近年、放課後等デイサービスの施設、そして利用者が多くなっています。
児童が通う放課後等デイサービスは、障害のある子どもを支援する通所事業所で、もともと未就学の乳幼児と学齢児を対象に支援する事業所が、2012年の障害者自立支援法などの改正により、児童発達支援と放課後等デイサービスに分かれました。
今回は、大分県佐伯市を中心に、地域に根差した介護・福祉のトータルサービスを提供するNPO法人「虹の翼」理事長の田中 努さんにお話を伺いました。
子どもたちの笑顔のために尽力する取り組みを、ぜひご一読ください。
介護・福祉のトータルサービスで地域に愛されるNPO法人に
ー本日はよろしくお願いします。まずNPO法人「虹の翼」がどういった団体なのか教えてください。
田中 努さん(以下、田中):NPO法人「虹の翼」は、大分県佐伯市を中心に、地域に根差した介護・福祉のトータルサービスを提供しています。
たとえば、行動援護や重度訪問介護、放課後等児童デイサービスなどの障がい福祉サービスをはじめ、清掃活動や庭木の剪定、手入れ、引っ越しのお手伝いなどをおこなう有償サービス「たすけあい事業」の活動ですね。
福祉では、児童から高齢者まで、それぞれのステージに合わせてさまざまな福祉サービスを利用されていると思います。
そこには当然それぞれの個別性が存在しますが、同じサービスを使われていたとしても同じ目的や同じ内容には決してなりません。
私たちは、その七色の夢の架け橋でありたい、そしてその夢を現実のものとし、羽ばたいてもらいたいという想いを込めて「虹の翼」と事業所名を名づけました。
この佐伯市という地域としっかり密着し、地域に愛されるように取り組んでいきたいと思います。
子どもたちの笑顔のため!デイサービスをとおした成長の場とは
ー放課後等デイサービスの活動内容について詳しくお聞かせください。
田中:放課後等児童デイサービスは、学校就学中(幼稚園、大学を除く)の障がいのある児童・生徒のための放課後や長期休暇中の過ごしの場です。
この放課後等児童デイサービスでは、日常生活上での能力向上に向けた支援を継続的に提供し、また社会交流の促進、その他必要な支援もおこなっています。
虹の翼では、学校やご家族と連携し、学習面(勉強)での困っていること、体力や体幹、集中力や場面の切り替えなど、一人ひとりに合わせてメニューを考えます。
子どもたちが楽しみながら向き合うことで、苦手が得意になれるように一緒に取り組んでいるんです。
私たちが大切にしていることの1つ目として“場の提供”があります。
障がいの有無に関わらず、子どもたちが楽しく、いきいきと成長できるように、安心・安全に放課後等が過ごせる場所を目指しているのです。
そこでは障害特性に限らず、そのときの子どもたちの心の葛藤を理解し、寄り添い共感することで、本人の居場所をつくることができます。
そして2つ目は、“経験の提供”。子どもたちが、「やったー」「うれしい」「楽しい」と感じられるような体験の場を提供しています。
できないことに注目して取り組むのではなく、好きなことや得意なことをもっと好きに!もっと得意に!なることで、苦手なことへの底上げを図ります。子どもたちの可能性は無限大ですから。
そして3つ目は“つなぐ役割”です。子どもとその保護者が笑顔で、「この地域に住んでいてよかった」と思えるように、行政、関係機関、団体、施設などとの連携を密にし、『つなぐ』役割を果たします。
私たちがおこなっている放課後等児童デイサービスでの関わりは、一日のサイクルで見るとほんの数時間です。
一日の大半は、ご家族と過ごす、家庭での時間が中心となります。
ご家庭や学校での頑張りやストレスを、デイサービスでの活動を楽しむことでリセットすることも大切だと考えます。
安心できる自宅で、信頼するご家族と過ごす日々の時間が穏やかなものとなるように取り組むこともデイサービスの目的のひとつだと思いますね。
