正・負・整数・自然数・素数…。これらの用語は数学の基礎として重要ですが、授業で一度聞いただけでは理解しきれない方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな数学用語のなかでも特に苦手意識を持ちやすい「自然数」について、定義や整数との違いをわかりやすく解説します。
最初は「定義がいろいろあって覚えきれない!」と感じるかもしれませんが、問題演習をしながら記事を読み進めて少しずつ理解していきましょう。
自然数とはどんな数?中学・高校数学での3つの定義を紹介
自然数を取り扱った問題は中学のみならず、高校数学や大学の講義でも登場します。
数学の基礎中の基礎ともいえる自然数ですが、今のうちにしっかり定義を押さえておくと今後の数学の学習をスムーズに進めることができるので、一つひとつ正しく理解していきましょう。
まず自然数とは何かというと、「正の整数」を意味する数。わかりやすくいうと、「1、2、3…」という数のことです。
私たちは実生活で物の個数や順番を、当たり前のように自然と数えますよね?それが自然数です。
①0(ゼロ)は自然数ではない
結論からいうと、「0」は自然数ではありません。※「0」を自然数とする場合もある
自然数とは「正の整数」を意味する言葉ですが、0より大きな整数、つまり「0を含まない正の整数」であるということも覚えておきましょう。
ただし、大学では0が自然数に含まれることも
大学で扱う数学はさらに広い領域を学ぶため、0も自然数に入れたほうが話を進めやすいと考える専門家が多いようです。
大学入学後、いきなり今まで教わってきたものと異なる定義を示されると混乱するかもしれませんね。
しかし、ひとまず中学・高校までは「0は自然数に含まない」ものとして覚えておきましょう。
②少数、分数は自然数ではない
「正の整数」と定義される自然数。先述しましたが、少数は整数に含まれません。
また、分数も少数と同じく整数に含まれない数です。
つまり、自然数にも少数や分数は含まれないということになります!
③負の数は自然数ではない
「負」の数とは、小数や分数を含む0より小さい数のことを指します。
例)-0.1、-1/3、-1、-15.5、-100…など
一方、自然数の定義は「正の整数」でしたね。
「正の」と限定されているので0より大きい数を指しており、負の数は自然数ではありません。
では、数値線上で見てみましょう。
自然数と整数の違いを簡単に区別しよう
「整数」…0に1を次々と引いた数、0、0に1を次々と足した数
自然数の条件と整数や正の数の条件がごちゃごちゃとしているため、間違えてしまう人もいます。
自然数は正の整数なので、整数の一部に自然数が存在するとイメージしましょう。
小数や分数を含めない数全体が整数。
0、-1、-2、…は整数ですが、負の数なので自然数ではありません。
1、2、3、…は整数でもあり、また正の数でもあるので自然数です。
【演習】実際に自然数を使った問題を解いてみよう!
ここからは、実際に問題を解いていきましょう。
3つの例題を用意したので、1つずつ理解しながら解いてみてくださいね!
自然数を使った例題①
解答と解説
自然数は「正の整数」なので、答えは1、15/3、43。
15/3は約分すると5となり、正の整数なので自然数です。
以下、自然数とならない理由を簡単に解説します。
自然数の意味がなんとなくわかってきたでしょうか?では、続いての例題を解いてみましょう!
自然数を使った例題②
これは少しわかりにくいので、イラストを使って解説していきます!
解答と解説
問題を整理すると、(2ケタの自然数)ー(入れ替えてできる自然数)=(9の倍数)
まず、2ケタの自然数の表し方を確認しておきましょう。十の位をx、一の位をyとすると10x+yと表すことができます。
わかりにくい場合には、10円玉3枚と1円玉2枚で32円、10円玉x枚と1円玉y枚で10x+y円とイメージしましょう。
これを使って問題の意図に従い式を立てていきます。
x、yは自然数なので、x-yは整数となります。よって、9(x-y)は9の倍数であることがわかります。
自然数を使った例題③
こちらの問題は二次方程式を含むため中3数学のレベルです。
二次方程式とは、「xの2乗までを含む方程式」のこと。
解答と解説
大きいのほうの自然数を「x」とします。
2つの自然数の和、つまり2つの数を足したときは「14」となるため、小さいほうの自然数は14-xと表すことができます。
大小2つの自然数の積(2つをかけ算したとき)は「40」となるので、x(14-x)=40という式が成り立ちますね。
これを、二次方程式を使って解くと…
よって、x=4、10になります。
答えは、大きい自然数が10、小さい自然数が4となるわけです。
自然数の平方とは?平方数について解説
「自然数の平方」とは、どのような数かご存じですか?
これまで見てきたように、自然数とは「正の整数」。つまり、1、2、3、4、5、6…と永遠に続く数です。
そして、「平方」は「同じ数を2回かける」こと。1×1、14×14、123×123などです。
問題文に「自然数の平方」という言葉が出てきたら、「ある自然数を2回かけること」と解釈しましょう。
また、「平方数」とは「同じ整数を2回かけて表される正の整数」をいいます。二乗とも呼びますね。
自然数の平方を扱った問題は高校入試でも出題されることがあるので、例題を通して解き方や考え方を知っておきましょう。
平方数を見分ける素因数分解
平方数かどうかを見分けるためには、素因数分解が便利です。素因数分解とは、ある正の整数を素数のかけ算で表すこと。
それでは、実際に素因数分解を使って平方数を求める次の例題を解いてみましょう。
【例題①】576はどのような自然数の平方か求めなさい。
問題の意味をイメージしやすいように簡単な表現に直すと、「576はどの自然数を2乗した数か」と聞いていることがわかります。
素因数分解では、20=2²×5というように自然数を素数の積の形に変形させますよね?
では、実際に576を素因数分解してみましょう。
576を素因数分解してみると、576=2⁶×3²=2²×2²×2²×3²=24²となりました。
「どのような自然数の平方になるか」つまり「576はどの自然数を2乗した数か」という問題の答えは「24」となるわけです。
では、続いての例題を解いてみましょう!
【例題②】√54nが整数となる自然数nのうち最も小さい値を求めなさい。
平方根(ルート)を使った問題も頻出するので確認しておきましょう。
この問題は、54にとある自然数をかけるとルートが外れて整数になるという意味。
その整数になる自然数nのなかで、最小の数を導き出します。
ではまず、どのようなときにルートが外せて、どのようなときにルートが外せないのでしょうか?
下記のように√36と√18を例に挙げてルートの中身を素因数分解し、どのような違いがあるか見てみましょう。
つまり、ルートのなかを素因数分解して、すべての素数にペアができるようにnを設定すればルートが外せて整数で表せます。
それでは例題の√54nを解いていきましょう。
「3×3」はペアになっているので、nが残りの「2」と「3」のペアにならなければなりません。
2と3をペアにするにはどうするかというと…
n=2×3を入れてみると、すべてがペアになりましたね!
よって、n=2×3=6になります。
今回の例題では最小のnを求める必要があるので、答えはn=6ということですね!
まとめ
「自然数」という用語自体は数学の基礎となりますが、大変な点は自然数を扱った問題の応用要素が多いこと。
さまざまな問題形式があるので、用語をしっかり理解することが重要です。
「自然数」と聞いたときは、以下のポイントを意識しましょう。
はじめは用語の意味がわかっていても問題になると解けないということもあると思います。
しかし、繰り返し問題の意味と解き方を学習していると、少しずつ自然数の扱い方が身につくので安心してくださいね。
わからなくなったときはこの記事を読み返して、根気よく学習していきましょう!