室戸岬を南に望み、高知県の自然豊かな場所にある「国立室戸青少年自然の家」。
学校行事、青少年団体の宿泊研修、企業研修など、さまざまな目的で活用されるこの施設は、仲間との宿泊や、野外アクティビティを体験することができます。
今回は、「国立室戸青少年自然の家」企画指導専門職の間島 貴矢さんと、事業推進係の森木 直矢さんにインタビュー。
海や山での自然体験や、さまざまなスポーツ、文化活動を通して育む“助け合いの心”、子どもたちに伝えたい想いについて伺いました。
子どもに多くの体験をさせたい、自然のなかで成長してほしいと願う保護者の方は、ぜひご一読ください。
青少年の精神を育む場「国立室戸青少年自然の家」とは
ー本日はよろしくお願いいたします。まず、「国立室戸青少年自然の家」の設立経緯や、活動内容を教えてください。
森木 直矢さん(以下、森木):「国立室戸青少年自然の家」は、文部科学省所轄の独立行政法人「国立青少年教育振興機構」に属する青少年教育施設です。
国立青少年教育振興機構では、東京代々木の「国立オリンピック記念青少年総合センター」や、「国立青少年交流の家」、「国立青少年自然の家」など、全国28箇所で施設の運営をしています。
そのなかでも、当施設は全国初の「国立少年自然の家」として、1975年に当時の文部省(現文部科学省)により設置されました。
その後、2001年に独立行政法人「国立少年自然の家」に移行。さらに、2006年には独立行政法人「国立青少年教育振興機構」に統合、「国立室戸青少年自然の家」と名称変更し、現在に至ります。
当施設の主な活動は、学校団体への宿泊や、自然体験活動の提供、指導などです。ほかには、学校以外にも社会教育団体や、大学のサークルといった団体にもご利用いただいています。
また、ご家族など少人数グループでも宿泊可能なほか、教育事業などのイベントも多数実施しており、さまざまな目的にあわせて活用できる施設になっています。
アクティビティが充実!仲間の大切さを体感できる活動プログラム
ー「国立室戸青少年自然の家」には25個の施設があり、さまざまな体験ができるそうですが、なかでも人気があるのはどのような活動プログラムですか?
森木:「国立室戸青少年自然の家」では、自然体験や、スポーツ・文化活動など、幅広い活動プログラムが体験可能です。
数ある活動プログラムのなかでも人気があるのは、海浜活動センターでおこなっている「海活動」ですね。
室戸岬の港をカヌーで漕ぐ「シーカヤック」や、水面を遊泳する「スノーケリング」、大きな板の上に立ってパドルで漕ぐ「スタンドアップパドルボード(SUP / サップ)」は特に人気があります。
当施設のスタンドアップパドルボードは、通常のスタンドアップパドルボードよりも大きい10人乗りのボードを使用したアクティビティです。
板が大きいので立つのはそう難しくなく、バランスをとりながら、みんなで協力して漕いでいくところに面白さがあります。
また、磯にどんな生き物がいるかを調べたり、生き物をとって観察したりする「磯観察・磯遊び」もおすすめですよ。
ー海活動以外にはどんな活動プログラムがあるのでしょうか?
間島 貴矢さん(以下、間島):海活動のほかには、「野外活動」として、山でおこなうプログラムがあります。
野外活動では、カレーやピザづくりができる「野外炊事」や、敷地内各所に設置されたポストを探して得点を集める「スコアオリエンテーリング」などが好評です。
また、ゲームやキャンドルファイアなどを通して仲間との交流を深められる「ゲーム・レクリエーション活動」や、焼き板工作などができる「創作活動」もあります。
ーみんなで一緒に楽しめる活動プログラムがたくさんあるんですね。
間島:そうですね。当施設で大切にしているのは、子どもたちが普段の学校生活でなかなか体験できない“自然のなかで生まれる友だちとのコミュニケーション”です。
アクティビティ後には、子どもたちに必ず「どうだった?」と聞き、楽しかったか、上手くできたか、どうしてできたか、ということを一緒に振り返ります。
そして、達成できたのはひとりではなく、仲間との協力があったからこそ、ということを常に子どもたちにも伝えています。
たとえば、海でシーカヤックをする際、子どもたちから「海が怖い」「できない」「緊張する」といった不安の声がよくあがるんですね。
でも、実際に始めてみると、キャーキャー言いながらもみんな楽しんでいる。
あとで感想を聞くと、「最初はうまくできなかったが、友だちと息を合わせてパドルを漕ぐと、どんどん進むようになって楽しかった」といいます。
ほかの活動に関しても同様の声が多く、みんな仲間と協力して達成する楽しさを体感してくれているのだと実感していますね。
学びながら自然を満喫できるイベントを計画中!
