「文具王」高畑正幸さんが、「集中力が途切れない」という観点から見た便利で快適な筆記用具を紹介します。
鉛筆・シャープペンシル・ボールペン・蛍光ペンの4ジャンルから全8品をセレクト。
学校や会社、リモート環境で、紙に書いて集中したいときに頼りになる1本を選びましょう。
はじめに
こんにちは、「文具王」高畑正幸と申します。
子どものころから図画工作が大好き。文具オタクで、「TVチャンピオン」の文房具通選手権で3回優勝し、文具メーカーに就職しました。
その後は独立し、今は文房具に関わるあらゆるジャンルのプロフェッショナルとして活動しています。
また、数万点の文具と資料を持つコレクターでもあり、文房具情報Webマガジン「文具のとびら」の編集長やYouTuberとして、ときには深く・ときには広く、文房具について解説しています。
そんな文房具が大好きな私が、「集中力が途切れない」便利で快適な筆記用具をご紹介します。
集中して考える時間をサポートする筆記用具
昨年来のコロナ禍で、学校も仕事も、これまでとはやり方が大きく変わりました。オンライン授業やリモートワークが導入され、便利になった面もあるかもしれません。
大きく変わった側面はありますが、実際に勉強や仕事などで成果を上げるためには、これまでと変わらず、しっかり集中して考える時間が必要です。
いったんタブレットやパソコンを閉じて、紙に向かってペンを走らせることが有効な面も多いと感じます。
今回、私がお教えするのは、集中したいときに頼りになる筆記用具です。
ところで、「集中力が途切れる」とは、どんな状態でしょうか? きっと、集中して勉強しているときには、問題の答えや書く内容のことを考えていて、筆記用具のことなど忘れていますよね。
もし筆記用具のことを考えていたら…そのときは集中力が途切れています。
実は、筆記用具を作っているメーカーもこのことをわかっています。
筆記用具をカッコよく、目立つものにしたい(そして売れてほしい)という思いはありますが、同時に、勉強や仕事に集中できるよう道具としてサポートしたいという思いもあり、さまざまなアプローチで解決しようとしているのです。
そういう観点から見た優れた筆記用具を、【鉛筆】【シャープペンシル】【ボールペン】【蛍光ペン】のジャンルごとに見ていきましょう。
【鉛筆】シャープペンシルと同様の芯を採用、折れにくい「ホクサイン」
まずは鉛筆から。
鉛筆で一番わかりやすく集中力が途切れる瞬間といえば、芯が折れたときと削るときです。
鉛筆は軽くてシンプルで、熱中して何かを書いている瞬間は、集中の邪魔をしないとてもよい筆記用具ですが、力を入れ過ぎて芯が折れてしまったり、芯先がすり減って太くなってきたら、削るか別のものに持ち替える必要があります。
鉛筆を削ったり、別のものに持ち替えたりするタイミングでは、考えていたことは絶対に中断します。
きちんと尖らせた鉛筆を選んで持ち替えるだけでも、尖り具合を確認して手に取るときに視線は一度紙から離れますから、鉛筆はなるべく折れにくく、減りにくいものを選ぶべきです。
この話をすると、「どの鉛筆でもHBなどの表示が同じなら、強さや減りやすさは同じでしょ」と言われることが多いのですが、実は鉛筆はどれも同じではないのです。
クツワの「ホクサイン」(180円、税抜き)は、なかなか高級な鉛筆ですが、一般的な鉛筆とはまったく違う芯を採用しています。
ポリマー芯と呼ばれるもので、簡単にいうとシャープペンシルの芯と同様のものです。一般的な鉛筆の芯に比べて、強度が高く、折れにくく、粉が出にくい。それでいて色は濃く黒く発色するのが特徴です。
実際に使ってみると、かなりしっかり力を入れてもまず折れません。同じ硬度の普通の鉛筆に比べても圧倒的に芯の減りが遅く、気持ちよくどんどん書けることがわかります。
硬度はHBから4Bまでですが、普通なら柔らか過ぎて、文章を書くにはあまり向いていないといわれる4Bでも、十分普通の鉛筆のHBぐらいの感覚で使えます。
滑り具合は柔らかくクレヨンのようで、書き心地も抜群。鉛筆を使うなら、ぜひ試してみてほしい1本です。
【シャープペンシル】合気道のような仕組みで芯が折れない「デルガード タイプER」
ここからはシャープペンシルを4本紹介。
シャープペンシルで集中力が途切れるタイミングといえば、まずは鉛筆と同様、芯が折れたときです。
シャープペンシルの場合は芯が折れてもノックして芯を出すだけですが、鉛筆と比べると極端に細いシャープ芯は、急いでいたり、緊張していたりして、いつもよりちょっと力が入ると簡単に折れてしまいます。
特にテストの後半、残り時間が少なくなってくると、わかってはいても力が入ってしまい…何度も芯が折れて慌てた経験がある人も少なくないはず。
