予備校運営の学生寮は、学習をするための環境があらかじめ揃っており、受験生にとって理想的な空間です。
本記事では、予備校の寮を利用するメリットや施設の設備について解説するとともに、寮生活で必要となる費用などをまとめました。
大手予備校が首都圏に設けている学生寮の料金や設備なども掲載していますので、寮の利用を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
予備校の寮とは?
予備校が受験生向けに提供している寮は、単なる宿泊施設ではありません。学習する環境として適切な設備・空間が整えられており、受験生は寮ごとに定められたルールにしたがって生活します。規則正しい生活のなかで勉強効率を最大化できるのが、予備校の寮の最大の特徴だといえるでしょう。
また、予備校の寮の多くは、予備校の近隣に立地しています。「集中できる環境で勉強がしたい人」だけでなく、「予備校に通いたいけれど家との距離がある人」にとっても、予備校の寮は最適な環境だといえます。
予備校の寮には「直営寮」と「提携寮」の2種類があります。予備校によって提供する寮の種類が異なるため注意しましょう。
直営寮
直営寮は、予備校が直接管理・運営するタイプの寮です。寮に住む全員が受験生であるため、互いに切磋琢磨しながら学習できる環境が整っています。また、予備校の近隣に立地しているケースがほとんどで、予備校に通う際も便利です。
食事や健康、セキュリティについてのサポート体制が整っていることも多いため、安心して学習に集中できるでしょう。
提携寮
提携寮は、予備校がマンションやアパートなどの一部を借り上げ、受験生に貸すタイプの寮です。家具や家電が備わっていることが多く、場合によっては食事の提供もあります。
ただし、提携寮はあくまで一般のマンションやアパートであるため、受験生以外の人も住んでいます。そのため、騒音などに悩まされる可能性がある点には注意が必要です。
予備校の寮を利用する3つのメリット
予備校に通うことを前提に考えると、浪人生活を送る住環境としては、自宅・一人暮らし・ある程度身の回りの世話をみてもらえる施設、この3つが選択肢として挙げられます。
そこでおすすめするのが予備校の寮での生活です。
予備校の寮というと、大都市にある予備校に通うために、地方在住の浪人生が利用するものというイメージが強いですが、予備校への通学時間がかかる方にもおすすめの選択肢です。
では、予備校の寮での生活にはどのようなメリットがあるのか、代表的な3つのメリットを、ほかの環境と比較しながら見ていきましょう。
メリット①勉強に集中できる環境が用意されている
自宅で生活する場合は、自分の部屋で学習することになりますが、自宅の部屋には勉強と無関係な趣味のものも多く、勉強に集中できるとは言い難い環境です。
趣味のものや遊び道具を持ち込まず、一人暮らしをしながら予備校に通うという方法もありますが、一人暮らしの場合、料理や洗濯、掃除などの家事を自身ですべておこなう必要があります。そのため、自宅学習の時間がどうしても少なくなってしまいます。予備校に通いながらこうした家事をこなしていると、自宅学習の時間を確保することは難しいといえるでしょう。
予備校の寮であれば、掃除や洗濯など必要最低限の家事はあるものの、食事は多くの場合用意してもらえます。
また、周囲には同じ予備校に通う浪人生しかいない環境ですので、必然的に勉強に集中できる環境でもあります。
自身の部屋に加えて自習室なども自由に使えるようになりますので、1日中受験勉強を中心に据えた生活が可能となります。
メリット②通学時間を大幅に短縮できる
仮に予備校に通うのに、片道1時間半の通学時間ということになると、往復で1日3時間を移動に費やすことになります。1日3時間ということは、8日通えば1日分の時間が通学時間に消えてしまいます。入試験までの通学回数を考えると、長い通学時間は非常に大きなデメリットとなるでしょう。
予備校までの通学時間に英単語を覚えるなど、最低限の受験勉強は可能ですが、それでも集中して勉強ができる状況ではありません。
通学時間を短縮し、その分を自宅学習に充てることができる点は、大きなメリットだといえます。
メリット③栄養バランスのとれた食事を提供してもらえる
予備校の寮の多くは、栄養バランスのとれた食事を提供しています。
栄養バランスのとれた食事は、学習効率を高める重要な要素のひとつです。ひとりで生活していると、学習に集中するあまり食事の栄養バランスが崩れたり、食事を抜いたりすることがあるかもしれません。食事をおろそかにすると体調を崩しやすくなり、学習にも影響が出てしまいます。
食事が提供されている寮であれば、「自炊をしなければ」「今日は何を食べようか」などと食事に関して悩む心配がなくなります。栄養がある温かい料理は学習のモチベーション維持に役立ちますし、食事の時間が定まることで生活リズムも整います。食事をアピールポイントにしている寮もあるため、気になる方はメニューも調べてみるとよいでしょう。
なお、寮によって、提供される食事の頻度や量、費用などは異なります。日曜日や祝日は食事が提供されていない場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
予備校の寮生活を紹介!
