「世界の医療団」を取材!誰もが医療を受けられる未来に向けての活動を聞いた

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怪我をしたときや体調を崩したとき、「病院でお医者さんに診てもらえばすぐ治る」と思う方は多いのではないでしょうか?

ところが、命を落としてしまうような怪我や病気をしても、医療にアクセスできない人々がいます。

今回は、国籍、人種、民族、思想、宗教などのあらゆる壁を越えて、誰もが医療を受けられる未来を目指して活動する「世界の医療団 日本」事務局長の米良 彰子さんにお話を伺いました。

国際協力や医療に関心がある方は、ぜひご一読ください!

医療に繋がっていない人を医療に繋げる

世界の医療団

―本日はよろしくお願いいたします。まず、「世界の医療団」がどのような活動をされている団体なのか、概要を教えてください。

米良 彰子さん(以下、米良):「世界の医療団」は、医療に繋がっていない人たちを医療に繋げるという活動を国内外でおこなっています。現在、私たちの仲間が74カ国で、330のプログラムを実施しています。

必要な医療に繋がれない理由は本当にさまざまです。ですので、ただ繋ぐだけではなく、その理由を探り、実際にどういったことが人権侵害になっているのか考えることも重要です。

私たちは「証言」と呼んでいますが、人権の尊重を促すような活動が活発になればと思い、当事者の方、こういった事業に関係するいろいろな方の声を積極的に発信しています。

―ほかの団体にはない「世界の医療団」の特徴や強みはどういった点でしょうか?

米良:医療系の国際協力団体はたくさんありますが、そのなかでも海外だけではなく、国内での活動もおこなっていることはひとつの特徴でしょうか。

「世界の医療団」はもともとフランスで始まった団体で、現在では世界中に17拠点あります。

本部があってそれ以外は支部というNGOが多いかと思いますが、私たちは17の事務局がすべて独立して活動。つまり、私たちはフランスの支部ではありません。その点もほかの団体とは大きく異なる特徴ではないかと思いますね。

日本では1995年の阪神淡路大震災のときにフランスから医療チームが来て、それをきっかけに団体を設立しました。

東日本大震災後、福島でも長期的に活動をしました。災害が発生した際には直後から、復興まで現場に寄り添って活動する「長期支援」が私たちの特徴です。

国内では被災地での活動だけではなく、ホームレス状態にある方の精神的ケアと生活向上プロジェクトなどもおこなっています。

国外でも、さまざまなプロジェクトがあり、2015年からはウクライナの医療制度の改革を含む医療支援に取り組んでいます。その最中に今回の戦争が起こってしまい…。支援を続けている形になります。

途上国で活動するときに重要な「援助の現地化」

世界の医療団

―多くの支援活動をおこなわれていると思いますが、今回は「ロヒンギャ難民の支援プロジェクト」について詳しく教えてください。

米良:ロヒンギャというのは、ミャンマー西部のラカイン州に暮らしている少数派のイスラム教徒の人たちです。

昔からロヒンビャ民族の方と政府との紛争が絶えなかったのですが、2017年8月25日にミャンマー国軍による放火や銃殺などによるロヒンギャの迫害が起きてしまいました。

そういった状況から逃れるために70万人以上の人たちが着の身着のままで隣国バングラデシュへ逃げたんですね。

現在でもバングラデシュの世界最大の難民キャンプでは故郷を追われた約90万人以上ものロヒンギャの人たちが暮らしています

私たちは2017年からキャンプのなかで基礎的医療に繋げる活動をおこない、2018年からは保健や防災に関する啓発活動をおこなっています。

活動のなかで非常に大きな役割を果たしてくれているのが、私たちが「コミュニティ・ヘルス・ボランティア」と呼ぶ有志のボランティアの方々。じつは彼ら自身も難民です。

自分たちでこのコミュニティを守るという意思を持って活動しています。また将来ミャンマーへ戻れるときのために、私たちが伝える知識やスキルを身に付けながらキャンプで生活しています。

新しい情報を学び、それを他の方にわかるように伝える。伝えることによって、他の人の命も守ることができるように。

自分たちの行動が変わることで、自分はもちろん、家族の健康状態が改善されることは大きなことでしょう。

彼らに伝えている内容は、いわゆる学校で学ぶようなことではありません。

しかし、生きていくうえで必要なものを身に付ける「ライフスキル」も、教育に値するのではないか、教育とは決して学校教育だけではないと思っています。

ー難民キャンプにおけるコロナの影響はどうでしょうか?

米良:
この2年ほどは日本もコロナの影響を受けていますが、難民キャンプも例外ではありません。

コロナ対策で大きな鍵を握るのは“正しい情報にアクセス”できるかどうかだと感じます。

皆さんは医療に興味がある・なしに関わらず、マスクをしなくてはいけないこと、手を洗わなくてはいけないという情報は得ていて、知識として身についていますよね。

しかし、難民キャンプでコロナ予防啓発をおこなうのは非常に難しいことです。

なぜなら、情報へアクセスするのは難しいですし、私たちがただ石鹸で手を洗ってください、消毒液つけてくださいと言っても、そういったものがすぐ手に入る状況ではありませんから。

水だって各家庭に水道があるわけではなく、共同の水場から汲んでこなくてはいけないんです。

それに、ソーシャルディスタンスを保ってくださいと言われても、難民キャンプはそもそもとても狭いスペースに大勢の方が一緒に暮らしているので物理的に難しいですよね。

識字率もそんなに高くない難民キャンプのなかで、どうやったらメッセージが伝わりやすいか、広まりやすいか…。

さらに難民キャンプではコロナだけではなく、もともと不健康な食事、運動不足や喫煙といったものを原因とする非感染性疾患が課題です。

コロナや非感染性疾患に、どういった対策や伝え方が一番伝わりやすいかは、当事者である本人たちが一番よく知っています。そこでボランティアの皆さんと一緒に考え、工夫することを大事にしています

