世界には学びたくても、紛争や貧困で学ぶことができない子どもたちがたくさんいることをご存じでしょうか?
「認定NPO法人国境なき子どもたち」は、国境を越えてすべての子どもに教育と友情をビジョンに掲げ、困難な状況下にある子どもたちを支援しています。
今回は理事・広報の清水 匡さんに実際にどのような活動があるのか、お話を伺いました。
子どもが参加できる活動もあります。興味のある方はぜひご一読ください!
世界7ヵ国(地域)で活動を展開
―本日はよろしくお願いいたします。はじめに「国境なき子どもたち」の概要を教えてください。
清水 匡さん(以下、清水):「国境なき子どもたち」は、貧困や災害や紛争・戦争といった困難な状況下にある子どもたちに対して、教育の機会を提供している団体です。
1997年に任意団体として設立され、2000年に特定非営利活動法人として承認を受けると、はじめてカンボジアでプロジェクトが立ち上がりました。
それ以降15ヵ国で活動を続けており、現在は7つの国と地域で活動しています。
よく力を入れている活動について尋ねられますが、どの国のどのプロジェクトも平等に、関わるすべての子どもたちに力を入れています。
この2、3年は世界的にコロナの影響がありますが、自分たちの日々の生活が大変だという貧困/スラム地域では特にコロナの影響が大きいと感じます。
そういったエリアでは日雇い労働や不安定な仕事をしている方が多く、外出制限が敷かれて外に出られないということは、収入が全くなくなることを意味するからです。
もちろん蓄えなどもありませんから、生活に支障をきたしてしまいます。
私たちはこれまでに主に教育の支援をおこなってきましたが、コロナ禍といった状況においては、緊急的な食料の支援や衛生用品の支援といったこともおこなっています。
世界の子どもたちとの“交流”から気づかされる多くのこと
ー他の団体にはない「国境なき子どもたち」の強みや特徴を教えてください。
清水:私たち独特の活動に、日本の子どもを海外の活動地に連れていき、現地の子どもたちに取材をする「友情のレポーター」があります。
日本の子どもたちを海外に派遣し、現地の子どもたちと言葉が通じないなりに、一緒に遊んで楽しい時間を過ごすことができるんですね。
そこで楽しい交流だけで帰ってしまうだけでなく、そういった仲良くなった子どもたちにカメラとマイクを向けて取材します。
もともと私たちの理念のひとつが「共に成長するために」。
この「共に」というのは現地の子どもたちに対して、私たちたちが支援をする一方通行の関係ではなく、現地の子どもたちからも学ぶことがあり、共に成長しようという意味合いがあるんです。
どうして路上生活をしているのか、なぜ私たちの施設に来ることになったのか。そういういろいろな社会問題を子どもたちは取材します。
帰国後に日本の人たちに伝えるためにそういった情報は必要ではありますが、仲良くなったお友だちに過去や現在の大変な話を聞くというのは、心の傷をえぐるような行為でもあります。
そうするといろいろな質問をしたいれども、もしこういった質問をすると仲良くなったお友だちを傷つけてしまうのではないか。そんな風に悩みながらインタビューをおこないます。
勇気を振り絞って質問をする子もいますが、やはり平常心ではできずに泣いてしまう子も…。
そうするとインタビューを受けている現地の子どもたちは、泣かないでいいよと逆に慰めてくれることもあります。
自分に対して真剣に向き合ってくれる日本の子どもに対して、自分も真剣に質問に答えてくれます。
もちろん答えているときに自分の辛い過去を思い出し、泣くこともありますが、それでも真剣に答えてくれて…。
答えながら泣いている子どもに対して、レポーターが涙で受け止めたり。
取材後にはまた遊びだすのですが、インタビューをしたことで関係がまた濃くなっていくのが不思議です。
そういった“絆”を日本の子どもたちは学んで帰ります。
また現地では日々、現地の子どもたちの逞しさや姿勢を目の当たりにします。
かたや日本での自分の生活を考えると、朝、親に起こされたり、宿題をやりなさいと怒られたり、ご飯を残したり。
そういったことが当たり前だったけれど、それらは当たり前ではなかった。自分はなんて恵まれていたんだろうと反省したり、恥ずかしくなったりもするようです。
帰国後は、ストリートチルドレンはかわいそうだから支援してくださいではなく、現地の子どもたちってこんなにも素晴らしいんだ。
