小学生のころ、作文や読書感想文を書くことが苦手と感じていた人は多いのではないでしょうか。
もし、小学生のころにケーキづくりや落語鑑賞といった少しユニークな体験をできたなら、楽しい経験を思い出しながらワクワクと作文が書ける気がしませんか?
実際に、小学生を対象に少し特別な体験ができるユニークな授業をおこなっているのが「世田谷作文教室」です。
今回は、ノンフィクション作家で「世田谷作文教室」主宰者の神山典士(こうやまのりお)さんと、同教室に通う生徒の保護者の方からお話をうかがいました。
子どもが作文に苦手意識をもっていると感じる方や、子どもに文章力や表現力を身につけさせたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
「世田谷作文教室」代表の神山さんにインタビュー
ーまずは、「世田谷作文教室」では子どもにどのような力を身につけさせることを目的としているのか教えてください。
神山 典士さん(以下、神山):作文を書くことは、「脳を活発にする」ということなんです。
人間の脳は本来「怠け者」にできているのですが、文章を書くことによって、自分は「こうしたい」「こうなりたい」といった感情や思っていることを脳が理解し働くようになります。
たとえば、昔からある「書き初め」や「絵馬」なども、自分の感情がわかる表現法のひとつですよね。
作文を書くことも、子どもたちにとって自分の思っていることや身の周りで起きたことを表現するための大切な教育です。
しかし、現在の小学校には、国語の授業に作文の単元はありません。
そこで、子どもの「書く力」を鍛える場をつくろうと、2012年に「世田谷作文教室」を開校しました。
大人でも自分で考えて文章を書く力が不足している人は多いので、子どものうちから、「書く力」を育てて身につけさせることは重要だと考えています。
自分の心を見つめる観察力を育む
ー実際に「世田谷作文教室」に通い始めると、作文にどんな変化が生まれるのでしょうか?
神山:僕は生徒が作文を書くときに「自分の心の奥を覗いてごらん」と伝えます。
それによって、文章そのものが変化するというよりも、「自分が今何を考えているのか」「相手は今何を考えているのか」「自分や相手の行動がどのように変化するか」といったことを見つめる観察力が子どもに身についていくんです。
そのほかにも、絵と文章をマッチングさせたりする表現力が豊かになったりもします。
また、教室では生徒に「作文に間違いはないのだから何をどう書いてもいいんだよ」と伝えています。
そう伝えることで、それまで固まっていた子どもたちの気持ちがほぐれて、表現の幅もどんどん広がっていくんです。
子どもたちが変化し成長する様子を見れるのは面白いですね。
ー観察力が身につくことで文章の表現も豊かになるのですね。
神山:「世田谷作文教室」でおこなっているのは、作文を「教える」のではなく子どもたちがもっている表現力を「引き出す」ことです。
子どもは大人にいろいろ言われて「こうしなきゃいけない」「こうじゃなきゃいけない」と思い込んでしまっている部分が多いんですよね。
でも、「そんなこと気にせずどんどんやってごらん」と言うことによって、作文や絵がとてもよくなることがあります。
子どもの予定に合わせて不規則に開催する授業
ー観察力や表現力を1回で身につけるのは難しいと思うのですが、みなさんどのくらい通われているのですか?
神山:「世田谷作文教室」は、ゆるい教室なんです(笑)。
毎回、「次回はいつやろう」と話すのですが、みんなほかの習いごともあったりと忙しくて、月1回の開催日は不規則です。
生徒のなかには3〜4年続けて通っている子もいれば、都合の合うときだけ来る子もいます。それでいいんです。
もちろん来てくれれば子ども同士の交流も含めていろいろな刺激が与えられるし、その子のもっている魅力はたくさん引き出すことができます。
ー宿題を出されることもあるのですか?
神山:宿題はありません。
もちろん作文を書いて提出してくれたら添削をして返しますが、僕から家で書くように言うことはないですね。
ただ、保護者のみなさんには宿題があります。
それは、子どもが書いた作文を、良い・悪いを考えずにすべて取っておいてほしいということです。
「子どもが将来、進学や就職などで進路を選ぶときに、子どものころに書いた作文を見返せる環境を用意しておいてください」とお願いしています。
五感を使って作文を書いてみる
ー続いて、作文を苦手と感じている生徒の意識が、得意や好きに変わったと感じるのはどんなときですか?
