大学受験を控えたお子さんがいる家庭では、「予備校に通わせてあげたいけれど、費用が心配」「受験料だけでもかなりの出費になりそう」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
そんな教育費の負担を少しでも軽減するために、自治体によっては予備校通いに活用できる補助金・助成金制度を設けています。たとえば東京都や名古屋市では、一定の条件を満たす家庭に対して、予備校費用や受験料の補助をおこなっています。
本記事では、各地域で利用できる補助金制度の概要や申請条件、必要書類、申請の流れまで詳しく見ていきましょう。
大学受験にはいくらかかる?
文部科学省の「令和5年度子どもの学習費調査」によると、大学受験のための塾や予備校にかかる費用は年間37万〜38万円程度、月額に換算すると約3万円が相場となっています。
とくに授業形態によって費用は異なり、個別指導の場合は月3万〜5万円、集団授業では月2万〜4万円ほどです。 加えて入塾金、教材費、季節講習費、模試費用なども発生します。
塾のほか、大学受験料は国公立大学・私立大学ともに1校あたり3万円前後です。複数学部や複数大学を受験すると、費用はさらに積み重なります。
これだけの費用がかかると、多くの家庭で教育費の負担に頭を悩ませることになるでしょう。だからこそ、利用できる補助金制度を積極的に活用することが重要です。
予備校に通う際に利用できる補助金とは
予備校や塾に通う費用を軽減するために、全国の自治体では独自の補助金制度を設けています。
代表的な例として、東京都の「受験生チャレンジ支援貸付事業」があります。これは経済的な理由で塾や受験をあきらめざるを得ない状況にある家庭を支援するため、学習塾や各種受験対策講座の受講料、および高校や大学等の受験料を無利子で貸し付ける制度です。
高校や大学等に入学した場合は返済が免除されるため、実質的な補助金として活用できます。
こうした補助金制度は、家庭の経済状況に左右されることなく、すべての子どもが平等に教育を受けられる環境づくりを目指す自治体の取り組みの一環です。
※参考:東京都社会福祉協議会「受験生チャレンジ支援貸付事業サイト」より
予備校に通う高校生が利用できる補助金の例
主要都市では、東京都と名古屋市が高校3年生を対象とした補助金制度を設けています。また、たとえば北海道の夕張市では「高校生チャレンジ補助金」という独自の制度があり、模試受験費用や各種検定試験費用に対する助成が受けられます。
ここでは、これらの支援制度について、各制度の概要をまとめて見ていきます。
【東京都の例】
※出典:東京都社会福祉協議会「受験生チャレンジ支援貸付事業サイト」
【名古屋市の例】
※出典:名古屋市役所「ひとり親家庭等への大学受験料等補助」
【夕張市の例】
出典:夕張市役所「夕張高校魅力化プロジェクト」
補助金制度は適宜見直されるため、最新情報は各自治体の公式サイトで確認してみてください。
予備校通いのために補助金を申請するときの流れ
補助金制度があることを知っていても、実際の申請手続きがどのような流れになるのかわからない方も多いでしょう。東京都の「受験生チャレンジ支援貸付事業」を例に、申請から返済免除までの流れを説明します。
【東京都「受験生チャレンジ支援貸付事業」手続きの流れ】
流れ | 内容証明 |
---|---|
窓口相談 | お住まいの自治体で制度の説明を受け、世帯の生活状況を確認してもらいます。利用条件を満たしているか事前に確認できます。 |
借入申し込み | 必要書類(住民票、課税証明書、身分証明書、学生証、塾の受講予定表や入試要項など)を準備し、借入申込書と一緒に窓口へ提出します。 |
審査・貸付決定 | 東京都社会福祉協議会で審査がおこなわれ、結果が郵送で通知されます。貸付決定の場合は借用書も同封されます。 |
借用書提出 | 借用書に自筆署名・実印押印し、印鑑登録証明書、送金口座の通帳写しと一緒に窓口へ提出します。 |
貸付金交付 | 借用書提出から2〜3週間程度で、指定した口座に貸付金が振り込まれます。 |
領収書提出 | 予備校費用や受験料の支払い後、領収書や納入証明書を期日までに窓口へ提出します。提出がないと返済免除申請ができません。 |