ここからは、1日のスケジュールを紹介するとともに、設置されていることが多い設備や、利用できる施設、規則などの生活面についても確認していきます。
毎日のタイムスケジュールは?
浪人生の生活の中心となるのは予備校の授業ですが、授業の前後でしっかりと学習時間が取れるようなタイムスケジュールが組まれていることがわかります。
時間 | 活動内容 |
|---|---|
6:00 | 起床・洗面 |
7:00 | 朝食 |
8:00 | 出発 |
9:00 | 授業開始 |
17:40 | 授業終了(自習室で予習・復習) |
19:00 | 帰寮 |
19:10 | 夕食 |
| 20:00 | 自習 |
21:00 | 入浴・洗濯 |
22:00 | 自習 |
24:00 | 就寝 |
予備校での授業がおよそ8時間、さらに自習に充てる時間が2時間30分ほどあるので、1日の半分近くを勉強に充てることができます。
しかも、この勉強時間の大半は、自室もしくは自習室、そして教室という勉強に集中できる環境での時間ですから、勉強効率も非常に高くなるでしょう。
予備校の寮に多い設備
そのため、設備はある程度似通ったものが用意されています。
場所によっては個室に小さなキッチンが設置されており、夜食など簡単な調理が可能な場合もあります。
洗濯機に関しては、コインランドリー形式であることが多いようです。
また、授業を終えて帰宅したあとも学習に励むことができるよう、自習室が設けられている施設もあります。
専用スペースで勉強時間の質を高められるだけでなく、自室では集中できないという方でもしっかりと自習をおこなうことができます。
クローゼットや本棚もほぼ完備されていると考えていいでしょう。
基本的には勉強道具と着替え程度を持参すれば即生活がはじめられる環境ですので、物品の移送、家具の購入といった引っ越しに関する費用が掛からないのはメリットといっていいでしょう。
設備や施設のほかにも、諸々の相談が可能な予備校職員が常駐している場合もあり、日常の生活はもちろん、毎日予備校に通うことを考えても十分すぎるサービスが提供されます。
寮の規則は厳しい?
ただし、設定されている規則は、あくまでも勉強に集中することを目的としており、それを不自由とするか、そのおかげで勉強に集中できると考えるかで、感じ方も変わってくるのではないでしょうか。
具体的な規則をみていきましょう。まず目立つのが時間に関する規則です。
門限もありますし、朝食、夕食の時間も限られており、その時間内に済ます必要があります。ちなみに、河合塾の東京飛躍寮の門限は20:00となっています。
予備校の授業予定を中心に各時間を決められていますので、普通に生活していれば不便はないはずです。
時間に関する規則を守ることで、毎日規則正しい生活を送れるようになり、結果、勉強効率や健康面にも好影響を与えることになります。
浪人生のみなさんが気になるところとしてはスマートフォンやタブレットに関する取り扱いでしょう。これに関しては対応はさまざまです。
夕食後・就寝前に携帯電話を預かるような規則もみられる一方で、スマートフォンやタブレットに制限はなく、自室に持ち込めるうえ、Wi-Fi環境まで整っている施設もあります。
スマートフォンが手元にあることで勉強の邪魔になる可能性もありますし、手元にあることで勉強がはかどる可能性もあります。
これは人それぞれかと思いますので、事前にパンフレットなどでスマートフォンの取り扱いについて確認しておくことをおすすめします。
予備校の寮費用|入居時の費用や月々の費用はいくらかかる?
