「外国人技能実習生」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。しかし、彼らが実際にはどんなことをしているのか知っている方は少ないかもしれません。
今回は、外国人技能実習制度を通じて、国際貢献と地域振興に取り組む「みらい協同組合」代表理事の片庭 慶子さんにお話を伺いました。
少しでも国際交流に関心がある方は、ぜひご一読ください!
茨城県を中心に外国人技能実習生の受け入れをおこなう
―本日はよろしくお願いいたします。まず、「みらい協同組合」がどのような団体なのかお聞かせください。
片庭 慶子さん(以下、片庭):「みらい協同組合」は、2014年から外国人技能実習生の受け入れをおこなう団体です。
私自身、もともと学生時代から在日外国人に関わるボランティア活動に参加したり、東南アジアの国に住んでいたりした経験があることなどから、「外国人受け入れ事業」に関心を持ち、組合の立ち上げから関わることになりました。
当初はモンゴルから始まり、現在はベトナム、カンボジア、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、バングラデシュなどの国々とも協定を結んでいます。
2022年現在、日本と技能実習制度についての二国間協定を結んでいるのは、東南アジアの国を中心に14ヵ国。
海外側の認可を受けた“送り出し機関”と協定を結び、候補者の選抜、ビザの取得手続き、日本語と日本の文化・習慣の教育、など事前準備を進めます。
そして実習が始まると、実習先への巡回訪問や、実習生の相談窓口となるのが、日本側で認可を受けた私たち受け入れ組合です。
基本的に3年、延長しても5年という実習期間中、送り出し機関と受け入れ機関で協力して、実習生のサポートにあたっています。
ネガティブなイメージを払しょくしたい
ー外国人技能実習制度について詳しく教えてください。
片庭:みらい協同組合をスタートさせた2013年頃には、すでに日本に15万人以上もの技能実習生が入国していました。
ところが、じつは私も組合を立ち上げるまでは制度のことを詳しく知らず、勉強しました。
すると茨城県では主産業である農業や製造業、それに建設も含め、多くの分野で外国人技能実習生の受け入れがおこなわれており、多くの実習生が配属されていることがわかりました。
さらに、技能実習制度についていろいろ検索すると、出てくるのは“不法滞在”、“不法就労”といったネガティブなものばかり…。
それまで私自身、ボランティアの範囲で留学生を中心に日本に滞在する外国の方々と関わりをもつなか、ネガティブなイメージはまったくなかったので記事を目にしてショックでしたね。
しかし、外国人技能実習制度は、日本の技術・技能を外国人に学んでもらい、それぞれの国へ持ち帰り生かしてもらう、というスローガンのもとにある制度。発展途上国といわれる国々にも貢献ができ、国際貢献として素晴らしいものです。
私だったらどのように国際貢献をするだろうか、実際どういう子たちとの出会いがあるのかといった点に強い関心をもち、そのど真ん中で関わり始めることにしました。
2014年、モンゴルとカンボジアよりそれぞれ2名の実習生の来日から受け入れを開始。私からは日本のことを伝え、実習生からはモンゴルやカンボジアのことをいろいろ教えてもらいました。
はじめて自分たちの組合で実習生を受け入れられたことが、とても嬉しかったことをよく覚えています。
とはいえ、留学ではなく仕事の現場での実習ですので、トラブルも日々起こってしまいます。その典型的なものがミスマッチング。
人対人なので、どんなに人柄が素晴らしく、入念に面接をしても、ときには受け入れ先と相性が合わないということも発生してしまいます。
また、ミスマッチ以外にも仕事の早い遅い、ビジネス文化の違いによるクレーム、私生活のなかでトラブルも。
実習生と配属先の管理を担当するスタッフたちは、トラブルが発生したときには必ず、しっかりと双方の話を聞いて対応にあたっています。
必ずしも実習生側には非がない、就業先とのコミュニケーションミスということもありますからね。
それと並行し、2年前に設立された「一般財団法人外国人材共生支援全国協会(通称:NAGOMi)」でも、理事を務めさせていただき、日本への外国人の、よりよい受け入れ環境づくりへの提言にも取り組んでいます。
この活動は技能実習生だけでなく、特定技能、留学生、そのほかの在留資格で来日しているすべての外国の方々を対象にしたものです。
日本社会に必要不可欠な外国人材
―最後に読者の方へ向けてのメッセージをお願いいたします。
片庭:日本には約35万人もの外国人技能実習生がいます。さらに、2019年に新設された在留資格「特定技能」での在住者もすでに約9万人(6月末時点)となり、ますます増加しています。
「特定技能」の在留資格は就労を目的としていますので、日本の深刻な少子化問題や労働人口の減少を支える存在となっていくことでしょう。
そうした外国人材なしには、日本の一次産業、二次産業は立ちゆかなくなるのではないかと感じています。
実際に、夏休みに茨城県の実家へ帰省した際、農道を歩いていたら、畑で作業をしている多くの外国人を見かけました。話しかけると人懐こい笑顔で答えてくれました。
みなさんも少し周囲を見渡していただくと、日本にさまざまな夢や希望をもって来日し、頑張っている若い外国人が案外身近な場所にいることに気づいていただけるのではないでしょうか?
とてもフレンドリーな人たちが多いので、ぜひ少しでも関わってみてください。
技能実習生は長くでも5年という限られた期間、日本にいますが、配属先以外の日本人と触れあう機会がなかなかないまま帰国してしまう実習生が大半…。
そういった実習生たちに少し笑顔を向けていただいたり、関心をもっていただけたら嬉しいです。
私たちも、少しでも外国人技能実習生のことを知ってもらえたらと、ホームページでその様子を紹介しているんですよ。
さまざまな職場で頑張る実習生と、彼ら/彼女らを受け入れ、一緒に仕事をする企業さまの声も掲載しています。
また、「N1」という一番難しい日本語能力検定試験に合格した実習生へのインタビューも公開しています。
今後も、日本でさまざまなことにチャレンジする実習生の生の声をご紹介していきたいと思っています。ぜひご覧ください。
また、将来の日本を担うお子さんたちが、少しでも海外に関心をもてるようなお話をご自宅でもしていただけたらと思います。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
取材協力:みらい協同組合