総合型選抜(旧:AO入試)とは、志望理由書などの書類や面接、プレゼンテーションをもとに、受験生の能力・適性・意欲を判断する新しい入試方式です。
そのため一般選抜とは異なる受験対策が必要ですが、総合型選抜に特化した学習塾はそれほど多くありません。
今回は、オンラインを含めた全国5校舎を展開し、総合型選抜対策の指導をおこなう「総合型選抜専門塾AOI」代表の小澤 忠さんにお話を伺いました。
自分の進路や将来に悩んでいる方、
総合型選抜対策のできる学習塾を探している方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
「総合型選抜専門塾AOI」は総合型選抜対策に特化した学習塾
ー本日はよろしくお願いします。まず「総合型選抜専門塾AOI」はどのような学習塾なのか教えてください。
小澤 忠さん(以下、小澤):「総合型選抜専門塾AOI」はその名のとおり総合型選抜専門の学習塾です。
運営会社の株式会社花形は会社として5年目、学習塾として6年目になります。京都の本社からスタートし、現在は京都、大阪、西宮北口、渋谷、オンラインの5校舎を展開中です。
生徒の90%以上が大学受験生ですが、当塾ではいわゆる大学受験対策ではなく、大学受験の先を見据えた指導をしています。
というのも、生徒には“10年後に勝てる人材” になってほしいと考えているからです。
総合型選抜は一般選抜と違い「自分は将来何をやりたいか」を追求できる試験なので、しっかりと自己分析をして自分の軸を見つけ、自分のブランド化を目指します。
偏差値など「今の立ち位置から大学合格ラインまでのギャップを埋める」という大学受験対策の一般的なアプローチ方法とは逆の発想で、「まずは将来を見据えて、どの大学に行けばその実現に近づくのか」という考え方でやっています。
ー貴塾ならではの強みを教えてください。
小澤:当塾の強みは、自己分析と思考力育成を最重要視した指導です。
一般的な学習塾では志望校の選択から始めると思いますが、当塾では“本当の言葉”で総合型選抜の志望理由書を書くことを目指します。
なぜならそれが、嘘のない自分らしい人生を送るための重要なワンステップだと思っているからです。
実際のところ、合格するために志望校にフィットさせた志望理由書をつくるのは簡単です。
一方で、「将来はこういう世界観を目指したい。そのためにこの職業に就きたい。だからこの大学に行きたい」という落とし込み方は、自分がどんな人間なのかを知らないとできません。
最初から「この大学に行きたいです」と入塾してきた方には一度保留にしてもらい、まずは一緒に自己分析から始めるのが信条ですね。
自己分析&思考力育成メインの授業で志望理由書をつくり込む
ーどのようにして自己分析から志望理由書をつくるのですか?
小澤:自己分析とは、過去の経験や現在の考え方などから自分とはどのような人間なのかを解明する作業です。
たとえば3年ほど前にいた生徒は、小さいころに長期入院が必要な病気を抱えていて、そのときお母さんに買ってもらったゲームボーイに気持ちを救われたという原体験を持っていました。
だから最初は「eスポーツカフェをつくりたい」という志望理由書をつくっていたのですが、対話を進めていくと、実は当時のつらさの根源は「さみしさ」だったとわかったんですね。
さみしさを埋めるには人とのつながりが必要なので、最終的には「小児病棟の子どもたちに向けたゲームのオンラインコミュニティをつくりたい」という志望理由書に変わっていきました。
「eスポーツカフェ」と「小児病棟の子どもたちに向けたゲームのオンラインコミュニティ」は一見似ていますが、それぞれ進むべき大学はちょっと違うとなんとなくわかっていただけるでしょう。
自己分析で軸が決まったとき、自分も抱えている社会問題に対するアプローチの方向性が見えてくるので、それをもとに第一志望校を探していくイメージです。
ー「思考力育成」では、どのようなことをするのでしょうか?
