「人生楽しんだもん勝ち」ヤングケアラーだった教育系YouTuber・市岡元気を支えた言葉

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子どもだけでなく科学好きの大人の夢を叶えるような楽しい実験YouTubeチャンネル「GENKI LABO」(チャンネル登録者数約66万人 2022年12月22日時点)が大人気のサイエンスアーティスト・市岡元気先生

 科学好きの元気先生の原点を探るなかで明らかになったのは「ヤングケアラー」だった過去。

しかし、そのなかでも「自分で目標を見つけて挑戦し、学び続けてきたことが今の活動に結びついている」と話してくれました。

  1. ヤングケアラーだった幼少期を支えた3つの言葉
  2. 勉強から学んだ「結果はあとから必ずついてくる」
  3. 「“ろうそく一本”にもたくさんの科学が詰まっている」
市岡元気

ヤングケアラーだった幼少期を支えた3つの言葉

―どのようなお子さんでしたか?

市岡元気(以下、市岡):長野県松本市の自然豊かなところで育ちました。蝶々を捕まえて標本を作ったり、夏休みは朝の4時に起きてカブトムシとかクワガタ取って、また夜に仕掛けを作りに行くなど昆虫が大好きな子どもでした。

父は僕が物心つくときには離婚していて、母と弟の3人暮らし。ただ、弟が生まれてから母は育児ノイローゼから統合失調症になってしまい、入退院を繰り返していました。だから家事は僕と弟で手分けして。また、母は働いていなかったので、生活保護をもらいながら暮らしていました。

―それは今でいう“ヤングケアラー”ですよね…。

市岡:そうですね。でも僕は“ヤングケアラー”だと思っていなかったんです。たまたま新聞の取材で母について話をしたときに、そう指摘されて初めて気づきました。僕たちはその生活が普通だと思っていたのと、市からの“母子家庭”に関してのサポートがあったので。

学校から帰って山積みになったゴミの片づけをして、毎日母に「薬飲んだ?」って聞いたりしてはいたんですけど…生活保護をもらいながらなんとかご飯は食べることができていたし、他の家庭と違うと感じたのはお年玉が少ないことぐらい。

大学進学のときかな…初めて“負い目”のようなものを感じたのは。母親や親戚から「大学に行かずに働きなさい」と責められて「それはさすがに違う」、「これから先も母のために生きていたら、自分はなんのために生きてきたんだろうと後悔する」と思ったんです。

―家族の世話をするなかで勉強する時間、自分の時間を捻出するって本当に大変だったのではないでしょうか。

市岡:だから家のことをやる時間と自分のことをやる時間を分けていましたね。例えば20時までは家事をするけれど、それ以降は「勉強するから」って言い残して自分の部屋に引きこもっていました。

僕、座右の銘みたいなのがあって小学6年生のころから紙に書いて部屋に貼っていたんです。「今やらなきゃいつやるの?」「人生楽しんだもん勝ち」「なるようになる」その3つ。

とにかく昔からやりたいことはすぐやるようにしていました。親の言いなりじゃなく自分のしたいこと=楽しいと思えることをしよう、そのうえで頑張って、頑張って、頑張ったら「なるようになる」。そんなふうに思いながら生活していました。

―小学6年生でその言葉はなかなか出てこないですよね。

市岡:そう言われればそうかも知れません。でもそうやって自分で考えて生活しないとなにもできなかったので。

勉強から学んだ「結果はあとから必ずついてくる」

市岡元気

―勉強は好きでしたか?

市岡:勉強はもともとできていたわけではなく、できるようになりたいって思って勉強したらできるようになったタイプでした。中学入学当初はテストの順位も後ろから数えた方が早かったくらい。

でもずーっと「勉強ができるようになりたい」っていう思いがあったので、中学生向けの雑誌で見た「勉強はスケジュールを決めてやるといい」という勉強法を真似してそのとおりにやってみたんです。

始めはやっていても全然順位が上がらなかったんですけど、続けていったらどんどん順位が上がっていき、テストによっては学年トップになったりとか。結果はすぐには出ない、でも真面目にやっていればあとから必ずついてくる、勉強をとおしてそれを経験することができました

―大学は東京学芸大出身ですね。当初は教員を目指していたのでしょうか?

