テレビやインターネットでも頻繁に取り上げられることから、SDGs(※1)やESD(※2)という言葉を目にする機会が増えた方も多いのではないでしょうか。
そういったなか、地球上で起こっている深刻な問題に取り組むべく、教育現場でも授業などで扱い、活動する学校が増えています。
そこで今回は、学校をあげてESD for SDGsに取り組む「三輪田学園中学校・高等学校」を取材。入試広報部長であり、数学科を担当する上田谷 留美先生に、授業での取り組みや他校と連携したさまざまなプロジェクトなどについてお話を伺いました。
学生時代に貴重な経験を多く積むことは、自己成長と未来につながります。変化し続ける社会を自ら切り拓いていきませんか。
(※1)SDGs(持続可能な開発目標)とは、「Sustainable Development Goals」の略。2030年までによりよい世界を目指す国際目標。
(※2)ESD(持続可能な開発のための教育)とは、「Education for Sustainable Development」の略。持続可能な開発を実現するために発想し行動できる人材を育成する教育。
三輪田学園での教育を通じて「徳才兼備」の女性を目指す
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、「三輪田学園中学校・高等学校」がどのような学校なのか、概要や特色を教えてください。
上田谷 留美先生(以下、上田谷):東京都千代田区九段に校舎を構える「三輪田学園中学校・高等学校」は、完全中高一貫の女子校です。
本校は、明治20(1887)年に創立者である三輪田 眞佐子の「豊かな人間性と高い学力を併せ持つ徳才兼備の女性を育てる」という教育理念に基づき設立され、今年で136年を迎えました。
校歌にも歌われている「誠のほかに道なし」を校訓とし、誠実であることが人としてもっとも大切な在り方、生き方であると考え、時代が変化してもこの教えは変わらず受け継がれています。
本校は、1学年が約180名前後、4~5クラスで、とてもアットホームな雰囲気が特徴です。教員と生徒との距離が近く、きめ細やかで丁寧な教科指導をおこなっています。
カリキュラムは、伝統の「読書の授業」に加え、対話のなかで問いを立てる力を培うワーク「哲学対話」を定期的に開催し、探究学習としては、2021年度より「MIWADA-HUB(中学)」、22年度より「MIWADA-LAB(高校)」を導入しています。
こうした“つながる、つなぐ”力を育むゼミナール形式の新しい授業では、めまぐるしく変化する社会、正解のない課題が立ちはだかる世界で、自ら課題を見つけ、思考し、解決に向けて行動する力を伸ばしています。
“得意”や“好き”を見つけることで学びへの意欲を高め、これからの社会で必要となる力を身につけるための多彩な授業を展開していることが本校の特色でもありますね。
塩見校長は、「三輪田学園は、生徒一人ひとりの個性を認め合い、ありのままの自分が安心して過ごせる場所」でなければならないとして、「Unity in Diversity(多様性のなかの一致)」を掲げています。
個性豊かな生徒一人ひとりが、「誠のほかに道なし」のもとに結ばれている。それが三輪田学園なのです。
学年で取り組むESD for SDGs「自ら考え自ら行動する力を」
ー三輪田学園で積極的に取り組む、「ESD for SDGs」について詳しくお聞かせください。
上田谷:本校の校訓である「誠のほかに道なし」を日々の学校生活で常に意識することで、他者に対して思いやりを持ち、主体性を持って行動できるようになると考えたのが「ESD for SDGs」に取り組み始めたきっかけです。
また、どこか遠い世界で起きていると思いがちな社会課題も、さまざまな教科や道徳の授業で扱うことにより、自分事として捉え、課題解決に積極的に取り組めるようになるのではないかと思いました。
具体的な学年ごとの取り組みとしては、社会科読書、道徳・ホームルーム、総合的な活動の時間を利用して、学校をあげてESD for SDGsをおこなっています。
たとえば、社会科読書は中学3年生の公民の一部で、1学期と夏休みに4ブロックの課題図書をそれぞれ1冊以上読み、レポートにまとめるなどです。
情報収集から論文の書き方まできめ細かく指導し、土台を固めたうえで2学期からは自分が興味関心のあるテーマに沿った本を平均4~5冊読み、卒業論文に取り組みます。
卒業論文のテーマは、「女性差別のない社会を目指して」「ヤングケアラーの今後について」「核兵器廃絶に向けた取り組み」「識字率をとおして見る世界の教育格差」など、多岐にわたります。
この社会科読書を通じて、生徒はこの世界で起きている現実を知り、理解を深めるようになることはもちろん、卒業論文で扱ったテーマをその後も追い続け、将来の進路につながった生徒も少なくありません。
また、本校では、中学3年間をとおして平和学習に力を入れていることも特徴です。
中学1年生では難民支援や地雷撲滅活動に関する講演、2年生は第五福竜丸展示館の見学と学芸員の方の講演、そして平和学習のひとつのゴールとして3年生で広島へ修学旅行に行きます。
実際に広島の地で、広島平和記念資料館や被災した小学校の展示品を見学したり、被爆者の方々から直接お話を伺ったりします。
このような貴重な経験から、平和への想いを強く心に刻み、自分たちの使命をしっかりと考えて行動できるようになってほしいと思っていますね。
そのほか、中学2年生の道徳では、年間を通じてSDGsプログラムに取り組みます。