ー今後予定されているイベントなどがあれば教えてください。
間島:8月21〜23日に、高知県と徳島県の一部の子どもを対象とした夏休みイベント「体験!発見!ジオパーク(マリンスポーツ編)」を予定しています。
定員は20~30名で、2泊3日にわたって子どもたちが、海でシーカヤックや、スタンドアップパドルボードなどを満喫できる楽しい企画ですよ。
また、9月18〜20日には、毎年実施している防災企画「防災キャンプ in 室戸」も予定しています。
これは、ライフラインが閉ざされた(電気のつかない)場所でみんなで寝泊まりをしたり、食事をつくって食べたり、衣食住を通して災害・防災について考える企画です。
そのほかにも、10月には当施設で毎年恒例のお祭り行事「室戸くろしお祭り」も開催を予定しています。実施形態や、ブース設置などの詳細が決定次第、参加者の募集を進める予定です。
今年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、いずれのイベントも不確定な部分があるほか、日程変更の可能性もあります。
最新のイベント情報は、「国立室戸青少年自然の家」公式サイトのトップページにある「NEWS & TOPICS」や、公式Facebookで公開していますので、ぜひそちらをチェックしてください。
ー新型コロナウイルスの感染対策としては、現状どんな対応をされているのでしょうか?
森木:当施設では、新型コロナウイルス感染防止のため、通常300人受け入れている定員を、現在は半分の150人に減らしています。
また、先ほど話に出た、海活動のスタンドアップパドルボードを含め、いくつかの活動プログラムは現在休止中です。
定員を減らしながら実施している活動プログラムについては、参加者が安全に楽しめるよう対策をおこなっています。
今後も、情勢に応じた対応をしていきますので、最新情報をご確認のうえ、ご利用いただけるとありがたいです。
“子どもの記憶に残る”一層充実した施設を目指して
ー「国立室戸青少年自然の家」の今後の展望をお聞かせください。
森木:当施設は、青少年・社会教育施設なので、一般的なキャンプ場などとは異なる利点や、魅力を活かしつつ、みなさんにさまざまな体験を提供していきたいと考えています。
今後目指しているのは、現在展開している、海での活動プログラムと、山での活動プログラムを一層充実させ、学校や団体など、さらに多くの人々に利用していただくことです。
また、新たなプログラムも取り入れつつ、学校のみなさんや、保護者の方にも、よりよい活動・教育効果を実感してもらえるよう、指導についても全職員で学びながら向上に努めていきたいと思っています。
そして、当施設を利用した子どもたちが大人になったときに、「青少年自然の家に行っていろいろな体験をしたな」と思い出してもらえるような、記憶に残る施設になれるとうれしいですね。
ー最後に、「国立室戸青少年自然の家」の活動プログラムに子どもを参加させたいとお考えの保護者の方に向けて、メッセージをお願いします。
森木:「国立室戸青少年自然の家」では、教育事業をはじめ、さまざまな事業を実施しています。
まず保護者のみなさまには、当施設のことを知っていただきたいです。
「どんなイベントをやっているか」や、「利用してみたい」など、ご興味のあること、気になること、どんなことでも大歓迎ですので、お気軽にお問い合わせください。
また、当施設の公式サイトや、YouTube公式チャンネルに、活動プログラムを紹介した動画などを掲載しておりますので、ぜひご覧いただけたらと思います。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:国立室戸青少年自然の家