小澤:社会人の研修でやるようなロジカルシンキングやクリティカルシンキングを小集団で学び、思考力の幅を広げます。
思考力は「地頭力」にもつながっていて、志望理由書を書くときのベースになるんです。
また当塾は、独自の小論文メソッドを開発しています。ちょうど先日、『7日間で合格する小論文』という参考書を出したところなんです。
志望理由書が本質的なことと、独自の小論文のメソッドを持っていること。この2つが当塾の強みであり、合格率を高めている要因でもあります。
ー「面接対策」では、どのようなことをしていますか?
小澤:総合型選抜の面接では志望理由書に紐づけた質問がされるので、自分の軸に沿った志望理由書さえ書けていれば、何を聞かれてもすんなり答えられます。
あとはその場の雰囲気に飲まれなければ、基本的に面接も問題なく通過しますよ。
逆に、もし志望先の大学にあわせて付け焼刃の知識で志望理由書を書いてしまったら、面接の質問に答えられませんし、想いも伝わりません。
だから自分が納得したうえで、自分の言葉で志望理由書を書くことが重要なんです。
ー講師の採用基準を教えてください。
小澤:AOIのメンター(講師)は、元塾生がAOIのファンになり、そのまま講師になってもらう流れが続いて、さらに、大学内の横のつながりの紹介から、コミュニティのような広がりをつくってきています。
また、メンターには小論文や英語のテストを実施し、一定の採用基準を設けています。
特に小論文試験は、先ほどお話しした参考書の制作にも絡んだメンバーが見るので結構厳しいです。外部からの応募による正規講師の今年の採用倍率は10倍くらいでした。
とはいえ基本的に一番大事にしているのは「生徒に寄り添えるか」という定性面です。
生徒の伴走者となり一緒に考えていく姿勢が重要なので、当塾では講師のことを「メンター」と呼んでいます。
一昨年、志望理由書に「スパイダーマンになりたい」と書いた生徒がいたのですが、当塾のメンターはそれを受け入れて「スパイダーマンになるにはどうしたらいいのか」を生徒と一緒に考えたんですよ。
ーどんな志望理由書でも受け入れてもらえるのですね。
小澤:そうです。別に物理的にスパイダーマンになる必要はなくて、生徒にとっての「スパイダーマン的なことは何か」を一緒に考えればいいんです。
当塾のメンターには、どんな志望理由書でも賞賛して認める姿勢でいてほしいと考えています。それが生徒の「やれるかもしれない」というワクワク感につながり、学びを加速させるからです。
コース内容と料金の目安を学年別に徹底解説
ー貴塾のカリキュラムについて詳しく教えてください。
小澤:高校1・2年生は自己分析や論理的思考力を養う探求学習プラン、高校3年生は探求学習プランをベースに、受験対策プランを選ぶことができます。
基本的にやることは似ていて、自己分析と思考力育成、志望理由書作成のための知識の向上、小論文のトレーニングです。
高校1・2年生は自己分析やロジカルシンキングに多くの時間を使い、一緒にディスカッションしながら進めていくカリキュラムとなっています。
高校3年生は最初の2か月で自己分析・ロジカルシンキングをやって、以降は受験対策が中心です。「ミッションガイドブック」という教材を使い、志望理由書の書き方を具体的に学んでいきます。
志望理由書の構造を学んだうえで、自己分析やロジカルシンキングを活かしながらアウトプットするイメージです。
受験対策プランにおいても、自己分析に2か月くらい使ってしっかり掘り下げるところが当塾のカリキュラムのポイントですね。
ー料金の目安を教えてください。
小澤:目安として高校1年生・2年生は月額4万円くらいです。
来年以降、自己分析・思考力育成の「探求授業」と高校3年生向けの「受験対策授業」にコースを分ける予定になっています。
高校1年生・2年生は探求授業だけを受講いただき、高校3年生はそこに受験対策授業をプラスオンするイメージです。
当塾の料金はコマ数ベースで計算しているので、コマ数が多くなると80万円くらいかかる場合もありますが、高校3年生の生徒は7~8か月くらい在籍してトータル50~60万円くらいかかるケースが平均的ですね。
ー良心的な料金ですね。
小澤:東京の一般的な学習塾ではどんどん価格が高騰していますので、確かにまだ安い方なのかもしれません。
当塾としては学習塾の料金の高騰に賛成できなくて、サービスのクオリティとのバランスを取りつつ、より広くたくさんの人に届けられる価格にしたいという想いがあるんです。
当塾の教育によって人生が開ける人、希望を持って生きられる人が増えるといいなと心から思っています。
総合型選抜で自分らしい人生を手に入れてほしい
ー今後、校舎やコースの新設予定はありますか?
