「東京コミュニティスクール」理事長インタビュー!全日制マイクロ・スクールの内容とは

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価値観が多様化するなか、子どもの教育環境も変化の兆しがあります。

東京都中野区に2004年に設立されたNPO法人「東京コミュニティスクール」は、全日制のマイクロ・スクール

アットホームな雰囲気のなか、子どもたちは与えられた知識を記憶するという従来の教育観に支配されることなく、さまざまな発見を楽しみ、抱いた疑問に対して質問や調査をおこなっています。

今回は「東京コミュニティスクール」理事長の堀江 由香里さんに、取り組み内容についてお話を伺いました。

都内でマイクロ・スクールをお探しの方、子どもに実験的な学びのなかで、さまざまな力を身につけてほしいとお考えの方は、ぜひご一読ください。

  1. 3歳児から小学6年生の子どもを対象にした全日制のマイクロ・スクール
  2. 「学校が好き」「学びの場が楽しい」子どもたち
  3. 6月18日に「探究のたしなみ」をテーマにしたワークショップを開催

3歳児から小学6年生の子どもを対象にした全日制のマイクロ・スクール

「東京コミュニティスクール」の授業の様子

ー本日はよろしくお願いします。まず、NPO法人「東京コミュニティスクール」の概要について教えてください。

堀江 由香里さん(以下、堀江):
「東京コミュニティスクール」(以下、TCS)は、プレ初等部は12名、初等部は54名(1学年9名)が定員の学校ですが、我々は自分たちのことを全日制のマイクロ・スクールとご紹介をすることが多いです。

プレ初等部は朝8時30分から14時、初等部は8時30分から15時45分まで、私たちのカリキュラムの特長でもある「テーマ学習」や、キャンプなどのアクティビティを通して「自和自和(じわじわ)」という基本理念に基づいた学びの場を運営している団体になります。

この「自和自和」という造語には、「自分らしさを活かし、人や社会や自然との和(つながり)を楽しみ、ともに学び着実に成長する」という意味を込めています。

私たちは「じわじわ」という言葉のように、子どもたちが「ゆっくりと」成長していくことを是とし、子どもたちの成長に対して、拍手やほめ言葉にならないざわめきのような、しみじみとした感銘を与えられるような教育の実現を目指しています。

それからマイクロ・スクールについて少しご説明すると、所謂一般的な小学校との違い、文科省の認定を受けていない「非一条校」と呼ばれている学校になります。

初等部では、通っているお子さんは、自分が住んでいる自治体の学区の小学校に籍を置きながら、私たちのところに通うようなかたちになりますので、扱いとしては不登校児になり、うちの学校に通っていただく、ということになります。

学びのカリキュラム自体は私たちが持っているオリジナルのものをやりますし、実際に学習指導要領よりも多い時間数で学んでいきますが、認定校ではないため、お子さんの在籍校と連携を取りながら、出席日数を学校に提出して同等の資格を得るという形になっています。

ー「プレ初等部」と「初等部」のスクールライフについて教えてください。

堀江:
プレ初等部は、いわゆる幼稚園相当にあたる3歳から5歳の子たちが通っています。先生やスタッフとの会話はオールイングリッシュです。

とはいえ我々の理念はそのままに運営をしているので、テーマ学習のようなかたち、もちろん初等部のように複雑なものではないんですけれども、ユニットを組んでそのテーマに沿って子どもたちはアクティビティをおこなっています

プレ初等部では、必ず毎日外に出て遊びに行くことを実践しているので、雨でも散歩に行きますし、けっこうアクティブに活動しています。

初等部についてですが、私たちは小学校だけで終わる学びをしておりません。これからの人生を生きていく力を身に付けてもらいたいなと思っています。

そのために学び続ける人になって欲しい、創造し続ける人になって欲しい、とそれらを育む力としてカリキュラムを設定しています。

そのため、教科領域としての算数や国語といったものと、概念学習の習得を目指した「テーマ学習」と呼ぶ探究学習をやっています。これは6週間で1ユニットになっていて、1ヶ月半かけて1つのテーマをとことん探究していきます。
これは我々のスクールの特徴ともいえる取り組みです。

