学生時代、春休みや夏休みなどに、キャンプや校外学習などの野外活動に参加したことがある方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、野外活動を通して人間関係を豊かにする“ハートプログラム”を提供している一般財団法人「大阪府⻘少年活動財団」(ユースサービス大阪)を取材。
理事兼吉野宮滝野外学校部長の今井 正裕さんに、野外活動やハートプログラムについてお話を伺いました。
豊かな人間関係を構築するプログラムや野外活動に興味のある方は、ぜひご一読ください。
自分と仲間のよさを発見し一緒に取り組む
ー本日はよろしくお願いします。はじめに一般財団法人「大阪府⻘少年活動財団」(ユースサービス大阪)がどのような団体なのか、概要を教えてください。
今井 正裕さん(以下、今井):私たちは、大阪の青少年向けに野外活動をおこなっている団体で、1956年に前身となる大阪府青少年野外活動協会が設立されました。
青少年の健全育成が団体理念のひとつで、野外活動だけではなく、文化、音楽、演劇なども同時におこなっていましたが、その後、変遷をたどり、現在の一般財団法人大阪府青少年活動財団が2011年にスタートしました。
団体の事業概要としては、子どもたちのキャンプ事業、自然体験活動事業などの野外活動、事業に従事する大学生のリーダー育成、若者を中心とした青少年に対する人間関係を構築するプログラムの提供、野外活動をおこなう施設運営などです。
小学校の林間学校や自然学校、中学校の校外学習、高等学校のクラブ活動、大学のキャンプ実習、青年の方々の集団づくり、社会人の組織づくりなど、参加者の層が幅広いのが特徴です。
活動内容は、大きく分けて3つあります。
1つめが、野外活動です。野外活動では、登山をしたり、野外炊飯をしたり、自然のなかでのさまざまな活動やアクティビティをおこない、いわゆる「生きる力」を育成しています。
2つめが、豊かな自然に触れる活動です。自然のなかに身をおくと「感性」が豊かになりますし、植物に触れたり自然素材を活用し、ものづくりに取り組むことで、感受性や創造性を育みます。
3つめが、人間関係を豊かにする活動です。人間関係を英語にするとヒューマンリレーションズ(Human Relations)、それをトレーニング(Training)するので、頭文字をとって「HRT(ハートプログラム)」と名付けています。
最近では、多様性や一人ひとりが輝くような生き方が取り上げられていますよね。
豊かな人間関係を築くために、みんなにあわせるだけではなく、それぞれ個性があって一人ひとりが違うなかで、自分と仲間のよさを発見し、一緒に取り組むものは取り組むということにフォーカスをしています。
人間関係を豊かにするハートプログラム
ーハートプログラムについてご紹介ください。
今井:ハートプログラムは、人間関係を豊かにするためのもので、集団をつくるときや途中で集団を見直し改善するときに用いられるプログラムです。
たとえば、キャンプなどの見ず知らずの人が集まる場で、一緒に参加する子どもたちやメンバーとの関係をよくして、一緒に取り組んで課題を解決したり、協力して達成することに繋げていきます。
それぞれが自分の個性を出しながら、リーダーシップを発揮したり、メンバーを助けることでフォロワーシップを意識したり、自分の考えや気持ちを伝える際に言葉や態度・表情・視線など多様な手段を使って表現したり。
コミュニケーションを豊かにするということを、みんなで意識しながら活動を進めていきます。
アメリカで生まれたこのプログラムは、1970年代に日本で紹介されると、日本流の人間関係やコミュニティ形成のツールとして発展しました。
そのころ、日本は高度経済成長期の真只中で大阪では都市化が進み、自然環境が破壊され自然に触れる機会、自然のなかで遊ぶ機会が少なくなっていました。
また、人口が急増した都市部では、学校のクラス数や人数が多く、人との関係が薄くなり、さまざまな問題が起きたという時代背景があります。
そういったこともあり、学校教育のなかでも校外学習や自然活動、夏休みや冬休みに参加できるキャンプなどで、学校では学べないものを補おうと野外活動が取り上げられるようになりました。
また、ひとくちに野外活動といっても、時代によって重要視されることが変わってきています。
公害化が進んで環境悪化が懸念されていたときには、自然のなかに身をおくことで自然を大事にするということを伝えることが野外活動で多く取り入れられました。
最近では、ネットやSNSの世界でさまざまな方と繋がることができるようになったなかで、直接みんなで集まっていろいろなことをリアルに体験するということに重きがおかれています。
その時代ごとで大事にされることが変わってきていますが、人間は社会のなかで成長していくことや、人と人の関わりのなかで育ちさまざまなものを身につけることは、どの時代でも重要視されています。
人と人との関係づくりを意識してトレーニングする時代
ー今後の活動やイベント、寄付などについてご紹介ください。
今井:直近ですと、3月の春休みや5月の連休から夏休みにかけて、小中学生が参加できる人間関係を豊かにするキャンプや、豊かな自然に触れるプログラムの予定があります。
また、高校生向けには2月から4月にかけて、3年生が卒業して新しいチームづくりをするための野外活動やキャンプがあります。
なお、大阪府青少年活動財団は青少年の育成のために、寄付を呼び掛けています。寄付先はホームページをご覧ください。
賛助会費ということで、青少年の育成全般にわたってご支援いただけますと幸いです。
ー最後に、読者の方へ向けてのメッセージをお願いいたします。
今井:最近は、初めてキャンプや登山をされる方が増えてきたので、きちんとトレーニングされた指導者のもと、安全に活動することが非常に重要になってきました。
テントのなかで火を炊くと一酸化炭素の問題がありますし、川で遊ぶ場合も、天候やその土地のことなどを知らないと、命に関わります。
キャンプで子どもが行方不明になったり、初心者が山のなかに入って遭難したりなどのニュースがあるように、野外での活動は危険が伴います。
キャンプや登山などをされる場合は、安全について勉強し、常に意識していただいて、できれば初めのころは経験者と一緒におこなっていただきたいです。
また、ネットやSNSなどバーチャルでの社会が進んでいるなかで、リアルな人間関係が希薄になっている時代、人と人との関わりがますます重要になるでしょう。
今の時代は、人と人、人と自然、人と社会という関係づくりが、意識してトレーニングしなければならない時代でもあると思います。
チームづくり、集団づくり、豊かな人間関係の構築をお考えの方は、さまざまな対象の方々に提供する企画を考えますので、ぜひご連絡ください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:一般財団法人「大阪府⻘少年活動財団」(ユースサービス大阪)