高校や大学の入試において、避けては通れないのが小論文。多くの学校で、面接や試験に加えて、小論文が試験課題として出題されます。
しかし、小論文に苦手意識を持っている方は多いのではないでしょうか?
小論文で大切なことは、しっかりとした構成をつくることですが、その構成のつくり方にはコツがあります。
この記事では、「総合型選抜専門塾AOI」の小論文責任者・河守 晃芳さんに監修いただき、説得力のある構成の作り方や、小論文の基本ルールを紹介。
苦手な小論文を克服したい方、小論文の書き方を知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください!
小論文の書き方のコツ|構成の基本を理解しよう
小論文と聞くと、作文のようなものを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、小論文は作文とは異なり、構成や求められている内容、気をつけなければならないポイントなどが多くあります。
まずは、説得力のある小論文の構成について、例文とともに解説しましょう。
「小論文」と「作文」の違いを理解しよう
小学生のときから、読書感想文や日記というスタイルで、まとまった量の文章を書いてきた方がほとんどだと思います。
これら「作文」は、自分の気持ちや経験を上手に表現する、感性の豊かさや表現力が求められる文章でした。
一方、「小論文」は問われているテーマに対して、自分の意見や主張をまとめるものです。
読んだ相手に納得してもらえるような理由を添えて、論理的に説明しなければなりません。
小論文では、説得力のある、客観的な視点で書かれた文章が求められています。
構成の基本は「序論・本論・結論」
説得力のある小論文を書くには、しっかりとした構成が必要です。
小論文の構成は、序論・本論・結論の順番に書きます。
まず、この構成に沿った具体的な例文を紹介しましょう。
ここではテーマを「外国人労働者の受け入れについて」としてみました。
この例文を使って、それぞれの段落の役割について解説していきますね。
【序論】
序論は、与えられた設問の意図を理解し、結論を伝える部分です。
序論で結論を述べることで、内容がぶれることなく最後まで書くことができます。
また、読み手にとっても、書いてあるジャンルや内容が推測しやすくなり、ストレスなく読み進めることができます。
例文では、「外国人労働者の受け入れに賛成である」としています。
【本論】
本論は、結論に沿って自分の意見を述べ、論理的に話を広げていく部分です。
自分の意見だけでなく、客観的な証拠などが提示できると、説得力が増します。
【結論】
結論は、もう一度自分の主張を述べ、文章全体をまとめる部分です。
例文では、全体をまとめるとともに、序論で述べた主張を繰り返しています。
「主張→根拠(理由)→具体例→結論」の流れが◎
この流れは、実際に小論文を書くときに 「主張・その根拠・具体例・結論」と考えると書きやすいです。
先ほどの例文をこの流れに従って、書き直してみましょう。
先ほどの例文と比べていかがですか?
内容に厚みが出て、説得力が増していますね。
このように、具体的な根拠を読み手に紹介することで、あなたの持論が納得されやすくなるのです。
小論文で書く内容を構成に沿って考える
説得力のある小論文を書くためには、構成が大切であることが理解できたと思います。
それでは次に、構成を考えるコツについてまとめておきましょう。
出題の主旨や問題の条件を把握する
小論文を書く際、まず大切なことは、出題者が何を求めているか判断すること。
まず問題文をしっかり読んで、出題の主旨を把握することが大切です。
問題文では、「問題文を読んで持論を展開する」「問題文の内容を説明する」など、さまざまな要求をしているはずです。
また「具体例を挙げて」「体験談を交えて」「資料を読んで」など、構成に条件がついている場合もあります。
条件があれば、それらはすべて満たさなければなりません。
よく読んで、見落とさないようにしましょう。
聞かれたことに対して抜け漏れなく解答する