1年間で6つのテーマに全学年挑んでいくので、卒業までに36のテーマ学習を実践していきます。

テーマ学習は必ずアウトプットする「プレゼンテーションday」を設けているので、少なくとも年6回みんなの前に立って話をする機会があります。

それからTCSでは夏休みにワーク的な宿題はあまり出さないのですが、「サマープロジェクト」という課題を必須にしています。自分で立てた仮説を検証し、模造紙1枚にまとめるのですが、それも必ずプレゼンテーションまでをセットでおこないます。

イングリッシュプレゼンテーションの日もあれば、朝の会で「語るべぇ」という90秒間スピーチする機会があったりと、アウトプットする場が多いのも特徴です。

また、子どもたちだけで子どもたちの課題について話したり、時間を使う時間割があったりしますし、テーマ学習はとにかく探究するためには対話が必要なので対話する時間が多くありますし、子どもたちはずっと対話したり考えたりしているんじゃないかなと思います。

「学校が好き」「学びの場が楽しい」子どもたち

「東京コミュニティスクール」の授業の様子

ー実際に通われているお子さんや保護者の方の感想を教えてください。

堀江:
通われている保護者さんと面談する機会があるわけですが、基本的にはみんなびっくりするくらい最初から「学校が好きです」って言ってくださる保護者さんが多いですね。

一般的な小学校だと1年生は午前中に授業が終わったりしますが、TCSは1年生から7コマ、15時30分まで授業があって、学校が終わるのが15時45分なんですね。

初っ端から7コマあり、教科領域やテーマ学習に関わらず、「学びの場が楽しい」っていうふうに言ってくれるのは実際に聞く声としてすごく嬉しくありますね。

また、卒業した子たちと毎年同窓会を開いていているのですが、みんな話すことや考えを伝えることが本当に上手くて素晴らしいなと感じます。

進路についても自分で決断して決めていく子が多いので、どんな選択をしても、応援できる子ばかりですね。

卒業生を見ていると、壁にぶつからない子が育っていくというよりは、壁にぶつかっても自分で何とかしようみたいな子ばかりなんです。

みんな人間関係で悩むし、TCSで失敗は失敗じゃないって学んでいるので、それよりはチャレンジした結果、これは違ったなと。失敗することを恐れない子に育っていますね。

また、保護者の方とのコミュニケーションでいえば、TCSでは入学前に、保護者さんとはサービスを受ける人、提供する人みたいな関係性ではないですっていう話を必ずするんですね。

いわば「パートナー」なので、たとえば子どもに元気がなくて理由を聞いたら、お父さんとお母さんが喧嘩しているんだと。それで悲しい気持ちになっているんだと聞いたら、仲裁はしませんが、お二人のやり取りが子どもの学びを阻害する要因になっていますっていうことは伝えますよって必ずお話ししています。

それでも良ければ入学してくださいとお願いしています。ご家庭に対して踏み込んだコミュニケーションをするので、それが子どものためだと思っていただける保護者さんが来てくれたらいいなというふうに思っています。

ーそれだけ先生方が魅力的な授業をされているからだと思いますが、先生方の取り組みに何か特徴はありますか?

