NPO法人「フィールホーム」が重視する“子ども都合”の視点とは?社会全体で支援の輪を広げて

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待機児童問題が深刻な昨今、「保育を受けられないから仕事に行けない」とお悩みの方は少なくないでしょう。

また保育施設を事業として継続していくための制度や仕組みには、子どもの都合が置き去りになっている部分があるのも大きな課題です。

今回は、そんな保育業界の現状に問題意識を抱き、東京都渋谷区富ヶ谷でNPO法人「フィールホーム」を立ち上げた、代表理事の宮武 直也さんにお話を伺いました。

子育て世代の方や子どもの教育に携わっている方、富ヶ谷近隣にお住まいの方は、ぜひご一読ください。

  1. NPO法人を設立したきっかけは“保育現場での経験”
  2. 「子どものためになるか」を視点に!ユニークなイベントも
  3. “子ども都合”の支援の輪…社会全体で子どもを育む

NPO法人を設立したきっかけは“保育現場での経験”

子どもテーブルInおとなりサンデーの画像

ー本日はよろしくお願いします。まず、NPO法人「フィールホーム」の概要について教えてください。


宮武 直也さん(以下、宮武):「フィールホーム」は、一時保育施設や幼児教室、子育て支援関連のイベント運営、企画など、子育て関連事業を展開する団体です。

私はもともと幼稚園の先生・保育士・ベビーシッターといった、保育現場の仕事をしてきました。

そのなかで感じたのは、保育業界の制度の概要や仕組みはどこか大人都合であるということです。

もちろん保育をするうえで一定のルールを設けなければいけないことは理解していますが、私は大人都合ではなく、すべてが子ども都合であってほしいと思っています。

そういった想いを込めて、「フィールアットホーム=家庭的な雰囲気を感じる」という意味から、“フィールホーム”と名付け、NPO法人をつくりました。

最初の事業として一時保育施設を始めたのは、ベビーシッターの仕事をしていた際、一時預かりサービスがあまりないことに気がついたからです。

また、国から認可がおりていない保育施設の安全対策が不十分なイメージを変えていきたくて、認可外保育園の運営も始めました。

ー宮武さんの経歴について詳しく教えてください。


宮武:専門学校を卒業後は幼稚園に入職し、担任・担任補助・行政委託の預かり保育事業を経験しました。

この幼稚園には3年間勤めたのですが、管理職候補として園長先生のお手伝いをさせていただくうち、「自分で園をつくりたい」と考えるようになったんです。

でも幼稚園で関われるのは3歳から5歳の子どもたちだけなので、3歳未満の子どもたちの保育についても学ばなくてはと思い、保育園へ転職しました。

年度途中での入職だったため、まず2歳児クラスの担任補助を4か月ほど経験。そして新年度からは1歳児クラスの担任を務めました。

その保育園の1歳児クラスは0歳児クラスと同じ部屋で保育をしていたので、0歳児の補助にも携われたんです。

こうしてひととおり0歳から2歳児までの保育を経験したあと、次は自分の保育スタイルやビジョンの正しさを検証するために、キッズラインのベビーシッターとして独立しました。

最初こそ依頼もまばらでしたが、半年ほど経つと毎日依頼をいただけるようになり、神奈川エリアで売上1位、全国で売上8位にランクインできたんです。

このとき「やはり自分が考えていたことは、求められていたことだったんだ」と確信しましたね。

ただ、ベビーシッターはマンツーマンが基本のサービスなので、私が365日働いたとしても365組のご家庭の力にしかなれません。

これをそのまま施設の仕組みに当てはめることができれば、同じ1時間でも預かれる人数が増えるので、やはり保育園をつくろうと考えました。

そのためには個人事業主ではなく法人のほうがよいと判断し、NPO法人フィールホームを設立したんです。

ただ私ひとりの力では、今のフィールホームはつくれませんでした。

「自分は子どもたちのために保育業界でやっていきたいんだ」とひたすらいい続けていたら、いろいろな方々が協力してくださったんです。

現在その方々には、フィールホームの理事として運営にご協力いただいています。

「子どものためになるか」を視点に!ユニークなイベントも

宇都宮でのイベントの画像

ー現在フィールホームが取り組んでいる事業について教えてください。


宮武:フィールホームの保育施設第1号である一時保育のクレッシュ富ヶ谷は、新型コロナウイルス感染拡大防止のために現在は休園中です。

そのため当初の方針とは違いますが、ベビーシッターサービスというかたちでの支援をおこなっています。

一方で幼児教室事業はコロナ禍の状況を見つつ現在も継続できており、英語や国語、算数、プログラミングなどの授業を開いています

幼児教室のアップル富ヶ谷を運営するのは、私と同じくフィールホーム役員の石川幸夫理事長です。

石川理事長は40年以上にわたり幼児教育の研究をされていて、実際の指導から教材作成までを一手に担ってきた実績のある方なんですよ。

コロナ禍が落ち着くまでは幼児教室事業をメインに続けて、いずれはクレッシュ富ヶ谷での保育園事業も復活させたいなと考えています。

子育て支援関連イベントの運営、企画に関しては、6月5日に渋谷区社会福祉協議会と渋谷区区民部地域振興課のコラボイベント「こどもテーブルinおとなりサンデー」が開催されました。