ここでは大まかながら、必要となる費用をまとめましたので、金額面で疑問点・不明点がある方は参考にしてみてください。
費用 | 金額 |
|---|---|
入寮費 | 12~20万円程度 |
寮費 | 15~20万円程度/月 |
光熱費 | 1万円程度/月 |
通信費 | 3,500円程度/月 |
諸経費 | 10万円程度 |
おおよそ必要な費用は上記のとおりです。ひとつずつ費用を確認していきましょう。
「入寮費」に関しては、基本的に事前に入金することが求められ、分割払いは適用されないことがほとんどです。初回の支払いで2か月分の費用を入金することが多いため、それなりにまとまった費用が必要となります。
「寮費」はいわゆる家賃ということになります。ここには食費も含まれており、当然のことながら地価の高い地域ほど高額になります。
「光熱費」に関しては、いろいろな対応があり、寮費に含まれているケースもあれば、毎月定額で納めるケースもあります。また、使用量によって毎月請求される場合もありますので、おおよその目安と考えてください。
「通信費」に関しても、寮費に含まれているケースがあります。それ以外のケースでは、おおよそこの程度の費用がかかると考えていいでしょう。
最後に「諸経費」ですが、ここに含まれることが多いのが「保証金」と「寝具レンタル料」です。保証金というのは、一般的な賃貸物件でいうところの敷金と考えればいいでしょう。
1年間丁寧に部屋を使用すれば、一部返却される費用です。「寝具レンタル料」は、布団や毛布などを借りる年間のリース料金。多くの場合ベッドは備え付けですが、そこに設置する布団やまくら、毛布に関しては個人でレンタルする形になります。
これらを計算すると、年間でおおよそ200万~250万円の費用が必要ということになります。
ただし、後述の河合塾「東京飛躍寮」のように、9月から入居した場合には各種費用が安くなる施設も存在します。
大手予備校の代表的な寮を紹介
今回紹介するのは、駿台、代々木ゼミナール、河合塾、四谷学院の大手予備校4校が運営に携わる学生寮です。
それぞれのメイン校舎への通学に便利な場所に建てられている、4か所の寮をピックアップしてご紹介します。
河合塾「東京飛躍寮」
住所 | 東京都北区東十条2-3-2 |
|---|---|
最寄り駅 | JR京浜東北線「東十条駅」から徒歩約2分 JR埼京線十条駅北口から徒歩7分 |
校舎までの通学時間(片道) | 池袋校まで約22分 |
申込み条件と定員 | 男子のみ/95名 |
河合塾の中心的なキャンパスである池袋校にもっとも通いやすいのが「東京飛躍寮」です。周辺にはコンビニが複数あり、駅にも近いので生活に不便を感じることはないでしょう。
池袋校へ通う場合は、徒歩7分ほどの十条駅を利用します。十条駅からは池袋駅、新宿駅、渋谷駅、恵比寿駅まで乗り換えなしで行け、東十条駅を利用すれば上野駅、秋葉原駅、東京駅などに乗り換えなしで行けるため、非常に交通の利便性が高い場所です。
費用 | 金額(税込) |
|---|---|
入寮費 | 80,000円 |
寮費 | 160,000円/月 ※2025年9月入寮時
(半年間の総額 960,000円) ※月払いにした場合の2回目以降の費用 |
管理費 | 15,000円/月
(半年間の総額 90,000円) ※月払いにした場合の2回目以降の費用 |
合計 | 175,000円/月 (分割手数料22,000円込み) (半年間の総額 1,152,000円) |
上記の費用は9月から翌2月末までの半年間で必要な費用です。
寮費には室料や食費も含まれていますが、この費用とは別に寝具レンタル料が必要となります。
東京飛躍寮の設備
共用部には食堂、自習室、コインランドリー、物干し場、電子レンジなどがあります。
自習室には共用パソコンもあるため、パソコンを持参しなくても最低限のインターネット情報は収集可能となります。
駿台「ドーミー御茶ノ水」
住所 | 東京都千代田区神田駿河台4-2-8 |
|---|---|
最寄り駅 | JR中央線・総武線「御茶ノ水駅」から徒歩約2分 |
校舎までの通学時間(片道) | お茶の水校各校舎まで約8分 |
申込み条件と定員 | 男子寮71名・女子寮20名 |
駿台の指定寮であるドーミー御茶ノ水は、東京の中心部、御茶ノ水駅の至近にある、非常に交通の利便性が高い場所にあります。
御茶ノ水という街自体が明治大学、中央大学、日本大学などの校舎が集まる学生街のため、学生にありがたい店が多く、非常に生活しやすい地域といえるでしょう。
周辺にはコンビニなどがそろい、また外食をするにしても学生向けの安くて量の多いお店が数多くあります。
予備校の校舎まで徒歩での通学が可能なのもおすすめポイント。短時間とはいえ満員の通勤電車に乗る必要はありません。
男女共用ではありますが、男女はフロアで分けられています。
費用 | 金額(税抜) |
|---|---|
入寮費 | 160,000円 |
寮費 | ・標準タイプ 154,000円/月 (半年払い時 919,500円) ・ラージタイプ 163,500円/月 (半年払い時 976,500円) |
電気料金 | 月額基本料金+使用料金/月 |
水道料金 | 1,650円/月 |
通信設備料 | 3,960円/月 (366,000円~、月額で必要な費用は約92,500円~112,500円ほど。半年間の総額 23,760円) |