堀江:TCSは2学期制なので、前期、後期のなかで全スタッフで生徒の評価面談をおこなうんですね。

各教科の担当教員、担任、すべてのスタッフで、一人ひとりの子どもに目を向けて評価をするので、その子どもに対して今の課題が何かとか、これからどうすべきみたいなことを全員が共有している状態で学びの場が進んでいます

これはマイクロ・スクールだからこそできることだと思います。54人を評価するだけでも相当大変なことですが、ここが肝になるので丸3日かけておこないます。

評価面談によってその子に対する課題やフィードバックするポイントがスタッフみんな同じっていうのはすごく大事なことだと思っています。

それからTCSはフィードバックがすごく多いんです。「今のそれに対してこれができていないんじゃない」とか、「これは違うんじゃない」とか、スタッフと子どもの間でもあるし、子ども同士でもあるし、スタッフ間でもあります。

でも、できていなきゃダメみたいなことは全然なく、チャレンジしたことに対してみんなが評価をするし、今できていないことに対して誰も責めたりしません。

これからできるようになるために努力している限り、その子のペースで応援し続けるというのが前提にあります。

たとえば運動会は去年の自分の自己ベストを更新すると点が入る、といった仕組みになっています。もちろんチーム戦、リレーもやるので全部が全部勝負事をしないわけではありません

勝負事ももちろん大事ですが、50メートル走や長距離種目は、今までの自分を超えられるかっていうのが得点の入るポイントなので、そういう小さいけれど結果としてはすごく大きなものになるような仕掛けを随所に設けています。

ー入学するには、どのような手順を踏むのでしょうか?

堀江:
入学までの大きな流れとしては、1日見学できる日が毎月のようにあるので、そこでTCSを見学していただいて説明会を受けていただきます。

スクールの見学日や説明会の日程は、それぞれ公式サイトに掲載していますので、そちらをご覧ください。

見学には保護者さんとお子さんが来るときもあれば、親御さんだけでいらっしゃるときもありますが、必ず一度校舎に足を運んでもらいます。

その後、毎年9月から10月に実施する体験入学を経て、考査という流れになります。見学、説明会、体験入学、入学考査といった入学までのステップは、公式サイトからご確認いただけます。

「東京コミュニティスクール」がある東京都中野区周辺には、たくさんの塾があります。

テラコヤプラスでは、中野区 塾・学習塾 ランキングや、中野駅(東京都) 塾・学習塾 ランキングなど、エリアや駅など条件を絞って塾を探すことができます。

お子さんに塾をお探しの方は、ぜひご活用ください!

6月18日に「探究のたしなみ」をテーマにしたワークショップを開催

「東京コミュニティスクール」の授業の様子

ー今後開催予定のイベントがあれば、ご紹介ください。

堀江:
6月18日(土)に、「探究のたしなみ」をテーマに、探究する学びをデザインするためのワークショップを予定しています。

TCSの教育スタッフに興味がある方や、本格的な探究に取り組みたい方、探究を思う存分味わいたいという大人の方向けの内容になっていますので、ぜひTCSの学びの場を実際に体験してみてください。

▶TCSワークショップの詳細はこちら

ー最後に読者の方へ一言メッセージをお願いします。

堀江:
TCSについて説明させていただきましたが、ひと言でこういう学校です、というのが結構難しい学校なんですね。

百聞は一見に如かずではありませんが、ぜひお越しいただいて、私たちがおこなっている学びの場で何が起きているかをご覧いただけたら嬉しいです。

それから保護者さんだけでなく、そういった学びの場に興味がある大学生や一般の見学も受け入れています

見学に関してはオープンにやっているので、学びの実験的なことをいろいろやっている学校ということで興味を持たれた方は、ぜひ一度ご自分の目で見ていただきたいなと思っています。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました!

■取材協力:  NPO法人 東京コミュニティスクール

中山 朋子
この記事を執筆した執筆者
中山 朋子

テラコヤプラス by Ameba 執筆者

小さい頃からピアノ、書道、そろばん、テニス、英会話、塾と習い事の日々を送る。地方の高校から都内の大学に進学し、卒業後は出版社に勤務。ワーキングホリデーを利用して渡仏後、ILPGAに進学し、編集ライターの仕事をしながらPhonétiqueについて学ぶ。帰国後は広告代理店勤務を経て、再びメディア業界に。中学受験を控える子を持つ親として、「テラコヤプラス」では保護者目線の有益な情報をお届けする記事づくりを目指しています。