大分県は、「無いものがない大分県!」といわれているくらい充実した県なのをご存じでしょうか。
動物園や遊園地、水族館、温泉、宇宙空港、ショッピングモール、そのなかでも九州一広いこの佐伯市にはたくさんの自然があります。
そう、このほどよく田舎の地において、川や山での生き物探し、海での魚釣りはワクワクが止まりません。
四季折々の自然を子どもたちと一緒に楽しみながら取り組むアクティブな活動は、「楽しみしかない!」といっても過言ではありません。
もちろん、学習支援や個別訓練にも取り組んでいますが、この田舎ならではの自然体験は、子どもたちにとって充実したものとなっていると感じます。
少し不器用だけれど、とても頑張り屋な子どもたち。できないことがあっても、苦手なことがあっても当たり前、それは私たちだって同じです。
今という大切なときに、どれだけの笑顔と出会い、どれだけの成功体験ができるのか。それが大切だと思います。
私たち職員が一番大切にしている子どもたちの笑顔を、一日のなかでどれだけ見ることができるか、毎日とても楽しみです。
保護者の方に「うちの子より楽しんでいますよね?」とよく言われます。「はい、楽しいです!!」だって、私たちは子どもたちから毎日たくさんの笑いや勇気をもらっていますから。
私たち職員同士でも気づかない体調不良でさえ、「大丈夫?」、落ち込んでるときには「どうしたの?」って、子どもたちが声をかけてくれるんですよ。
だから私たちも、子どもたちがどんな顔で笑うのか、そしてその笑顔になる瞬間をいつも待っています。
信じることをやめない子どもたちこそ、私たちの希望そのものですね。
ハートでつながっている支援!それぞれの想いと夢の架け橋
ー今後開催予定のイベントについて教えてください。
田中:これまで、地域のお祭りに積極的に参加したり、当法人でもイベントを企画してきたりしましたが、ここ数年は新型コロナウイルス感染症の影響でイベントはありませんでした。
しかし、今年ももうすぐ暑い夏がきて、夏休みという大きなイベントが待っています。
山にカブトムシを取りに行き、川や海では、エビやザリガニ、ハゼ、ナマズ、ウナギ、タツノオトシゴといった生き物を探し、事業所の水槽は小さな水族館になるんですよ。
もちろん毎日泳ぐため、夏休みが終わるころには泳げなかった子どももスイスイ泳げるようになっていますね。
ご家族から「毎日早く寝てしまいます」と笑いながら報告があるのですが、実は私たち職員も疲れて早く寝てしまいます。
外活動は、当然、事故やケガ、トラブルが増えてしまう傾向にありますが、しっかり対策をしながら子どもたちが楽しめる居場所と活動をつくることも私たちの仕事にほかなりません。
今年はどんな夏になるのか楽しみです。
ー最後に読者の方へ一言メッセージをお願いします。
田中:「福祉」や「介護」と聞くと、一般的に「大変そう」と思われる方も多いと思います。
これは介護業界でよくいわれる3K「きつい」「危険」「汚い」などのイメージが影響しているからです。
今では「化粧がのらない」「結婚できない」など、更に11Kくらいまであると聞きます。
でもそんなことは決してありません。
私たち福祉で働くものから見ると、「希望」「期待」「感謝」「感動」「感激」「可能性」「快感」……など、たくさんのKで溢れています。
そこには、「人」対「人」、つまり「ハート」対「ハート」という、相互性の関係で成り立っている“対人援助の職業”だからだと思います。
私たちは毎日が楽しくてたまりません。
みなさんの家の近くにも、同じようなデイサービスがたくさんあると思います。
地域性や環境の違いはあると思いますが、そこで働く職員さんの想いはきっと同じだと思います。
この記事を読んで、少しでもこの活動に興味を持っていただけたらとても嬉しいです。
ー本日は貴重なお話をありがとうございました!
■取材協力:虹の翼