フィールホームも関連団体として参加し、子どもたちが楽しめるよう、焼き芋とバルーンアートを提供しましたが、イベント終了前に完売するほど大好評だったんですよ。

ほかにもポップコーンやカレーを提供する店舗があったり、ポニーの乗馬体験ができたりと、町会を上げての大々的なイベントとなりました。

あとは富ヶ谷2丁目の通りで開催された縁日のようなハロウィンイベントへの参加や、お笑い芸人さんとコラボした子育て支援イベント「SOP子育てHOT LIVE」の運営企画など、「どうしたら子どものためになるか」という視点で取り組んでいます。

こういったイベントを開催するのって本当に大変で、資金面の苦労やトラブルが絶えないので、継続できる団体はほとんどないんですよ。

それでも私たちは、子どもたちのためとは何かを示し続けていく団体でありたいと思っています。

また、保育や幼児教育の現場でもICTやデジタル化が進んでいますが、子どもたちのためにアナログとして残していくべき部分も多いでしょう。

そのあたりのバランスをみんなで話し合いつつ、一つひとつのイベントを丁寧に企画するよう心がけています。

お笑いを絡めたものなど、ほかにはないようなイベントがとても気になりますね。子どもたちも保護者の方も楽しめるイベントにぜひ足を運んでみてください!

テラコヤプラスでは、駅や地域にあわせて塾・学習塾を検索することが可能。

入塾を検討している方は、「フィールホーム」最寄りの代々木八幡駅から近い 塾・学習塾 ランキングや、渋谷区 塾・学習塾 ランキングなどから探してみてくださいね!

“子ども都合”の支援の輪…社会全体で子どもを育む

中野でのイベントの画像

ー今後開催予定のイベントについて教えてください。


宮武:まずSOP子育てHOT LIVEは、コロナ禍の影響でオンライン開催を続けてきましたが、今年は渋谷区の施設を借りてリアルの場での開催もしたいと考えています。

また私たちが運営するアップル富ヶ谷では、最近プログラミングのコースを始めたので、今後団体をつくって地域の方向けのプログラミング教室を展開する予定です。

夏は静岡県伊東市にて、クレッシュ富ヶ谷の開設にご協力くださった一般財団法人キッズファースト主催のイルカキャンプを企画しています。

伊東市のNPO法人が海のなかのいけすでイルカを4頭飼育しているので、埼玉県の障害児受入施設の親子を招いて、イルカと触れ合うイルカセラピーをおこなう予定です。

イルカセラピー以外の時間も、BBQやオリジナルマスク&エコバッグづくりに取り組むので、フィールホームも毎年お手伝いで参加しています。

ほかにもプロレス団体・NOAHの試合観戦やホリプロさんのピーターパンミュージカルの鑑賞、子ども向けダンスレッスンのワークショップ、富ヶ谷2丁目町会主催の夏祭りなど、さまざまなイベントに関わっていく予定です。

開催1か月前くらいから各イベントのお知らせを公式ホームページにアップしているので、ぜひ一度ご覧いただければと思います。

ー団体として寄付は募っていますか?


宮武:はい。ただ私たちは、よい活動を続けていれば必ず人が集まり、資金面でも豊かになっていくと考えているので、あまり重要視はしていません。

金銭的な支援ではなく、twitterやFacebookのシェアで応援いただくだけでも、とてもありがたいです。

シェアボタンを設置しているページで、もしよろしければ支援いただけると嬉しいですね。

ー最後に読者の方へ一言メッセージをお願いします。


宮武:日本の子育て支援は遅れているといわれていますが、少しずつ制度も充実してきています。

それでも子育てをしていくなかで「こういう支援が足りない」と感じることはたくさんあるでしょう。

今すぐに対応することは難しいかもしれませんが、行政や保育園・幼稚園、それから私たちフィールホームのような団体は、これからも努力を続けていきます

だからみなさんも「こんな支援が欲しい」と声を上げ続けていただきたいです。

事業としてやっていけるかは、つくっていく側の手腕によるところで、子ども食堂や衣料品・おもちゃの譲渡会など、実際に実現した支援もあります。

大人都合にならず、子ども都合の支援の輪を広げていくためにも、ぜひみなさんの声を発信し続けてください。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました!



■取材協力:NPO法人 フィールホーム

有田 幸恵
この記事を執筆した執筆者
有田 幸恵

テラコヤプラス by Ameba 執筆者

幼少期は5歳から小学校6年生まで英会話教室に通う。高校受験時には家庭教師や塾の特別講習で猛勉強し、第一志望に合格。その後、芸能関係の道に進み、ライター業に転身する。エンタメや美容ジャンルの執筆を経験した後、弁護士コンテンツの法律記事に携わったのをきっかけに、読者の役に立つ情報発信を志し、2020年9月から株式会社サイバーエージェントのグループ会社 株式会社CyberOwlで編集者兼ライターとして従事。現在、テラコヤプラス by Amebaで保護者やお子さまの未来に繋がる記事づくりを目指しています。