劇場文化が根付く、アメリカ・ニューヨークやイギリス・ウェストエンドなどでは、家族での観劇や、仕事後のアフターファイブに同僚とブロードウェイに行くことが当たり前にあり、劇場が身近な存在だそう。
今回は、そんな劇場文化を日本で浸透させ、次世代に広めていく活動をおこなう、NPO法人「JOY Kids’ Theater(ジョイキッズシアター)」代表理事の夏海 清加さんと、プロジェクトに参加したインターンの廣井 碧海さんにお話を伺いました。
また、大人が受講したレッスン代の一部が寄付金として送られるプログラムやミュージカル教材がレンタルできるなど、事業は多岐にわたります。
夢を叶えたい学生の方、子どもとともに成長したい保護者の方、ミュージカルに興味のあるすべての方、ぜひこの素敵な取り組みをご一読ください。
夢が“叶う”「KaNaU Project」で次世代育成に取り組む
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、NPO法人 JOY Kids’ Theaterがおこなう劇場文化普及事業「KaNaU(カナウ)」について教えてください。
夏海 清加さん(以下、夏海):劇場文化の発信と次世代育成をおこなう「KaNaU Project(カナウプロジェクト)」の“KaNaU”は、夢が“叶う”から名付けました。
まずそのなかのひとつ「劇場文化を継承していく次世代を育てるプロジェクト」は、高校生・大学生を対象としており、プログラムによっては、中学生も参加可能です。
対象年齢を設けた理由は、高校生や大学生といった世代が自分の将来と向き合うための時間として、この劇場文化で一流の体験をしてほしかったから。
夢を叶えた大人、俳優、ブロードウェイの第一線で活躍している方と触れ合うことによって、グローバルで活躍するとはどういうことなのかを間近で感じられる貴重な取り組みとなっています。
たとえば海外からのツアー講演があった際、東急シアターオーブという大型ミュージカル専用劇場と協働で、観劇や、公演後にQ&Aトークセッションをすることもあります。
ほかにもバックステージツアーを特別に組んでいただいたり、ブロードウェイ招聘キャストやダンサーによるワークショップもありますね。
あと、講演の休園日や講演が終わった際に当スタジオで共演プログラムをするなどして、若い世代だけでつくり上げる舞台はもちろん、グローバルで活躍している海外の方々との交流でより劇場文化に触れることができます。
2つ目の「劇場文化を支える未来の観客を育てるプロジェクト」は、未来の観客を育てることを目的とした親子参加型のプロジェクトです。
海外と比べると、日本は劇場に足を運ぶ文化があまりない現状がありますが、その視野をこれからどんどん広げて、海外と同様に劇場を身近にしたいと考えています。
海外では、劇場に家族で行ったり、仕事後に同僚とブロードウェイに行ったりすることがよくあるんですよ。
私たちのモットーは、“ミュージカルで人生を豊かに”であり、この生涯教育をテーマにしています。
したがって、将来を考える高校生・大学生にこそ、劇場文化にしっかりと触れていただき、大人になってからも劇場が身近な空間になるよう、普及活動に尽力しています。
3つ目は、「次世代を育てるコーチ育成プロジェクト」です。渋谷区と共同で、学び舎としての劇場をテーマに、劇場でのワークショップの開催や、教育普及活動ができる人を育てる活動をしています。
海外の振付家や演出家の方が来日した際、学生とのワークショップに弊社の講師たちも一緒に参加し、異年齢で学んでいく。プロがプロに学ぶのがこのプログラムの特徴です。
海外からキャストが来るプロジェクトは、コロナ禍になり、なかなか開催できていないのですが、来年に向けて徐々にスタートさせていきたいと思っています。
コロナ禍においては、アメリカでもなかなかお会いできない賞を獲った方とオンラインで繋いで、英語でやり取りをしながら、中・高・大学生向けのプログラムをつくるなど、オンラインでも一流体験ができる取り組みをおこなっています。
ー廣井さんはKaNaUに参加した経験があるそうですが、体験した感想をお聞かせください。
廣井 碧海さん(以下、廣井):私が去年の夏に参加したプログラムは、ブロードウェイの舞台に立たれている日本人の方と一緒にJOY Kids’ Theaterの舞台に立つものでした。
世界で活躍するプロの方と一緒に歌って踊る経験は、私にとってすごく刺激的だったのですが、それ以外にもそういった方と直接お話をすることで、新しい発見や知識、さらに新しい価値観を見つけられたことがとてもよかったと感じます。
また、プログラムには大体20人ほどの学生が参加していて、習った振り付けを時間を見つけてみんなで自主練するなど、自分たちのなかで計画性が生まれていたと思います。
みんなで同じ舞台を届けるという目標を持って活動していたので、より仲間意識が芽生え、友だち以上の関係性ができていましたね。
その公演に出た夏は、私にとってすごく濃く、充実したものでした。
ミュージカルをとおして子どもたちの未来へつなげる事業
ー未来貢献事業「Stage for you(ステージフォーユー)」、ミュージカル教材普及事業「OFFICE(オフィス)」についてもご紹介ください。
