有名な数学の定理を聞かれると、「三平方の定理」を思い浮かべる人も多いのではないでしょう。
もしかしたら、「ピタゴラスの定理」という名前のほうが、なじみ深いかもしれません。
「三平方の定理」は、直角三角形の辺の長さを求めるときに使える、シンプルで基本的な定理。とても便利で使い勝手がよく、高校入試で図形問題を解くときに必要になってきます。
そのため、理解が曖昧なままで放置してしまうと、手遅れになってしまう可能性も…。定理自体はとても簡単なので、この機会にしっかりとマスターしておきましょう!
この記事では、オンライン受験コンサルティング「ポラリスアカデミア」代表の吉村 暢浩さんに監修いただき、解き方のコツや応用問題の対処法なども紹介します。
「三平方の定理」を理解するためのポイントや例題を詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
三平方の定理とは?公式を紹介
三平方の定理とは、直角三角形において3辺の長さの関係を表す公式のことをいいます。
直角と隣り合う2辺の長さをそれぞれa、b、直角の向かい側にある最も長い辺(斜辺)の長さがcとなる直角三角形があるとします。
このとき、a²+b²=c²が成り立つのです。これが三平方の定理。とてもシンプルですよね!
この定理を使えば、直角三角形の2辺の長さがわかっているときに、残りの辺の長さを求めることができます。
三平方の定理は基本的に中学3年生の数学で習いますが、高校数学でも必須。
また、高校入試レベルの問題では、そのままの形で登場することはほとんどなく、相似や合同など、応用問題を解く際のパーツとして必要になります。
一見、三平方の定理を使う場面か判断しにくい問題もあるため、問題を見極める力も身につけなければなりません。この記事を読んで、しっかりと頭に入れておきましょう!
三平方の定理の証明
三平方の定理の証明法は、実に100以上あるといわれています。
そのなかで正方形を用いた証明を紹介するので、一緒に考えてみましょう。
斜辺c、ほか2辺がそれぞれa、bとなる直角三角形を4つ組み合わせて、1辺がa+bとなる正方形をつくります。
このとき、大きな正方形の内側に1辺がcとなる小さな正方形ができますよね。
ここで、それぞれの正方形の面積を考えてみます。
まず、大きな正方形の面積は1辺がa+bなので、(a+b)²...①
次に、小さな正方形の面積は1辺がcなので、c²...②
また、小さな正方形の面積は、大きな正方形の面積から4つの直角三角形の面積を引くことで求めることができます。
4つの直角三角形の合計面積は、1/2ab×4=2ab...③
①、②、③をまとめると、
(a+b)²-2ab=c²
a²+2ab+b²-2ab=c²
a²+b²=c²
以上で証明が終了します。
三平方の定理には、ほかにもさまざまな証明方法があるので、気になる方は調べてみてくださいね!
三平方の定理を使って実際に問題を解いてみよう
それでは早速、三平方の定理を使った練習問題を解いてみましょう。
直角三角形の2辺の長さがわかっているので、三平方の定理を使えば残りの辺の長さを求めることができますね!
それでは、斜辺に注意して三平方の定理に当てはめてみましょう。
問題ではxが斜辺となっているので、
5²+12²=x²
25+144=x²
x²=169
x=√169=±13
x>0なので、答えはx=13です。
斜辺を当てはめる場所さえ間違えなければ、簡単に求めることができます。
【最重要】直角三角形の辺の比と角度7パターンを紹介
三平方の定理はとても便利ですが、辺の長さが大きくなると計算に時間がかかってしまうのが欠点です。
そのため、計算時間を短縮するために、 テストによく出る直角三角形は暗記しておくことがおすすめです。
ここでは、辺や角度に特徴のある7パターンの直角三角形をピックアップ。
覚えやすい語呂合わせも紹介するので、頑張って暗記しましょう!
