字ではなく記述式となっていますが、子どもの「内面」をどのように評価するのか。教員の教養と力量に左右される部分が大きく、保護者は不安を抱いているようです。
また、新学習指導要領から取り入れられた子どもが能動的に学ぶよう設計された学習法(「主体的・対話的で深い学び」(アクティブラーニング))についても聞いてみました。
全体的に見ても、学年別に見ても「主体的・対話的で深い学び」へ約7割の保護者が期待をしていることがわかりました。
「グループで意見をまとめて発表する機会が増えたようだ」(30代後半・小学3年生)と以前との違いを実感している保護者もいましたが、それゆえに「グループワークが多くなり、アウトプットが得意な子は良いけれど、自分の意見を主張できない子には重荷に感じる」(40代後半・小学5年生の保護者)という心配の声や、「教員によって違う」「まだ教員の話しを聞いているだけという印象」という声も少なくありません。
寄せられた声からは、「主体的・対話的で深い学び」を取り入れられている教員とそうでない教員で二極化していることが伺えました。
伸ばしてあげたいのは「非認知能力」!探求型学習塾に注目が集まる
最後に、昨今の教育の変化を踏まえて伸ばしてあげたい子どもの能力と、習わせたい習い事について聞いてみました。
認知能力(学力、計算力のような点数などで数値化できる能力)と、非認知能力(意欲、社会的能力、クリエイティビティのような点数などで数値化できない能力)のどちらを伸ばしてあげたいかの質問に対し、「どちらかといえば非認知能力」(54.0%)、「非認知能力」(13.4%)を合わせて67.8%が「非認知能力」を伸ばしてあげたいと答えました。
そのため、保護者が子どもに習わせたい習い事でも「スポーツ系習い事」(23.6%)、「英語教室」(16.2%)に次いで、塾の中でもとりわけ「探求型の学習塾」(15.4%)に注目が集まっていました。
「これからは新しいことを考える力が必要となってくるはず。そのためには子どもの頃から常に考える練習が必要だと感じるから」(40代前半・小学3年生の保護者) 「プログラミングはすでに習っているが、思考能力を養いたいという点では同様で、自分で疑問を持ち、考え、調べていくような力を身につけてほしい」(40代後半・小学5年生の保護者)と、能動的な姿勢が育つ場を保護者は求めているようです。
まとめ
新学習指導要領で変更または新設された主な項目のいずれでも、6割以上の保護者が期待感をもっていることがわかりました。
特に新しくなった英語教育では、保護者世代が学んできた文法や単語を覚える英語から話す英語へ変わったことで、実用的であると考えている保護者の声が目立ちました。
また、昨今の教育の変化を踏まえて子どもに習わせたい習い事として「探求型の塾」に保護者の注目が集まっており、能動的に動ける人になってほしいという保護者の願いが伺えます。
しかし、新学習指導要領についての認知度が低いことを考えると、保護者は子どもに能動的に学んでもらうことを望むだけでなく、自らも能動的に学ぶべきなのかもしれません。
【調査概要】
調査時期:2022年4月1日~2022年5月2日
調査方法:インターネット
調査地域:全国
調査人数:2021年度の小学1年生から小学6年生の保護者501人
調査内容:新学習指導要領について