日本が誇る古都“京都”には古くから護り受け継がれてきた文化遺産がたくさんあります。
清水寺や延暦寺をはじめとして、17の世界遺産が登録されているのご存知でしょうか。
「この貴重な文化遺産を受け継ぎ、そして未来へ継承することは、私たちの責務である。」そう語るのは、「京都文化協会」代表の田辺幸次さん。
京都文化協会は、京文化を活性化させるための文化交流をおこない、京都の文化の振興と発展を目的としている特定非営利活動法人です。
この記事では、田辺さんとのインタビューをもとに、京都文化協会について紹介します。
日本の文化を多くの人に広げたい
ー本日はよろしくお願いいたします。京都文化協会が行なっている活動内容について教えてください。
田辺 幸次さん(以下、田辺):京都文化協会としては、基本的に京都を代表するような日本の文化をより多くの人に知っていただくような活動を行なっております。
一番大きな協会の活動の柱としては、キヤノン株式会社とともに15年くらい前から一緒に進めている綴プロジェクトというプロジェクトです。
このプロジェクトを軸にしながら、IT関連企業や、ローカル企業まで、さまざまな団体と一緒に日本文化を紹介するイベントをおこなっています。
本物さながらの作品を届ける“綴プロジェクト”
ー「綴プロジェクト」とはどのようなプロジェクトですか?
田辺:まず、前提として、日本画といわれる絵画において、国宝や重要文化財指定作品には、作品の劣化を防ぐための「公開制限」があります。
例えば、国宝の風神雷神図屏風の場合は、1年を通して数十日間しか公開されません。
つまり、一般の人が国宝とか重要文化財を見る機会というのは非常に少ないんです。
我々がキヤノン株式会社と一緒に進めている「綴プロジェクト」では、それらの国宝や重要文化財をキヤノンの持つ最新技術と京都で古くから培われてきた伝統技術を融合させ、古さや傷、色合いや金の表現など、細部に至るまでオリジナルを忠実に再現した高精細複副製品を作っています。
これまで15年間プロジェクトで合計56作品を制作しました。
これらの高精細な複製品は、様々な形で公開、活用されていますが、そのひとつとして、子どもたちの学校教育の場で美術や社会の教材としても、活用して頂いています。
このように、本来ならば簡単に本物を見ることができないような作品でも、「高精細な複副製品をつくり続け、活用することで、より多くの人に日本文化を知って頂ける」と考え活動しているのが綴プロジェクトです。
ー子どもたちへの京都文化継承にかける想いを教えてください。
田辺:京都だけではなく、さまざまな地域にいる子どもたちも、自分が生まれ育ったふるさとに、何百年も前から多様な文化があったんだということを知っていただきたいと思っています。
日本文化や、故郷の伝統工芸だったり、さまざまなものを知ることによって、自身が日本人であることの意味であるとか、その土地で育ったことの誇りであるとか、そういうものを自ら勉強してわかってくれるのではないかと思っています。
このような郷土愛を養うことができれば、より広く、文化が継承できるような世の中になると思っています。
日本の歴史や文化について親子で話してほしい
ー今後開催予定のイベントについて教えてください。
田辺:2022年10月15日~、京都祇園にある「大本山建仁寺」でキヤノン株式会社と一緒にXR技術、AR、VR、MR、また、「プロジェクションマッピング」を使ったイベントを開催します。
詳細は、公式ホームページでお知らせしますので、ぜひチェックしてみてください。
ー最後に、読者へ向けてメッセージをお願いいたします。
田辺:今年の夏、山形県米沢市にある「上杉博物館」では、綴プロジェクトの24作品を展示する展覧会を開催いたしました。
私も見に行きましたが、保護者の方と小さな子どもたちが一緒に手をつないで作品を見に来てくださいましたね。
綴プロジェクトの作品は、ガラスケース越しではなく間近で見ることができるので、作品の細部を見ながら親子で会話をしている姿を見ることができて、私も嬉しくなりました。
日本の文化財は、未来を担う子どもたちのためだけにあるわけではなく、お父さんお母さんも知らないことってたくさんあると思うんです。
そういう日本の歴史や文化、伝統について子どもと一緒に家族で会話する時間をもっと長くとってもらえたらいいなと思っています。
来年度にかけても、綴プロジェクトの展覧会など各地方で多数予定しています。また、もしかするとお子さんが通われている近くの学校で作品を見られる日もあるかも知れません。
作品を見たことをきっかけに、絵師や時代背景などインターネットなどでより詳しく調べたりして、ご家族での楽しい会話が増えれば良いと思っています。
ー本日は、貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:京都文化協会