そんな悩みをほぼ一掃してくれるのが、ゼブラの「デルガード」シリーズ。
デルガードは過度な筆圧(文字を書くときにペン先に加わる圧力)がかかったときに、垂直方向の力に対しては芯を引っ込めて逃がします。
斜め方向の力が加わった場合には、その力を利用して口金(ペン先の部分)を前に押し出して芯が折れるのを防ぎます。
まるで合気道のような仕組みによって、実際どんな無理な書き方をしても芯が折れることはまずありません。その筆圧耐性の高さは、同じ芯を使っているとは思えないほど。
芯詰まりなどの動作不良もほぼ皆無です。試験などで急いでいるときや、野外の不安定なところでも芯のことを気にせず書けるのはありがたいものです。
なかでもこの「デルガード タイプER」(700円、税抜き)は、本体をくるりと反転させると、後ろから消しゴムがするりと滑り出てくるようになっています。
出てきた消しゴムは自動的にロックされ、そのまま紙に擦りつけても引っ込むことはありません。またペン先を下に向けると今度は自重で本体内にすとんと収納される仕組みです。
これなら間違えても、ペンを消しゴムに持ち替えることなく、さっと書き直せます。
まさに集中を切らさないためのシャープペンシルです。
【シャープペンシル】ノックなしで書き続けられる名品「S30」
次にシャープペンシルを使っていて集中力が途切れる瞬間といえば、芯が短くなってノックするタイミングですね。どんどん書いているときには案外頻繁にノックしています。
余裕のあるときはさほど気にならない動作ですが、気分が乗っているときに口金がノートにガリッと引っかかって急いでノックするといった場合には、なんだかとても煩わしい気分になるときがあります。
パイロットの「Sシリーズ」は、もともと製図用シャープペンシルのラインアップで定評のある製品です。
そのなかでも「S30(エスサーティ)」(3,000円、税抜き)は、昨今、中高生に人気の高級モデル「S20(エストゥエンティ)」をベースに、ノックなしで書き続けられるオートマチック機構を搭載した最高峰モデルです。
オートマチック機構はその名の通り、自動的に芯を送り出す機構。シャープペンシルの芯がすり減って口金が紙面に当たって押されると、芯を押し出す仕組みになっています。
このおかげで、「S30」は一度芯を出して書き始めたら、芯1本を使い切るまでノックなしでも書き続けられます。
シャープペンシルとしては高級品ですが、落ち着いた色合いと、使い込むほどに風合いを増す木軸のボディに、オートマチック機構。
組み合わせから考えれば、その価値は十分にある名品です。
【シャープペンシル】太めのグリップに衝撃吸収素材、疲れにくい「ユニ アルファゲル スイッチ」
そして、集中し続けるためには、「疲れない」ことも重要になってきます。
次に紹介するのは、学生の間ではもはや定番のひとつである三菱鉛筆の「クルトガ」の最新モデル。
クルトガは、芯先が紙面に触れるごとにその筆圧を利用して芯を少しずつ回転させて芯の片減りを防ぎ、常に一定の細さの線が引ける「クルトガエンジン」を搭載しています。
文字を書いている間、ペン軸を回転させなくても常にシャープな線が書けるので、画数の多い漢字もしっかり見やすく書き込めます。クルトガエンジンは、集中力を切らさないという意味でかなり効果的な仕組みなのです。
しかし、これはあくまで文字を書くときの話。図やグラフなどを書くときは、回転よりも芯先をがっちり固定してブレないことも重要です。
この「ユニ アルファゲル スイッチ」(1,000円、税抜き)は、クリップをカチッと回転させれば、クルトガ機能をオフにできます。シーンに合わせて機能を使い分けられる優れものです。
しかも、若干太めのグリップにはスポーツシューズなどにも使われる衝撃吸収素材「アルファゲル」を採用。
握り込みによる手の疲れを軽減し、書き続けることに集中しやすくなっています。
【シャープペンシル】0.2mmの世界一細い芯で長時間書ける「オレンズ」
先ほどのクルトガは回転で線の細さを維持するのに対し、ぺんてるの「オレンズ」(500円、税抜き)は、もっと細い芯を使うというストレートな方法で「細くキレイな文字を書きたい」を実現しています。
市販品のなかでは世界一細い0.2mmという芯を採用することで、たとえ片減りをしたとしても通常のシャープペンシルよりも明らかに細い線を書けます。
この0.2mmという芯は、一般的な0.5mmの芯と比べればその断面積は約5分の1。当然普通に使えばすぐに折れてしまいます。
「オレンズ」はそれを防ぐため、芯を丈夫な金属のガイドパイプからほとんど出さずに、パイプで守りながら筆記します。
