子どもの頃、ハマった遊びやスポーツ。ただひたすら夢中になって楽しんでいたけれど、その経験がいつしか将来の自分の人生に影響を及ぼすことも少なくありません。
「大人になったらケーキ屋さんになりたい」「大きくなったら消防士になりたい」と、子どもたちが少しずつ将来のことを考えはじめたときの第一歩として“なりきり体験”というものがあります。
職業体験施設はいくつかありますが、遠方に住んでいる人にとっては尻込みしてしまうことも。そんななか、スマートフォンで“なりきり体験”を楽しめる無料アプリとして話題を集めているのが「ごっこランド」。2~3歳、小学校1~2年生向けの知育アプリとして、390万ものファミリーに利用されています。
今回は、「ごっこランド」をはじめ、キッズ・ファミリー向けのコンテンツ事業を多数展開する「株式会社キッズスター」の代表取締役・平田全広さんにインタビュー。アプリの魅力や開発秘話などについて伺いました!
子どもの頃に夢中になったことを将来につなげる
平田全広さん(以下、平田):まずは「ごっこランド」などの知育アプリを中心とした事業ですね。子どもが楽しむことを考えつつ、あくまで親目線というか、親として「こういうものがあったらいいよね」と思うことを中心に展開しているのがアプリ事業です。
そして、アプリのように画面上だけを見るより、もう少し目線を上げて子どもと親が一緒になって体を動かせるようなことということで、デジタルアトラクションやイベント支援などといった事業も展開しています。
平田:子どもの頃に何かにハマったり夢中になったりした経験を持ってる人というのは強いなと思っていて。何か物事にハマって一気にドライブかかったときの子どもの強さには凄いものを感じるんですよね。
学校のなかでの評価では見えないような得意なことやハマっていることが、将来的にさまざまなことと繋がっていくということ。そして、いろいろな大人がいて、いろいろな働き方があって、将来いろいろな特技が活かされていくんだということを、できれば早いうちに気づかせてあげたいなと思いました。
子どもが実際に体験したときのリアルな衝動に結びつけるためのいわゆるきっかけ作りとして、こういう疑似体験が子どもたちには合っているのではないかと考えたんです。
テキストや音声だけで何かを理解するよりも、「これ知ってる!」「見たことある!」というアプリを通した疑似体験によっていろいろなことを知ってもらいたいと思ったのが「ごっこランド」のはじまりですね。
ゲームは80種以上!ただ遊ぶだけでなく楽しみながら理解させる
平田:まずは物量的な部分ですね。あらゆる企業に協賛してもらうことで、無料アプリでありながらゲームの種類が多いというのが強みといえます。数ある無料アプリのなかでもここまでいろいろなゲームが楽しめるのはないと思いますね。
リアルな疑似体験といっても、全部が全部リアルにできない部分はあります。そういったところも企業様に監修をしていただきながら、理解できる範囲でのリアルさを追求しています。
親からすると、たとえ安いアプリゲームでも、課金が多いと安心できないですよね。無料でより安心感のあるゲームが増えていくのもこのアプリの魅力だと思います。
ゲームって、ただ与えているだけだと罪悪感があるものだと思うんです。しかし、社会や仕事の内容を知っていけるという知育要素を加えているので、ただ遊ばせているより罪悪感がないのも強みのひとつかと思いますね。
純粋なゲームというよりは、企業の動きだったり、製品がどのように作られているのかだったり。楽しみながら理解してもらうというところも大事にしています。
平田:現在進めているものも合わせると50社以上あります。これまで、リリースは毎月およそ2社のペースで増やしてきました。3月からは当面2社3社という形で毎月増やしていく予定です。
平田:現状だと80種類以上。50社となれば100種類くらいに増える見込みです。いろいろな企業様に入っていただくことでゲームの種類はどんどん増えますね。
「子どもテスト」で気づいた本当の“好き”を追求することの大切さ