返済免除申請 | 対象校へ入学した場合、入学年次の5月末までに償還免除申請書と在学証明書(または学生証)を提出します。入学しなかった場合でも条件により免除される可能性があります。 |
手続き完了 | 審査が通ると「償還免除承認通知」が郵送され、手続き完了です。免除されない場合は無利子での返済となります。 |
※出典:東京都社会福祉協議会「受験生チャレンジ支援貸付事業サイト」
制度を正しく理解し、必要書類を適切に準備することで、スムーズに補助金を活用できます。手続きは一見複雑ですが、各段階で窓口担当者が丁寧にサポートしてくれるため、不明な点があれば適宜相談しましょう。
予備校通いに利用できる補助金に関する注意点
予備校通いに利用できる補助金制度は家計の負担軽減に大きく役立ちますが、申請前に知っておくべき重要なポイントがあります。ここでは、制度を利用する際の主な注意点について詳しく解説します。
申し込みには条件がある
予備校通いのための補助金制度は、誰でも利用できるわけではありません。多くの自治体では所得制限や居住要件など、特定の条件が設けられています。
たとえば東京都の「受験生チャレンジ支援貸付事業」では、世帯の総収入に基づく所得制限があり、一定の所得以下の世帯が対象です。また、対象となる学年も中学3年生・高校3年生に限定されています。
これらの条件は自治体によって異なるため、利用を検討する際は必ず住んでいる地域の公式ホームページで最新情報を確認しましょう。条件を満たさない場合は申請自体が受け付けられないため注意が必要です。
申請には書類が必要な場合がある
予備校通いの補助金申請には、複数の書類提出が必要です。
たとえば東京都の「受験生チャレンジ支援貸付事業」では、身分証明書、住民票、課税証明書、受講料の見積書などが求められます。
名古屋市の「ひとり親家庭等への大学受験料等補助」でも、受験校・受験料・支払日が確認できる書類や、模試関連の支払証明書類が必要です。
書類に不備があると申請が受け付けられなかったり、本来受けられるはずの返済免除が適用されなくなったりする場合があります。事前に必要書類をしっかりと確認し、余裕を持って準備を進めることが重要です。
補助金以外に利用できる公的支援制度はある?
予備校通いの補助金以外にも、教育費の負担を軽減するさまざまな公的支援制度があります。
たとえば生活困窮者向けには「生活困窮者自立支援制度」の一環として「子どもの学習・生活支援事業」が実施されており、無料の学習支援が受けられます(※1)。
学習支援に加えて日常的な生活習慣の指導、進学に関する相談、高校中退防止支援などもおこなわれており、子どもと保護者の双方をサポート。生活保護受給世帯を含む生活困窮世帯を対象に、貧困の連鎖を防ぐことを目的として各自治体が地域の実情に応じて実施しています。
また、日本学生支援機構の奨学金や、各自治体・民間団体が提供する奨学金制度もあります(※2)。奨学金は主に大学入学後の学費や生活費を補助するものですが、予備校通いの補助金と併用することで、受験から大学生活まで一貫した経済的支援を受けられるでしょう。
※1 一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク 困窮者支援情報共有サイト~みんなつながるネットワーク~「子どもの学習・生活支援事業」より
※2 独立行政法人 日本学生支援機構「奨学金 」より
お住いの自治体の補助金・支援制度を確認しよう
予備校通いには相応の費用がかかります。しかし、全国の自治体では家庭の経済状況にかかわらず、子どもが学習機会を得られるよう、さまざまな補助金制度を用意しています。
これらの制度は、教育費の負担に悩む多くの家庭にとって心強い支援となるはずです。申請には一定の条件や手続きが必要ですが、子どもの将来への投資として積極的に活用を検討してみてください。
また、補助金制度だけでなく、生活困窮者向けの支援や奨学金制度なども組み合わせることで、より充実した経済的サポートを受けることが可能です。各制度の詳細や最新情報についてはお住まいの自治体の公式サイトで確認し、まずは窓口に相談してみることをおすすめします。