さいたま市を拠点として、若年層を対象とした介助者派遣をメインにおこなっている「ライフアシストFamilish」。
障がいを持った方の「働きたい」「当たり前の生活をしたい」という想いを実現するために、一人暮らしをはじめとした自立生活を支援しています。
今回は、「ライフアシストFamilish」代表の宮澤 厚志さんに、活動内容についてお話を伺いました。
さいたま市近郊の介助者派遣が気になっている方、障がいがあっても自立した生活を送りたい方は、ぜひご一読ください。
障がい者を対象に“自立した一人暮らし”を支援
ー本日はよろしくお願いいたします。まずは「ライフアシストFamilish」の概要と活動内容について教えてください。
宮澤 厚志さん(以下、宮澤):「ライフアシストFamilish」は、障がい者の方の介護ヘルパー派遣をメインに、平成19年度から、さいたま市を拠点に活動をおこなっている団体です。
Familishという名前には、家族のような雰囲気にしたいことから「Family」と、私たちの願いを実現させることから「Wish」という2つの想いを込めています。
現在では、障がいがあっても生活保護・障がい者年金・特別障がい者手当で収入を得て、介助派遣事業所から介助者の派遣を受けると、施設や自宅を離れて一人暮らしすることが可能です。
「ライフアシストFamilish」では、障がいがあっても自立した一人暮らしや、当たり前の生活ができるように、介助者の派遣をおこなって支援しています。
ー他にはない「ライフアシストFamilish」ならではの強みを教えてください。
宮澤:ここでは「サービス提供者と利用者」という関係ではなく、友達の延長のような感覚でコミュニケーションをとっていることが、特長だと思います。
利用者さんには身体が動かない「筋ジストロフィー」の方が多いのですが、Instagramを見て一緒に楽しんだり、時にはケンカをしたりと、本当に友達や家族のような関係を築いているんですよ。
介助者と利用者さんの関係にもよりますが、家族の前では話しにくいことでも、2人きりになると話してくれる、というケースは意外と多いものです。
介助者として働くスタッフには、年齢層が20代前半~60代の会社員や学生、主婦など、さまざまな職種の方で構成されています。
この業界は未経験から始められる方が多いですが、みなさん長く続けていただいていますよ。
幅広い年齢層の生活サポート
ー続いて、具体的な支援内容を教えてください。
宮澤:「ライフアシストFamilish」では若年層を対象としていますが、小学4年生~50代の方まで、幅広くいらっしゃいます。
20歳を超えている方には、自立した一人暮らしができるようにさまざまな面から支援できるよう工夫しています。
これまで自宅で保護者にすべてお世話してもらっていた方の場合、自立した生活のイメージが湧かないケースも多く、最初にILP(自立生活プログラム)という勉強会を何回かおこなっています。
自立したらどんな風に生活していくのか、ヘルパーはどんな時に使えばいいのかなど、事前にイメージしてもらってから、自立生活のサポートをスタートさせます。
ここから、「コーヒーは自分でお湯を沸かして、こうやって淹れるんだよ」「買い物に行ったらこうやって買うんだよ」など、一つひとつ生活に必要なことを覚えてもらうんです。
こうして2年ほどの時間をかけながら試行錯誤を続け、自立できる日々を一緒に目指していきます。
また、障がいを持つ子どもたちには、学校や学童に行く通学支援や、土日などで学校が休みのときに行く場所がない子どもの対応、外出の支援などをおこなっています。
利用者さんに多い筋ジストロフィーは遺伝性なので、兄弟で筋ジストロフィーのケースもあります。
自分で自由に身体を動かすことが困難になるため、就寝時の寝返りをサポートするなど1日を通して介助する必要があるんです。
ご家族の負担が大きくなるので、ご家庭から直接相談をいただくことも多いですね。
自由な生活の実現に向かって
ー利用者やご家族のみなさんからは、どんな反応がありますか?
宮澤:若年層ではない上の層に関しては、「一人暮らしができるようになって楽しい」と言っています。
小学生~20歳過ぎまで施設に入っていた方も多く、支援を受けるまでトイレの時間まで全て管理され、制限のある生活を送っていたという方も少なくありません。
施設では履いたり脱がせたりしやすいように、着替えやすい服やすごく大きい靴を履くなど、さまざまな制限があったようです。
それが今ではヘルパーが24時間ついているので、自分が好きなときに好きなものを食べたり、トイレをしたり外出したりと、「これまでのような制限がなくなってすごく楽しい」という声をいただいています。
また、保護者の方の負担を減らすため、制度を使えない子どもにはボランティアをおこなっているのですが、こちらもとても喜ばれていますよ。
映画を見に行ったり事務所でゲームをしたりと、子どもを呼んで遊ぶことができるので、私たちにとっても楽しい時間になっています。
ー今後、開催予定のイベントなどがあれば教えてください。
宮澤:障がいを持った方やその保護者の方で、一人暮らしに興味がある方、またFamilishで「働いてみたい」という希望のある方への見学を、随時受け付けています。
実際に一人暮らしをしている方のご自宅へ訪問して、どのように生活しているのかを見ていただくこともできます。
もしご興味があれば、公式サイトのお問い合わせフォーム、またはお電話からお気軽にご連絡ください。
障がいを持っていても自立生活できる
ー最後に、読者へメッセージをお願いします。
宮澤:ここまで読んでくださった方のなかには、障がいを持っている方に対して「大変そう」「かわいそう」というイメージをお持ちの方もいるでしょう。
私自身この仕事を始める前は、障がいを持った方と関わることがほとんどなかったのですが、実際始めてみるとそのイメージとは大きく異なりました。
お酒が大好きな方や1日中笑いの絶えない方、旅行で日本中を飛び回っている方などさまざまな方がいて、障がいを持っていても健常者と変わりありません。
もしこれまでに障がいを持っている方に接したことがなくても、街で困っている方を見かけたら、勇気を持って声をかけて欲しいと思います。
たとえば段差で困っているとか、切符が買えなくて困っている、という車いすの人を見かけたら、「何か手伝うことありますか」という感じで声をかけてもらえたらいいかなと思います。
また、障がいを持っている方やその保護者の方は、自立生活をひとつの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。
養護学校や特別支援学校を卒業したあと、進路に悩まれている方は多いと思います。
施設に行く、ご自宅から作業所に通うというのもいいですが、子どもにベストな進路のひとつとして自立生活を考えていただけたらありがたいですね。
ー本日は、貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:ライフアシストFamilish