外国にルーツを持つ、ひとり親家庭など、経済的な理由や家庭の事情など、さまざまな理由で学習サポートが受けられない子どもがいます。
埼玉県の三芳町にあるNPO法人「街のひろば」では、子ともだちに無料の学習支援や居場所提供をおこなっています。
今回は、理事長の松浦 康介さんに「子ども学習広場」の活動内容をメインにお話を伺いました。
学習支援を受けたい方、活動内容に興味のある方は、ぜひご一読ください。
無料の学習支援室「子ども学習広場」
ー本日はよろしくお願いします。早速ですが「子ども学習広場」の活動内容について教えてください。
松浦 康介さん(以下、松浦):「子ども学習広場」は、「日本語の読み書きが十分にできない、外国人の親を持つ家庭の子ども」「ひとり親家庭の子ども」「生活保護家庭の子ども」を対象にした無料の学習支援活動です。
この3つを基本としていますが、学習に課題を抱えている子どもや不登校の子どもなども個別にご相談いただき、支援が必要と判断すれば受け入れています。
毎週月・水・金曜の15時から17時が小学生の部、同じ曜日の19時から21時が中学生以上の部と2部制で活動中です。
指導には、教員経験者や日本語指導経験者、ソーシャルワーカー、教員や心理職を目指す大学生などが参加しています。
これまでは近隣の公民館の一室を借りて活動していましたが、コロナ禍で公共施設が利用できなくなってからは、公民館の近くにアパートを借りて教室代わりにしています。希望者にはZoomでのオンライン学習もおこなっています。
外国人家庭のお子さんに対しては、学校の勉強がわかるようになるための、その前段階として必要になる日本語の基礎を教えてます。その後は、適宜日本語のサポートしながら、学校の勉強が理解でいるよう、原則はマンツーマン形式で一緒に勉強をしていきます。
日本生まれ、日本育ちでも、勉強の遅れがある子どもには、基礎の基礎から本人のペースにあわせて復習を手伝っています。
私たちは学力向上のためのスペシャリストではありませんので、お子さんの成績の向上はお約束できません。
ですが、子どもたちそれぞれが抱える問題について寄り添い、共に考えながら、学校だけで学習を続けて行くことに不安を抱えている子どもたちに、すべての子どもたちが学習サポートを受ける機会を!という想いを持って「わかる喜び」や「安心して質問できる環境」を提供しています。
ー「子ども学習広場」に来ているお子さんの反応はいかがですか?
松浦:初めからしっかりコミュニケーションが取れ、親御さんも環境を整えてくれて、規則正しく通う子もいます。
しかし、生活する上で困難があるご家庭の多くは、生活リズムが乱れていたり、勉強をする習慣が培われていなかったり、保護者が子どもの教育に対してルーズだったり、家族関係自体が不安定だったり、参加が不定期であったりと、さまざまな面での「脆(もろ)さ」を持っているケースが少なくありません。
その場合、子ども自身がヘルプを出せなかったり、大人への不信感を剥き出しにする子どももいますので、スタッフとの関係性を築くことに長い時間を要することもあります。
中には、1年や2年というスパンではなく、小学生から受け入れ、中学を卒業し、高校生になってやっと精神的に成熟していく、というような、長い年月を要する子どももいます。
反面、途中で支援が途切れてしまうことも決して少なくなく、学校にも居場所がないため不登校状態になっていても、誰も支援に入れない、ということもあります。
また、学習の遅れがある子どもの中には、中3の受験期に於いても、1からアルファベットや、掛け算の九九を覚える必要のある子もいます。その場合、受験期までに勉強が間に合わず、高校にどうにか滑り込めたとしても、勉強についていけず、高校を退学してしまうケースも少なくありません。
ほかにも、家庭の基盤が十分でないことから、ちょとしたトラブルがきっかけで退学してしまう場合も多いので、(多くの無償の学習支援団体が目標としている)「高校入学」と同時に支援が終わり、ということにはなかなかならないのが実際です。
その反面、「受験」という一つの壁を機に、しっかり勉強に向き合えるようになった子どもは、高校入学から勉強に目覚め、成績も生活も著しく伸びて大人になっていく、ということも多々あります。
子どもの成長というのは、何年経っても、予測できないことの連続ですので、私たちにできることは、子どもたちの変化を信じて、地道に勉強や生活の土台作りをすることだと思っています。
学習支援サービスの申し込みは公式サイトや公式LINEで
ー学習支援サービスの利用方法を教えてください。
松浦:多くは、行政の紹介や、地域のコミュニティ(外国人家庭同士の仲間や、ひとり親家庭の親同士のつながりなど)からの紹介で繋がる子どもが多いですが、「街のひろば」公式サイト(問い合わせフォーム・公式LINE経由)からも募集をおこなっています。
特に、公式LINEを導入してからは、保護者様からのご相談もスタッフ用のLINEを共用してやり取りできるようになったので便利になりました。
―今後開催予定のイベントなどはありますか?
松浦:私たちの活動は、基本的にはクローズ(活動場所や、通っている生徒の情報などを公開しない)ですので、イベントなどは特におこなっておりません。
ただし、コロナ禍以降、借りている事務所はを自費で賄っているので、ご寄付は募っております。
特に方法は定めていないのですが、公式サイトからお問い合わせいただければ個別にご案内させていただきます。
身近にいる困り事を抱えている方々の支えになってほしい
―最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
松浦:私が「識字教育」(文字の読み書きを教える活動のこと)に出会ったのは、横浜の寿町で、日雇い労働者の方々を対象に「寿識字学校」という識字学校を主宰していらした、大沢敏郎さんの『生きなおす、ことば―書くことのちから 横浜寿町から 』(太郎次郎社エディタス)という本がきっかけでした。
その後、実際に先生にお会いし、学ばせていただいたことが今日の私の活動にもつながっています。
それゆえ、世の中にこんな活動がある、こんな風に困っている方々がいる、ということを世の中に伝えていくことの大事さは、私も身をもって知っています。
そうした中で、大沢先生に教わったことは、「自分の日常を離れて、遠くの誰かに想いを寄せるよりも、あなたの日常にいる、隣人にこそ目を向けなさい」ということでした。
ですので、もし私たちの活動を知ってくださり、関心を持っていただける方がいましたら、ぜひ、皆さんの身近にいる、困り事を抱えている方々の支えになっていただければと思っています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
取材協力:NPO法人 街のひろば