「富士山クラブ」を取材!美しい富士山を後世に残すためにできること

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日本の象徴とされる富士山は、登山や観光地として知られていますが、雄大な自然を守る活動をしている団体をご存知でしょうか。

今回は、「NPO法人 富士山クラブ」事務局長である七井 辰男さんにお話を伺いました。

美しい富士山を後世に残すために今必要なことや、具体的な取り組みについて知りたい方は、ぜひご一読ください。

  1. 美しい富士山を後世に残すために
  2. 生態系を守る“外来種駆除活動”
  3. 富士山とエベレストを繋ぐ“環境保全活動”
  4. 富士山を守るパイオニアとしてできること

美しい富士山を後世に残すために

富士山クラブの活動画像1

ー本日はよろしくお願いいたします。まず「NPO法人 富士山クラブ」について教えてください。

七井 辰男さん(以下、七井):
NPO法人 富士山クラブ」は、美しい富士山を日本の誇るすばらしい宝として後世に残していくために、市民が中心となって清掃活動や森づくりなど、富士山の自然環境保護活動をおこなっているNPO法人です。

設立は1998年11月。富士山頂から山麓、周辺河川、駿河湾に至る自然環境や生態系を保全することを目指してスタートし、翌年11月には国から特定非営利活動法人の認証を受けたのです。

まず取り組んだのは、当時、社会問題化していた、山小屋のし尿の処理問題。5合目以上のトイレは、ため込んだし尿を夏山シーズン後に山肌に直接放流する方式がほとんどで、ティッシュペーパーやごみが白く筋状に固まって「白い川」とも呼ばれていました。

富士山クラブでは、水が不要で、人間の体内に住む微生物の力でし尿を分解する「バイオトイレ」の設置を事業者や自治体などに働きかけ、現在までにほぼすべての山小屋のトイレへの導入が完了。

また、ポイ捨てされたごみや、不法に持ち込んだ廃棄物の清掃、海岸清掃、外来種駆除活動、森づくり、環境教育などにも力を入れ、市民の皆さんや市町村と協力し合いながら、20年以上の活動を続けています。

ごみ清掃は、統計を取り始めた2004年から2022年3月までに延べ76000人が参加し、22000トンを回収しました。

10月15日には富士山麓の国道を中心にした「ぐるり富士山一斉清掃」をおこないますので、ぜひご参加ください。

生態系を守る“外来種駆除活動”

富士山クラブの活動画像2

ー続いて、「外来種駆除活動」 について教えてください。

七井:
富士山には、環境省が特定外来生物に指定しているオオキンケイギク、オオハンゴンソウ、アレチウリなどをはじめとする侵略的外来植物が入り込み、増殖しています。

これらの種は、在来・固有の植物を駆逐し、生態系を損なうおそれがあるため、継続的な駆除活動が求められるのです。

当クラブでは、河口湖畔での繁茂が確認されているアレチウリの駆除に毎年、継続して取り組んでいます。2012年12月に「河口湖アレチウリ一掃作戦」実行委員会が発足し、翌2013年から湖畔での駆除活動をスタートさせました。

この委員会は、地元の富士河口湖町、山梨県富士山科学研究所、山梨県富士山レンジャーからなり、日々のパトロールと駆除活動をおこなっています。今年度は、この一掃作戦を7月までに5回実施。9月は18日・29日にも活動する予定です。一般の方も参加できます。

この10年間で、活動の効果もあって、幸いにも繁茂は抑えられていますが、今後油断して爆発的な繁茂を招いたり、畑への侵入を許し作物への被害をもたらさないよう、地道に取り組んでいきたいと思っています。

また、今年は初めての試みとして、8月25日に富士登山のゲートウェイでもある富士スバルラインの五合目で、一般の方も募集して外来生物の防除活動をおこないました。

首都圏や静岡、長野県などから25人が参加し、まずスバルライン入口にある富士山科学研究所で主任研究員の安田泰輔先生から外来種の由来や駆除のターゲットである7種の侵略的外来種について詳しく説明を受けた後、当クラブの車で現場の五合目へ向かったのです。

私も土産物屋さんの周辺の駐車場で一緒に駆除活動をおこなったのですが、ヨモギやオオバコ、セイヨウタンポポなどがあちこちで繁茂しているのに驚きましたね。

駆除活動に汗を流した後は、近くの御中道の自然観察コースで、コケモモの群生やダケカンバなどを観察、富士山の植生などについて安田先生から詳しい説明を受け、楽しく充実したひとときを過ごすことができました。

小学生を連れた家族連れも「とても面白かった。来年も参加したい」と好評でした。

日本一の標高(3776m)を誇る富士山。美しい山容と多彩な植層が世界の人々を引き付けていますが、地球温暖化に象徴される、自然への敬意や配慮に欠けた人々の行動は、本来の自然に様々な影響を与え、随所で顕在化しています。

このため、当クラブでは、南麓の富士宮市を中心に、地元児童施設の子どもたちや大学のボランティアセンターの学生をはじめ、広く一般の方を迎えての植林、自然体験会の開催といった環境教育、地元企業と協同で行う里山林の維持管理といった「里山の森づくり」を次世代に受け継いでもらう活動としておこなっています。

また、標高1200m付近の西臼塚では、静岡森林管理署と協定を締結し、富士山本来の植生の回復を目的とした針葉樹・広葉樹混交林の再生を目指す「奥山の森づくり」に取り組んできました。

