まさに今、私たちが直面している環境問題。現代社会におけるキーワードの1つ「SDGs(エス・ディー・ジーズ=持続可能な開発目標)」にも大きく関係する重要な事柄です。
環境問題の解決に向けて活動している団体が日本にはたくさんありますが、その1つに公益社団法人の「日本環境教育フォーラム(JEEF)」があります。
「日本環境教育フォーラム」は、おもに「教育」を通して環境問題にアプローチし、これからの時代を生きる子どもたちに必要な知識と経験を提供しています。
今回は「日本環境教育フォーラム」事務局長の加藤 超大さんと、2001年にJEEF内に設立された「ジャパンGEMS(ジェムズ)センター」事務局の鴨川 光さんにお話を伺いました。
環境教育や活動内容に興味のある方は、ぜひご一読ください。
体験と対話による学びを重視した人材教育
ー本日はよろしくお願いします。早速ですが、「日本環境教育フォーラム」はどのような活動をしている団体なのでしょうか?
加藤超大さん(以下、加藤):「日本環境教育フォーラム」は、英語で「Japan Environmental Education Forum」といいまして、頭文字をとって「JEEF(ジーフ)」と呼ばれています。
地球環境をはじめとしたさまざまな問題に対して、自ら課題を見つけ、学び、考え、そして行動できる人材の育成をおこなっている団体です。
現在は東京とインドネシアを中心に、環境教育の普及啓発や、環境教育を推進する指導者の育成に加え、途上国への環境教育支援にも取り組んでいます。
人材の教育にあたっては、ただ表面的な知識を与えるのではなく、「体験と対話による学び」を重視しているのが特徴です。
「自然から学ぶ環境教育」と「体験から学ぶ環境教育」の2つを柱にして活動しています。
ー東京のほかにインドネシアでも活動されているんですね。
加藤:たまたまインドネシアの方からお声がけがあったんです。今から19年ほど前になりますが、当時のインドネシアでは環境教育の必要性が高まりつつある時期でした。
実際の環境教育活動について日本との情報交換をはじめ、国際環境協力を通じた両国の連携強化を目指し、インドネシアに事務所を構えました。
ー日本環境教育フォーラムが設立に至るまでの経緯をお聞かせください。
加藤:「日本環境教育フォーラム」設立のきっかけは、1987年に山梨県の清里(きよさと)で開催された「清里フォーラム」です。
現在は「清里ミーティング」と名称を変えていますが、当時から子どもたちの自然体験の減少に対して問題意識を持っている人たちが、情報交換やノウハウの提供などをするために集まった、という経緯があります。
そして第1回目の清里フォーラムから5年後の1992年、当時の事務局が母体となって誕生したのが「日本環境教育フォーラム」(以下、JEEF)というわけです。
ー実際におこなわれている自然体験的な活動にはどういったものがありますか?
加藤:企業さんの社有林を使って間伐体験をおこなったり、キャンプに行って自然と触れあえる機会を作ったりするなどの活動をしています。
やはり持続可能な社会をつくっていくためには、自然と触れあうことによって自然環境を守りたいとか残したいと思う気持ちが芽生えることが大切なんじゃないかなと考えています。
自然の中で遊ぶことを通して、生きていくうえで必要なこと、たとえば自然の大切さ、友達とのつきあい方、自分のことを自分で決定する力、試行錯誤する力。それらは自然を先生にして学ぶことができるので、そこに力を入れています。
ーJEEF内に設立された「ジャパンGEMS(ジェムズ)センター」ではどのような活動がおこなわれているのでしょうか?
鴨川光さん(以下、鴨川):まず「GEMS(Great Explorations in Math and Science)」というのは、カリフォルニア大学でつくられた「科学と数学の体験学習プログラム」のことです。
その公認ライセンスを私たちが取得していまして、正解のない問いであるとか、多様性というものを活かしながら、実験・観察・ディスカッションなどを通して、答えに向かって自分たちで学びをつくっていく体験を提供しています。
多様なパートナーと持続可能な社会をつくる
ーJEEFが目指しているビジョンや、そのために取り組んでいるミッションについて詳しくお聞かせください。
加藤:私たちが掲げているビジョンは、「多様なパートナーと協働しながら持続可能な社会づくりをすること」です。
NGO1団体で活動するには限りがあるので、企業や行政とパートナーシップを組みながら、環境を持続可能にするための人づくりをしています。
NGOと企業って、敵対関係に見られがちなんですが、JEEFは企業を仲間だと思って活動している点が強みでもあるのかなと思っています。
ー環境問題を解決するために、一緒になって環境について考えてくれる仲間を増やしていくという意味で、「教育」をおこなわれているんですね。
加藤:そうですね、環境教育のゴールは、ただ環境問題について知るだけでなく、実際に行動に移すことだと思いますので、そのゴールを目指してさまざまな「体験と対話による学び」をおこなっています。
ー「体験と対話による学び」を重視されている理由は?
