障がいのある児童生徒を支援するサービス『放課後等デイサービス』や『児童発達支援』は、近年需要が高まっています。
しかし、サービス内容やどのような療育を受けられるかなど、具体的なことに関しては、あまり知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、放課後等デイサービス / 児童発達支援の場のひとつである、石川県金沢市の「ともしびの家」を取材。児童発達支援管理責任者の佐々木 昭子さんに、施設や療育のことをはじめ、子どもたちへの想いを伺いました。
子育てで悩んでいる保護者の方、子どもたちの成長につながる療育を知りたい方は、ぜひご一読ください。
障がいのある児童生徒を対象とした「ともしびの家」
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、一般社団法人「LYHTY(リュフト)」が運営する、ともしびの家の概要を教えてください。
佐々木 昭子さん(以下、佐々木):「ともしびの家」は、障がいのある児童生徒を対象とした、放課後等デイサービス / 児童発達支援事業所です。
また、運営法人である「LYHTY(リュフト)」は、“すべての子どもに灯を”という理念を掲げ、石川県金沢市を拠点に教育事業を展開しています。
当法人の主な事業としては、ともしびの家の運営をはじめ、フリースクールであるIRORIの運営をおこなっています。
ともしびの家の“ともしび(灯)”には大切な意味があって、ひとつは「子どものなかにある可能性を伸ばす(可能性を灯す)」という意味。そしてもうひとつは「温かい心になれる場所(心を灯す)」のふたつの意味を込めているんです。
子どもたちがあたたかい心でのびのびと可能性を灯す。そうすることで、将来たくさんの人に囲まれ、自分らしくたくましく、幸せに生きていけられるように。そんな願いを込めた、第二のおうちのような場所なんです。
ー施設を利用するにあたって、対象者や開所日などを教えてください。
佐々木:放課後等デイサービスは、就学中で重症心身障がい児以外の6〜18歳までの児童生徒を対象としています。
利用時間は、学校のある通常時は平日14時〜18時、夏休みなどの長期休暇期間は9時〜17時です。
一方、児童発達支援は未就学(6歳まで)の重症心身障がい児以外の児童を対象としています。利用時間は、通常時が平日11時〜17時、長期休暇時は10時〜16時までと、放課後等デイサービスの時間体制とは少し異なります。
この時間体制は、全国の同事業がすべて共通というわけではなく、あくまでもともしびの家が設定している時間体制ですので、詳しくはお近くの施設にお問い合わせください。
子どもたちの成長と自信に!集団のなかだからこその経験
ーともしびの家でおこなっている、活動内容を詳しくご紹介ください。
佐々木:ともしびの家では、年間をとおしてさまざまな活動に取り組み、毎月ごとに活動内容を検討して予定を組んでいます。
たとえば、クッキングや工作、音楽、レクリエーションなど、子どもたちに人気の活動はもちろん、昔あそびや異なる地域の文化体験など、あまり馴染みのない活動でも、やってみると「意外と楽しい!」と感じてもらえているようです。
このように幅広く活動することは新たな発見につながるため、取り入れていますね。
また、子どもたちの可能性を最大限に伸ばすため、あえて活動は限定して固定化せず、毎月子どもたちの実情に応じて、チームでアイデアを出しながら工夫しています。
ともしびの家では、特に「生活能力」「個性」「社会性」の3つを育むことを大切に、日々の療育をおこなっています。
まず1つ目の「生活能力」は、簡単な調理やお手伝い、お掃除など、生きていくうえで大切な生活能力のことです。
仕方ないからやる、面倒くさいけどやる、といった気持ちよりは、自ら「やりたい!」と主体的に取り組めるように、楽しく遊びをとおして学べるよう工夫しています。
ともしびの家では、「チャレンジデー」と題した活動日があり、主に生活能力に関した内容に基づき、ゲーム感覚で楽しくチャレンジできる活動をおこなっています。
そういった活動をとおして「できたよ!」の達成感を積み重ね、子どもたちの自信につなげていますね。
ーそういった自信をつけることが、ご家庭でのお手伝いにもつながりそうですね。
佐々木:そうですね。保護者の方からも、家で自分の洋服をたたんだりお皿を洗ってくれたりするようになったとか、挨拶ができるようになったなどのお声をいただきます。
