教室数No.1(※1) 口コミ数No.1(※2) ※1) 24年10月時点 ※2) 23年1月〜24年9月

「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」が取り組む“魅力的で持続可能な学校と地域づくり”とは

「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」が取り組む“魅力的で持続可能な学校と地域づくり”とはの画像

島根県隠岐諸島の島前地域で取り組まれている「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」をご存じですか?

西ノ島町・海士町・知夫村からなる島前地域には、唯一の高校「隠岐島前高校」があります。

廃校寸前だったこの高校を、地方創生により日本全国や海外からも生徒が集まる魅力的な学校へと変えたのが、隠岐島前教育魅力化プロジェクトでした。

今回は、そんな隠岐島前教育魅力化プロジェクトに関わる宮野 準也さん、竹内 俊博さんにインタビュー!

プロジェクトでおこなっている教育への取り組みや、地域の方たちとの交流の様子についてお話をうかがいました。

魅力的な高校をつくり地域連携で活性化を目指す

隠岐島前地域の画像

ーまず最初に、「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」がどのようなプロジェクトなのかを教えてください。

宮野 準也さん(以下、宮野):「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」は教育を軸にした地方創生で、「魅力的で持続可能な学校と地域をつくる」ことを目的に平成21年に誕生しました。

隠岐諸島の海士(あま)町、西ノ島町、知夫(ちぶ)村の3町村を合わせた島前(どうぜん)地域では、唯一の高校である隠岐島前高校が生徒数減少により廃校の危機に陥っていました。

そこで隠岐島前高校を「生徒が行きたくなる」「保護者が行かせたくなる」「地域が活かしたくなる」魅力的な学校にして地域活性を図ろうと始動したのが隠岐島前教育魅力化プロジェクトです。

隠岐島前教育魅力化プロジェクト

ー数年前に隠岐島前高校が廃校の危機に陥ったそうですが、復活を遂げるまでに苦労したことなどはありますか?

そもそも廃校危機の一番の理由は、生徒数が減少してきたということです。隠岐島前高校の廃校の危機を何とか回避するため、町村側が当事者意識を持っていろいろな取り組みをしてきました。

町村側で雇ったコーディネーターを県立高校に置くなど、これまでに前例のなかったことにチャレンジすることは、多くの方が本当に苦労されたのではないかと思います。

プロジェクトの役割としては、隠岐島前高校をどのようにしていきたいのかというビジョンをつくり、生徒や保護者に対して魅力のある高校にしていくことです。

そのために、今何をしなければならないのかということも考えてきました。

その例として挙げられるのが、島留学制度島親制度隠岐國学習センターという公立塾の設立などですね。

考え方や価値観の違う人たちと協働しながら学び合える

隠岐島前教育魅力化プロジェクトの活動の画像

ーまず、「島留学」はどのような制度・取り組みなのでしょうか。

宮野:島留学」の第一の目的は島内生と島外生が互いによい影響や刺激を与え合える場をつくることです。

島外生にとっては、離島へ来て都会で当たり前にあったものがない暮らしをするという、自分が育ってきた環境とはまったく違う世界に飛び込むことにまず価値があると思うんです。

一方で、保育園から中学校までほぼ同じ人間関係のなかで育ってきた島内生にとっては、さまざまな背景や価値観をもつ島外生との出会いが非常によい刺激になります。

例えば島内生が地域の方を「おっちゃん」「おばちゃん」と呼んでラフにコミュニケーションをとる姿に島外生が驚きます。

逆に島内生は、日常の景色や光景に島外生が感動するのを見てそれが特別な魅力だと気付くんです。そういった体験を通しての気付きや学びが日々お互いにあります

また、1学年2クラスという環境のなかで、一人ひとりが多様なことも島留学制度で価値のあることだと思います。

竹内:都会では高校の選択肢がいっぱいあるので、進学校や商業校など希望の進路や自分の特技などによって選べます。

しかし、島前には高校がひとつしかなく島外からもいろいろな生徒が来るので、都会なら同じクラスでは学んでいないであろう生徒たちが1学年60人に集結します。

共通テストを受けて国公立を受験しようという生徒から、高校を卒業したらすぐ就職するつもりの生徒までみんな一緒に授業を受けているという状態です。

でもここでは成績というものさしだけではなく評価軸がいっぱいあるんですよ。

授業中は勉強の得意な生徒が光り輝くが、放課後釣りや山菜採りに行くと島の暮らしに慣れた生徒が注目される、ということもあるわけです。

生徒同士の序列のようなものがシーンごとに多様に入れ替わるので、それぞれの強みを活かしながらお互いのよさを認め合える。これは島留学のある隠岐島前高校ならではの魅力ですよね。

