キャンプや川遊びなど、子どものころの自然体験活動の記憶を、大人になってもずっと覚えている方は多いのではないでしょうか。
大自然は子どもの心に大きな影響を与えます。“コロナ禍”で人の多い場所に出かけにくい今だからこそ、子どものために屋外で自然と触れ合える機会をつくれるといいですよね。
今回は、カヌー体験や川遊びなどのイベントを通して、川の大切さを啓発するNPO法人 「五ヶ瀬川(ごかせがわ)流域ネットワーク」副理事長の山田
大志さん、事務局員の阿部
将彰さんにインタビューしました。
子どもに自然体験活動の思い出をつくってあげたい方は、ぜひご一読ください。
五ヶ瀬川を守って文化の発展に貢献
ー本日はよろしくお願いします。まず、NPO法人「五ヶ瀬川流域ネットワーク」の設立の経緯や目的を教えてください。
山田 大志さん(以下、山田):NPO法人「五ヶ瀬川流域ネットワーク」は、理事長の土井
裕子が、流域の歴史や山・川を守る知恵、技術の伝承、誇りを持って暮らせる地域づくりについて五ヶ瀬川流域の方々と話し合い、「今やらなければ手遅れになる地域の課題を解決したい」と、2002年に設立しました。
五ヶ瀬川流域は、源流から約106kmもあります。この広い地域の連携を深め、情報交換および住民の交流を促進することで、環境の向上や文化の発展につなげることが当団体の目的です。
また、一級河川の水質調査において、8年連続で「水質がもっとも良好な河川」に選ばれるほどの清流・五ヶ瀬川を、次の世代につないでいくことも私たちの役割だと思っています。
ー「五ヶ瀬川流域ネットワーク」は、どのような活動をしているのでしょうか。
山田:「五ヶ瀬川流域ネットワーク」は、宮崎県延岡市にある「リバーパル五ヶ瀬川」という川の資料館を管理運営しています。
また、干潟遊びや川遊びのイベントを開催し、子どもたちを中心に川の楽しさを満喫してもらい、川を大切にしてもらうための啓発活動もおこなっています。
リバーパル五ヶ瀬川の目の前には「友内川(ともうちがわ)」という1.7kmほどの川があるのですが、河口のところは干潮の時間になると干潟になるんですよ。
そこは、シオマネキという貴重なカニや、アカメという魚の稚魚など、絶滅危惧種の動植物が生息生育している、とても貴重で自然豊かな場所になっています。
そのような友内川で川に住む生き物や野鳥の観察をしたり、ゴミ拾いをしながらカヌー体験をしたり、イベントを楽しみながら自然に触れることで、参加した子どもたちが「これからの川を守る人」になってくれることを期待しています。
このような啓発活動のほかに、安全な川遊びのための指導者の育成、五ヶ瀬川流域のまちづくりや産業の推進をはかる活動も展開していますね。
たとえば、杉の生育のために切り落とした枝葉を活用したクリスマスリースづくりや、中山間地の歴史や食を知るための交流活動をこれまでに実施してきました。
クリスマスリースづくりは、最上流部の五ヶ瀬町の女性グループが引き継いでいて、今でもリースの製作・販売をしているんですよ。
カヌー体験や川遊びが人気
ー「リバーパル五ヶ瀬川」はどのような経緯で設立されたのでしょうか?
阿部 将彰さん(以下、阿部):リバーパル五ヶ瀬川の近くには、友内川のほか「北川」という川がありますが、北川は1997年、台風19号による大きな被害に見舞われました。
そのため災害対策を目的とした調査がおこなわれたのですが、その際に北川は、とても豊かな自然環境を有していることがわかったのです。
また当時は、河川法が変わった影響で自然環境に配慮した整備がなされている時期でした。その一環で、水辺で自然観察や川のことが学べる場として誕生したのがリバーパル五ヶ瀬川です。
ー「リバーパル五ヶ瀬川」内にある施設のうち、特に人気の高いものは何ですか?