夏海:まず、「Stage for you」は、成人・シニア向けのクラスで、受講いただくとレッスン代の一部が寄付金として、子どもたちの成長を主旨とするミュージカル教育プログラムや、道徳教育プログラムへ送ることができる大人のためのプログラムです。
この事業が生まれたきっかけは、子どもが生き生きと参加している姿を見て、保護者の方もやりたいという声が上がったからなんですよ。
やはり子どもが笑顔でいるには、周囲の大人、私たちこそが常に夢を大きく持ち、笑顔でいることが大切だと考え、ぜひ大人向けのクラスをつくってみようと思いました。
当団体は、子どもたちの笑顔をどんどん生み出すことが家庭を明るくしていくと考えています。
そのため、このクラスでは、ただ大人がレッスンを受けるだけではなく、自分が受けたレッスンにより、その一部が子どもたちのためになる仕組みにしたく、レッスン費3,300円のうち300円がNPO法人の事業に回るようにしました。
保護者のみなさんも社会人のみなさんも、自己研鑽をすることで未来の子どもたちのためになっている。まさにそれがStage for youで、for youのyouは未来の子どもたちを指し、運営しています。
具体的なレッスン内容としては、毎週水曜日の朝10時から11時に、お子さんを指導している講師が歌などを教えていて、本当に楽しんでご参加をいただいていますね。
レッスンでは、お子さんの話で盛り上がったり、我が子のお稽古場での様子が知れたり、あとはレッスンの難しさを体験することで大きなステージに堂々と立つ子どもたちに対してリスペクトの気持ちが生まれるようです。
もちろん保護者の方でなくても、歌やミュージカルが好きな方はどなたでも参加が可能なので、ぜひご興味がある方はご参加ください。
次に「OFFICE」では、JOY HOMEで扱う、台本・衣装・小道具・舞台セット・DVDなどすべての教材を提供し、日本全国、世界へとミュージカルをとおした教育プログラムの魅力を広げていく活動をおこなっています。
当団体の目的は、欧米のようにミュージカル教育をすべての子どもたちが学校教育のなかで受けられることです。
そして点数教育ではない、長所伸展法をカリキュラムに取り入れることで、自己概念の形成や他人を大切にする心につながり、志を育むことができると考えています。
当団体では、ブロードウェイ版など一流の教材をオリジナルミュージカルラボテキストとしてつくっています。
それからプロのデザイナーが手掛けた衣装や小道具、舞台のセットも整っているので、ミュージカルをおこないたい場合はレンタルができるようにしているんです。
また当団体の講師が研修として教えにいくなどのサポートもおこなっています。
現在、関東圏の幼稚園や保育園、民間の保育ミュージカルを開催されている方に取り入れていただいており、衣装やセットを貸し出していますね。
ほかにもPTAや小学校のお楽しみ会、学芸会、演劇部やミュージカル部など、より本格的にミュージカルをしたい方にプログラム一式をお届けし、舞台芸術をおこなうすべてのノウハウや教材を普及していきたいです。
ミュージカル教育を全国へ!素晴らしい経験と仲間とともに
ーイベントの開催予定、寄付の呼びかけがあれば教えてください。
夏海:KaNaU Projectに関しては、12月に公演があり、一流のアーティストの方々の生演奏や、一流のゲストパフォーマーをお呼びしてコラボレーションする予定です。
9月中旬ぐらいまで募集しているのでご興味のある方はお問い合わせください。
また、渋谷の劇場でおこなう、中高大学生がメインのプログラムの公演が来年の夏に決まっていて、5月ぐらいから募集がスタートします。
寄付については、随時ご支援のお願いをしており、ひとりでも多くの方にご支援をいただくことによって、子どもたちの活動の幅が広がり、全国展開していくことができます。
Stage for youは、レッスンを受けていただくだけで、その一部が寄付につながりますので、ミュージカルにご興味ある保護者のみなさまや成人の方は、一度体験レッスンに来ていただけると嬉しいです。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
夏海:高校生や大学生は、将来への悩み、自分の進む道に迷うことがあるかと思います。
しかし迷っていても必ず自分のなかでやりたいことってあると思うんです。そういったときは当プログラムで自分自身を探求し、劇場文化に触れてみてはいかがでしょうか。
また保護者の方が参加できるプログラムもあるので、将来に悩む学生の方はもちろん、悩みを抱えているお子さんをお持ちの保護者の方も、ぜひお問い合わせいただければと思います。
廣井:みなさんがこのKaNaU Projectに参加する目的はそれぞれありますが、自分に自信をつけたくて参加する子が多く、最後は自分に自信をつけて、舞台に立っています。
けれども、このプロジェクトはこういった目的以上のことをたくさん吸収できる素敵な場です。
一石二鳥でなく一石十鳥の素晴らしい体験と経験と仲間が待っているので、ぜひ来ていただきたいなと思います。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人 JOY Kids’ Theater