志望校合格や学業向上において大切なことといえば、やはり日々勉学に励むこと。でも、神社でしっかりとご祈願もしておきたいですよね。
北海道江別市には、
「野幌の天神さま」として知られる錦山天満宮があります。
実はここ、学生や受験生によるお参りはもちろんのこと、少しユニークで可愛らしいおみくじが有名な神社としても知られています。
そこで今回は、宮司の山口 亨さんに、錦山天満宮の歴史やご利益、おみくじのことなどについてお話を伺いました。
学問の神と地域の守り神、2つのご祭神
ー本日はよろしくお願いします。まず、錦山天満宮はどのような神社なのかを教えてください。
宮司 山口亨さん(以下、山口):
北海道、とくにこの札幌や近郊の街は、明治時代の屯田兵の入植とともにできました。
私の住んでいる街は北海道江別市野幌で、この地に屯田兵が入ってきたのは明治18、19年頃のこと。
開拓した屯田兵たちは、九州や四国、中国地方辺りの県から集まったといわれています。
その関係で、歴史的には130年前後の神社が多く存在していますね。
熊本県には「加藤神社」という名の神社がありますが、この神社は昔「錦山神社」という名で呼ばれていました。
熊本県から入ってきた屯田兵は現加藤神社で当時の錦山神社からご分霊をいただいてきたといわれており、これが「錦山天満宮」の始まりです。
「錦山」は地名ではなく、「屯田兵がどこから来たか」を意味しているのです。
錦山天満宮も同じように屯田兵が入植した際に建てられた神社で、当時は「錦山神社」という名前でした。
ー錦山天満宮では、どのような神様がご祭神(ごさいじん)として祀られているのでしょうか。
錦山天満宮では、現在「天照大御神」と「菅原道真公」の2つの柱のお祀りをしております。
明治18年に屯田兵が入植して開拓し、実際に神社としてお祀りされた始まりは明治22年です。当時のご祭神は、伊勢神宮の神様である天照大御神でした。
そして、昭和48年に太宰府天満宮から菅原道真公のご分霊をいただいて「天満宮」という名前に改名し、それが「錦山天満宮」の由来となっています。
「天満宮」とつく神社は多く存在しますが、神社同士の格は関係なく、「学問の神様として知られる菅原道真公をお祀りしている神社」を指しているんです。
ー「錦山天満宮」にはどのようなご利益があるのでしょうか。
山口:錦山天満宮がお祀りしているのは学問の神様である菅原道真公ですので、学業成就や合格祈願がメインになります。
また、天照大御神はどちらかというと氏神(うじがみ)(※)様、地域の守り神としてお祀りしております。
そのため、合格祈願はもちろんのこと、地域の安全、守り神のご利益、家内安全などにもご利益があります。
錦山天満宮は札幌近郊の住宅街にありますが、少し離れると広大な畑や農家が広がっていますので、そういう意味で五穀豊穣も祈願していますね。
地域の守り神ですので、その地域の方にお子様が生まれた際に近くの神様へご報告をしたり、七五三のお参りをされたりしています。
そのほか、新しく家を建てた際の建築関係の神事や、地鎮祭、以前は結婚式もありましたね。
※その土地に生まれた者を守る神
江別の街の魅力を伝える「幸路(サイロ)みくじ」が人気
ー北海道には、「北海道ご当地みくじシリーズ」というものがあるそうですね。
山口:そうですね。北海道のご当地おみくじは「えぞみくじ」と呼ばれています。
おみくじの文面は「なまら~でっしょとか」といった北海道弁で、特産品の紹介も書いているんですよ。
地元の方たちも楽しいですし、北海道に観光で来られた方が記念にご購入されるのもいいですよね。
ただ普通におみくじ引いて占うだけでなく、「遊び心をもって神社をお参りするきっかけとともに、その地域のことを知ってもらいたい」と思ったのです。
この「えぞみくじ」は、北は稚内から南は函館、東は根室。北海道の端から端まで全部行ったら何百kmも移動しなくてはならないような場所を含め、北海道内の12社で出しています。
ーマスコットのようなかたちをしていて可愛いですね。これなら、思い出の1つにもなりそうです。
山口:そうですね。地域の守り神という意味では、その地域の活性化や町おこしもお祈りしています。
みなさんに、その街の特産物を分かりやすく伝えたい。そして、可愛くてちょっと集めたくなるようなものを…と考えました。
そこで、このようにデフォルメされたおみくじで特産品をもっと知ってもらおうと思ったんです。
また、「北海道のいろいろな街を巡ってください」という意味も込めて出していますね。
ー錦山天満宮にも「北海道ご当地みくじシリーズ」の江別版として特徴的なおみくじがあるとのことですが。
