子どもたちは、それぞれ心の表しかたが違うものです。感情豊かな子どももいれば、感情を表に出せない子どもなど、性格はさまざま。
そういった子ども一人ひとりの心を理解するのは、大変難しいことですよね。また、学校教育では、同時に多くの子どもの心に寄り添うことが求められます。
そんな課題に対し、「株式会社 EDUCOM(エデュコム)」は、子どもの心に一歩近づけるシステム「スクールライフノート」を開発しました。
そこで今回は、「株式会社 EDUCOM」代表取締役CEOの柳瀬 貴夫さんにインタビュー。
簡単な操作で「心」や「学習」について表現することができる「スクールライフノート」の魅力について、お話を伺いました。
インターネットの急速な普及により、学校のICT化が進む教育現場。デジタル端末の活用方法について悩んでいる先生や、保護者の方は、ぜひご一読ください。
元気な学校づくりをサポートする「株式会社 EDUCOM」とは
ー本日はよろしくお願いいたします。まず、「株式会社EDUCOM(エデュコム)」はどのような教育サービスを開発・提供しているのでしょうか?
柳瀬 貴夫(以下、柳瀬):はい。まず、我々「株式会社 EDUCOM(エデュコム)」をご存じの方は、当社を「校務支援システム」を開発・販売・サポートしている会社だと認識している方が多いようです。
しかし、私はあえて「学校支援システム」を開発・販売・サポートしている会社だと伝えたいと思っています。
確かに当社は、全国400以上の自治体・8000校以上の学校で、校務支援システムを利用していただいており、校務支援システムのトップシェアを占めています。
ですが、EDUCOMは、元気な学校づくりをサポートする会社であり、そのサービスのひとつに「EDUCOMマネージャーC4th」という統合型校務支援システムがあるのです。
ほかにも、「スクールWebアシスト」という学校ホームページ作成システムや、学校と保護者を結ぶアプリ「C4th Home & School」などがあります。
そして、子どもたちがひとり1台の端末を利用できる「スクールライフノート」も、今注目を集めているサービスです。
このようなことからも、EDUCOMは、さまざまなサービスを通して、子どもたちや学校をトータル的にサポートしている会社だと発信していきたいですね。
自分の気持ちを記録することで“気づきを可視化”する「スクールライフノート」
ー「スクールライフノート」について教えてください。また、活用することで、子どもや先生にどのような効果があるのでしょうか?
柳瀬:「スクールライフノート」というのは、子どもたちが毎日簡単な操作で学校生活のさまざまなことを記録し、気づきを可視化することができるシステムです。
「心の天気」と「学びの天気」のふたつを記録していくのですが、記録方法としては「はれ」「くもり」「あめ」「かみなり」の4つの記号を使い表現します。
「心の天気」では、朝と帰りなど、1日2回、自分の気持ちや心の様子を記録することができます。
例えば、ベテランの先生ならば、朝の会で子どもたちの顔を見れば、子どもたちの心は大体わかるという先生も確かにいらっしゃるでしょう。
しかし同システムを使用すれば、経験の少ない若手の先生はもちろん、直接子どもの顔を見ることが少ない学年主任や、教頭先生、校長先生も子どもの心の様子を観察することができるんです。
それによって、ある児童生徒について気になることがあれば、先生同士で話し合ったり、必要に応じて子どもに声掛けしたりすることができる。
それはある意味、ベテランの先生の気づきや対応を、若手の先生に伝授することにもなります。
多くの大人がみんなで子どもを見守り、育てる環境を提供できる。これが「心の天気」のよさです。
もうひとつの「学びの天気」は、授業が終わったあとに、授業の感想や、思ったことを天気で表すものになります。
高学年になり、文字入力ができるようになれば、一言書き加えることもできます。
これにより、先生はご自分の授業を振り返るときに、子どもがどれくらい自分自身の学びを振り返ることができたかも確認できるんです。
これまでも、子どもたちに授業の振り返りノートなどを記入してもらっていたかもしれませんが、これだと提出・返却などの手間があるんですよね。
その点、「スクールライフノート」であれば、提出・返却の手間もなく、記入していない児童生徒にすぐ声掛けすることも可能です。
また、低学年や特別支援、外国籍の児童生徒でも、天気マークなら簡単に記録できるのが利点じゃないでしょうか。
ー「はれ」「くもり」「あめ」といった天気マークは、子どもにとって非常にわかりやすいですね。
柳瀬:そうですね。さらに「心の天気」「学びの天気」は、先生だけでなく、子ども自身が自分の心を振り返ることもできるんです。
例えば「心の天気」でいうと、子どもが1週間前や、1ヶ月前の記録を見て「なぜこのとき『あめ』マークだったのかな。」「どうしてぼくは『くもり』をつけたのかな。」と考えるとします。
そして、「そういえばあのとき、こういうことがあったんだ。」と思い出しますよね。すると、そのときには気づけなかったことを、振り返ることで何か気づくことができるかもしれません。
「学びの天気」であれば、1週間前の算数の授業の天気を見て、「これ『あめ』だったな。なんかよくわからなかったんだよな。」と思い返すとします。