設問の条件が何かを確認し、求められていることに対して抜け漏れることなく解答することが大事です。
たとえば「日本の労働力不足に対する解決策を述べよ」と問われていたら、「解決策」について焦点を当て、述べなければなりません。
労働力不足の原因など、聞かれていない点について細かく解答する必要はないのです。
もちろん必要であれば言及しなければなりません。
聞かれたことには最初に的確に記述する
設問で聞かれたことについては、文頭でまず的確に記述しましょう。
読み手は、結論が聞きたいもの。
先ほどと同じく、 「日本の労働力不足に対する解決策を述べよ」と問われていたら、「解決策は、移民の受け入れです」と初めに書くのです。
結論を書いてから、その主張を補完する根拠や具体例をていねいに述べればよいでしょう。
主張したい内容が決まったら構成に落とし込む
問題文を読んで、結論が決まったら、構成を考えましょう。
構成とは、文章全体の設計図のようなものです。
思いつくままに書き始めてしまうと、とりとめがなく、説得力に欠ける文章になります。
また字数が足りなくなってしまったり、論点が結論からずれてしまったりすることも。
読み手を納得させる、効果的な構成を考えてみましょう。
主張を補完する根拠を出す
説得力のある小論文には、主張をしっかりと補完する根拠が書かれています。
読み手は、あなたの主張に対して「本当なの?」と思っています。
主張を補完する根拠とは、「そうか、そういう理由で主張するんだね」と理解してもらうためのものです。
根拠を補完する具体例が思いつく場合は書き出しておく
その根拠の信頼性を高めるためには、具体例が必要です。
具体例を提示できれば、読み手は納得できます。
「なるほど、その具体例があるなら間違いない」と思うのです。
たとえば、公式なデータがあれば、信頼性が高まりますよね。また、あなたの体験談を紹介することもよいでしょう。
具体例は多いほど説得力が増すもの。
思いついた具体例は、書き出しておきましょう。
論点や自分の考えはメモを活用して整理する
小論文の構成ができあがったら、結論の説得力を高めるような材料や、具体的な根拠を集めます。
その際、メモを活用して整理することが効果的。
頭のなかだけで考えていても、しっかりと内容をまとめることは難しいものです。
キーワード、構成の流れ、具体例を入れる場所など、思いついたことはどんどんメモに書き出してみましょう。
図解や記号、矢印、イラストなどを使って、視覚的にわかりやすく書くと、整理しやすくなります。
メモを取ることで、具体的な構成をイメージしながら原稿用紙に向かえるようになりますよ。
小論文の書き方のコツ|基本ルール8つを紹介
ここまでの解説で、小論文の構成のつくり方は理解できましたか?
さらにここからは、実際に小論文を書くときに知っておきたい8つのルールを紹介します。
①文字数に注意!◯◯字以内の9割以上は書く
小論文の問題のほとんどが、「○○字以内で」「約○○字で」と文字数に制限がついています。
この設問の文字数は、どのように解釈すれば出題者の意図にあうのでしょうか。
設問のパターンにあわせて解説します。
「○○字以内」と指定されたら9割書く
たとえば「800字以内」と指定されていた場合、720字(9割)は書きましょう。
800字だからといって、600字程度で書き終わっていては、出題者の意図を満たしているとはいえません。
また、800字以内ですから、801字以上も問題文の条件に反してることになります。
「○○字以上○○字以内」と指定された場合は、その上限に近づけて書く
書くべき字数の上限と下限が問題文に指定されている場合には、その範囲で書けば問題ありません。
ただし高得点のためには、できるかぎり上限の文字数にあわせて書くことが求められています。
「○○字前後」「約○○字」と指定されたら、文字数に近づけて書く
文字数が上記のように指定されている場合、可能な限りこの文字数に近づけましょう。
この場合の文字数は上限ではありません。
指定文字数の前後1割程度に収めることが求められています。
②小論文は「だ・である調」のみで、「です・ます調」NG
