子育てをしていくなかで、「子育て情報」を発信する雑誌やインターネットメディアを頼ったことがある方は多いでしょう。本当に多くの情報を得ることができますよね。
ところが、医療機器を必要とする子どもたちとその保護者に向けた情報を発信するメディアは少なく、欲しい情報を得ることが難しいといいます。
今回は、医療的ケアを必要とする子どもと家族・支援者が暮らしやすい社会をつくることをビジョンに掲げて活動するNPO法人「アンリーシュ」代表理事の金澤 裕香さんにお話を伺いました。
子育てと社会福祉に興味のある方は、ぜひご一読ください。
医療的ケアを必要とする子どもたち
―本日はよろしくお願いいたします。まずは、「アンリーシュ」の活動についてお聞かせください。
金澤 裕香さん(以下、金澤):アンリーシュは「医療的ケア児」と呼ばれる、自宅で医療機器を使いながら生活している子どもたちとその家族を支援している団体です。
医療機器というと範囲が広いのですが、たとえば人工呼吸器だったり、上手にご飯が食べられない子どもがお鼻から直接胃に栄養を入れる胃ろうだったり、経管栄養という処置だったり、あとは酸素を常時鼻から入れていたり。
イメージとしては病院で使うような医療機器を使用する子どもたちを総称して“医療的ケア児”と呼んでいます。
本来であれば看護師さんとかお医者さんがやるような処置を自宅で家族がおこなっているのが、この子どもたちの大きな特徴になります。
今、日本にはこういった子どもが2万人いると言われています。割合にすると、子どもの約1,000人に1人ですね。
なかなか数も少ないですし、こういう子どもたちが増えてきたのが、衣装の進歩もあってここ10年ぐらいのこと。
ですので、まだまだ同じような子どもや家族と出会えず、情報不足や孤独感にとても悩んでいるご家族が多いという現状があります。
アンリーシュは、これらを社会課題というふうに捉えまして、メディア運営という形で、医療機器を使いながらの子育て情報やいろいろなご家族の生活の様子を活字と動画で配信することによって、当事者家族の情報不足と孤独感の解消を目指して活動しています。
もともと私自身、こういう子どもたちの存在を知りませんでした。しかし、8年前に出産した長女がまさに病名不明の病気で、医療機器が必要な子どもだったんです。
それで、普通の子育てだったら雑誌やインターネットでも子育て情報が溢れているのに、そこに「医療機器」がプラスされるだけで、子育てに役立つ情報が見つからなくなってしまうことに気がつきましたし、悩みました。
その私自身の実体験が「アンリーシュ」設立のきっかけです。
社会と当事者家族の架け橋に!
―アンリーシュがビジョンとして、大切にしていることを教えてください。
金澤:私たちは「医療的ケアを必要とする児童と家族、支援者が暮らしやすい社会をつくる」をビジョンに掲げています。
医療機器を使った生活もひとつの個性、その子ども自身も一つの個性、特性として社会に受けいれられた状態が、「医療的ケアの必要な子どもたちが暮らしやすい社会」だと言えると思うんです。
私たちのメディア媒体を見ていただくと分かりますが、決して当事者に向けてだけ情報発信しているわけではありません。
社会全体を巻き込んで、知らない人にも、この子どもたちの存在を知ってもらい、“社会と当事者家族の架け橋”になることを大事にしています。
自分たちの医療的ケアは決して特質なものではなくて、みんなそれぞれ生きづらさだったり、他とは違うこと、一般的とは違うなにかを、人それぞれが抱えていますよね。
自分たちはそれがたまたま医療的ケアであるけれど、そこも折り合いながら生きていく、社会の一員として自分たちも参加しているんだっていう意識を持ってほしいと思っています。
ですので、“社会と当事者の架け橋”になるような活動をとても意識しています。
私たちがとくに大切にしているのは、「誠実・謙虚・柔軟・真心・挑戦」の5つ。
とくに最後の挑戦・参画というのは、家に閉じこもってばかりではなく、社会に一歩踏み出すことが自分たちのビジョン達成につながると思っているんですね。
だから、どんどん社会に出て行こうと挑戦であったり、社会に参画していくとのはアンリーシュの活動でもコアな部分になっていると思います。
積極的にYouTubeで情報発信
―今後開催予定のイベントなど、告知がありましたらお願いいたします。
金澤:私たちは医療的ケアを必要とする子どもたちも、ひとりの人間として喜怒哀楽ある日常を送っていることを知っていただけたらとYouTubeで配信しています。
ぜひご覧いただき、チャンネル登録していただけたら嬉しいです。
ご寄付は、「継続寄付」と「単発寄付」をご用意しています。
継続寄付は月額1,000円から、お好きな金額を寄付していただくことができます。
ご寄付いただいた方には限定のクローズドコミュニティにご招待しまして、活動の裏側を随時お知らせしています。
もうひとつは、単発寄付のご寄付で、お好きな金額を1回限りでご寄付いただくものです。
ぜひ、私たちの活動を支えていただけると嬉しく思います。
医療的ケアを必要とする子どもたちのことを知って欲しい
―最後に読者へ向けてのメッセージをお願いいたします。
金澤:まずはここまで記事を読んでくださって、ありがとうございます。
もしかしたら皆さんの周りにも、医療的ケア児という言葉は知らなくても、人工呼吸器を使ったり、酸素吸入をしている子どもが近くにいらっしゃるかもしれません。
もし日常生活の中で、そういう子どもや親子に出会いましたら、怖がったり、声を掛けたらかわいそうなんじゃないかとか思わずに、ぜひお声をかけていただければ嬉しく思います。
わざわざ医療機器のことに触れなくても、「かわいいですね」とか「おいくつですか?」とか。
そういう普通の声掛けが、こういう病気や障がいのある子どもの母親にとってはありがたいものです。
外出することを躊躇っている母親にとっても、外出していいんだという気持ちになることができますし、なにか自分が一歩踏み出す勇気になるはずです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
取材協力:アンリーシュ