日本の多くの地方都市では、子育て世代を含む働き手の人材流出をはじめ、さまざまな課題を抱えています。
その課題と向き合い、テクノロジー教育を活性化させることで解決を図る組織があります。
高知県須崎市にある「てくテックすさき」は、地域の課題解決を図る一環として、須崎市と特定非営利活動法人みんなのコードが開設・運営している施設です。
本日は、てくテックすさきの館長 牛島 青さんにお話を伺いました。
子どもたちへのテクノロジー教育や、地方都市における課題の解決、地域復興などに興味がある方はぜひご覧ください。
須崎市の子どもたちに、楽しく創作活動できる居場所を
ーてくテックすさきがどのような組織なのか概要を教えてください。
牛島青さん(以下、牛島):てくテックすさきは、高知県須崎市とテクノロジー教育の普及を目指す特定非営利活動法人みんなのコードが運営する施設です。
2021年6月にテクノロジー教育に関する連携協定を須崎市と結ばせていただき、須崎市のテクノロジー教育を活性化するために開設しました。
須崎市や近隣に住む10代の子どもたち、特に小学5年生から高校3年生の子どもたちが気軽にかつ安心して最新のテクノロジー機材に触れられる場所です。
てくテックすさきは、プログラミングや映像、音楽など各分野の専門性をもつ多彩なメンターが常駐して、子どもたちの学びや創作活動をサポートしています。
当施設にある機材などは基本的に無料で利用可能です。ただし、木材など一部材料費がかかるものもあります。
現在は週4日開館しており、木曜日と金曜日が15時から21時、水曜日と土曜日は13時から19時までオープンしています。初回は保護者の方と一緒に来ていただいても大丈夫です。一緒に施設の説明や館内案内をさせていただきます。
ー最新のテクノロジー機材に触れられるということですが、具体的にはどのような機材がありますか?
牛島:具体的には、デスクトップパソコン、プログラミングの出来るロボット、VRゴーグル、トイドローン、液晶ペンタブレット、映像編集ソフトなどを利用・体験できます。
ほかにも電子楽器や撮影機材、レーザーカッター、3Dプリンターなど、一般家庭にはあまりないような機材もあります。
男女問わず人気があるのは、3Dプリンターです。パソコン上で自分のつくりたいものをつくってそれを出力できるのが、子どもたちにとって夢のような機械に感じるようです。
3Dプリンターで友達や家族にあげる作品をつくってみたり、おもちゃをつくってみたりする子たちも多いですね。
学校外でのテクノロジー教育の活性化を図る
ーてくテックすさきを開館したきっかけや目指していることはなんですか?
牛島:日本の多くの地方都市では、人材流出・子育て世代の流出といった社会的な課題を抱えています。そして、須崎市も同様にこれらの課題を抱えています。
この課題と向き合い、持続可能な地域社会をつくっていくためには、新たな視点と柔軟な発想が必要ということで、持続的に取り組めるような人材育成が不可欠だと考えました。
そこで、地域の子どもたちが安心して落ち着ける空間をつくると共に、テクノロジー教育が地域社会の課題解決につながると思ったんです。
テクノロジーとなると、どうしても経済格差が顕著に現れやすい分野です。そんななか、無料で最新テクノロジーにふれて創作活動ができる環境があると、家庭の事情に左右されることなくテクノロジーへの知見を深められますよね。
子どもたちの居場所になること、そして学校外でのテクノロジー教育の活性化を目的としててくテックすさきが開設されました。
実際に当施設に来てくれる子どもたちは、パソコンやプログラミングを勉強したり、ボードゲームなども置いていますので、それを使って遊んだりもしています。
子どもたちにとって学校と家以外の、まさに第三の居場所として気軽に安心して来られる場所のようです。
また、私たちはものづくりをする、創作をするということを大事にしています。もちろん、てくテックすさきに来て単純にゲームで遊んだり、VRで遊んだりして楽しむことも大切です。子どもたちの居場所として重要な要素の一つですから。
その上で、デジタルなものづくりを通して、子どもたちのやりたいことを伸ばせるようにしているんです。子どもたちそれぞれのやりたいことをしながら、自分自身で居場所をつくっていけるようにサポートしています。
子どもたちの「やりたいこと」を探すところからサポート
ー今後開催予定のイベントなど何か告知することがあれば教えてください。
牛島:11月にてくテックに通ってくださっている利用者さんの作品を一般の、主に須崎市の住民の方に観て、実際に体験していただくような機会を設けようと思っています。
詳細については、ホームページや私たちの公式SNSをご覧いただければと思います。
ー最後に読者に一言メッセージをお願い致します。
牛島:てくテックすさきは子どもたちの居場所となり、やりたいことを広げていくのに最適な環境です。
それから、年代的にも技術的にも少しだけ先を行くメンターが常駐をしています。そのメンターの力を借りながらそれぞれの力を伸ばしていける、やりたいことを探していけるような場所を目指しております。
実際にこの仕事に携わって、日々子どもたちの成長を見ていますが、子どもたち自身がものづくりを体験しながら自分たちの居場所をつくって広げているように思います。
是非近くにいらした際はお立ち寄りいただいて、最新テクノロジーを活用したデジタルなものづくりを楽しんでいただければと思います。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。