夢を持つ子どもはたくさんいますが、夢を叶えるためにはたくさんの努力が必要です。なかには挫けたりあきらめたりする子どももいることでしょう。
「NPO法人虹」はそんな夢を追いかける子どもの第一歩を手助けしてくれる団体です。
今回は「NPO法人虹」の理事である岩尾 雅弘(いわお まさひろ)さんと、そのなかの「Beste RG」という新体操団体の代表である堤 沙織(つつみ さおり)さんにお話を伺いました。
子どもに夢を持ち続けてほしいと願っている保護者の方は、ぜひご覧ください。
子どもに夢や希望を持ってもらうために立ち上げた団体
ー本日はよろしくお願いいたします。まずは「NPO法人虹」はどういった経緯で立ち上げた団体なのでしょうか?
岩尾 雅弘さん(以下、岩尾):「NPO法人 虹」は、2015年4月に任意団体として設立した「きつきジュニアAC(アスリートクラブ)」を基盤とし、2020年12月に総合型地域スポーツクラブとして設立した団体です。
総合型地域スポーツクラブとは、地域の方々が、身近な地域でスポ-ツに親しむことのできるタイプのスポーツクラブで、子供から高齢者まで(多世代)、様々なスポーツを愛好する人々(多種目)、初心者からトップレベルまで、それぞれの志向・レベルに合わせて参加できる(多志向)という特徴を持っているスポーツクラブです。
設立の経緯ですが、今の時代、グローバル競争の加速化や産業構造の変化等が大きく進んでいて、子どもたちの将来の描き方に大きな変化がもたらされていると感じていました。
子どもたちが一生懸命頑張っていても夢や希望は叶わない現実はありますが、夢を持つ勇気というものを知ってもらったり、自分自身を信じていなければ成し得ないことがあること、虹色の数だけ夢を持ち続けられる環境を作ることを目的に「NPO法人 虹」を設立しました。
子どもたちの夢を作りあげる力、その第一歩になれたらと願っています。
陸上をはじめダンスや書道教室などを展開
ー「NPO法人虹」でおこなわれている活動について教えてください。
岩尾:子どもたちが参加する活動は、「きつきジュニアAC」「Beste RG」「ダンス教室」「書道教室」「キッズアカデミー教室」「ジュニア強化練習会」の6つです。
「きつきジュニアAC」では陸上教室をおこなっており、参加している子どもは小学1年生から高校生までで、小学生が94名、中学生が15名、高校生が2名の合計111名が在籍しており、毎週水曜日の通常練習と不定期で強化練習をおこなっています。
堤 沙織さん(以下、堤):「Beste RG」では新体操教室と新体操クラブチームを運営しています。
名前の由来は、新体操の発祥の地であるドイツで1番を意味する「Beste(ベステ)」というドイツ語からで、子どもたちが一人ひとり1番いい演技を目指そうということと、全国に誇れるような1番いいクラブチームを作りたいという想いからこの名前をつけました。
「RG」は新体操を意味する「Rhythmic Gymnastics」の略です。
年齢層は2歳から13歳の中学1年生までで、現在53名が在籍しており、加えて高校生が3名ほどコーチの補佐を兼ねた選手として活動してます。
岩尾:「ダンス教室」は小学1年生から小学6年生まで、20名が在籍。練習日は月に1回、毎月第4日曜日の開催。
「書道教室」は小学生が2名在籍していまして、練習日は毎月第1および第3土曜日の月2回の開催です。
「キッズアカデミー」は小学校入学前の5歳から6歳の子どもが対象で、11名在籍していますね。
「ジュニア強化練習会」は地域内の3つの中学校に所属する陸上競技選手の強化を目的としており、3校そろっての合同練習を月に1回開催しています。元実業団選手や日本スポーツ協会公認陸上競技コーチが中心となって取り組んでいる事業です。
身体能力を向上することだけが目的ではない
ーそれぞれの活動ではどのようなことが学べるのでしょうか?