ともしびの家で活動しているときはもちろんですが、ともしびの家以外のところでも、主体的に実践してくれているお子さんのお話を聞くと、とても嬉しい気持ちになりますね。
次に2つ目の「個性」についてです。好きなことをとことん追究し、夢中になって遊ぶ・学ぶ。その経験は、いつかその子だけの大きな武器になると考えています。
先述したチャレンジデーのように、ともしびの家ではその日みんなでおこなう集団活動の時間があるのですが、それ以外にも、自分の好きなことをしたり、自分のペースで過ごす時間もあったりします。
その時間は、なるべく一人ひとりの気持ちを汲み取り、「やってみたいこと」を形にできるよう、職員がサポートしていますね。
たとえば、ともしびの家では、子どもたちが家に帰る時間が近づくと、職員が読み聞かせをするのが日課となっています。
そんなある日のこと、ともしびの家に、お友だちや職員とお話をするのが大好きな中学生の利用児さんがいるのですが、先日その子が「俺、今日読み聞かせしてみようかな…」とぽつりと呟きました。
職員は、その勇気に「いいね!やってみよう!」と言い、一緒に本を一冊選び、その子に読み聞かせをしてもらいました。
その子は、聴いている相手の目をちゃんと見ながら、本当に上手に読み聞かせしてくれ、また、聴いている子たちも「面白い!」と言って、目をキラキラと輝かせて食い入るようにその子の姿を見ていました。
ひとりの子の「好きなこと」「得意なこと」「やってみたいこと」そんな個性が、周りの心を灯した瞬間でしたね。
最後3つ目の「社会性」について。異年齢の子どもたちが一緒に活動することで、手を取り合い、助け合ってお互いに成長してもらいたい。子どもたち同士での関わりからたくさんのことを学び、社会性を育んでもらいたいと思っています。
ともしびの家には、未就学から高校3年生のお子さんまでいるのですが、それだけの年齢層のお子さんが同じ空間でコミュニケーションを取って活動する場は、学校現場などを見ても、あまり多くはないでしょう。
それでもお互いに協力し合いながら、何事も笑顔で楽しみ、みんなで成長していく姿を見ていると、ともしびの家を運営していてよかったなと思いますね。
小さな子には、大きな子が手を差し伸べて苦手なことを手伝ってあげたり、ときには「それはいけないよ。」とやさしく叱ってくれる場面もあったり…。
小さい子たちもお兄さんお姉さんたちの姿を見て憧れを抱いたり、見て学んでグーンと成長したりと、兄弟のような家族のような、よい関係づくりができていると感じています。
個別ではなく、集団のなかでの支援だからこそ得られる体験は、学校や家庭とはまた違った可能性を伸ばすきっかけになるのではないでしょうか。
無限の可能性を秘める子どもたちに“ともしびのつながり”を
ー「生活能力」「個性」「社会性」を育むことが、子どもたちの自信や成長につながっているんですね。
佐々木:そうですね。私たちは、日々、子どもたちにとってのよりよい支援について、チームで最善を考え、模索しています。
そんななかで、保護者の方からの「ともしびの家に通うようになって成長した」の声や、子どもたちから「ともしび大好き!」の声を聞けたときは、本当にやっていてよかったなと思います。私たち支援者の自信にもつながりますね。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
佐々木:子どもには、大人が想像もできないほど無限大の可能性を持っています。
でも、そんな可能性を持つ子どもたちも、日々のいろいろな出来事のなかで、自分に自信が持てなかったり、壁に直面して悩んだり、怒りや不満の感情を上手くコントロールできず苦しんでいたり…見えないストレスに悩んでいるお子さんも多いです。
そんななかで、ともしびの家は学校や家庭とも違った、信頼できる大人がいる居場所のひとつになればと思って活動しています。
ほんの小さなことでも自分の持つ可能性に自信を持てるサポートを一生懸命したいと思っているので、保護者の方も子どもたちも、決してひとりで悩みを抱え込まずに、相談してほしいです。
そして子どもたちみんなが大きく羽ばたいていけるように、私たちにできる最大限の支援を心がけていきたいと思っています。
私は、未来を担っていく子どもたちに携われる仕事にとても誇りを感じています。子どもだけでなく、支援する側も灯される仕事だと思っているので、この“ともしびのつながり”が、石川県から全国に広がるよう、頑張りたいです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:
一般社団法人 LYHTY
ともしびの家