ミュージカルのレッスンは、歌・ダンス・お芝居の技術を伸ばすだけだと思っていませんか。
今回はミュージカルの魅力に迫るべく、NPO法人 JOY Kids’ Theater(ジョイキッズシアター)が取り組む6つのミュージカル教育事業のなかのひとつ、子どもの心身育成事業「JOY Kids’ Theater」を取材。代表理事の夏海 清加さんにお話を伺いました。
ミュージカルを教材に学習へとつなげ、教育プログラムとして扱うことで新しい教育のカタチにしたのが同事業の特徴。
子どもに人間性を育む教育をしたい、コミュニケーション能力や自信をつけさせたいとお考えの保護者の方は、ぜひご一読ください。
ミュージカルで新しい教育のカタチ「JOY Kids’ Theater」
ー本日はよろしくお願いします。はじめに、NPO法人 JOY Kids’ Theaterがおこなう子どもの心身育成事業「JOY Kids’ Theater」の活動概要について教えてください。
夏海 清加さん(以下、夏海):「JOY Kids’ Theater」では、歌・ダンス・お芝居の総合芸術であるミュージカルを「教育プログラム」として扱い、新しい教育のカタチに取り組んでいます。
ミュージカルではなく総合芸術として扱う理由は、歌や芝居やダンスなど、私たち人間のありとあらゆるすべての表現方法を使っているからです。
近年の子どもたちは、学校教育において点数や偏差値評価をされていますが、身体表現など、その子から出てきたものはすべて正解だと考えています。
したがって子どもたち一人ひとりに内在する、表現力、声など、持って生まれた“ギフト”を活かして「長所伸展法」の教育を実践しています。
また歌って踊るミュージカルは、学校の体育と音楽、国語、英語、社会を同時に学べるものなんですよ。
たとえばブロードウェイのミュージカル作品を取り扱う際は、作品の背景や、作品がつくられた時代を知ることで歴史の勉強になり、さらに原語が英語なので英語の勉強にもつながります。
ダンスの要素や音楽もあるので、理系につながる空間把握能力、音や照明などの光の屈折の勉強にもなりますね。
ミュージカルは歌やダンスのレッスンがメインだと思われがちですが、学校の勉強につながる工夫を取り入れることで、大好きな歌やダンスを伸ばすだけでなく、苦手教科を克服したお子さんもたくさんいます。
このように当プログラムでは、ミュージカルを教材に、自然に英語・歴史・読解(国語)・数学・理科を学べる工夫がされたオリジナルのテキストを作成しています。
総合芸術を教育のひとつのツールとして取り扱っている点が「JOY Kids' Theater」の一番の魅力であり特徴ではないでしょうか。
子どもたちの一生折れない自信を育んでいくこと、自分自身を愛するセルフラブ、そして自分を好きになることを目的として事業をおこなっています。
異年齢の子どもがつくり上げるミュージカルプログラム
ー「ミュージカルプログラム」をご紹介ください。
夏海:まず、毎週月曜日から金曜日、土曜日の午前中まで開講しているアフタースクールパフォーマンスプログラムは、学校が終わったらそのまま千駄ヶ谷のスタジオに来る子がほとんどです。
対象年齢は1歳8か月ごろ~大学生で、幼稚園生と小学生、小学校高学年から高校生までなど、時間とレベルを分けてレッスンをしています。
レッスン内容はミュージカルをベースにしていて、火曜日だとミュージカルの音楽でおこなうクラシックバレエ、水曜日はミュージカルをもとにした英語のレッスンや、ダンスに特化したクラス。
木曜日はミュージカルとともにおこなうインラインフィギュアスケート、金曜日はブロードウェイミュージカルのクラスなど、毎日違うプログラムを開催していますね。
このアフタースクールパフォーマンスプログラムでは、週に一回でも二回でも、しっかりと毎週継続して基礎力をつけることに重きを置いています。
毎日開講している探求型学習空間Theater Lab(シアターラボ)では、学校や塾の宿題など、子どもたちの思考力向上のサポートをメインにおこなっています。
学童のように子どもたちが学校終わりにまっすぐスタジオに来て、年齢に関係なく子どもたち自身が学習目標を立て、それを達成することで、学習時間をとおした目標達成力の向上を目的とした空間です。
その前後でアフタースクールパフォーマンスプログラムがあるので、一緒に受けていただいているお子さまが多いです。
このプログラムは、自由自在に子どもたちが机や椅子を選べる環境になっているため、ラボに来たらまず、今日使う机とやることを自分たちで決めて、主体的に行動することを目的としています。
