お子さんをお持ちの保護者の方のなかには、「学校で学習習慣をつけてきてほしい」「生きた英語を勉強してほしい」「多角的に物事を見て自分の考えを発信できるようになってほしい」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、放課後学習やキャリア教育、国際交流教育など、さまざまな分野に力を入れている「日本大学豊山女子高等学校・中学校」を取材。
中学校教頭の黛 俊行先生に、学校でのさまざまな取り組みについてお話を伺いました。
放課後学習や、キャリア教育、国際交流教育などにご興味ある方は、ぜひご一読ください。
自分で学習する習慣を身につけるための放課後学習
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、日本大学豊山女子高等学校・中学校でおこなっている「放課後学習」について教えてください。
黛 俊行先生(以下、黛):本校では、学習習慣をつけられない生徒が多かったため、中学1年生の早い段階で自分で学習する習慣を学校でつけようと、今年から放課後学習をスタートしました。
この取り組みでは、放課後の自習室に、学習メンターという女子大学生の方々に常時6名常駐していただき、生徒たちに、部活がない日は学習メンターのところに行こうと働きかけています。
まずは自習室に行って、宿題からスタートして、わからないところが出てきたらメンターに相談しに行く流れです。
メンターはすぐに答えは教えずにヒントを出してくれるので、そのヒントを頼りに生徒自身で頑張って問題を解いていますね。
また、ベネッセが提供している「Classi」というアプリのWebテストや学習動画などを使用して勉強を進めてくれています。
たとえば、業者テスト対策では、過去問を踏まえた教材パッケージを予め配信しておき、生徒はそれを家庭で勉強します。
そして、生徒が放課後、自習室に行ったときには、生徒個々の分野別の正答率等を踏まえて指導してくれるんです。
放課後学習が始まってからもうすぐ1年が経ちますが、運用は順調にいっていて、生徒からも「楽しく勉強できるし、わからないことをすぐに聞けるのがとてもよい」という声をもらっています。
生徒たちは、歳が近い女子大学生に勉強以外も気軽に話せて相談できるので、私たち教員がいうことよりもメンターのいうことをよく聞いていますね。
ただ、最近慣れすぎてきているところもあり、勉強を教えるうえで、ある程度厳しい面もないといけないので、そこが来年度以降の課題です。
あとは、積極的に参加する生徒と、そうでない生徒との差も少し出てきているので、そこも今後の課題ですね。
以前は、強制的に自習室に行かせることはしていませんでしたが、今は、定期試験の後に一定レベルに達しなかった生徒をこちらでピックアップして、期間と自習室に行く回数を指定して学習を促すという指導もしています。
ただ、伝え方には気をつけており、罰のようにならないように、スポーツではないですが「強化選手」という言葉を使い、「あなたは強化選手に選ばれたのでこの期間に何回行きましょう」と伝えていますね。
また、1ヶ月の計画表を生徒たちに作らせて、その計画表通りに進むとメンターがスタンプを押してくれるスタンプカードを作っています。
スタンプがもらえるということで参加する生徒も増えてきているので、生徒たちの様子を見ながら、さまざまな働きかけをして、積極的かつ継続的に自習室に行くという状況を作っていければと考えています。
そして、勉強を進めていくうちにわからないことが出てきたら質問しに行くという学習のサイクルを、学校で身につけられたらと思っています。
さまざまなことが学べるキャリア教育と探究授業
ーキャリア教育(キャリア教育教材「ENAGEED」使用)について教えてください。
黛:時間割に「総合的な学習の時間」が週に2時間あるのですが、そのうちの1時間、年間で30数回の授業はキャリア教育の時間です。
キャリア教育では、ENAGEEDという教材を使用し、1年間に15回ほどで終わるようになっています。
ENAGEED以外の時間は、1年生では数学探究、2年生では理科探究、3年生では卒業発表ということで、授業を2つあわせたような形で時間を確保しています。
ENAGEEDというのは、「予測不能な世界で生き抜く力、何もないゼロから新しい1を生み出す力を育む」というコンセプトで作られているんですね。
最初の題目は「かっこいい大人ってどんな大人?」という問いから始まり、生徒たちはグループで自分の意見をディスカッションすることからスタートします。
グループで話し合っているうちに、自分の考えを友だちにしっかりと伝えたいという気持ちになっていきます。
そのときにどのような話し方だと伝わるのか、根拠になることがあると説得力がある、などと生徒自身で考えようになり、自然とスキルが身についてきますね。
