男女平等の法律が施行されて70年以上経ちますが、まだまだ実現には至りません。昨今ではLGBTQやジェンダー問題がよく取り上げられるようになりました。
これらの問題に潜むのは、社会的弱者を受け入れないことに根づいた思想です。
本当の意味でやさしく、差別しない子どもに育ってほしいのなら、これらの問題に挑むNPO法人「熊本YWCA」の活動に参加してみてはいかがでしょうか。
今回は「熊本YWCA」の会長を務める高野 和佳子さんに活動内容についてお話を伺いました。
子どもにさまざまなものの見方を学んでもらいたい保護者の方は、ぜひご一読ください。
社会的弱者が生きやすい世界を目指して活動するNPO法人
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、NPO法人「熊本YWCA」を設立した経緯や概要について教えてください。
高野 和佳子さん(以下、高野):まず「YWCA」(Young Women's Christian Association)とは、1855年にイギリスで発足した国際NGO(非政府組織)です。
女性や子ども、高齢者、マイノリティなど弱い立場にある人が生きやすい世界を実現するため、 世界中の女性が力を合わせて活動しています。
日本でも24の地域にYWCAがあり、そのうちのひとつがNPO法人「熊本YWCA」です。
「熊本YWCA」は1964年11月に発足し、女性支援や留学生支援など、さまざまな活動をおこなってきました。
ちょうど今、取材を受けているこのスペースも、活動のひとつとして運営しているコミュニティカフェ「ぷれはぶCafé」です。
「ぷれはぶCafé」はどなたでも気軽に利用でき、どなたにとっても居心地のよい場所になればと思い運営しています。
近年は、この 「ぷれはぶCafé」を中心にさまざまなイベントを開催したり、活動を発信しています。
キャンプやお米づくりなど多岐にわたるボランティア
ー活動内容について詳しく教えてください。
高野:子どもに楽しんでもらえるものだと、まず小学1年生から6年生を対象にした「なかよしクラブ」があります。
なかよしクラブでは、毎週土曜日に「ぷれはぶCafé」に集まった子どもたちと、遊んだり勉強をしたりお昼ごはんを食べたりします。
子どもたちの相手をしてくれるのは、大学生をはじめとするユースメンバーです。
参加費は昼食代も合わせて1回10円なので、どなたでも気軽に参加しやすいと思います。
高野:それから「福島&熊本キッズ春のわくわくキャンプ」という活動をおこなっています。東日本大震災のときから続けているので、次回で7回目になりますね。
このキャンプは、いわゆる「保養キャンプ」といわれ、放射能汚染地域に住む大人や子どもたちが少しでも放射能の少ない土地で過ごすことを目的にしています。
短期間のキャンプであっても、免疫力が高まることや、心のリフレッシュになることが確認されています。
昨年のみコロナで延期せざるを得なかったのですが、例年ですと毎年3月下旬に4泊5日で開催しています。
参加者は福島から15名の小学生、熊本から15名の小学生と合計30名ほどです。
そこに大学生やユースメンバー、シニアメンバーがサポートとして入るため、大体50~60人ぐらいのキャンプになります。
ちなみにキャンプといってもテントを張るのではなく、大きな施設をひとつ借りて、みんなで寝泊りする形です。
キャンプ中は、自炊やワークショップ、自然のなかでの体験などをします。
ワークショップや体験のテーマは毎年異なり、昨年は「絵本」をテーマに取り挙げました。
自分たちで絵本の続きの物語をつくって、絵を描いて、できたものは発表して感想を言い合って…といった形ですね。
これらの体験では、ただ楽しかっただけで終わらないように心がけています。
たとえば昨年の「絵本」をテーマにしたキャンプであれば、絵本づくりを通して平和について考えてもらったり、人権や自然環境のことを知ってもらったりしました。
高野:また、「熊本YWCA」のなかにあるユース中心にメンバー構成されている「Cosmopolitan委員会」が、「米米クラブ」という活動をおこなっています。
具体的には、昨年7月に水害被害を受けた人吉市でお米づくりのボランティア活動です。
水害によってお米を作れるような状態の水田ではなくなってしまったので、まず水田を整えるところから始めました。
今年に入ってからは田植えや草取り、稲刈りなどの支援も月に1回ほどしています。
こちらは対象年齢をとくに設けていないので、どなたでも気軽にご参加いただけますよ。