宮野:また多様性があると、自分にとって当たり前のことが当たり前でない場面に出会ったときに「当たり前とは」「これは本当に正しいのかな」と自分自身に問い直すきっかけができます。

みんなそれぞれに考え方や価値観、特技が違う集団のなかで、協働しながら学び合っていく…そういった交わり方ができることは、島内生にとっても島留学に来る島外生にとっても非常に大きな収穫になるんです。

ーでは、島留学生を支える「島親」はどういった制度ですか?

宮野:島親」は高校1年生対象の制度で、島前地域の方々に島親として島留学生のサポートをしていただきながら交流をするという取り組みです。

島外から来る生徒にとって最初は地域との接点がなかなか見出しにくいなか、島親さんたちが彼らと地域との交流の接点になってくださっています。

島親制度では、事前に生徒と島親さんたちに対しヒアリングをおこない、生徒がどんなことに興味をもっているかや島親さんがどんな生徒に来てほしいかなどの情報をもとにマッチングをして島親のペアをつくります。

交流のかたちは島親ペアによってさまざま。島親さんの仕事を手伝う生徒もいれば、特別な活動はなくてもときどきふらりと立ち寄って交流する生徒もいて、濃淡はありますがみんなそれぞれによい形で交流をもっています。

島留学や島親などの制度を通して地域の人々と交流し、協働しながら学び合う。この経験を経て、学生たちは考え方や価値観が変わっていくようですね。

Ameba塾探しでは、「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」のような教育に関する記事を多数掲載。進路に悩む学生や子育てに悩む保護者の方は、ぜひ記事を読んでみてくださいね!

▶︎教育に関する最新記事はAmeba塾探しでチェック

島全体の課題を直接見たり聞いたりできる恵まれた環境

隠岐國学習センターの画像

ー取り組みとしてはほかに「隠岐國学習センター」という塾の設立もありますが、こちらではどういった活動がおこなわれているのでしょうか?

竹内:隠岐國学習センター」は学校と連携した公立塾で、高校の真下にあり現在高校生の約75%が通っています。

塾といっても教科の勉強だけではなく、生徒たちが自分のやりたいことを主体的に学べる場としてデザインしています。

学習センターでは放課後に生徒の勉強のサポートをしたり、島で取り組みたいことのある生徒に対して個別にいろいろな方を紹介するなど、スタッフは先生というより生徒一人ひとりのコンサルタントのような役割を担っています。

近ごろは、生徒同士で主体的に立ち上げた企画なども活発におこなわれており、学習や活動の幅を広げる場としても機能していますね。

また、例年学校でおこなわれている海外研修がコロナの影響でできなくなったため、学習センターが海外の方とつないで学べる場をつくったりもしました。

このように、学校や生徒の状況に合わせて学びの機会をコーディネートしていくこともあります。

生徒たちにとって隠岐國学習センターは、放課後に雑談や情報交換ができる学校や寮とも違う第3の居場所なんです。

ー生徒さんが好きな分野をのばしたり将来のビジョンを見つめるきっかけが生まれる場でもあるんですね。

竹内:隠岐國学習センターの設立当初の目的は、島の子どもたちの進路をサポートすることでした。

今では生徒の学びのかたちはより多様化しており、スタッフが生徒一人ひとりの状況や要望を見極めながら個々に合わせたプログラムを作成しています。

進路に悩みのある生徒に対しては卒業生とオンラインで繋ぐなど相談の場を提供することもできます。3年生の受験お疲れさま会で、2年生の生徒が手づくりのお菓子をふるまってくれたのも印象的でしたね。

手触り感のある活動から一流の方と繋げて本質的に学ぶ取り組みまで、幅広く体験できるのも隠岐國学習センターの魅力です。

ー地域課題を解決するため、いろいろな取り組みなどをされているのですね。

宮野:島前地域などの離島や過疎地域と呼ばれる場所では人口減少や少子高齢化という課題を抱えていますが、これは今後日本全体が抱える問題だと考えています。

島前地域は日本がいずれ抱える課題を先に抱えているいわば「課題先進地域」なので、今からこの課題に向き合い学ぶことは今後の力になっていくことでしょう。

私たちは、島全体を学校、地域の方を先生と捉え、学校のなかだけにとどまらず、島全体で課題や学びに取り組んでいます

教科と地域を結びつけ、新たな価値をつくる学習

探究の時間の風景画像

ー島留学生が島での暮らしを通じて学べる面もあると思いますが、例えば島にはどういった学習環境がありますか?