しかし、3日前の算数の授業が「はれ」になっているのを見て、「あ、そうか。Aくんの説明で、わからなかったところがわかったんだ。」となり、振り返り能力を高めることができるのです。
このようなことの繰り返しで、自分の行動を客観的に捉えられる「メタ認知」が育成されると考えています。
ー製品やサービスの開発ストーリーがあれば、お聞かせください。
柳瀬:「スクールライフノート」のアイデアは、愛知県小牧市の元校長で、現在「岐阜聖徳学園大学」の教授である、玉置 崇先生からいただきました。
その後、EDUCOMの研究機関である、「授業と学び研究所」にご協力いただき、システム化したのがはじまりです。
玉置先生は、子どもの心の様子を可視化できないかという考えをずっとお持ちでした。
そして開発段階では、どうやったら可視化できるのか、それを天気マークにするのはどうか、どんな場面で使うのがよいかなど、いろいろなことを想定してきたんですね。
我々はとても前から、「近い将来、子どもたちがひとり1台、端末をもつ時代がくる」と考えていたんです。
ー現在の教育の現場を予想していたんですね。懸念点はやはり多かったのでしょうか?
柳瀬:もちろんです。GIGAスクール構想(※)以前の話ですから、気にかかる点はたくさんありました。
子どもたちにどうやってパソコンを使ってもらうのか?授業以外でも活用してほしいが、どのようにすればよいか?と。
子どもたちは、本当に素直な気持ちで天気マークを選んでくれるのか?そんな思いもありましたね。
そもそも学校の先生に受け入れられるかも心配でしたが、アイデア自体は非常にEDUCOMらしいとおっしゃっていただけました。
また、実証校で使っていただいたところ、 想像以上によい結果が出たんです。
(※) GIGAスクール構想とは、ひとり1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子どもたちを誰ひとり取り残すことなく、公正に個別最適化され、創造性を育む学びと、環境を実現するための国の施策
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想像を超えた反響!きっかけから繋がるコミュニケーション
ー実際に学校でどのように活用されているのか、現場から届く効果の声についても教えていただきたいです。
柳瀬:さまざまな実証実験を経て、現在の「スクールライフノート」があるのですが、実証実験の段階で私が学校へ伺ったときは、衝撃を受けたのを覚えています。
とある学校では、まだひとりに1台という環境ではなかったので、学校の入り口にパソコンを置いて各自の「心の天気」をクリックしてもらっていたんですね。
すると、自信満々に自分の天気をクリックする子もいれば、友だちに確かめながら決める子もいて。そのとき、みんな自分の心の状態を友だちに話していたんです。
「あめ」をクリックした子がいたら、それを見た子が「どうしたの?」と声をかける光景も見かけました。
我々のシステムによって、子ども同士のコミュニケーションが生まれた瞬間を見たとき、「これはすごいな。」と思いましたね。
また、「あめ」をクリックした子に、担任の先生が声をかける場面もありました。
「心を天気にすることで、先生から声掛けをしてもらえるのが嬉しい」という声もあり、子どもたちはコミュニケーションが増えたことを喜んでいるようでした。
ー心を天気に例えて記録するだけで、思った以上の効果が得られたのですね。
柳瀬:はい。さらに、先生同士のコミュニケーションにおいても、とてもよい効果が得られました。
養護教諭や担任の先生は、これまでの経験や、感覚で子どもの様子がある程度わかると思うんです。
しかし、「スクールライフノート」を導入したことで、アナログとデジタルの感覚が融合し、先生同士の声掛けが、より活発化したんですよ。
例えば、「最近あの子元気ないな。」と養護教諭が感じたとします。「心の天気」を見ると、やはり「くもり」や「あめ」が続いている。
そうすると養護教諭は、担任の先生やスクールカウンセラーの先生に相談して、話をするきっかけになります。そして情報を共有し、見守ることができます。
また、スクールカウンセラーの仕事は成果がわかりにくいものです。ところが、朝の登校時に「あめ」だった子が、カウンセリングを受けたあと「くもり」や「はれ」になっていれば、効果があったことがわかりますよね。
スクールカウンセラーの先生からも、仕事への価値観や、やりがいに結びついたという意見をいただきました。
ー先生の感覚だけでなく、可視化することで情報共有がしやすくなるんですね。
柳瀬:これは、ある小中一貫校の話ですが、一貫校とはいえ、小学校と中学校の先生のコミュニケーションはほとんどなかったそうなんです。
しかし、「スクールライフノート」を導入してからは、その状況が少し変化したと聞きました。
小学校の先生が気にかけていた児童が、中学校に進学したあとの「心の天気」を見て、中学校の先生に声掛けをすることがあったそうです。
逆に、中学校の先生が、「くもり」「あめ」マークが多い生徒に関して、小学校の先生に相談することも。
小学校と中学校の壁が低くなってコミュニケーションが増えたということを聞いて嬉しかったですね。
そんな使い方があったんだな、と驚きでした。
教育現場でのICT化に向けた入り口に
ー今後、どのようなお子さんや先生に「スクールライフノート」を活用してもらいたいですか?