昨年は1学期に「水」をテーマにフィンランドのオンラインツアーへ参加、2学期は「エネルギー」をテーマにスウェーデンのサステナブルなまちづくりのモデル都市であるロイヤル・シーポートで、さまざまな事例と環境への取り組みを学びました。
さらに3学期には「ジェンダー」についてグループワークを交えながら理解を深めました。
それぞれのテーマに沿って課題を見つけ、分析したのち発表をおこなうのですが、自分では思いつかないアイデアを共有することで、この問題についての関心を高め合うことができたと思います。
“SDGs実践講座・模擬国連会議”などで国際社会の諸問題を考える
ーそのほか、学年ごとの取り組み以外もあれば教えてください。
上田谷:希望する生徒には、授業の発展型として、法政大学との高大連携プロジェクト「SDGs実践講座」、Blue Earth Project、模擬国連会議といった活動を放課後の時間に実施しています。
まずSDGs実践講座では、法政大学の教授による、現代社会が抱える問題の解説と質疑応答の双方向型授業を展開しています。昨年は、第3回 SB Student Ambassador(SA)ブロック大会にも参加し、4つの企業と新しい事業プランを考え、発表しました。
Blue Earth Projectは、「女子高校生が社会を変える!」というスローガンのもと、環境問題などの課題に対して、高校生ならではの解決策を考え、活動するNPO法人です。これまでに全国20か所で約1,000名の女子高校生が参加しました。
本校は2021年から提携を始め、企画会議やフィールドワーク、イベント参加を主な活動としています。昨年は「海洋プラスチックごみ削減」をテーマに、オンライン会議や、海洋清掃、多くの人に現状を伝える啓発イベントなどをおこないました。
模擬国連会議は、実際の国連でおこなわれている会議を、学生が割り当てられた国の大使となり、世界の諸問題の解決案を話し合っていく活動です。
参加者は、担当国や議題についてリサーチをおこない政策を立案。会議では、議題について演説や交渉をおこなうことによって、国益を重視しつつも世界の諸問題について合意形成をして解決を目指します。
「人権とジェンダー平等」「森林保護」「移民と労働問題」「エネルギー問題」「核問題」など、さまざまな議題に取り組み、昨年は国内最大の大会「全日本高校模擬国連大会」の本選に2チームが初出場しました。
今年の春休みには海外での国際大会「タイ模擬国連」にも7名が参加し、生徒たちは東南アジア諸国など、9か国から集まった同世代の高校生たちとオールイングリッシュでの討議に臨み、さらに活動の幅を広げています。
また、本校の生徒会でも、TABLE FOR TWOや国連WFP(国連世界食糧計画)、ユニセフ(UNICEF / 国連児童基金)、赤十字国際委員会、国境なき医師団などに協力し、さまざまな福祉活動に参加していますね。
たとえば文化祭では、毎年おこなうバザーの売り上げを全額寄付していて、WFPやユニセフ、赤十字国際委員会、国境なき医師団など、寄付先を毎回生徒全員で採決して決めています。
評議委員会や福祉委員会では、福祉に関する講演会を開いたり、募金や支援をおこなったり、積極的に活動しています。
学校の魅力がわかる説明会!自慢の生徒たちとともに未来の創造者へ
ーオープンスクールや学校説明会、イベントなどの告知があればご紹介ください。
上田谷:8月26日(土)におこなう、生徒主催の学校説明会は、MGP(生徒広報委員会、三輪田ガールズプロジェクトの略)の生徒が、企画・運営をすべてやります!
また、オープンスクールスクールは9月18日(月・祝)に、学校説明会も同日開催でおこないます。午前の部は9:30~12:00、午後の部は13:00~15:30です。
入試説明会は、10月14日(土)・11月25日(土)・12月24日(日)・1月13日(土)。初めて参加される方対象の学校説明会は、11月4日(土)です。
そのほか、「テーマ別説明会」「入試問題にチャレンジ」「学校見学会」などもおこなっていますので、最新情報は公式ホームページでご確認ください。
女子校の魅力がわかる「女子中学校フェスタ」(3月もしくは4月)や、私立女子校9校による合同説明会「女子校アンサンブル」(4月29日)の外部相談会・イベントでは、クラブやMGP生徒も参加しています。
ご興味のある方は、ぜひ生徒や学校の様子を見に来てくださいね。
ー最後に、入学を検討している読者にメッセージをお願いします。
上田谷:先が見えない時代のなかで、自分にできることはなにかを考えたり、社会問題を解決するための糸口を見つけたり、刺激し合いながら一緒に学ぶ喜びを感じたり…。
ESD for SDGsの取り組みによって、生徒たちは自分の意見をしっかりと言葉で表現する大切さを学ぶことができていると思います。
三輪田学園のディプロマポリシーは、「誰とでもつながることができ、自らの人生を切り拓くことのできる逞しくもしなやかな女性の育成」。
自己と課題を結びつけ、自己と世界をつなげ、そして自己と自己の未来に橋をかけること、すなわち生徒自らが生きる未来の創造者となってほしい…これが私たち三輪田学園の願いですね。
本校の自慢は、なんといっても生徒です。大好きな学校を紹介したい、と集まった生徒が生徒広報委員会を立ち上げ、現在500名以上(在校生は約1,100名)が所属し、受験生に学校の魅力を伝えてくれています。
そんな生徒から愛されている本校で、みなさまのご来校を、教職員、在校生一同、お待ちしております!Instagram、Twitter、Facebookもほぼ毎日更新しているので、ぜひご覧ください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:三輪田学園中学校・高等学校