最後は、ISP(Intensive Stage Program)プログラムです。土日祝日、学校の長期休みに開校しているため、遠方のお子さんでもレッスンを積み重ねていける短期集中プログラムになっています。
2~3か月のプログラムで平均20回程度のお稽古があり、3か月に1回おこなう劇場公演で何百人のお客さんの前でステージに立つんですよ。
実際にブロードウェイのミュージカル作品をつくるプロセスのなかで、自己肯定感やセルフラブ、チームワーク、自信、リーダーシップ力、そういったさまざまな力を身につけていくことができます。
このプログラムの対象年齢は、幼稚園生から大学生までで、異年齢の子どもたちが一緒に同じ時間を切磋琢磨していくんです。
私たちは「異年齢教育」として、幅広い年齢の子どもたちが一緒になって取り組むプログラムに力を入れていています。
たとえば下が上を見て学ぶことはよくありますが、その逆で上の子たちが下の子から学ぶこともあります。
短期間のプログラムでも、兄弟のような絆がつくられていき、さまざまな悩みを持ったお子さんも2か月でガラッと変わって生き生きとしていますね。
幼稚園生や小学生が高校生・大学生と一緒に何かに取り組む機会は普段なかなかないため、歳の差関係なく同じゴールに向けて取り組むチームワークや思いやりなどを育成するこの経験は、社会に出たときにきっと役立つでしょう。
JOY Kids' Theaterのキャッチフレーズは「子どもの夢をカタチにする」です。JOY Kids' Theaterの3つの柱のプログラムを継続して受講いただくことが夢をカタチにする力になると考えています。
未来の夢へ!将来役立つ力になるミュージカル教育を
ー今後のイベント開催予定や、活動の展開について教えてください。
夏海:アフタースクールパフォーマンスプログラムとシアターラボは随時募集をしており、体験レッスンも可能です。
また、シアターラボは夏期集中講座として夏ラボを開催しているので、ご興味のある方はお問い合わせください。
短期集中プログラムに関しては、募集期間が春夏秋冬と分かれていて、いつでも参加できるものではありませんが、次回は9月に冬プログラムに向けた募集(9月20日前後で締め切り)があります。
この期間にお申し込みいただければ、12月の24、25日におこなう豊洲のシビックホールの公演に参加できます。
公演を見たい方は、ぜひイベントにお越しいただけたら嬉しいです。
ー活動を支援したい方は寄付もできるのでしょうか?
夏海:寄付は常時募っております。
子どもの笑顔が家庭を明るくして、笑顔の家庭が増えると地域社会が明るく、そしてそんな地域社会が増えると国が明るくなり、明るい国が増えると世界も明るくなる。
この“子どもの笑顔を守っていく”という考えに賛同いただける個人の方は、毎月の寄付や一回限りの寄付でも大歓迎です。
またパートナー企業も募集しており、特典として社員のお子さんが当プログラムを受けるときに値引きがあったり、入会金がオフになったりなどの福利厚生プログラム、さらに年に数回ある劇場公演で協賛いただくことも可能です。
福利厚生プログラム以外にも、ミュージカル教育を社員教育の一環として、弊社のスタッフたちが企業に出向き、パフォーマンス指導をおこなうこともできます。
営業力をあげるのはもちろんのこと、社員の方自身の自己肯定感を高めるサポートをしていますので、ぜひお声がけいただければと思います。
ー最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
夏海:我が子にもっと自信をつけさせたい、夢をかなえる力やリーダーシップ力、思考力、自信、自己肯定感などを養ってほしいとお考えの保護者の方は、ぜひ当ミュージカル教育に触れていただきたいです。
当プログラムは、技術を習得する前に、まずは挨拶や思いやり、整理整頓、掃除などを徹底し、人間性を育む教育をとても大切にしています。
教育プログラムの一環として、毎月第一日曜日に地域の清掃活動もしているんです。
そういった人間性が備われば、技術力はあとからいくらでも自然についてくると考えていますね。
高校生以上の方は、これから受験や面接で自分を表現し、自分を発信していく機会が増えていくと思います。
これからの時代は、自分が学生のときに何をしてきたか、社会にどういう力で貢献できるのかなど、自己表現力や、自分自身のプレゼンテーション力が大事になってくるのではないでしょうか。
このミュージカル教育はそんな自己探求の時間として、自分を知れるきっかけにもなり役立つと思います。みなさんにお会いできるのを楽しみにしております。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました。
■取材協力:NPO法人 JOY Kids’ Theater