柳瀬:現在、GIGAスクール構想の実現へ向けて、多くの学校に、子どもひとりに対して1台の端末が配布されはじめました。
しかし、ほとんどの学校では、活用方法に戸惑っています。授業で使うのもハードルが高く、なかなか活用が進んでいないケースも少なくないです。
そんな学校にこそ、まずは「スクールライフノート」の「心の天気」を使ってほしいと思っています。
これなら毎日の先生の負担も非常に少なく、毎日使えるので活用率があがりますよね。
そこから活用の幅が広がってくるのではないかと思っているんです。
ーまずは毎日、少しずつでも端末を触って慣れることが大切なのですね。
柳瀬:ただ、利用する際に、最初に校長先生や教頭先生などといった、管理職の方に理解しておいてほしい部分があります。
それは、必ずしも「心の天気」は「はれ」がいい、というわけではないということ。
子どもによっては「くもり」が普通で、なにか嬉しいことがあったら「はれ」になる場合もあります。
子どもによって基準って違うんですよ。
それを先生が無理矢理、こういうときは「はれ」、こういうときは「くもり」だって統一した基準を決めてしまうと、子どもたちの本当の心の動きが見えづらくなってしまいます。
元気な“いたずらっこ”は「かみなり」ばかりクリックするかもしれません。でも、なにか心に変化があったときに「はれ」にするかもしれない。それを見逃さないでほしいですね。
「学びの天気」にしても、いい授業ができたから全員「はれ」というわけではないこと、それぞれの子どもにさまざまな感情があることを前提に使ってほしいと思っています。
子どもの未来のために“元気な学校づくり”を目指して
ー今後の展望や、課題についてお聞かせください。
柳瀬:はい。私自身、今回紹介した「スクールライフノート」の「心の天気」のアイデアをはじめて聞いた際、本当に学校で使ってもらえるのか?という疑問がありました。
だからこそ、「心の天気」のよさをしっかり先生方に伝える必要があると思っています。
そしてそれは、「スクールライフノート」だけでなく、当社のシステムすべてのよさをしっかりと伝えて、先生方の不安や、疑問を払拭することが大切だと思っているんです。
また、我々EDUCOMは“元気な学校づくり”を応援しています。
元気な学校とは、先生や子ども、保護者や地域の方、
学校にかかわる方がみんな元気でいるイメージですね。
さらには、先生も保護者も地域の方も、みんなが一緒になって子どもを見守り育てる。そういう環境を作っていきたいと考えています。
学校や教育現場の将来は予測できませんが、我々はこのシステムやアイデアを通して、先生と一緒に、子どもの未来にワクワクをとどけていきたいです。
ーありがとうございます。最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
柳瀬:GIGAスクール構想によって、ひとりにつき1台の端末が整備されたものの、活用に困っている学校、先生方がたくさんいらっしゃると思います。
そんな方はぜひお声掛けいただきたいです。「スクールライフノート」は、先生方の負担も少なく、想像以上の成果を得ることができると確信しています。
可能であれば、私自身が説明にあがりたいくらい自信を持って紹介できるシステムです。
「心の天気」も「学びの天気」も、とてもシンプルですが、素敵なシステムなので、お気軽にお問い合わせいただけると嬉しいなと思っています。
ー今回はとても貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:株式会社 EDUCOM