ピタゴラス数は整数だけで三平方の定理が成立する三辺の比
三平方の定理を満たす3つの数字には、3つともが整数となるような組み合わせが存在します。
たとえば、先ほどの練習問題に出てきた「5:12:13」の組み合わせもその1つ。
このような、3つの数字の組み合わせは「ピタゴラス数」と呼ばれます。
さらに、ピタゴラス数はそれ自身が三平方の定理を満たしますが、それだけでなく、3辺の比がピタゴラス数と同様になるすべての組み合わせがピタゴラス数となるのです。
たとえば、「5:12:13」をそれぞれ2倍した「10:24:26」も三平方の定理を満たします。
①辺の比が3:4:5
ピタゴラス数の中で、もっともシンプルで有名な組み合わせが3:4:5です。
三平方の定理で確かめてみましょう。
3²+4²=9+16=25=5²
このように、定理を満たすことがわかりますね。
3:4:5の比をとる直角三角形はテストに出る確率がとても高いので、真っ先に覚えましょう。
以下のような語呂合わせで覚えてしまうのが手っ取り早い方法です。
②辺の比が5:12:13
次にシンプルなのが、5:12:13の組み合わせです。
この比をもつ直角三角形も頻出なので、しっかりと覚えておくのが大事。
下記の語呂合わせで覚えましょう!
③辺の比が8:15:17
続いての組み合わせは8:15:17。
この組み合わせは連続する数字もなく、少し覚えにくいかもしれませんね。
語呂合わせを使って、頑張って暗記しましょう!
④辺の比が7:24:25
最後の組み合わせは7:24:25。
24や25の2乗を実際に計算しようとすると、少し面倒ですよね。
暗記で計算時間を短縮しましょう。
下記の語呂合わせで覚えてみてくださいね!
平方根(ルート)が含まれる有名な直角三角形の三辺の比
続いて紹介するのは、角度や3辺の比が特徴的な直角三角形。
3辺の比に平方根(ルート)が含まれますが、暗記しておけば簡単に計算できます。
慣れれば暗算で求められるようになるので、スムーズに問題が解けますよ!
⑤辺の比1:1:√2
内角が45°、45°、90°となる(二等辺)直角三角形は、3辺の比が1:1:√2となります。
三角定規に使われている三角形なので、角度を覚えている人も多いかもしれませんね。
角度と辺の比を一緒に覚える必要がありますが、計算がラクになりますよ!
たとえば、1つの角度が45°、直角に隣り合う1辺の長さが3cmの直角三角形を考えるとき、斜辺の長さはいくつになるでしょうか?
三平方の定理を使っても求められますが、辺の比が「1:1:√2」と覚えておけば、斜辺は隣辺の√2倍になるので「x=3×√2=3√2」とすぐに計算できます。
⑥辺の比が1:2:√3
こちらは三角定規でおなじみの三角形。
各角度が30°、60°、90°となる直角三角形は、3辺の比が1:2:√3となります。
三平方の定理を使う場合は2辺の長さが必要。
一方、この直角三角形の場合は、3辺の比さえ暗記しておけば、1辺の長さからほかの2辺を求めることができます。
図形問題でよく使われるので、角度と比の値を正確に暗記しておきましょう!
⑦辺の比が1:2:√5
直角に隣り合う辺の比が1:2となる直角三角形では、斜辺の比が√5となります。
この直角三角形も覚えておくと、とても便利です。
⑤や⑥と混同してしまわないように注意してください。
忘れてしまった場合は、三平方の定理を使って計算しましょう。
三平方の定理を使った問題|基礎から応用まで挑戦してみよう
それでは実際に例題を解いてみましょう。
まだ三平方の定理や特殊な直角三角形のパターンが頭に入っていないという人も、解説を見ながら一緒に解いてみてください。
手を動かしながら考えると、理解が深まって定着が早くなりますよ!
三平方の定理の基本問題|一辺しかわからなくても解ける!
まずは基本的な問題から挑戦してみましょう。
解き方がわからない場合は、ヒントを見て解いてみましょう。
問題① 次の図において、xの値を答えなさい。
問題①を解くヒント
計算をする前に、辺の値を少し眺めてみてください。
あることに気付くことができたら、計算がラクになるかも!
問題①の解答
まずは三平方の定理を使って解いてみましょう。
各辺の値を三平方の定理に当てはめると、
x²+8²=10²
x²+64=100
x²=100-64=36
x=√36=±6
x>0なので、答えはx=6です。
この直角三角形の3辺はすべて整数となったことから、6、8、10の組み合わせは「ピタゴラス数」であることがわかりますね。
そして、この3辺の比は「6:8:10=3:4:5」です。
「あること」とは、3:4:5の比を持つ直角三角形だと気付くこと。これに気づければ「x=3×2=6」とすぐに求められますね!