そして、仲良くなったお友だちのために何かしたいので、助けてください、手を貸してください、という風に変わっていきます。
それを聞いた人たちは、自分の体験、彼らの体験を聞くことができるので、なんとかこの子を応援してあげようとだんだん仲間が増え、現地の子どもたちの真の姿を深く理解することにも繋がります。
これは、国境なき子どもたちの特徴と言えるのではないでしょうか。
あまりにも衝撃的な体験を短い間にたくさんするので、頭では理解するのだけど、心がついていかない子たちも少なくありません。自分にできることはなんだろう、みんな悩み自問するんです。
仲良くなった友だちに何かしたいという気持ちと、自分自身に今できることの少なさ、力のなさっていうのを感じて、そこから自分自身の生活に真剣に向き合うことにシフトしていく子どももたくさんいます。
友情のレポーターを経験した後、大きくなって伝える仕事に就いた子どもたちもたくさんいるんですよ。
人の命を救う医療系の仕事に就く子どももいますね。
もちろんみんながそういった職業に就くわけではなく、一般企業に就職する子どももいますが、それでも話を聞いてみると海外での体験が忘れられなくて、彼らがいち社会人として貢献しているという強い意識を持っていると感じます。
継続的な支援活動は、まるで子育てのよう
ー今後開催予定のイベントや告知がありましたら、お願いいたします。
清水:今年で設立から25周年になります。9月1日~9月14日には新宿のアイデムフォトギャラリー「シリウス」にて25周年の写真展「共に成長するためにー世界の子どもたちー」(入場無料)を開催します。
また11月、12月にも講演/トークイベントをいくつか企画中です。
海外の子どもたちに支援をしていくというのは、現地にいるスタッフが直接おこなうことなんですね。
私もそうですが、日本にいるNGO職員は常に現地にいるわけではないので、間接的に現地のスタッフをサポートしながら、集めた資金を送ってプロジェクトの運営にも関わっていきます。一つひとつ非常に時間がかかります。
一般の方が時間を使って支援に参加するというのはなかなか難しいかもしれません。
ではどうしたらいいんだろうと思われる方もいらっしゃるでしょう。
もちろん寄付金という形もありますが、まずは「知ること、そして関心を持つことが大事」だと思っています。
何も知らないと、何か助けてあげたり、共感を持ったりということはまずできないかと思います。
そして、見て見ぬふりをするのではなく、関心を持つこと。子どもにとって関心を持ってくれる人がいることが安心であり、健全な成長に繋がります。
できる方は行動に移したり、人に少しでも話をしてみたり。それだけでも、だんだん輪が広がっていきます。
輪が広がることで力が大きくなりますから、ぜひ知ったことを伝えていただきたいですね。
最後に余裕があればですが、ご寄付をいただけると大変助かります。
たとえば、日本でお子さんを塾に通わせるときに、1ヶ月分のお月謝だけ支払えばいいというものではないですよね。
毎月月謝を払って塾に通わせて、それを1年、2年と長い時間をかけることで、子どもが勉強をして力がつくものだと思います。
現地の子どもたちも同じです。ひとりの子どもを自立させるには、継続的な支援が必要です。
ですので、もし可能であれば継続的にご寄付をいただけますと、大変ありがたいです。
ー最後に読者の方へ向けてのメッセージをお願いいたします。
清水:国境なき子どもたちは、子どもたちに教育の機会を提供する支援活動をおこなっていますが、ひとりの子どもに対して何年も支援をし続けています。
そうなりますと、自然に子育ての感覚が強くなり、ただ教育を提供するだけではなくて、子どもたちの悩みを聞き、将来に対しても柔軟に話を聞き、それで支援として対応していくんです。
親の理想通りには子どもは育たないのと同じように、大人が考えた支援やプロジェクトという理想を子どもたちに押し付けることはできません。
悩んでいたら、悩みを聞いて寄り添ってあげる。
そういった子どもたちの支援活動というのを大きな意味での子育てというふうに感じています。
ホームページに“友情のレポーター”など、私たちの活動の様子を載せていますので、少しでも興味を持っていただいた方はぜひご覧ください。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:国境なき子どもたち(KnK)