自由度が高く、生徒一人ひとりのペースにあわせて学べる通信制高校。
毎日学校に通う必要がないため、従来の高校生活になじめない子や学業以外にも打ち込みたいことがある子など、幅広い層の子どもたちからの需要が高まっています。
そこで今回は、サッカーに特化した通信制高校 明誠高校 大分SHIP(シップ)を運営する「日本スポーツクラブ支援協会」代表理事の上野 聡子さんに、サッカーや子どもたちへの想いについてお話を伺いました。
フリースクールと放課後等デイサービス事業もおこなう同団体。
大分市で、さまざまな問題を抱える子どもをサポートする環境を探している方、通信制高校を探している方は、ぜひご一読ください。
子どもたちを3つの事業でサポートする「日本スポーツクラブ支援協会」
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、一般社団法人「日本スポーツクラブ支援協会」の活動概要を教えてください。
上野 聡子さん(以下、上野):「日本スポーツクラブ支援協会」では、「フリースクール」「放課後等デイサービス」「通信制高校」の3つの事業をおこなっています。
もともとは、各地域のスポーツクラブが抱えている、さまざまな問題の解決やサポートをおこなったり、日本国内外の子どもたちのために地域の方々や企業とともに大会を開催したり、そういったコンサルティングをしていました。
ほかにも、国際交流の一環としてサッカーの大会やイベントの開催をおこなっていたのですが、最近はコロナ禍の影響でできていません。しかし、状況が落ち着いてきたらまた再開したいと考えています。
サッカーをしたい子のための“サッカーに特化した通信制高校”
ー通信制高校「明誠高校 大分SHIP(シップ)」についてご紹介ください。
上野:当校では、サッカーに特化した学校としてサッカー部をつくり、現在サッカースクールとクラブチームを運営しています。
一般的に小中学生まではクラブチームがあるのにも関わらず、高校生になるとJリーグの下部組織か高校のサッカー部のみになってしまうことに課題を感じていました。
そこで、大好きなサッカーで挫折した子とか、勉強は苦手だけれどサッカーが好きな子などの受け皿として、今年度からサッカー部をつくったんです。
当校の強みは、サッカースクールのコーチが揃っていることと、海外とのつながりがあることです。そのため、今後はつながりを活かし、海外留学や遠征を考えています。
ー明誠高等学校は全国各地にありますが、ほかの教室との違いはありますか?
上野:明誠高等学校は、一人ひとりの個性や興味にあわせて、より充実した高校生活を過ごせる環境を整えています。
明誠高等学校が認定した広域通信課程の学校生活支援拠点の教室を「SHIP(シップ)」と呼び、通信制課程の生徒は、全国のいずれかのSHIPに所属する体制となっています。
全国のSHIPではそれぞれの教室でさまざまな体験プログラムや講座なども実施しており、強みや売りなど、運営においては各教室によってまったく異なるんです。
したがってサッカー部があるのは当校のみで、ほかの教室は、英語に特化していたり、SE(システムエンジニア)の方が運営していてプログラミングに特化していたり、それぞれ全力で子どもたちを支援しています。
学校では、レポート課題作成のための学習支援(分からない問題の解説や、理解を深める補充解説)をはじめ、メディア学習やスクーリング、テストなどがあります。
単位取得に必要な課題をきちんと終えられるように、一人ひとりの理解度や進捗状況を把握・管理しながら高校卒業を目指しますが、勉強よりはサッカーがメインになりますね。
基本はレポート学習になるので、自分のペースで勉強することが可能です。
サッカーの練習については、平日3回と土日におこない、10時から14時まではトレーニング、夕方からはクラブに在籍している小中学生の指導者のサポート役として参加してもらっています。
ーフリースクールと放課後等デイサービスについてもご紹介ください。
上野:放課後等デイサービスは、小学1年生から高校3年生までの就学児で障害のあるお子さんや、発達に特性のあるお子さんが放課後や夏休みなどの長期休暇に利用できる福祉サービスです。
受け入れ時間は14時から17時で、主に学校が終わってからお預かりをします。
現在、小学校低学年までの教室と、中高生が多いクラスの2店舗があり、それぞれの子どもにあわせた活動をおこなっています。
小さい子が多い教室では、公園で走るなど、身体を動かす活動を多めに入れたり、夏休みや冬休みの長期休暇にはおでかけをしたりしていますね。
たとえば、遊園地や大きな公園に連れていったり、魚釣りをしたりなど、たのしい企画をたくさんおこなっています。
フリースクールでは、何らかの理由で学校に行くことができない子どもたちの勉強のサポートをおこなっていますが、まずは家の外に出ることを第一歩としています。そのため、勉強でなくてゲームをしてもいいんです。
時間は10時から14時まで、小学1年生から高校3年生までを対象としていますが、小学6年生から中学1、2年生が多いですね。
こうしたフリースクールや放課後等デイサービスに通った子どもたちを、高校までフォローできるように通信制高校を用意した経緯があるんですよ。
体験をとおして学ぶ!個を活かせる学校づくりを目指して
ー今後の展望やイベントの告知があれば教えてください。
上野:今年11月に参加する予定だったシンガポールの大会は、コロナ禍の影響でなくなりましたが、来年は行けたらいいなと思っています。
以前は、スペインやアルゼンチン、ブラジルといった少し遠いところをメインに行っていたのですが、アジア圏にも毎年1回は連れて行きたいと思っているんですよ。
今後の展望は、サッカーをとおして子どもたちを海外に輩出することです。勉強はもちろん大切ですが、それだけでなく子どもたちには大好きなサッカーに熱中してもらいたいと考えています。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
上野:私は、発達障害というレッテルを貼られた子どもたちが、社会で生きやすい社会をつくっていきたいと思っているんですよね。
そのきっかけづくりが、サッカーに特化した通信制高校だと思っていて。サッカーをツールとして、体験しながら自分で感じて、少しでも早く子どもたちが社会で活躍できるようになったらいいなと思っています。
また当校では、必ずアルバイトをしてくださいと生徒のみなさんにお伝えしています。通信制で毎日学校に来なくてよい環境だからこそ、空いている時間でアルバイトをすることで社会勉強をしてほしいんです。
通信制だからとずっと家に引きこもっていたら、人とのコミュニケーションが取りづらくなりますし、アルバイトをすることで社会で対応できる能力を少しでも早く身につけてもらえればと思っています。
私は一般的な学校で学べるようなことを教えるつもりはありません。
失敗やチャレンジすることの大切さ、そういったことを言葉でなく、いろいろな体験で教える。アルバイトも同様で、知らない大人や異年齢の人たちと働いてジェネレーションギャップを感じることで気づくことってあると思います。
自分にとっては当たり前でも他人にとっては当たり前じゃないと知ったり、忍耐を学んだり、そういったことを共有できる学校づくりをしたいと思っています。
周りにあわせなければいけないなど、固定観念にとらわれず、個を大事にしてもらいたいので、子どもたちの個性を活かせる、そんな環境を目指していきたいですね。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:一般社団法人 日本スポーツクラブ支援協会