問題② 次の図において、xとyの値を答えなさい。
問題②を解くヒント
1辺の長さと3辺の比がわかれば、あとは計算するだけです。
問題②の解答
30°、60°、90°の直角三角形の3辺の比は、1:2:√3となります。
対応する辺を間違えないように当てはめると、
x:y:8=1:2:√3
x:8=1:√3
となるので、√3x=8
x=8 / √3=8√3/3
また、y:8=2:√3となるので、√3y=16
y=16 / √3=16√3/3
問題③ 次の長さを3辺とする三角形のうち、直角三角形であるものを答えなさい。
問題③を解くヒント
さらに、頻出の直角三角形のパターンとも照らし合わせみると計算が短縮できるかも!
問題③の解答
(1)3cm、7cm、8cm
もっとも長い辺は8cmなので、a=3、b=7、c=8とすると、
a²+b²=3²+7²=9+49=58
c²=8²=64
よって「a²+b²=c²」が成り立たないため、直角三角形ではありません。
(2)16cm、30cm、34cm
三平方の定理に当てはめてみてもよいですが、計算が大変ですよね。
そこで3辺の比を見てみましょう。
16:30:34=8:15:17となり、この3つの数字の組み合わせはピタゴラス数です。
そのため、この三角形は直角三角形であることがわかります。
(3)6cm、12cm、6√5cm
辺の長さに平方根が含まれるので、ピタゴラス数ではありません。
しかし、平方根を含むパターンの可能性があるので、この問題も3辺の比を確認してみましょう。
6:12:6√5=1:2:√5
この比を持つ三角形も直角三角形でしたね!
ちなみに三平方の定理で確認してみると、
a²+b²=6²+12²=36+144=180
c²=(6√5)²=36×5=180
このことから、「a²+b²=c²」が成り立つことがわかります。
三平方の定理の応用問題|直角三角形を探せば解ける!
基本問題が解けたところで、応用問題にも挑戦してみましょう。
テストや入試では、最初から直角三角形が与えられるわけではありません。
そのため、問題文の図形のなかから直角三角形を見つけ出して、三平方の定理に当てはめることができないかを考えてみましょう。
応用問題① 三角形a、b、cにおいて、xの値を答えなさい。
応用問題①を解くヒント
三角形a、b、cは直角三角形ではないため、三平方の定理を使うことはできません。
裏を返せば、直角三角形さえつくってしまえば、三平方の定理が使えるということです。
どのようにすれば直角三角形がつくれるのでしょうか?
そこで、頂点aから辺bcに垂線を引いてみてください。
そうすると、見覚えのある直角三角形が姿を現すはずです。
応用問題①の解答
三角形abcの頂点aから、辺bcに垂線を下ろして交点をdと置きます。
そうすると、三角形adcは直角三角形となり、∠dac=60°となりますよね。
よって、三角形adcの辺の比は1:2:√3となるので、
辺ca:辺dc=2:√3
辺ca=5cm、辺
dc=1/2xより、5:1/2x=2:√3
よって、x=5√3が答えとなります。
応用問題② 縦の長さが7cm、横の長さが10cmの長方形abcdの紙において、対角線bdを折り目にして折り返した。この時、三角形abfの面積を答えなさい。
応用問題②を解くヒント
ただし、このままでは情報が少なすぎるので、問題文からわかる情報を整理することから始めましょう。
図形問題を解くときは、与えられた情報を図形に書き込むようにすれば、頭のなかが整理されて考えやすくなりますよ!
応用問題②の解答
辺af=xとします。
三角形abfと三角形edfにおいて、ab=ed=7cm、∠fab=∠fed=90°
また、∠bfa=∠dfeより、残りの∠abfと∠edfも等しくなります。
1辺とその両端の角が等しくなるため、△abf=△edf
よって、bf=df=10-x
直角三角形abfにおいて、三平方の定理より、
x²+7²=(10-x)²
x²+49=x²-20x+100
20x=51 x=51/20
よって、三角形abfの面積は、(1/2)×(51/20)×7=357/40cm²
三平方の定理まとめ
今回は、三平方の定理について解説しました。
問題を解くときに下記のポイントを意識すると、答えまでの道順が見えてくるはずです。
高校数学では三平方の定理を当たり前のように使って問題を解いていくようになりますが、今のうちにしっかりと基礎を固めておけば応用問題にも立ち向かえるはずです。
この記事で解説したポイントを忘れないように、何度も復習しておきましょう!