文章には、「だ・である調」と「です・ます調」の2種類があります。
です・ます調は、親しみやすく、読まれやすい文章が特徴です。
その一方、だ・である調は、丁寧語を使わず断定的にいい切るため、説得力のある文章がつくれます。
小論文では、結論や意見が、説得力のある根拠とともに書かれていることが大切です。
そのため、だ・である調で書くべきでしょう。
③段落分けや改行を適切に入れる
読み手にわかりやすい小論文を書くためには、必要に応じた段落分けをしなければなりません。
段落分けは、構成をはっきりさせるために大切です。
それぞれの段落では、いいたいことをひとつに限ると読みやすくなりますよ。
原稿用紙のルールとして、段落が変わる際には、必ず行頭を1文字下げることも忘れないようにしてください。
また、ときどき改行を入れることも大切です。 改行は、段落内で内容が変化するときや、長い段落でひと呼吸置くときなどにおこないます。
明確な改行ルールはないので、読み手にとって読みやすくなるよう工夫してみましょう。
④倒置法や体言止め、比喩表現などは使用しない
前述したように、小論文では「客観的で説得力のある論理展開」が大切です。
倒置法や体言止め、比喩表現などは、論理展開がわかりづらくなるので、使用しません。
倒置法
倒置法とは、文章の語順をあえて通常とは逆にし、言葉の印象を強める表現方法です。
通常の語順ではインパクトがありませんが、倒置法を使うことで、倒置した部分を読み手に訴えかける文章になります。
しかし、倒置法は文学的表現なので、小論文では使いません。
体言止め
体言止めとは、語尾を名詞や代名詞などの体言で止める表現方法です。
語尾が体言で止まっているため、文章のリズムが変化し、次の文章への注意を引きつけることができます。
しかし、体言止めでは主張が明確に伝わらず、論理的な文章とならないため、小論文では使用しません。
比喩表現
比喩表現には、「直喩」「暗喩」「擬人法」があります。
直喩は、「まるで夢のようだ」など、「ようだ」「たとえば」の語を使う表現方法です。
暗喩は、「彼は歩く百科事典だ」のように、何かに例えて表現します。
そして擬人法は、「風が頬を撫でる」のように、人間以外のものを人間に例える表現方法です。
比喩はいずれも主観的な表現方法なため、客観的な論理展開を必要とする小論文には向いていません。
⑤促音や拗音、句読点、「」などの記号は1マスに1字ずつ
促音(そくおん)とは、「がっこう(学校)」「はっぴょう(発表)」「ハッピー」など、小さな「っ」「ッ」で表されている音のことです。
そして拗音(ようおん)とは、「きょうかしょ(教科書)」「ちゅうか(中華)」「りゅうこう(流行)」のように、小さな「ゃ・ゅ・ょ」がついている語のこと。
促音や拗音も、原稿用紙は1マス使います。
したがって、「ちゅうか」の場合は、4マス必要です。
また、句読点やかっこなども同様で、それぞれ1マス使います。
ただし、句読点や閉じかぎ(」)を行頭に置くことはできません。
その場合は、前の行末のマスの文字とあわせて、2文字を1マスに書きます。
かぎかっこ「 」を使用するのは基本引用のみ
かぎかっこ(「」)は、文献や偉人の言葉などを引用するときだけ使用します。
また、かぎかっこは、一般的にはキーワードを強調したいときなどに使うこともあります。
しかし、小論文では、引用して紹介するときだけ使うことが効果的です。
⑥縦書きの原稿用紙なら数字の書き方は漢数字
縦書きの原稿用紙を使い慣れている方は、少ないのではないでしょうか。
縦書き原稿用紙では、数字は漢数字を使わなければなりません。
算用数字は、縦書き原稿用紙では使わないのです。
「二〇二一年」「一八六四年」は、「二千二十一年」「千八百六十四年」のように単位を含めて書いてもよいです。
ただし、書くスタイルはどちらかに統一しましょう。
ちなみに、原稿用紙が横書き用の場合、算用数字を用いることも可能です。
算用数字とアルファベットの小文字は半角(1マスに2文字)扱いで、アルファベットの大文字は全角(1マスに1文字)扱いで書きます。
⑦口語体(話し言葉)や略語はNG!