神山:以前、ある生徒がプロレス観戦に行ったことを作文にしたことがありました。
その作文には、原稿用紙全部に「猪木猪木猪木…」と書いてあったんです。
それを書いた子どもに「それでいい、だって君にはそう聞こえたんだから」と言うと、ほかの子どもたちが同じように真似をするんですよね。
でも、それはそれでいいんです。
言葉を重ねることのダイナミズムは、書いてみて初めて発見できるものだと思いますので。
ちょっとした体験をきっかけに、文章を書くことが楽しくて好きになっていく生徒もたくさんいます。
ープロレス観戦で試合の様子ではなく「音」を感じたというのはすごいですね。
神山:「世田谷作文教室」では「五感を使って書く作文教室」をコンセプトに、できるだけ視覚以外でも感じてみようと指導しています。
聴覚・嗅覚・味覚・触覚も働かせて、触れるものは触ってみる、なめられるものはなめてみる、という具合にです。
五感で感じたことを作文で表現すると、文章がとてもいきいきとします。
作文を読む人に感動を伝える
ー最後に、神山先生が「世田谷作文教室」で指導をするうえで心がけていることや課題を教えていただけますか?
神山:子どもたちにはいつも、読む人のことをイメージして、その相手に感動が伝わるように書くことが大事だと伝えています。
「自分が書きたいように書くだけじゃなくて、読む人が読みたいと思えるように書かないと伝わらないよ」と。
たとえば、同級生に向けて書くときは話し言葉でも、大人に向けて書くのであれば敬語を使った方がいいかもしれない。
では、不特定多数の人に向けて書くならどうすればいいのか…と、子どもの考え方を広げていくことを大事にしています。
また、「世田谷作文教室」では体験学習やレクリエーション、合宿といったように、五感を使って作文を書く機会を多く設けています。
活動のひとつである「エアなわとび」では、「ここに縄があるよ。さあ回すよ…1、2、3!」と大縄をもっているように腕を回すと、縄がなくても子どもたちは飛ぶんです。
「縄がないのにどうして飛べたの?」って聞いてみると、「だって縄が見えたから」と答えるんですよね。
作文を読んでもらうのは、見えない縄を飛んでもらうことと同じなんです。
そのほかにも、教室で「落語鑑賞」をして作文を書く場合、生徒には「落語を聞いてない人が作文を読んでも、この落語家さん面白いねと思えるように書こう」と伝えます。
文章を書くうえで大事なのは、誰が読むかを意識すること。それを子どものころからできるようになる指導を心がけています。
ー「世田谷作文教室」の魅力をたくさん知ることができました。本日はありがとうございました。
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子どもが「世田谷作文教室」に通っている保護者にインタビュー
続いて、お子さんを「世田谷作文教室」に通わせている保護者の方へのインタビューをご紹介します。
「世田谷作文教室」に最近通い始めた生徒の保護者の声
ー「世田谷作文教室」に通わせようと思ったきっかけはなんですか?
保護者Aさん:さまざまな習いごとがあるなかで、文章を書く習いごとは珍しいと思い興味をもちました。
神山先生という「文章を書くプロ」に指導してもらえる点にも魅力を感じ、ぜひ子どもを通わせたいと思いました。
ーこの教室にどんなことを期待していますか?
保護者Aさん:文章を書くことを通じて、子どもが自分の考えや感じたこと、心のなかにあるものを活発に表現できるようになればと思っています。
ー教室に通われて、お子さんに変化は感じますか?
保護者Aさん:まだ日が浅いのではっきりとはわかりませんが「国語の勉強や本で知る言葉の一つひとつに興味をもつようになった」気がしますね。
それが、まず最初の変化かなと思います。
ー学校でも作文を学ぶ機会はあると思いますが、あえて作文教室に通わせる理由はなんですか?