支援しているのは、被害が大きかった大柿地区のほか、ご高齢の方がとても多いエリアです。
元気いっぱいの子どもたちが手伝ってくれれば、農家さんたちの精神的な支援にもなるのではと思っています。
高野:毎年11月頃には「干し柿講座」を開催しています。
渋柿が収穫できる状態であれば収穫から、それが難しい年は用意した渋柿を使って一から干し柿をつくるんです。
干すまでの過程の難しさや工夫を知ることができ、ちょっとした学びを得られると思います。
こちらも対象年齢はとくに設けていないので、興味があれば子どももお父さんお母さんもぜひご参加ください。
今後もさまざまなイベントを開催予定
ー今後、開催予定のイベントがあれば教えてください。
高野:まず「ぷれはぶCafé」で「ワールド・カフェ」というイベントを長期間にわたって開催しています。
各国の料理を楽しみながら、その国について学ぶことをテーマにしていて、10月はアフリカ「ザンビア共和国」の料理を提供予定です。
それから、「ぷれはぶCafé」がちょうど2周年を迎えるので、新たなイベントを企画しています。
このように「ぷれはぶCafé」では、気軽に参加できるイベントの開催が多いですね。
活動内容のひとつとしてお話した「米米クラブ」についても、11月には収穫祭を予定しています。お米を収穫して、お釜でご飯を炊く体験ができますよ。
そのほか少し先になりますが、今年は12月に皆で「シュトーレンづくり」をする予定です。
自分たちで作ったシュトーレンを、クリスマスに向けて少しずつ食べるのは楽しいと思いますよ。
ーイベントが盛りだくさんですね!支援を希望する方に向けて、おすすめの支援方法があればご紹介ください。
高野:「熊本YWCA」では、さまざまなオリジナルグッズを制作・販売していますので、グッズを購入していただくことで支援になります。
グッズには、Tシャツやバッグ、ステッカーなどがあります。また、災害や戦災で被害を受けた方々の手作り品なども置いています。どれもシンプルながらスタイリッシュデザインなので、ぜひ一度チェックしていただければと思います。
また、より直接的な支援になりますと、寄付やYWCAのメンバーになっていただくことも可能です。
「熊本YWCA」には、大学生からシニアまで、幅広い年代の女性が参加しています。
「何かを始めたい」という単純な気持ちからでも構いません。
まずは「熊本YWCA」が開催しているイベントに参加したり、「ぷれはぶCafé」にお越しください。
そのうえで考えに賛同いただけたのなら、団体に加入、もしくはご支援いただけると幸いです。
活動を通して「広い視野」や「自分自身で考える力」を
ー今後の展望についてお聞かせください。
高野:私たちはジェンダーカフェやLGBTQ+の居場所づくりなど、今現在も多岐にわたって活動をしています。
今後はより一層、活動を広げていきたいと考えています。
なぜならそのようなひとつひとつの活動があってこそ、さまざまな年代や立場、性別の人々にYWCAの考え方を広げていけるからです。
私たちの活動に多くの人が参加してくれるように、ひとつひとつの活動内容を充実させていきたいですね。
それから、どの活動にしても子どもたちに積極的に体験してもらいたいと考えています。
子どもには理解できない話もあると思いますが、
小学生や幼児期の体験というのは、その後の生き方に大きく関わってきます。
たとえ理解できなかったとしても、その場で何かを感じてもらうことは、その後の成長につながっていくのではないでしょうか。
そのため、保護者の方が子どももつれて参加しようと思えるようなイベントや場所づくりを心がけていきたいと思っています。
ー最後に読者の方へひと言メッセージをお願いします。
高野:私たち「熊本YWCA」は、もともと外国人や留学生の支援から活動を始めた団体です。
そのため、いろいろな国の人とつながる大切さを今後も忘れずに活動していきたいと思っています。
私たちがおこなっているさまざまな活動のなかで磨かれるのは、「広い視野」や「自分自身で考える力」です。
そのような力を身につけた子どもたちが大人になれば、きっと世界はもっと生きやすいものに変わるでしょう。
社会的マイノリティの人たちを置き去りにするのではなく、すべての人が共に社会をつくりあげていける世界にしていきましょう。
ネットワークを広げながら、さまざまな体験をお子さんにさせたい方は、ぜひ「熊本YWCA」の活動にご参加ください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人 熊本YWCA