話し言葉や略語を使うと、文章が論理的になりません。
また、読み手の理解を妨げる可能性があります。必ず書き言葉を使い、正式名称で書くようにしましょう。
「~たり」は2回以上連続で使用する
「たり」は、並列・列挙の場合に使われる用法です。
したがって、ひとつの例だけを挙げる場合には使いません。
3回使うことも文法上問題ありませんが、列挙が多く、くどい印象があります。
どうしても3回使う場合には、文章を分けるなど、いい換えてみましょう。
「とか」は使用NG
「とか」は、話し言葉で使われます。したがって、小論文では使うことができません。
適切な書き言葉に書き換えましょう。
オノマトペ(擬態語・擬音語)を使用しない
オノマトペとは、擬態語や擬音語のこと。
擬態語とは、状態を文字で表現したものをいい、たとえば、「キラキラ」「ニヤニヤ」「コツコツ」「スラスラ」などを指します。
また擬音語は、「ワンワン」「ガタンゴトン」「ビリビリ」のように、ものが発する音を文字で表したものです。
これらオノマトペも、論理的表現には向いていないため、小論文では使いません。
1人称は「私」のみ
小論文では、「自分は」「僕は」などの一人称は使用できません。男女を問わず、「私は」を使いましょう。
また、身内の表現にも、注意が必要です。身内を表現する場合は、父、母、祖父、祖母、兄、姉などと表現しましょう。
お父さん、おじいちゃんのような表現は使いません。
⑧同じ言葉を繰り返さない
近接同語とは、ひとつの文章内で同じ言葉を繰り返すことです。
近接同語を使った文章は、単調で無駄が多くなってしまいます。
また、重複表現とは、同じ意味のことを重複して使用する表現のこと。二重表現ともいいます。
近接同語や重複表現を用いた小論文は、表現力が足りないとみなされます。
使うことがないよう気をつけましょう。
小論文の構成ごとに例文を紹介
では最後に、仮のテーマを使って、小論文の構成ごとに例文をあげてみましょう。
「自動車の自動運転の進化について自由に述べなさい」と課題が出題されたと仮定して構成を考えてみます。
序論
序論では、“与えられた設問の意図を理解し、書くべきテーマと結論を決める”と解説しました。
テーマは「自動車の自動運転」です。
序論では、自動運転についての問題提起からおこないます。
今回は、「自動運転は積極的に導入すべき」という結論で書きます。
例文 |
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私は、地方都市での移動手段として、自動車の自動運転を積極的に導入するべきと考える。 |
説明 |
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この例文のように、序論で重要なのは「問題提起をすること」「結論を述べること」です。
今回は「地方都市は自動運転を積極的に導入すべき」が結論にあたります。 読み手にわかりやすいように、あまり主観を入れすぎず、簡潔に書きましょう。 |
本論
続いて本論について説明します。
本論では、序論で明確にした主張を具体的に紹介し、読み手に納得してもらう部分です。
そのためには、「意見の提示」と「論拠の提示」に分けて書き進めるのが効果的です。
意見の提示
例文 |
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地方都市が過疎化する原因のひとつに、自由に移動できないことがある。鉄道が廃線となってしまうと、運転できない人々の行動範囲はバスに限られてしまう。自動運転により、運転技術がなくても移動が自由にできるようになるだろう。ルートさえ設定すれば、急な坂道でも難なく上り下りできるようになる。自動運転の地方都市への恩恵は計り知れない。 |
説明 |
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「意見の提示」では、序論で述べた結論の理由を簡潔に述べます。 |
論拠の提示
例文 |
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地方都市ではバスも、運転手不足や採算性の悪化により、運行継続が難しくなっている。国土交通省の「自動車輸送統計調査」によれば、この10年間でバス路線網は40%減少していることがわかる。バスの自動運転により、低コストで安定した運行が可能になり、高齢者も安心して地方都市に住むことができる。 |
説明 |
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主張についてはその論拠を紹介することで、説得力を増すことができます。 ここでは国土交通省の資料を提示し、主張に説得力をもたせています。 |
結論
結論は、今までの構成をまとめ、読み手に主張を確認してもらう部分です。
例文 |
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このように自動車の自動運転は、地方都市の移動手段として大いに期待できる。積極的に導入するべきだと考える。 |
説明 |
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今回のサンプルでは、「自動車の自動運転について述べよ」という質問に対し、「地方都市で積極的に導入すべき」という解答をしました。
小論文の構成として、序論で主張、そして本文で説得し、結論で再度主張していることがわかると思います。 |
まとめ
今回は、小論文の書き方について例文を交えて解説しました。
小論文では、読解力、発想力、論理的思考力など、さまざまな知識が試されます。
どんな問題が出ても対応できるよう、日ごろから新聞を読むなど、社会の動向に関心を持つことも大切ですね。
小論文の書き方に迷ったら、ぜひこの記事を参考にしてください。