芯がすり減るのに合わせて筒も引っ込む仕組みで、金属の筒の先端も芯と一緒に紙を引っかきながら筆記していることになります。
パイプの先端が丁寧に研磨されているため、ほとんど引っかかりを感じません。すべてにおいて非常に高い加工技術が実現した、繊細な書き心地です。
ガイドパイプが比較的長いので、ノックを頻繁にしなくても長く書き続けられます。これもまた、集中力を保つのに効果的です。
【ボールペン】ペン先のブレがほとんどない「ブレン」
ボールペンにもさまざまなアプローチで、集中力を高く維持するための工夫が成されているものがあります。
たとえばペン先のブレ。ノック式ボールペンのほとんどは、ペン先を出し入れするためにペンの口金と芯の間にごくわずかな隙間が存在します。
しかし、ごくわずかとはいえその隙間のせいで、文字を書くときにほんの少しだけペン先が揺れます。気になる人には気になる問題でした。
ゼブラの「ブレン」(150円、税抜き)は、ペンの口金部分にダイレクトキャッチという樹脂製のパーツを組み込むことで、ペン先を隙間なく押さえて、ブレがほとんどない状態を作り出しました。
デザイン面もかなり画期的です。
全体がひとつの塊に見えるような静かな流線型のボディには、ロゴマークなどが刻印で施されていて、無駄に目に付く情報がほとんどありません。
入手しやすい価格なのもありがたい筆記用具です。
【ボールペン】驚きの文字の黒さと絶妙な重量バランス「ユニボール ワン F」
集中力を高くするための工夫はほかにもあります。
たとえば文字の黒さ。ボールペンのインクはどれも黒いと思っている方は、一度、三菱鉛筆の「ユニボール ワン」と、ほかのボールペンを比べてみてください。
書いた文字を並べて見ると、これまでのボールペンが「案外黒くなかったんだな」と思うぐらい差があって驚きます。
しっかり濃く、光をほとんど反射しない真っ黒な筆跡は、書いた文字が目に入ってくる印象を強くします。集中や記憶によい効果をもたらすようですし、何よりも美しく見えます。
インクの色素の粒子を大きなカプセル状にして、紙の繊維の中に染み込ませず、紙の上にしっかり残るようにすることで、黒くはっきりとした発色を実現しています。
紙の裏にも色が抜けにくく、裏面のページに書き込むときにも気が散らないのがうれしいところです。
さらにこの「ユニボール ワン F」(300円、税抜き)は、ペン先付近のボディ内部にスタビライザー機構と呼ばれる金属製の部品を内蔵することで、芯先のブレを抑えつつ重量バランスを最適化。
まるで手にまとわりつくような絶妙な重量バランスで、ペン先のコントロールがしやすく、書き心地もぐっと落ち着いた印象。書いていることに集中しやすいボールペンだと思います。
【蛍光ペン】革命的なペン先2つ「2トーンカラーマーカー〈マークタス〉」
最後に紹介するのは蛍光ペン。
蛍光ペンは、重要な文字に視線を誘導し、はっきりと認識させるという意味で、集中力を途切れさせない道具です。
その蛍光ペンに2つの革命的な提案をするのが、コクヨの「2トーンカラーマーカー〈マークタス〉」(150円、税抜き)です。
まず1つめは、写真のように、ペン先が2つに分かれているところ。
2つのペン先はそれぞれ異なった色で、色の切り替えは、指先を軽くひねるだけ。手に持ったまま、重要度や内容によってラインの色を引き分けていくことができます。
もうひとつはこの2色の配色。同系色の「カラータイプ」と一方がグレーの「グレータイプ」があります。
カラータイプは濃淡の同系色。これまで蛍光ペンといえば黄色とピンクなど、異なった色でラインを使い分けるのが普通だったと思います。それは、強調の種類がAとBという感じで別のときには有効です。
しかし、同系色の濃淡で色分けするとAとaといった、重要度の強弱としてラインを区別できるのです。
さらにグレータイプの場合、グレーを引いたところは読みにくくなります。これによって、目に付かなくてよいところに対して、マイナスの強調ができます。
たとえば出席リストの出席者にはピンク、欠席者にはグレーでラインを引くと、出欠を区別しつつ、出席者が目立つようになりますね。
このようなちょっとした色の使い方だけで、チェックし直す際の視線の無駄を省き、集中して間違いを減らせます。
自分好みの筆記用具で、楽しみながら効率アップを
いかがだったでしょうか?
「集中力が途切れない」というテーマで筆記用具を集めてみましたが、どれも私のお気に入りでもあります。
これ以外にも選択肢はたくさんありますので、文具店に行ったら、ペンの違いに注目して選んでみてください。
普段から自分の好みや目的に合わせて筆記用具や文房具を積極的に選ぶことで、楽しみながら効率アップを目指しましょう。
編集:はてな編集部