正解のない問いの学習が終わると、今、リアルに地球上で起きているさまざまな問題、アイデアを実際の形にするまでのプロセス、課題の見つけ方など、多岐にわたる分野を多角的な視点で学びます。
そして、探究の授業は、1年生と2年生の数学探究、理科探究があり、あえて数学と理科の時間と切り離して、主に実験をおこなう時間にしていますね。
私の担当教科は数学ですが、たとえば確率の勉強の際に、「サイコロを投げたらどの目も1/6の割合で出ますが、6回投げたら123456って順番に1回ずつ出ますか?」と少し意地悪な質問をすると、生徒たちは考え込んでしまいます。
そこで、実際にやってみるんです。
1時間ひたすらサイコロを投げて記録を取り、生徒1人1台iPadを持っているので、データをまとめてエクセルに入力してグラフ化すると、回数が多くなればなるほど理想的な値に近づくということがわかってくるんですよね。
3年生は、自分で4月にテーマを決めて1年間しっかり調べてまとめ、卒業前の2月終わりに全員がパワーポイントを使ってプレゼンをして、クラスの代表者は3年生全員の前に出て発表する卒業発表をおこなっています。
短期留学やスピーチコンテストで英語を楽しく勉強
ー国際交流教育(ニュージーランド短期留学等)や英語のスピーチコンテストについてお聞かせください。
黛:英語を楽しく勉強するために、まずは「英語の勉強=難しい」というハードルを取り払おうと、ネイティブの先生と気軽に話せるような環境を作ってきました。
イングリッシュルームというネイティブの先生の部屋に、友だち同士で遊びに行く感覚で行けるようにしたり、ほかにもネイティブの先生と気軽に話せる場をつくったりという取り組みをしています。
ニュージーランドは、コロナで3年間行けなかったのですが、ようやく今年からまた行けるようになりました。
中学1年生と2年生の希望者を対象に、本校の教員が引率して連れていきますが、ニュージーランドに着いてからは2週間完全ホームステイで現地の学校に通います。
当校の生徒2人につき1人のバディがつくので、非常にきめ細かい指導ができますし、当校の生徒で集まるとき以外は日本語が使えないので、かなり英語力もつきます。
そして、親元を2週間も離れるのは初めての生徒も多いので、精神的にも逞しくなって帰ってきますね。
また、本校では、発信力が大事だということで、英語のスピーチコンテストも開催しています。
中学1年生から中学3年生まで全員が取り組み、クラスで予選をおこない、クラスの代表者になった生徒が、全校生徒の前で英語でスピーチをします。
昨年までは、コロナで全員の前でのスピーチが難しかったので、Zoomで各教室に配信をして、生徒たちが教室のモニターで視聴する形でしたが、今年は久々に全校生徒の前でスピーチをすることができました。
ネイティブの教員と日本人の英語教員が厳正に審査をして、各学年、各部門で優勝・準優勝を決め、立派な賞状も授与。学校の大きな行事のひとつとして毎年おこなっています。
ー最後に、読者の方へ向けてのメッセージをお願いいたします。
黛:日本大学豊山女子高等学校・中学校の方針は、「アントレプレナーシップ(起業家精神)」を身に付けることです。
中学校では、国際交流教育とキャリア教育を2本柱とし、高等学校ではN進学、A特進、理数Sの3つのコースを設置しています。
N進学は、日大に付属の推薦制度を利用して進学するためのコース、理数Sは、理数スペシャリストを育成するためのコース、A特進は国公立大や難関私大を目指すコースで、それぞれの目的目標にあわせたコースとなっています。
そして卒業後は、大学進学がゴールではなくて新たなスタートとして位置付けており、そこから専門的な学びを終えたあとに、世の中に(世界に)貢献できるような生徒を育てていきたいです。
また、本校では、入学試験も教育内容とマッチするような非常に多様な入試をおこなっています。
一般的な4教科の入試がベースになるのですが、英語の面接インタビューの入試や、プレゼンテーションをする入試、公立中高一貫校を目指す受験生のための適性検査型、4教科の中から好きな2科で受験できる2科選択型もあります。
さらに、今年から算数の1科入試も始めるなど、多様な入試方法がありますので、得意分野での受験が可能です。
今年の様子はホームページで発表しており、来年度もできるだけ早く新しい入試の体制を発表したいと思っておりますので、ぜひご覧ください。
毎週土曜日に土曜見学会というミニ説明会もありますし、予定にないところでもご連絡いただければ対応しますので、ぜひ一度学校の方に足を運んでいただければと思っております。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:日本大学豊山女子高等学校・中学校