宮野:いくつか切り口がありますが、学校の授業での「教科」と「総合的な探究の時間」について紹介します。

教科の授業では、その教科の枠にとどまらず教科×教科で探究的に学ぶことにチャレンジしたり、教科と地域を結びつけながら考えていく学習にもチャレンジしています。

もうひとつの総合的な探究の時間では「夢探究」という授業があります。

まず1年生で探求の基礎を学び、1年生後半から2年生にかけてはチーム活動として地域の課題解決や既にある魅力を磨きながら、地域の新たな価値づくり(価値創造)に取り組みます。

3年生ではさらにそれを自分の進路と結びつけ、より現実的に考えていく授業や活動をおこなうんです。

ー高校生の段階で地域の将来について考える機会があるのはとても有意義ですね。

竹内:隠岐島前高校のある海士町は人口が2,200人ほどの町なので、いろんなことが見えやすく、島全体のことも身近に学べる環境です。

例えば都会では生産者と流通者が別のことも多いですが、島の直売所では野菜に生産者の名前が記されていたりするのでその流れが見やすくなっています。

生徒たちは、島親さんのつくった野菜が並ぶところやそれまでの過程も手の届く範囲で見ることができ、実際に島親さんが困っていることや課題を聞くこともできます。

このグローバル社会のなか、インターネットで調べるのではなく直接見聞きできる環境に実践のフィールドがあることは、生徒たちにとって大きな魅力であり強みではないでしょうか。

ーありがとうございます。最後に、隠岐島前教育魅力化プロジェクトを応援したいと考えている方々に向けてメッセージをお願いします。

宮野:隠岐島前教育魅力化プロジェクトは、これまで島内外のたくさんの方に応援していただき歩んできました。

応援というのはこの取り組みを知ってもらうことから、一緒に何かをさせていただくことまでさまざまな形があると思っています。

これからもいろいろな形でいろいろな方々に頼らせていただきながらこのプロジェクトを進めていけると嬉しいですね。

隠岐島前教育魅力化プロジェクトのホームぺージでは、随時情報発信や応援依頼などもしています。

多くの方々に隠岐島前教育魅力化プロジェクトを知っていただき、中学生や保護者の方には説明会やオープンスクールで隠岐島前高校の魅力を感じていただければ嬉しいですね。

ー島留学制度や島親制度など、隠岐島前高校をはじめとする地域の取り組みについて気になる方はチェックしてみてくださいね!本日は貴重なお話をありがとうございました!

「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」についてもっと知りたい方はテラコヤプラスの公式YouTubeをチェック!

「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」の島留学をはじめとするさまざまな取り組みなどについてのインタビューの様子は、テラコヤプラスの公式YouTubeでご覧いただけます。

離島で過ごす高校生活もあり!全国から生徒が集まる島高校のこだわり教育プログラムを調査!教育業界クローズアップ!第11弾|テラコヤプラス by Ameba


将来に悩む学生や、子どもにいろいろな人・経験に触れて視野を広げさせたいと考えている保護者の方は、ぜひチェックしてくださいね!

■取材協力:隠岐島前教育魅力化プロジェクト

坂本 菜緒
この記事を執筆した執筆者
坂本 菜緒

Ameba塾探し 執筆者

ピアノ、体操、フィギュアスケートなどの習い事を掛け持ちしつつ、小学3年生から進学塾に通う。高校受験で山手学院高等学校に進学。その後、大学受験で東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻に入学。同校の大学院美術研究科を修了し、美術と工芸の専修免許状を所持。2012年から東京都公立小学校にて勤務。2018年5月に株式会社サイバーエージェントグループ会社である株式会社CyberOwlへ中途入社。2021年3月から「Ameba塾探し」にてエディターとして従事し、保護者の方やお子様にとって、目的にあった最適な習い事に出会える記事作りを目指しています。