小澤:校舎については、渋谷校を移転する予定です。1フロア約90坪の大スペースで、移転後は当塾の校舎のなかでも過去最大規模となります。
また、コースについては、「英語資格コース」・「海外大学対策コース」を新たに新設予定です。総合型選抜では、多くの大学で英語資格を出願基準として求められることが多く、より高いスコアを持っているほど受験できる大学の幅も広がります。そのため、特に受験まで時間のある高校1年生・2年生には、英語資格の取得に力を入れてほしいと思っています。
さらに、海外大学対策コースでは、国内の大学だけでなく、海外の大学を目指すことができるようになります。実は、総合型選抜と海外の大学の受験対策は似ている部分が多くあります。そのため、一般選抜では難しい、国内大学と海外大学の受験対策の両立を、総合型選抜では効率良く進めていくことができます。
受験生が「自分らしい人生」を考えたときに、それがすべて国内で実現できるとは限りません。「自分らしい人生」を本当に実現することをAOIとして全力でサポートできるよう、海外大学対策コースを新設することとなりました。
総合型選抜の学習塾である以上、コミュニケーションや横のつながりが大事になるので、1人でこもるのではなく、みんなと絡みやすい空間と導線づくりを目指しています。
イメージとしては、カフェやコワーキングスペースのような空間ですね。実際に大阪校は、日中は普通のカフェとして営業して、夕方以降は塾に切り替えるという運営をしているんですよ。
京都校も基本的にはオープンスペースになっていて、総合型選抜で一番重要な自己分析をメンターと横並びでできる環境を整えています。
ーそのほか今後の事業展開について教えてください。
小澤:先日、日本経済新聞のニュース記事になったのですが、地方における教育の情報格差を埋めるため、当塾の教材をほかの学習塾に提供するサービスを始めました。
これから、地域の学習塾を中心にAOIのカリキュラムやコンテンツを導入してもらい、一般選抜で地元の大学の合格を目指す選択肢しか持たない地方の学生に、総合型選抜のよさを伝えたいと考えています。
そのほか個人向けに展開している、総合型選抜対策の動画配信サービス「Mushroom」と、志望理由書や小論文、面接を対象とするオンライン添削サービス「Quick Check」も浸透させたいです。
全国どこでも、誰でも手が届く総合型選抜対策サービスを展開することで「総合型選抜といえばAOI」といわれるようになりたいですね。
ー最後に読者の方へ一言メッセージをお願いします。
小澤:私の子どものころの夢は、プロ野球選手や宇宙飛行士でした。でも大人に否定されて、それに反発する力もなかったので、当時の私はまったく頑張れなかったんです。
でも実は、中学生や高校生ぐらいのときから頑張れば何にでもなれるし、何でもできます。
私は子どものころに「こうやればなれるんじゃない?」と言ってくれる人がいたらよかったのになぁと思って、総合型選抜専門塾AOIをやっています。
今後「よい学校に行って、よい会社に行かなければならない」という考えは、あまり通用しなくなっていくはずです。
だから自分が一番やりたいことや興味のあることに時間を使い、自分は何をやってきたのか語れる人になって、自分らしい人生を手に入れてほしいと思います。
「こうあるべき」という理屈で自分を抑え込まないでください。たとえば「自分の高校から、あの大学に行くのは無理だ」「日本の大学に進学しないといけない」という思い込みをなくしていって欲しいです。
自分のやりたいことに向かって、今日やること、明日やることを選択してほしいなと思います。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:総合型選抜専門塾AOI