たとえば紙芝居のようなものを使ってメッセージを伝えたり、人々に信頼されている宗教リーダーの方に少しお話をしていただいたり、狭い室内でもできる運動を考えたりしているんですよ。

そうやって活動を続けていますが、私たちが懸念するのは難民キャンプでの生活が長引けば長引くほど、きちんと教育が受けられる機会がどんどん失われていくということ。

すでに5年は経っているわけで、
教育を受けないまま大人になっていく人が増えると、いざ祖国へ帰って自分たちがコミュニティを作り直すときに大変な苦労をするのだろうと思います。

活動を通じて少しでも「ライフスキル」を身につけてもらえたらよいなと思っています。

世界の医療団がある東京都港区には、たくさんの塾・学習塾があります。

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知ること、関心を持つことの大切さ

世界の医療団

―今後開催予定のイベントや、何か告知があればお願いいたします。

米良:いろいろな方に広く、世界の医療団の活動を知っていただきたく、さまざまなイベントに出展
しています。

たとえば、7月のフジロックフェスティバルでは、ウクライナ支援のための寄付をおこなうということで、ウクライナで活動している団体を募集されていたんです。そこで、私たちも
出展させていただきました。

もし、サッカーがお好きであれば、湘南ベルマーレとタッグを組んでいるので、ホームゲーム開催時にいらしてください。ブースを出展していますよ。

そして秋はイベントが多い季節で、まずは10月1日・2日に外務省が主催でおこなわれる「グローバルフェスタ」があります。

コロナ前は日比谷公園やお台場で開催していましたが、コロナ禍では有楽町の東京国際フォーラムとオンラインのハイブリッドで開催される予定です。

多くの団体が出展するフェスタですので、国際協力に興味がある方にお勧めです。

10月にはもうひとつ、代々木公園で開催される「アースガーデン」があります。どちらもぜひホームページをチェックしてみてください。

オンラインでは毎月、世界の医療団のことをもっと知っていただこうと活動説明会をおこなっています。

国際協力というとやはりハードルが高いと考えていらっしゃる方が多いのではないでしょうか?

しかし、じつはいろいろな参加・協力の手法があります。たとえばご自宅で眠っている不用品をご寄付いただくこと。

Amazonで買い物をされる際に、特定のリンクから入っていただくことで、買う方にとっては余分なお金はかからずに寄付に繋がるという方法。各種ポイントで応援していただくこともできます。

寄付につきましても、ホームページに詳しく掲載していますので、ぜひご覧いただけると嬉しいです。

―最後に読者の方へ向けてのメッセージをお願いいたします。

米良:世界の医療団の活動の軸として「証言」があるとお伝えしましたが、私たちはただ現地で支援するだけではなく、現地での活動や状況を積極的に伝え続ける、発信することも大事だと思っています。

最近はオンラインが増えましたが、ご希望があれば講師を派遣しての対面での授業もおこないますし、学校や図書館で写真を飾りたいというケースではパネルの貸し出しもしています。

いきなり世界で起きていることを知ってくださいと言っても難しいかもしれません。

まずは自分たちの日々の生活がどう世界と繋がっているかを考えていただけたらと思います。

たとえば食べ物1つにしても、多くを輸入に頼っていますよね。洋服も海外の工場で作られるものが多いですね。

そういった海外との繋がりを探していただき、関心を持っていただけたらと思います。そして次に知らなかったことを他の人と共有するだけでも大変大きな一歩だと思います。

今、世界中で50以上の紛争/戦争といったものが進行形で起きているんです。日本でもウクライナのこと、少し前はミャンマーのこと、さらにその前だとアフガニスタンのことなど、ニュースで目にしたかと思います。

今ではテレビなどのメディアではほとんど報じられなくなっていますが、そのどれもがまだ終わっていません…。

小学校の授業でも取り上げられているSDGsも16番目は「平和」、17番目は「パートナーシップ」ですから、ぜひこういったことを少し意識して、疑問を持ちながらニュースを読んだり、聞いたりしていただきたいですね。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました!

■取材協力:世界の医療団

島田 佳代子
この記事を執筆した執筆者
島田 佳代子

Ameba塾探し 執筆者

幼少期よりピアノ、水泳、硬筆、英会話などを習う。中学受験をして英語教育に力を入れる中高一貫の女子校へ進学。その後、都内の短大を経てイギリスへ留学。マンチェスター市内のカレッジで観光・旅行学を学びながら、執筆活動を開始し、スポーツ、旅行、ビジネス、教育など幅広い分野で執筆経験がある。2021年9月から「自然豊かな地方の田舎生まれ。小学校では3~5年生までスイミングクラブ、4~6年生までサッカーと習い事を通じてスポーツに熱中する日々を送る。工業高校に進学するも起業や事業経営で成功したいと考えるようになり、高校3年生で個人事業主として開業。紆余曲折ありながら、ライティングを学びブログ運営やWebライターとして活動を続けている。2022年7月より「Ameba塾探し」で編集兼執筆を担当。進路に不安を抱える学生や保護者に役立つ情報をお届けする記事作りを目指しています。」にてライターとして従事し、保護者やお子さまに興味をもっていただける記事づくりを目指しています。