市岡:そうですね、大学進学のときにはDNAに興味をもっていたのと、誰かになにかを“教える”ことが好きだったので、先生になれる学校に行きたいなと東京学芸大学を選びました。

大学では結局研究室に入って珪藻(けいそう)っていう「藻」を題材に、その研究室ではまだ誰もしたことがない研究に挑戦しました。

金魚の草とかに茶色の藻が付くじゃないですか?藻の形の研究はあったのですが、それって細胞壁がガラスで出来ているんですよ。

「でも、なんで常温なのにガラスを作れているんだろう」と気になり、自分でそれに関する論文を集めて英語を翻訳して、実験器具などもその研究室では揃っていなかったので、先生に申請して買ってもらって、研究して…一から考えるっていうのがすごく楽しかったです。

アルバイトも飲食店やカラオケなどいろいろしましたが…塾講師のアルバイトもしたんです。東京個別指導学院や、ほかにも家庭教師や幼児向けの英才教育など。

―でも教員の道へ進まなかった、その理由はなんでしょうか?

市岡:教育実習に行ったときに企業で働いた後に30歳で先生になった方に出会い、「そんな生き方もあるんだ!」と。

教員にも興味ありましたが、実は役者にもずっと憧れていて実際にレッスンを受けたりもしていたんです。それならまずは役者を目指しながら仕事をしようと決意したところで出合ったのが、科学の面白さを伝える会社でした。

そこでの仕事をきっかけに“役者”と“理科の先生”というのがあわさって今の道になっていったんです。

―今までのことがひとつになっていったんですね!

市岡:そうですね。積み重ねてきたことはどこかで必ず活かせるときがくると実体験から思っているので、興味のあることにはこれからもどんどんチャレンジしていきたいですね。

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「“ろうそく一本”にもたくさんの科学が詰まっている」

市岡元気

―科学に苦手意識がある…そんな子どもたちにおすすめの動画はありますか?

市岡:科学があんまり好きじゃない子どもでも入り込めるのは、お家でも出来る実験事例「今すぐお家でできる10の凄い実験」「お家ですぐできる驚きの実験10第2弾!」
ですね!

これは一つあたりの実験が1、2分で見ることができるうえに、お家にあるもので物質の変化が見られるので、楽しめると思います。

また、ちょっと科学に興味がある子どもには『ろうそくの科学』という、少し本格的な実験がおすすめです。

これは「マイケル・ファラデー」というイギリスの科学者が、イギリスの王立研究所で子どもたち向けにおこなったとても有名な実験で、ノーベル化学賞をとった研究者の方々も科学に興味をもったきっかけとしてこの実験を挙げています。

たった一本のろうそくの中にこんなに面白いことがあるんだ、科学って面白いな、身近にこんな科学があるんだって感じてもらえるはずですので、子どもはもちろん大人の方にもおすすめです。

「燃えて消えたろうそくはどこに行ったのかな?」とか、「ろうそくって何が燃えているのかな?」あと、ろうそくって実は結構明るい光を放つのですが「なんでこんなに明るいのかな?」って考えていきます。

僕も子ども向け入門書『面白いほど科学的な物の見方が身につく 図解 ロウソクの科学』を出しているので、ぜひこれをきっかけに科学の面白さを感じてもらえたら嬉しいですね。

―YouTubeだと映像でも見られるので、子どもは科学の面白さをさらにイメージしやすいので身近に考えるきっかけになりそうですね。

市岡:YouTubeをやっていて嬉しいなって思うのは、「先生のおかげで理系に進みました」「科学が好きになりました」という言葉ですね、やっぱり。

また、ADHDなどの発達障がいをもっていて勉強に集中できないという子どもが、「先生のおかげで理科が好きになった。今まで何も勉強ができなかったのに、すごくできるようになった」という話を聞いたときに、これは将来おもしろそうだな、と。この活動を10年、20年と続けていったら将来すごいことになりそうだなっていう手応えを今感じています。

ほかにも大規模な科学博をやってみたいとか、あと個人的にはサウナにはまっているのでサウナの有効な入り方をみなさんに広めたいなとか…皆さんが「面白い」と思ってもらえる科学の実験をおこなってYouTubeを通して世界中に発信していきたいと思っています。

そして、僕のチャンネルがきっかけで科学が好きになって研究者になる子が増えて、それが日本の科学技術発展に繋がったら嬉しいですね。

取材協力:市岡元気
公式YouTubeチャンネル:「GENKI LABO」
公式Twitter:@genkiichioka
公式Instagram:@genki_ichioka

ひらおか ましお
この記事を執筆した執筆者
ひらおか ましお

テラコヤプラス by Ameba 執筆者

大学で入部したスポーツ新聞部をきっかけに、大学卒業後から本格的にライター業に従事。主にスポーツ雑誌を中心に活動していましたが、結婚と出産を機にwebや地元の情報誌などに活動拠点を移しました。子どもの成長と共に教育関連に興味をもち、2021年11月よりテラコヤプラスby Amebaで執筆を担当する二児の母。インタビューを通して得た情報を皆さまにシェアする気持ちで執筆しています。