岩尾:「きつきジュニアAC」では「体力向上コース」と「競技力向上コース」の2つのコースを設けており、参加選手それぞれの体力や目的、目標に合わせて活動しています。
「体力向上コース」は、学年ごとにそれぞれの年代に合ったトレーニングを実施しており、子どもたちの年齢に見合った体力をつけていく内容。
「競技力向上コース」は小学4年生以上の希望者が対象で、より競技に集中した本格的なトレーニングに取り組めるコースです。
与えられた練習メニューをこなすのではなくて、選手自身が考えながら練習を作っていくことで、選手自身に足りないものの自覚や、自ら積極的に練習に臨んでいく環境を作っていくことも目指しています。
堤:「Beste RG」も含め、「虹」では身体能力の向上だけでなく、礼儀などの人間の基礎となる部分を身につけてもらうことも考えて活動しています。
そのため、指導者自身が挨拶を笑顔でしたり、伝えたいことをわかりやすく話したり、困ったときにはお互いに助け合ったりしているところを子どもに見せることが必要ですし、それを子どもたちがどう感じ、どう伝わっているかを見守っていくのも重要と考えています。
岩尾:「ダンス教室」では、どのスポーツでも共通するリズム感の育成がおこなえるほか、情操性、協調性、忍耐力を養うことができます。
毎月、さまざまなダンスを扱っており、ヒップホップやジャズ、バレエからアイドルダンスまで幅広く学ぶことができる内容です。
ー文化系の活動である「書道教室」についてはいかがでしょうか?
岩尾:最近はデジタル化が進み、書くことに対する需要が減ってきているのが現状です。
そのなかで伝統文化である書道を絶やさず、書に対する知識や思考力、表現力を高めて豊かな心を次世代に継承していくことを目的としています。
また、硬筆・⽑筆を通じて筆の特性を理解したり⽂字の成り⽴ちを学ぶといったこともおこなっています。
ー「キッズアカデミー」については、5歳と6歳のみを対象にしているのはなぜでしょうか?
岩尾:5歳から8歳の子どもは「プレゴールデンエイジ」と呼ばれる期間で、神経系が著しく発達する時期のため、脳をはじめ体内にさまざまな神経回路が張りめぐらされていく大切な時期といわれています。
常に新しいものに興味が移っていく時期でもあるので、多種多様なスポーツやアクティビティなどで神経回路にさまざまな刺激を与えて、⼦どもたちの興味と神経系の配線を多様に形成していくことを目的に開催しています。
夢に向かって第一歩を踏み出す子どもを応援したい
ー今後の展望について教えてください。
堤:虹では選手それぞれが違うスポーツや文化活動をしていますが、お互いの行き来は自由です。
例えば、新体操の子どもたちが陸上のコーチにトレーニング法を教わり、違った角度から身体へのアプローチをすることで、子どもたちの技術向上に役立つと共に、コロナ過で我慢することが多い子どもたちのモチベーションアップにも繋がります。
とても良い環境の中で練習に取り組めているので、今はコロナ過で子ども達同士の交流はできない状況ですが、違うスポーツ同士の合同練習もしたいと考えています。
岩尾:将来的には、地域づくりの拠点となるような魅力溢れるスポーツクラブをめざしています。
そのため、毎年同じことを継続しておこなうことも重要なのですが、子どもたち、指導者⾃⾝の成⻑のためにも、今までの常識に捉われずに真逆のことをしてみたり、新しいことにも挑戦していきたいと考えています。
また、地域の方々の声にも耳を傾けながら、魅力ある事業やイベントを計画して、ひとりでも多くの方が「このスポーツクラブに入ってよかった」と感じてもらえたり、夢や希望を見つけてもらえるように皆で取り組んでいきたいです。
さらに、将来このクラブからオリンピックに出場するような選手の育成もおこなっていきたいと考えています。
ー最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
堤:どの年齢の子どもにも、人生のなかで大きな一歩を踏み出すターニングポイントがあると思います。
子どもが踏み出そうとする第一歩は非常に大事ですので、それを親とともに手助けしていきたいですね。
私も「虹」の立ち上げの際に、思い切って一歩を踏み出したことで人生が一変し、いいことも悪いこともすべてが今の私のパワーになるということを実体験から感じています。
岩尾:夢というのはかなわないこともあります。でも、自分が信じて頑張ったことは決して無駄にならず、その想いは将来の自分の子どもだったり、その次の世代の選手たちに必ず引き継がれて、さらに大きくなっていくと思っています。
最初から自分はダメだとか、無理だとか、くじけそうな物事は多いと思いますが、自分を信じて頑張っていることは、いつか自分自身の大きな財産となり、かけがえのないものになっていくので、まずは自分自身を信じることから始めてもらいたいです。
遠くに思い描いている夢も、目の前の一歩の積み重ねだと思うので、1日1日の時間を大切に過ごしてほしいです。
岩尾・堤:「Start a Brand New Hope」それぞれの希望をはじめよう!
ー本日は貴重なお話をしていただきありがとうございました!
■ 取材協力:NPO法人虹