山口:江別市は開拓の後から「レンガの街」といわれていて、レンガが特産品なんです。この近くでよい土が採れるので、レンガ工場が多く建っていました。
また、江別市は酪農が盛んにおこなわれていて、「酪農学園大学」という酪農に特化した大学や「町村牧場」という乳製品の美味しいところがあります。そのため、レンガ造りのサイロ(※)が街の至るところにあるんです。
「四角いレンガだけだとちょっとイメージが湧かないな」「北海道っぽさがないな」ということで、おみくじをサイロのかたちにしてレンガの街の魅力を知ってもらおうと考えました。
そして、縁起のいい“幸せの路”という字を選び、「幸路(サイロ)みくじ」という名前を付けました。
※穀物や飼料などの粒類や小麦粉などの粉類を一時的に貯蔵する倉庫・容器
ー錦山天満宮の主な年中行事についてお聞かせください。
山口:氏神は一般的な地方の地域の神社なので、特に大規模で特殊な神事はなく、お正月の元旦祭、節分での節分厄払い、春と秋のお祭り、秋にある収穫のお祈り、新實祭など、一般的な祭事をおこなっています。
ただ、北海道には独特の風習があります。例えば、七五三は全国的にみると11月15日ですが、北海道は1ヶ月早い10月15日におこなっているんですね。
ほかにも、七夕は7月7日ではなく8月7日であるとか、本州と比べると季節感が若干異なる部分があります。
また、錦山天満宮は境内に梅や桜の木があるので、梅と桜が5月に一緒に咲くんです。
大体ゴールデンウィーク頃に桜と梅が咲き始めてちょうど見頃になることが多く、その時期は多くのお参りをいただいていますね。
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報告と感謝の気持ちを持ってお参りに
ー地域の方が多く錦山天満宮を心頼りにされているようですが、参拝される方々についても教えてください。
山口:参拝に来られる方は、やはり地元の人が圧倒的に多いですね。
北海道のなかに「天満宮」と名前のついた神社はそこまで多くありませんので、合格祈願に関しては北海道内各地からお参りをいただいています。
ーでは、お参りをする際に気を付けるべきことなどはありますか?
山口:どこの神社もそうですが、最近テレビなどで「神社のお参りでお願い事をする」という光景を目にします。
お願いすることはもちろんよいのですが、本来の神社のお参りの意味は「報告と感謝」といわれています。
「今日も1日無事に過ごすことができました、ありがとうございます」という報告と感謝をもって神社にお参りいただく、というのが正式なお参りの仕方なんですね。
また、一般的な神社は、2回頭を下げ、2回手を叩き、1回頭を下げる「2礼2拍手1礼」というご作法でお参りをします。
叩かないで手を合わせるのは仏様のご作法なので、お参りの際はぜひ元気な音で手を2回叩いてもらいたいですね。
新しい文化を取り入れつつ、昔からの神社を守り続けたい
ー錦山天満宮の、今後の展望についてお聞かせください。
山口:本州にある神社は、長いところで2,000年、東京でも最低400~500年の神社ばかり。その一方で、北海道は開拓前までほとんど神社がありませんでした。
函館など古くからの地域には歴史ある神社はありますが、札幌近郊や屯田兵の開拓でできた街には130年前後の神社が多いんです。
錦山天満宮も歴史でいうと130年ほどで、神社としては全国的にもまだまだ新しいほう。地域の守り神として、今後も長く地域に根付きたいと思っています。
また、ネットが発展したこの時代は、悪い意味で個人志向が強くなってきていますよね。
隣の家の人の顔も知らないまま生活するような現代に比べると、神社というのは変わらずアナログな世界です。
こういう時代だからこそ「変わらないために変わらなければいけない」と考えています。
昔からの文化をそのまま守り伝えることは大事ですが、そのために新しい時代に沿って変わっていかなければならないものもあると思うんです。
「新しい文化などを取り入れながら、昔からの神社が変わらないために守り続けなければ」と考えていますね。
ーでは最後に、読者へ向けてメッセージをお願いします。
山口:錦山天満宮は菅原道真公、学問の神様といわれており、合格祈願のお参りに多くの方がいらっしゃいます。
しかし、「神社にお願いしたから大丈夫」とは思わず、継続して努力することが大事です。
そのうえで、最後に神頼みをしていただければと思いますね。神様は、努力する過程をしっかりと見ていますから。
特に受験勉強を頑張っている方は勉強に精を出して、そのうえでお参りをしてもらえれば、きっと願いが叶うと思っています。
ー本日は貴重なお話をしていただき、ありがとうございました!
■取材協力:錦山天満宮