こうした活動に、これまで多くの方々がご参加くださっており、なかでも、「里山の森づくり」に参加した都内の大学生からの反応としては、「現在多くの資源や設備が次々に誕生しているが、それらは人間のためだけに生産されたものではなく、様々な生き物の犠牲の上に成り立っていることを再確認させられた」

「このような森林での作業を経験しないと、いとも容易くモノが生産されているかのように感じ、物を大切にしようという気持ちは湧いてこないだろう。今回のような体力や知恵を使う体験をすることで、日々身の回りで使うような物、施設、食べ物全てに感謝をしなければならないと考えることができた」

「より多くの人が自然との接点を持つことができればより良い関係性を構築出来るのではないかと考えるきっかけになった」

「普段は体験することができない薪割りや、普段は飲むことがないお茶、ノコギリで実際に木を切るなど、とても勉強になることばかりだった。また、オーバーユーズやアンダーユーズなど、今まで自分が知らなかったことを知ることができ、自然に対する意識が変わった」

などの嬉しい感想が多数寄せられています。

富士山を守るために必要なことと向き合うことで、子どもたちの世代まで、美しい富士山を残すことができるんですね。

富士山クラブがある山梨県南都留郡には、たくさんの塾・学習塾があります。

テラコヤプラスでは、南都留郡富士河口湖町 塾・学習塾 ランキングや、河口湖駅から近い 塾・学習塾 ランキングなど、エリアや駅など条件を絞って塾を探すことができます。

お子さんの塾をお探しの方は、ぜひチェックしてみてください!

富士山とエベレストを繋ぐ“環境保全活動”

富士山クラブの活動画像3

ー「富士山・エベレスト森づくりプロジェクト」の活動内容を教えてください。

七井:
森づくりの新たなプロジェクトとして、今年度からスタート予定の「富士山・エベレスト森づくりプロジェクト」は、アルピニストの野口 健さんが理事長を兼務するNPO富士山クラブと、NPOピーク・エイドが取り組みます。

姉妹山関係にある両山の山麓で、植樹や森林の整備などの「森づくり活動」をするとともに、森づくりを通じた環境教育や、日本とヒマラヤの子供たちの交流会を実施。

また、技術者の相互派遣による技術研修や情報交換、シンポジウムの開催などをはじめとして、政府の2050年のカーボンニュートラルや防災を目標とした、多彩な活動の展開を計画しています。

日本のシンボルの富士山と、世界最高峰のエベレストは、2014年6月に姉妹山提携をし、両山やヒマラヤ山麓の環境保全活動を展開していますね。

ピーク・エイドはヒマラヤ・マナスル峰のふもとのサマ村(標高3500m)で2016年から5年間、3万本の植樹をおこなってきました。

サマ村にはかつて原生林が広がっていましたが、薪の利用や木材の売買を目的とした伐採で大幅に減少し、植林の必要性を村人に理解してもらうのは困難な状況だったのです。

野口理事長をはじめとする関係者は、植林の専門家による村人へのワークショップや説明会を数年かけておこなうとともに、市民のみなさんと一緒に植林を続けてきました。

新たなプロジェクトでは、森林の倒壊や伐採が進んだエベレスト街道地域での植林で、パンボチェやクンデなど四つの村で5年後の2027年までに2万本の植樹を進める予定です。

一方、富士山麓でも風水害がかつてないほどの規模や頻度で発生するなど災害への備えや固有種の保護等の対応が迫られており、富士山クラブがこれまで進めてきた奥山・里山の森づくりの一層の充実を進めといきたいと考えています。

活動が軌道に乗れば、植林関係者による両国間の交流や両国の子どもたちによる環境学習なども進めていきたいいと思っております。

このプロジェクトを実現するため、環境教育や森づくりにご興味のある企業・団体から の協賛の受け皿となるプラットフォーム作りや、市民の皆さんから幅広く資金を募るクラウドファンディングも検討していますので、ぜひご協力いただきたいですね。

富士山を守るパイオニアとしてできること

ー最後に、読者へメッセージをお願いいたします。

七井:
これまでご紹介してきた活動のほか、富士山クラブでは、世界的に問題となっている海洋プラスチックの問題にも取り組んでいます。

2021年10月30日には、「
海洋プラスチックごみ防止『6R静岡県民運動』海岸清掃イベント」を開催し、富士市田中新田付近の海岸で、プラスチックごみや不燃ごみを回収しました。

また、富士山クラブは2005年5月に「富士山クラブ宣言」を制定しました。「水」緑」「命(生態系)」をキーワードに、美しい富士山を次世代の子どもたちに残していこう、というのが目標です。

私たちは、富士山を守る認定NPO法人のパイオニアとして、森づくりをはじめ、環境教育、清掃活動、地域との共生などさまざまな活動に今後とも地道に取り組んでまいります

ー本日は、貴重なお話をありがとうございました。

取材協力:NPO法人 富士山クラブ

福岡 萌子
この記事を執筆した執筆者
福岡 萌子

テラコヤプラス by Ameba 執筆者

幼少期はダンス、フィギュアスケート、ピアノ、英会話などを習う。英語に特化したカリキュラムが豊富な私立高校の国際情報コースに通い、イギリスでの短期留学を経験。その後、恵泉女学園大学人間社会学部にてインドネシア文化とフランス文化を学ぶ。その後、幼児~シニアを対象としたダンス講師として従事。2021年4月に株式会社サイバーエージェントグループ会社である株式会社CyberOwlへ中途入社。保護者やお子さまの目線に寄り添い、知りたい情報を確実にお届けできるよう目指しています。