加藤:それは実際にやってみることで、やっとその人に記憶として定着すると考えているからです。
私たちがよく使う中国のことわざに、「聞いたことは、忘れる。見たことは、覚える。やったことは、わかる」というものがあります。
私たちが一方的に知識を教えることは簡単です。しかしそうではなく、参加者自身が考えて試行錯誤する機会を与えることで、考える力を養っています。
JEEFの活動が生み出す社会的価値を可視化
ーいま世界的に広がっているSDGsへの取り組みについて詳しく教えてください。
加藤:SDGsのなかで大切にされている言葉に、「トランスフォーメーション(Transformation)=変革」と、「リーブ・ノー・ワン・ビハインド(Leave No One Behind)=誰一人取り残さない」というのがあります。
そのような社会をつくるために、私たちは教育の力で何ができるかをすごく大切にしています。
ですので、貧困問題であったり、気候変動、森林破壊、海洋汚染問題などに対して貢献していくことに重きを置いています。教育の分野で何ができるのか?それが私たちの使命だと思っています。
ーJEEFは「社会的インパクト志向に基づく評価や事業づくり」を目指されているそうですが、そもそも「社会的インパクト評価」とは何なのか?その必要性について教えてください。
加藤:「社会的インパクト評価」というのは、私たちの活動が生み出す社会的価値を可視化することで、成果の見える化とも言い換えられます。
それがなぜ必要なのかというと、まず、寄付をしてくれる方々や企業に対して、私たちの活動がどのような成果をあげたのか説明できなくてはならないからです。
それと社会的インパクトを考えることで、事業のクオリティ向上も見込めます。アウトプットやゴールをしっかり設定することが重要ですね。
鴨川:たとえば環境イベントやりました、そこに30人参加しました、ではその教育の効果は30人に教育をしたことだけなのかというと、非常に小さな効果に聞こえてしまいます。
ですが、その30人がそれぞれの町に帰ったあと、何人の友達にクチコミを伝えた、実際に行動してそこに何人が参加した、というのはすべて1つのイベントから発生した社会的インパクトの効果として考えられます。
先ほど加藤が申したように、教育自体はすぐに効果が出ないので、その先でどれだけ広がるかを考えることを大切にしています。
ーボランティアを随時募っているとのことですが、JEEFの活動に興味を持っている方にアピールしたいことなどありましたら、この機会にぜひお聞かせください。
加藤:ボランティアって聞くと、お手伝いというようなイメージがあるかもしれませんが、ボランティアやインターンに来てくださる方と一緒に、持続可能な社会をつくるためのアイデア出しや意見交換などができればうれしいです。
そういった活動を通して、参加者が環境問題について考え、どうしたらもっと良い活動ができるかを一緒に考えられたらいいなと期待しています。
NGOで働いていると、NGOの目線でしか考えられなくなってくるんですが、学生さんの目線であったり、企業を経験した方の企業目線であるとか、主婦/主夫の方の主婦/主夫目線など、環境問題に対してさまざまなアプローチ方法があると思います。
私たちの足りない視点を補ってもらうためにも、対等でフラットな立場で一緒にお仕事ができればと思っています。
すべての人々が平等に自然と触れあえる社会を目指して
ーJEEFの今後の展望についてお聞かせください。
加藤:来年で設立30周年になるので、いろいろなことにチャレンジしたいなと思っています。
1番問題意識を持っているのが、自然体験活動などに参加する子どもが、裕福な家庭のお子さんである場合が多いことです。道具の購入費や交通費の発生によって、子どもの体験に格差が生まれてしまうんです。
そういった格差をなくし、すべての人々が平等に自然と触れあえる社会を実現していきたいと考えています。
鴨川:SDGsが掲げる17の目標のなかには、「すべての人に」というワードが何度も登場します。この「すべて」をどこまで広げられるかについては、常にチャレンジしていくつもりです。
現状では家庭の問題や地域性の問題などにより、私たちが知らないところで切り落とされてしまっている子どもがたくさんいます。
今後の課題として、オンラインでの活動やそのほかの方法で、そういった子どもたちも含めた「すべて」の枠を広げていきたいですね。
ー最後に、活動に興味のある方や読者に向けてメッセージをお願いします。
加藤:よく言われていることに、その環境問題を子どもたちに押し付けるものではない、というのがあるんですね。
これを読んでくださった大人の方々には、まず自分自身が変わっていくことが大切だとお伝えしたいです。
大人の姿を子どもたちは見ています。自分自身が変わるところを、大人が行動で示していくことが1番の教育になると考えています。
たとえば買い物をするときは地産地消を心がけるとか、家でコンポストを始めてみるとか、そういう身近なところから1つ1つ始めていってくれたらうれしいですね。それが環境問題の解決にもつながっていくと思っています。
ただ子どもにやらせるのではなく、大人も一緒に行動して学ぶ、というのが大切です。
鴨川:今の時代、新しいものを生み出すことや、変革を起こすことに価値があるといわれていますので、そういう意味では、あとから生まれた人のほうが、大きな可能性を持っていますよね。
先生であったり保護者であったり、子どもの周りにいる大人が先に生まれてるから、こっちの方がいろんなことを知ってるんだというスタンスではなくて、後に生まれたあなたたちの方が新しいことができる可能性があるよね、というスタンスで子育てや学びをサポートしていく必要があるのかなと思っています。
ですので、子どもたちに何かを教えなきゃ!という姿勢ではなく、子どもたちが何を学びたくて、どう育っていきたいかに寄り添っていただけるといいなと思っています。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
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実際にプログラムでおこなっている実験を紹介していただきました!
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■取材協力:公益社団法人 日本環境教育フォーラム(JEEF)