保証金 | 50,000円 |
年間管理費 | 285,600円 |
寝具リース料 | 31,900円/年 |
合計(※) | ・標準タイプ 159,610円+電気使用分/月 (半年間の総額 957,660円+電気使用分) ・ラージタイプ 169,110円+電気使用分/月 (半年間の総額 1,014,660円+電気使用分) |
※入寮費、保証金、年間管理費、寝具レンタル料を除く
ドーミー御茶ノ水には標準タイプとラージタイプの2タイプの部屋が用意されていますが、ふたつの部屋の違いは部屋の広さのみ。設備などに差はありません。
保証金に関しては、退出後、部屋のクリーニング代を差し引いた分が返還されます。
ドーミー御茶ノ水の設備
洗濯機置き場もありますので、ご自身で洗濯機を持ち込むことも可能です。
共用部には食堂や洗濯機、乾燥機、さらにテレビもあり、生活を送るにもリラックスをするにもベストの環境がそろっています。
四谷学院「光雲寮」
住所 | 北海道札幌市北区北8条西4-1-2 |
|---|---|
最寄り駅 | JR札幌駅北口から徒歩1分 |
校舎までの通学時間(片道) | 札幌校まで徒歩0分! |
申込み条件と定員 | 58名※男女フロア別 |
四谷学院の札幌校に併設するかたちで専属寮「光雲寮」があります。JR札幌駅から徒歩1分と交通アクセスは良好。近くには札幌地下街やコンビニなどがそろっており大変便利です。
光雲寮の設備
また、寮生はすべて四谷学院生のため、仲間と切磋琢磨しながら合格を目指すことができるのもポイントです。
代々木ゼミナール「ベルヴュタワー寮」
住所 | 東京都渋谷区代々木2-25-7 |
|---|---|
最寄り駅 | 都営地下鉄・京王新線新宿駅A1口より徒歩2分 |
校舎までの通学時間(片道) | 代ゼミタワー内 |
申込み条件と定員 | 男子50名、女子30名(完全男女別フロア) |
代々木ゼミナールのベルヴュタワー寮は、予備校の寮としては異例ともいえる、本部校舎内に設けられた施設です。
代々木ゼミナールの本部校内にありますので、当然ながら通学時間はほぼありません。時間が貴重な浪人生にとっては、最高の環境といえるでしょう。
費用 | 金額(税込) |
|---|---|
月額寮費 | 180,000円 |
入寮金 | 150,000円 |
詳細な費用は公開されていませんが、JR新宿駅から徒歩5分という好立地ということを考えれば、月額180,000円からというのはかなり安いと考えていいでしょう。
ベルヴュタワー寮の設備
また、各フロアはICカードにて入出管理がされており、セキュリティ面も安心。同性・異性を問わず、自室に友だちを招き入れることは規則で禁止されており、自室に戻ったあとも受験勉強に集中できる環境が設けられています。
共用部には食堂のほかに、新宿の高層タワーらしく空中庭園があり、都会の中心でもリラックスできる環境が整っています。
自習室などの施設は、代ゼミ本部校のものを使用できるため、勉強をするには最適な環境といえます。
予備校の寮と学生会館の違いは?入居費用に差はある?
食事の管理なども任せられる学生会館は、一人暮らしよりも勉強をする環境としては好ましいといえるでしょう。
学生会館の費用は、当然ながらどこに建っているかで大きく変わってきます。一般的に予備校の寮よりかかる費用は安くなります。
ただし、予備校だけでなく大学や専門学校に通う生徒も入居している学生会館は、必ずしも予備校への通学に便利な場所に立地しているとは限りません。
そのため、予備校への通学という面では、学生会館はアクセス面でやや不便に感じるケースもあります。
予備校の寮には、その予備校の関係者が常駐、もしくは定期的に滞在してくれる施設もあります。
浪人生活においての悩みや、勉強の疑問、学習のコツなどの質問にも答えてくれるというメリットがあり、これは学生会館では得られないものといえるでしょう。
また、学生会館にはいろいろな学校に通う人が集まっていることから遊びへの誘惑も強く、勉強に集中する環境としては疑問符がつく施設が含まれているのも事実です。
学生会館から予備校に通う場合の費用は?
今回参考にするのは、河合塾の東京飛躍寮の近く、北区十条にある「北園女子学生会館」です。
費用 | 金額(税込) |
|---|---|
入館金 | 150,000円(1年契約の場合) |
保証金 | 100,000円 |
室料 | 49,000円~69,000円/月 |
管理費 | 22,000円/月 |
食費 | 25,000円/月(朝夕2食付プラン) |
給水給湯費 | 給水費1,500円/月+給湯費 実費 |
電気料金 | 個別契約 |
※参考資料:北園女子学生会館 料金
初期費用(入館金+保証金+2か月分または1年分の室料・管理費)としては370,000円~、月額で必要な最低限の費用は約97,500円~117,500円ほど。
毎月の費用は「東京飛躍寮」よりも約5.8万~約7.8万円ほど安くなります。
まとめ
また、通学を検討している予備校の校舎近くに寮がない場合は、学生会館を利用して通学するという方法もあります。
合格をつかみとるために勉強に集中できる最適な環境を探している方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。