最近では、地域全体で子どもたちを教育する場が減ってきているといわれています。
「NPO法人 グリフォンスポーツクラブ」は、サッカーや野外学習を通じた地域教育で子どもの健やかな育成を応援する団体。子どもの自主性や自立を重視し、心と体の育成を担っています。
今回は、そんなNPO法人 グリフォンスポーツクラブの代表である茂見 栄伸(しげみ えいしん)さんに、活動の魅力や今後の展望などについてお話を伺いました。
スポーツを通して自分で自分を肯定できる子に
ー本日はよろしくお願いします。まず、「NPO法人 グリフォンスポーツクラブ」の活動と、その目的を教えてください。
茂見 栄伸さん(以下、茂見):NPO法人 グリフォンスポーツクラブは、2021年8月2日で法人登記10年目を迎える団体です。
幼児~小学校生を対象にしたサッカースクール活動、自然体験学習であるキャンプをメインとした2つの事業をおこなっています。
NPO法人 グリフォンスポーツクラブが目指すのは、コミュニケーションを重視し、子どもたちが自分の意思をしっかりと伝えられるようになり、自立につながること。
まずサッカースクールでは、スポーツの楽しさを伝えるとともに自分で自分を肯定できるような子どもになってもらいたい、そんな想いで活動しています。
そして、自分の意志で行動できる将来のリーダー育成を心がけていますね。
自然学習は夏のキャンプをメインに活動していて、子どもたちの体験をテーマにしています。
川遊びをしたり、自分で釣った魚を自分で串に刺して焼いて食べたり、竹を割って流しそうめんの台をつくったり。
子どもたちが体験することで主役になれる活動をしていますね。
ー活動をするうえで、大事にしていることはありますか?
茂見:サッカーの練習をする際、グラウンド内は子どもの世界なので、保護者の方はご入場をお断りしているんです。
あくまでも子どもたちの個性や自主性を大事にしているので、お母さんやお父さんには見守る側に徹していただいています。
ただ、グラウンドの外では、子どもの送迎に来られる保護者の方同士で意見交換やコミュニケーションをする場として活用していただいていますね。
年齢に関わらずみんなが学べる環境づくりを大切に
ーNPO法人 グリフォンスポーツクラブのサッカースクールについて、詳しくお聞かせください。
茂見:毎週各曜日で固定して、サッカースクールをおこなっています。
たとえば、月曜は大野城市、火曜は志免町、木曜は粕屋町、金曜は福岡市というかたちですね。
サッカースクールには、現在幼児から小学生まで約120名の子どもたちがいます。
NPO法人 グリフォンスポーツクラブのサッカースクールは、子どもたちにスポーツは楽しいものだと感じてもらうことを目的としています。
そのツールとしてサッカーを使っているだけであって、先ほどもお話ししたように、大事なのは子どもたちが自己肯定できるようになること。
そして、スポーツの楽しさを通して心も体も成長してもらいたいということ。
ーサッカースクールでは、子どもたちにどのようなことを学んでもらいたいですか?
茂見:NPO法人 グリフォンスポーツクラブのサッカースクールは、同じ学年の子どもだけでなく、異年齢、異学年にこだわって活動をしています。
大きい子は小さい子のよい見本になって教えたり、小さい子は大きい子の背中を見て学んだり。サッカースクールの活動では、同学年だけでなく異年齢ともコミュニケーションがとれる環境づくりを一番大切にしていますね。
大人も本気で楽しむことで子どもたちに伝わるスポーツの楽しさ
ーNPO法人 グリフォンスポーツクラブが主催する大会などは開催しているのでしょうか?
茂見:はい。年に3回から4回、6月、11月、2月などにサッカースクールの子どもたちを集めてサッカー大会を開催しています。
サッカー大会では、保護者を交えた「おやじサッカー」というイベントがあります。これは、子どもたちのお父さん同士で試合をおこなったり、高学年で優勝したチームと「おやじ」たちが本気で戦います。
子どもたちは、お父さんを一生懸命応援したり、「大人に絶対に勝つんだ」という気持ちで試合に臨んでくれます。サッカーやスポーツの楽しさを、大人も本気で楽しむことで、子どもたちに伝える場としています。
また、リフティングの回数を記録する「リフティングテスト」を3、4ヵ月に1回おこなっています。
リフティングは、誰かと競うのでなく以前の自分の記録を超えられたか、というのがテーマですね。記録を超えられた子には賞状を贈呈しています。
ーNPO法人 グリフォンスポーツクラブへの入会に関するキャンペーン情報などはありますか?
茂見:無料体験は随時受け付けていますが、定員に達したスクールは受け付けていません。
また、ご兄弟や友だちの紹介キャンペーンもおこなっています。保護者さまの紹介やお友だちの紹介が1番多いですね。
子どもたちが主役でありヒーローである場所
ー今後の活動の展望についてお聞かせください。
茂見:私たちの活動は、地域教育のひとつを担っていると考えています。
家庭教育、学校教育、地域教育という3つの歯車が合わさって、子どもたちは育っていくと思うんです。その意味で地域教育は重要であり、これからもその役割を大切にしていきたいです。
また、いじめられて学校に行けなかった子どもがサッカースクールだけは来てくれて、3ヵ月後には学校に行けるようになったという例もありました。
同じ学校だけでなく、さまざまな学校、そして異年齢、異学年でつくられる小さな社会が拠り所になったと思います。
私たちには、そういう子どもたちの受け皿としての役割もあると思っています。
昨年は新型コロナウイルスの影響で福岡の小学校の運動会のほとんどがなくなってしまいました。しかし、「運動会をやりたい」と子どもたちが声を上げ、自ら企画運営をしたんです。
人数を制限しながらではありますが、地元自治体にも協力していただき、私たちが主催で運動会を開催することができました。
子どもたちがやりたいことに応えてあげられるのが私たちの強みだと思っています。子どもたちが主役でありヒーローである、それがNPO法人 グリフォンスポーツクラブなんです。
もっと子どもたちの声を吸い上げていきたいというのが、私たちのこれからの活動の目標ですね。
ー最後に、この記事の読者に向けてメッセージをお願いします。
茂見:NPO法人 グリフォンスポーツクラブは子どもの多様性を重視しているので、一人ひとりの子どもがいろいろな方向を向いていてよいと思っています。
サッカーが好きな子どもだけでなく、単に体を動かしたいという子どもでも、どんな目的でも大丈夫なんです。
子どもたちには、スポーツの楽しさを感じてもらい、かつ自分の意見をはっきり言える人になってもらいたいですね。
私たちは、常に子どもと対等な立場で接しています。ときには子どもと喧嘩をすることもありますし、子どもに対して謝ることもあります。そういう意味では、子どもが発言しやすい環境になっていると思いますね。
少し変わった切り口のスポーツクラブですが、気軽にスポーツを始めたい方にはぜひおすすめしたいです。
ー本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました!
■ 取材協力:NPO法人グリフォンスポーツクラブ