保護者Aさん:通い始めてわかったのが、本職にしている人にしかわからない文章を書くときの視点があるということです。
どういうことに気を付けて書けばいいのかなどを、プロから直々に教えていただけるというのは学校にはない作文教室の魅力ですね。
ー今後のお子さんの変化が楽しみですね。本日はありがとうございました。
「世田谷作文教室」に約4年通っている生徒の保護者の声
ー「世田谷作文教室」に通わせようと思ったきっかけはなんですか?
保護者Bさん:知人から「世田谷作文教室」のことを聞き、誘われて参加したのが最初です。
現在小学5年生と2年生の子どもふたりを通わせており、上の子は小学1年生のころから約4年通っています。
ー長い間通い続けているのは、どんな点に魅力を感じるからですか?
保護者Bさん:一番最初に作文教室と聞いたときは、ただ先生が黒板で説明して生徒は机と椅子に向かって文章を書く教室をイメージしていました。
しかし、「世田谷作文教室」では料理をつくったり手品師や落語家を呼んでくださったりと、さまざまな体験ができます。
実際の体験をもとに文章を組み立てて作文を書くスタイルが子どもに合っているようで、毎回楽しみながら通い続けています。
まさか作文教室で落語が聴けるとは思わなかったのですが、作文を書くことを通して自分の感性や表現を豊かにできる有意義な時間だと感じています。
ーどんな期待をもってお子さんをこの教室に通わせていますか?
保護者Bさん:上の子は本を読むのが大好きなのですが、よく言われるような「本を読む子どもは文章を書く力や語彙力がある」というのは決してそうとは限らないと気づきました。
「読む力=インプット」と「表現する力=アウトプット」はまったく違うものなのだと。
神山先生は、「そのときどう感じたの?」や「あのときこう言ってたけどそれってどういう意味?」と、子どもがインプットしたことを引き出してくれる力があります。
子どもには、「アウトプットする力をつけて自分の思いや考えを積極的に他人と共有できるようになって欲しい」という期待をもって通わせています。
ー教室に通われて、お子さんに変化は感じますか?
保護者Bさん:上の子は、以前はどこで何があったかを聞いても漠然と単語を言うだけで伝わりにくい部分がありました。
しかし、通い始めてからは「え、それってどういうこと?」と思わずこっちが聞きたくなるような興味を引く話し方をするようになったんです。
下の子は、以前はうまく説明できないことを言いたがらない面がありました。
でも、神山先生がたくさんほめてくださるので、一生懸命自分の言葉で伝えようとする力がついてきたと感じています。
ー学校でも作文を学ぶ機会はあると思いますが、あえて作文教室に通わせる理由はなんですか?
保護者Bさん:学校で、読書感想文を原稿用紙3枚も書くような宿題が出されたりしているのですが、漠然とし過ぎていて、親が子どもに「どうやって書けばいいのか」を教えるのが難しいです。
神山先生の授業では、わからないことに対して、子どもに書くための方法をたくさん教えてくれます。
また、毎回ほかの子どもの作文も読んでくださるので「そういう考え方や書き方もあるんだ」「あの子の作文がよかったから次はあんなふうに書いてみようかな」と、子どもが前向きに感じることが多いようです。
作文をじっくり見てくれるというよさもありますが、体験学習や話し合い、ほかの子どもの作文を聞いてみたりする時間をもてるのが、学校にはない「世田谷作文教室」の魅力だと思います。
―興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
「世田谷作文教室」をもっと知りたい方はAmeba塾探しの公式YouTubeをチェック!
「世田谷作文教室」の実際のインタビューの様子や詳しい内容は、Ameba塾探しの公式YouTubeでご覧いただけます。
子どもの作文を書く力をもっと伸ばしたいと考えている人、「世田谷作文教室」の授業スタイルに興味がある人はぜひチェックしてみてくださいね。
「世田谷作文教室」の料金や場所はこちら
世田谷作文教室はノンフィクション作家の神山典士(児童書ペンネーム、こうやまのりお)さんが主宰する小学生対象の作文教室です。月に1度、約120分の授業をおこなっています。夏休みなどの長期休暇に開催される合宿や連続講座なども好評です。
■取材協力:世田谷作文教室