平田:「ごっこランド」は社会のいろいろなことを知られるあくまできっかけであって、子どもたちが「あれやってみたい」「これやってみたい」「私はこれが得意」という想いになれるような設計を心掛けています。ですので、こういったレビューを見ると非常に嬉しいですね。オープンしてからは、ありがたいことに評価が4点以下になったことがないんです。
とはいえ、やはり子どもたちに理解してもらうために、どういうゲームにしていくかが1番の悩みどころ。楽しさもありつつ疑似体験ができるかどうかというところの調整は、答えが明確にないなかで苦労するところであり、また面白みでもあります。
私たちが開発期間で長く置いているのが「子どもテスト」。大人がプレイして問題なくできているかということはもちろんですが、子どもが親に対して「できた!」「これ見て!」としっかりとアピールできるかどうかを重要視していて。そこに対しての反響が出るということは嬉しいです。
平田:そうですね、それは大事にしていますね。大人が作るとどうしても複雑にしてしまうというか作り込んだゲームにしてしまいがちですが、実際に遊ぶのは 2~3歳、小学校1~2年生の子どもたち。複雑にしてしまうとわかりにくくなってしまうんです。
子どもって、すぐに飽きてしまったり難しいことにチャレンジしたがったりしますよね。その一方で、少し頑張って100点がとれるゲームなら自信がつく。ポジティブな部分もあるので、毎回安定して100点をとれるゲームで遊びたいということもあるんです。
そういったところも、この子どもテストを踏まえてわかってきたこと。長年携わってきたなかで得た気づきですね。
平田:それはきっと非常に重要な要素だと思います。たまに難しいことにチャレンジして、そのなかでハマったことを奥深く追求していく、すべてを追求していく必要性はないと思っていて。本当の“好き”を見つけてもらうきっかけとなるサービスになれたらいいですね。
親子で力を合わせることで協力することの楽しさを感じられる
ーここからはデジタルアトラクション事業について少し伺いたいのですが、具体的にどんなアトラクションを提供しているのでしょうか?
平田:家電量販店や住宅展示場など、いわゆる子どもを待機させる「子どもルーム」のような場所があるところに機材を提供して楽しんでもらう、というのを目的としています。
平田:「親子で協力プレイで高得点を目指そう」というのをコンセプトとしています。子どもだけでも遊べますが、親子で力を合わせることで楽しさを感じられるのが魅力です。
たとえば「大激走!フリフリコースター」というアトラクションでは、親子でトロッコに乗りますが、パンチを出すのは子どもの役割、エンジンを動かすのは親の役割というのが決まっています。お互い声を掛け合いながら協力していくアトラクションですね。
平田:そうですね。コロナの影響で去年からはあまり動けていないのですが、本来は毎月ペースでおこなっています。あとは夏休みや春休みなどの時期にも開催していますね。
平田:学校ってひとつの教育機関ではありますが、社会が子どもを育てるというのもあると思うんです。あらゆる企業様に加わっていただき、仕事の考え方に繋がるような体験コンテンツを面白く楽しく結びつけていきたいと思っています。
「ごっこランド」に今参画をいただいている企業様は続々と増えているところではありますが、たとえばこの企業様とプログラミングを合わせて教材を作るといったことなども考えているところです。
社会と子どもたちを繋げていくための軸を合わせていくなかで、プログラミングやメディアの類などの面を広げるべく、取り組んでいるところですね。
平田:親が子どもに与えられるものというのは、やはり限界値があると思っていて。「うちの子、意外とこんなことに興味があるんだ」というように、「ごっこランド」で子どもの新たな興味関心に気づけると思うんです。
また、「ごっこランド」を通してお父さんやお母さんがどんな仕事をしているのかを知るすることで、親子のコミュニケーションをとるきっかけにもなるのではないかと考えています。そういうことを踏まえて利用していただけるともっと面白くなると思いますね。子どもたちが将来社会にでたとき、いろいろな気づきに出会えるようになれば嬉しいです。