阿部:リバーパル五ヶ瀬の川敷地内にある降雨体験室は、1時間で20mmから187mmの大雨を体験できて、子どもたちからの人気が高い施設です。小学生の遠足でよく使われますよ。
子どもたちは喜んで体験しますが、大人にとっては雨の怖さを十分に体験できます。
五ヶ瀬川に関する資料を保管している蔵書スペースもあり、ほかではなかなか見られない本も揃っているのでおすすめですね。
市内の小学校高学年の子どもたちは、地元を知るために学校の授業で五ヶ瀬川について学びますが、インターネット検索だけでは情報が集まらないので、リバーパル五ヶ瀬川をうまく活用いただければと思います。
ー人気のイベントについて教えてください。
阿部:リバーパル五ヶ瀬川の目の前の友内川の干潟で開催するイベントは、幼稚園や小学校の遠足、それから児童クラブなどの体験活動の場として、とても人気がありますね。
たとえば、環境・河川の保護啓発として、カヌー体験を楽しみながら、友内川を中心に水辺からしか拾えないゴミを回収するイベントを継続して実施しています。
また、年1回は本流の五ヶ瀬川で子ども向けの川遊びイベントを開催し、保護者の方には安全な川遊びの方法を学ぶ機会を提供しています。
それから昨年は実施できなかったのですが、リバーパル五ヶ瀬川周辺地域の方々と連携して毎年開催している「東海(とうみ)さるく」というイベントがあります。
リバーパル五ヶ瀬川のそばには、千石船が入ってくる港町があるので、町のなかが迷路みたいになっていて面白いんです。水神さんや庚申塔などの史跡もたくさんあるので、それらを巡るスタンプラリーをやっています。
アーティストとのコラボレーション企画 「アーティストinレジデンス」も東海さるくの見どころです。東京藝術大学や金沢美術工芸大学から毎年4~5人のアーティストを呼んで、感じたことを作品で表現していただいているんです。
オンラインでも楽しめるイベントを予定
ー今後開催予定のイベントについて教えてください。
山田:11月7日に、宮崎県日向市で「第20回九州『川』のワークショップin日向」というイベントを開催します。
九州各県からさまざまな団体が集まり、それぞれの活動内容や情報の共有などをおこなう交流の場となっているのですが、今回は当団体が事務局として運営を担当することになりました。
日向市の「耳川(みみかわ)」という川には九州電力のダムが9つもあり、ダムで川の流れが止まってしまうので、出水時にダムを開閉して砂を流すという取り組みをしており、この様子を見学してもらいたかったのですが、”コロナ禍”の影響でオンライン開催となります。
現在イベントの実行委員会で、オンラインでも十分に楽しんでもらえるよう企画を練っているところですね。
それから、日程は未定ですが、ウォータースポーツである「スタンドアップパドルボード」と、地域の事業者によるマルシェ(市場)のイベントも企画しています。
今後は友内川の干潟の清掃活動、野鳥の観察会なども実施する予定です。
イベントには年齢を問わず参加いただけるので、ぜひお越しください。たとえば野鳥の観察会は、2歳のお子さまも参加されていますよ。
延岡市の豊かな自然環境の魅力を子どもたちに伝えたい
ー「五ヶ瀬川流域ネットワーク」の活動を応援したい場合は、どのような方法があるのでしょうか?
阿部:公式LINEのアカウントに登録していただけたらうれしいですね。
昨年度、公式LINEアカウントを作成したところ、これまでに約80人の方々にご登録いただきました。本当にたくさんの方とのつながりを実感しながら、毎日活動しているところです。
私たちはイベントを企画する際、「参加者の方に感動してもらいたい」という想いで毎回取り組んでいるんですよ。
さまざまな体験を通して当団体や延岡市の川のファンになっていただたいですね。
ー今後の展望について教えてください。
山田:延岡市は市街地から30分圏内に海や山、川があり、そのどれもが一級品の自然環境です。
秋には日本最大級の100m規模の鮎ヤナ(鮎を捕まえるための仕掛け)がかかり、それを見られるのは日本でもここしかありません。
このように、「延岡にはとても豊かな自然環境がある」ということを、今後も子どもたちに伝えていきたいと思っています。
「リバーパル五ヶ瀬川」は「リバー(川)」「パル(仲間)」をあわせた造語なんです。私たちが提供する体験を通して、子どもたちが自分の住む町や地元の川の魅力を知り、大好きになってくれたらうれしいですね。
ー最後に読者へ向けてメッセージをお願いします。
山田:干潟で捕まえたカニを見たり、自由自在にカヌーに乗ったりしていると、子どもたちの目は「こんなにキラキラするんだ」というくらい輝くんですよ。
鳥の声を聴き、花があったら匂いをかいで触って、そんなふうに五感を使って自然に触れ合うことで、子どもたちの感性が育まれているのを感じます。
どこかに遊びに行ったり遠くへ出向くのはなかなか難しいご時世ですが、だからこそ身近な自然と触れ合う機会を親子でつくってもらいたいです。
当団体のホームページから、身近な自然を楽しめるフィールドビンゴの用紙をダウンロードできるので、そちらも利用してみてください。
宮崎県延岡市の近くにお住まいの方は、ぜひリバーパル五ヶ瀬川へ自然体験をしに来てくださいね。
阿部:私たちはいつも、イベントに参加してくれた子どもたちから元気をもらいながら活動しているんですよ。また、自然のなかで遊ぶことが、どれだけ子どもたちの成長に大切なのかも感じています。
子どもたちがもっと元気でいられるよう、ぜひ保護者の方に当団体について知っていただき、子どもたちが自然に触れられる機会をつくっていただきたいですね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人 五ヶ瀬川流域ネットワーク